ゲーム、スポーツ、オートモーティブ等の事業を展開する「ディー・エヌ・エー」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、最終501億7,900万円の赤字となっています。主にゲーム事業にかかる資産を中心に減損損失約494億円を計上したことが響きました。
まず、売上収益構成比を見ていきましょう。全社売上の7割近くがゲーム事業で占められています。
スポーツ事業には横浜DeNAベイスターズ、オートモーティブ事業にはタクシー配車サービス「MOV(モブ)」、新規事業・その他にはソーシャルLIVEサービスの「SHOWROOM(ショールーム)」や「Pococha(ポコチャ)」が含まれています。
次に、売上収益推移について。
減収となった主な要因は、前連結会計年度中に譲渡を行った株式会社ペイジェントや株式会社DeNAトラベルが連結の範囲外になったことと、ゲーム事業の減収等によるものです。
営業利益は、総額493億7,100万円の減損損失をその他の費用に計上したことにより、441億6,100万円の営業赤字に転落。
また、繰延税金資産の一部を取り崩し、法人税等調整額76億3,900万円を計上したことにより、最終501億7,900万円の赤字となりました。
業績悪化に伴い、南場智子会長と守安功社長は役員報酬月額の50%を3ヶ月間返上するとのことです。
減損損失の主な内訳は、ゲーム事業に係るのれんの減損損失が401億6,400万円、ソフトウェアの減損損失が81億3,500万円。
のれんは、2010年にスマートフォン向けソーシャルゲームアプリを開発、提供していた米国ngmoco社を買収した際に生じていたもの。 最大342億円での買収という大型M&Aにより、世界No.1のソーシャルゲームプラットフォームの構築を加速していくとしていましたが、見通しどおりにはいかず、ヒット作も出ないまま、2016年にはゲーム事業に関わる海外子会社(ngmoco, LLC 等を含む)を解散し、清算しています。
ソフトウェアの減損損失は、ゲーム事業の一部のサービスについて、当初想定していた収益を見込めなくなったため。
減損損失の計上がこのタイミングになった理由は、新規タイトルが思うようなヒットや成長に繋がっておらず、将来の見通しを保守的に勘案し、このタイミングで減損損失の計上を行ったとのこと。
なお、当該減損損失は一時的なものであり、キャッシュアウトは伴わないため、財務基盤への影響はないそうです。
ゲーム事業が低迷しているディー・エヌ・エーですが、そのほかの事業も苦戦しています。セグメント別の業績を見ていきましょう。
増収増益となっているのは、スポーツ事業のみ。横浜DeNAベイスターズは、主催試合の入場者数増加や、クライマックスシリーズへの進出により好調に推移。特に、クライマックスシリーズをホームで3試合開催できたことが貢献したとのこと。
一方、主力のゲーム事業は減収減益となり、オートモーティブ事業、ヘルスケア事業、新規事業はそれぞれ投資が響き、赤字幅が拡大しています。
なかでもオートモーティブ事業は、前年同期25億円の赤字から53億円の赤字と、赤字幅は2倍に拡大。積極的な投資が響きました。
その打開策となるのでしょうか、配車アプリの事業はJapanTaxiと統合されることになりました。
2月4日、ディー・エヌ・エーと、日本交通ホールディングス及び同社の子会社JapanTaxiは、タクシー配車アプリ等に関する事業の統合を行い、新たな体制で事業を推進していくと発表。
統合にあたっては、ディー・エヌ・エーが運営するタクシー配車アプリ等に関する事業を吸収分割の方法によりJapanTaxiに承継。
ディー・エヌ・エーと日本交通ホールディングスはJapanTaxiの共同筆頭株主となり、JapanTaxiはディー・エヌ・エーの持分法適用会社に。事業統合は4月1日で、JapanTaxiは統合時に社名が変更されます。
通期の業績予想については非開示となっていますが、減損損失の影響、当第3四半期連結累計期間までの実績、第4四半期においてはスポーツ事業がオフシーズンであること、新規事業領域では引き続き成長投資がかかる見込みであることから、上場来初の通期での赤字となる見通しです。
今後の方針として、ゲーム事業の収益基盤の再強化を行うとしていますが、2019年8月に配信を開始した、株式会社ポケモンと協業した新作ゲーム「ポケモンマスターズ」は出だしこそ好調だったものの、不具合多発やコンテンツ不足で失速。ゲーム事業は厳しい状況が続くと思われます。
ディー・エヌ・エーの始まりは、1999年にインターネット上のオークションサイトの企画・運営を行うことを目的として設立された有限会社ディー・エヌ・エー。創業者で、現会長・横浜DeNAベイスターズのオーナーの南場智子氏は米コンサルティング会社マッキンゼー出身。
同年、株式会社ディー・エヌ・エーへと組織変更し、オークションサイト「ビッダーズ」のサービスを開始。
2004年に、携帯電話専用オークションサイト「モバオク」、アフィリエイトネットワーク「ポケットアフィリエイト」のサービスを開始。2005年に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2007年に東京証券取引所市場第一部に市場変更。
2006年に携帯電話専用ゲームサイト「モバゲータウン」のサービスを開始すると、携帯電話専用SNSが急拡大していきます。
2009年にソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」をリリースし、大ヒット。業績は右肩がりに成長していきますが、この大ヒットが皮肉にもスマホゲームの波に乗り遅れる要因となりました。
2010年にスマートフォン版「モバゲータウン」を開始し、翌2011年に「モバゲータウン」のサービス名称を「Mobage(モバゲー)」に変更。
2011年に株式会社横浜ベイスターズ(現株式会社横浜DeNAベイスターズ・現連結子会社)の株式を取得。
2013年にはインターネット上でアイドル、タレントとコミュニケーションを楽しむことができる仮想ライブ空間「SHOWROOM(ショールーム)」を開始。2015年には、事業展開のスピードを加速させることを目的とし、会社分割によりSHOWROOM株式会社(代表取締役社長:前田裕二)を設立。
前田裕二氏は、一度はディー・エヌ・エーの内定を蹴って外資系金融企業に入社したものの、前田氏に惚れ込んだファウンダーの南場智子氏に口説かれ、2013年にディー・エヌ・エーに入社。同年にSHOWROOMをローンチしました。
2013年あたりまで業績は右肩上がりに成長していきましたが、それ以降は伸び悩んでいます。2016年にショッピングモール事業を譲渡、2018年に株式会社DeNAトラベルの全株式を譲渡、2019年に株式会社ペイジェントの全株式を譲渡。SHOWROOMも赤字が続いています。
一方、スポーツ事業は好調に推移しています。
創業来、 eコマース、コミュニティー、ゲームと事業領域を拡大し、インターネット上のサービスだけでなく、スポーツ、オートモーティブ、ヘルスケア等、幅広い領域を手掛けてきたディー・エヌ・エーですが、現状はこれに加え、AI(人工知能)の活用にも積極的に取り組んでいます。
なお、2019年3月期までは「ゲーム事業」「EC事業」「スポーツ事業」「オートモーティブ事業」「ヘルスケア事業」の5つを報告セグメントとしていましたが、2020年3月期より「ゲーム事業」「スポーツ事業」「オートモーティブ事業」「ヘルスケア事業」の4つを報告セグメントとしています。
モバイル向けゲーム関連サービス(日本国内及び海外)
【主要サービス】
スポーツ関連サービス(日本国内)
【主要サービス】
オートモーティブ関連サービス(日本国内)
【主要サービス】
ヘルスケア関連サービス(日本国内)
【主要サービス】
新規事業及びその他サービス(日本国内及び海外)
【サブセグメント名(カッコ内は主なサービス名)】
画像出典元:「株式会社ディー・エヌ・エー」決算説明会資料・公式HP
営業黒字転換!3Qは消費増税と暖冬の影響を受けた「RIZAPグループ」の第3四半期決算
セ・リーグに所属する球団運営会社とその親会社の決算をまとめてみました!
出版社発マンガアプリサービスを中心に急成長する「Link-U」の第2四半期決算
事業拡大期で黒字を継続している「ツクルバ」の第2四半期決算
マザーズ上場へ!電子マネー決済やQRコード決済等、消費者ニーズに合わせた決済手段を提供「GMOフィナンシャルゲート」の第21期決算
世界最速でiPS細胞の具現化を目指すバイオベンチャー「ヘリオス」の通期決算
インフルエンサーマーケティングやMimiTVも好調の「トレンダーズ」の第3四半期決算
マザーズ上場へ!「ヒト.モノ.コト」の正しさを認証、セキュリティシステムで証明、サービスの信頼性を支える「サイバートラスト株式会社」の第19期決算
LINEがグループで300億円出資を決定!巣ごもり消費で需要拡大が期待される「出前館」の第2四半期決算
最終27億円の赤字!新型コロナ追い討ちで資金繰りが悪化している「ペッパーフードサービス」の通期決算