社長の勤怠管理は不要?理由や勤怠管理が必要となるケースについても解説します

社長の勤怠管理は不要?理由や勤怠管理が必要となるケースについても解説します

記事更新日: 2024/04/30

執筆: 編集部

会社を経営するうえで従業員の勤怠管理を行うのは当然です。

しかし、社長の勤怠管理は必要なのでしょうか

また、社長以外の取締役や監査役といった役員についてはどうなるのでしょうか。

今回は、役員の種類や役割と勤怠管理の必要性、さらに役員と従業員の違いや社会保険の適用についても詳しく解説します。

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役員の種類と役割を解説

社長や役員の勤怠管理について解説する前に、まず役員の種類と役割について整理しておきます。

役員は、会社法で義務付けられているものと、そうでないものに分かれます。

また、役員によって選任方法も異なるので、その辺りを明確に理解しておく必要があるでしょう。

取締役

そもそも会社法第329条で定められている役員とは、取締役、会計参与、監査役の3役のみで、すべて株主総会で選任されます。

取締役は、ひとつの企業に少なくとも1人選任することが義務付けられており、その役割は業務執行のための意思決定にあります

取締役というと、「代表取締役」が馴染み深く「代表取締役=社長」というイメージが強いかもしれません。

しかし、代表取締役は、会社の法的意思決定や取引を行う取締役会のリーダーを意味する会社法で定義された役員であって、必ずしも社長と同義ではありません。

よって「代表取締役会長」や「代表取締役副社長」も存在しますし、複数選任しても構いません。

社長はあくまで一般的な呼称で、会社の最高権力者を意味し、社内で1人が基本です。

専務取締役

専務取締役は、代表取締役の補佐的立場で業務執行が役割です。会社法で定められているわけではなく、登記上は「取締役」になります。

実質的なナンバー2にあたり、社内の幅広い業務を管理・監督し、代表取締役や社長が不在の場合は、その代理を果たします

常務取締役

常務取締役は、専務取締役に次ぐ立場で、業務執行が役割です。こちらも、社内の幅広い業務を管理・監督しますが、とくに会社法で定義されている役職ではなく、登記上は「取締役」になります。

監査役

監査役は、会社法で定められた役員で、取締役の職務執行を監査する役割があります。

業務監査と会計監査があり、取締役の不正やその可能性がある場合に、取締役への事業報告請求権や業務・財産状況調査件、取締役の違法行為差止請求権といったさまざまな権限が付与されています

ただし、取締役会を設置しない場合や株式公開していない場合は、設置義務がありません。

執行役員

執行役員とは、取締役が決定した経営方針にしたがって業務を執行する運営上の責任者のことで、とくに会社法で定められているわけではありません。

役員と名がつきますが、立場的には従業員のトップで経営陣との橋渡し的存在になります。

よって株主総会ではなく、取締役会で選任されます。

取締役会には出席せず、役員報酬も支払われません。従業員と同じく定年退職もあります。

役員と従業員の相違点

続いて、役員と従業員の違いについて、以下の4つの観点から解説しましょう。

  • 雇用形態
  • 労働時間
  • 報酬
  • 保険

雇用形態

役員は、会社法上は「使用人」とされており、会社と「委任契約」または「準委任契約」を締結します。

一方、従業員は会社から雇われる立場で、「雇用契約」を結ぶのが特徴です。

役員は、会社から経営を委託されると同時に、従業員を雇う立場にあります。

会社は株主が所有するので、役員の選任や解任は株主総会で決定されます。

従業員の地位は、取締役会や各部署の長などの意思が反映されたり、面談や昇格試験といった会社内のルールに則ったりする形で決定されます。

労働時間

役員は、労働者という位置付けではなく労働基準法も適用されません

したがって、月や年における労働時間や休暇、休憩についての規定はなく、上限もありません。

一方、従業員は労働基準法上の労働者であるため、同法に則った労働時間の上限や年次有給休暇、休憩などが厳密に定められています

報酬

役員がもらう報酬は、「役員報酬」になります。従業員の報酬は、「賃金」です。

役員報酬は、株主総会や定款で決められ、賃金は就業規則や雇用契約で決定されます。

保険

保険は、大きく分けて労働保険と社会保険があります。

役員は、従業員を雇い、守る立場にある使用人のため、労働者が適用される労災保険や雇用保険といった労働保険は適用外になります。

ただし、報酬を得ているという意味から、厚生年金や健康保険、介護保険といった社会保険は適用されます

一方、従業員は会社から賃金が支払われる労働者であるため、労働保険も社会保険も適用されます


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役員における各保険の適用

続いて、前章で触れた役員における各保険の適用についてさらに詳しく解説します。

労災保険・雇用保険は対象外

繰り返しますが、使用人である役員には、労災保険も雇用保険も原則適用されません

ただし、労災保険について、中小企業の事業主の場合は、

  • 一人以上の労働者を雇用している
  • 労働者を雇用する日数が年間100日を超える
  • 雇用している労働者と同じ業務に従事している

といった条件を満たすと特別加入が認められます

また、「取締役本部長」など役員と従業員を兼務している「兼務役員」は、「兼務役員雇用実態証明書」を提出すると雇用保険​​に加入できます

健康保険・介護保険・厚生年金保険は加入できる

役員でも、健康保険や介護保険、厚生年金保険といった社会保険は加入対象となります

ただし、役員報酬がないとか、きわめて少額、また非常勤役員の場合は、対象外となる可能性もあります。

なぜ役員の勤怠管理は原則必要ないのか

役員には原則として勤怠管理が不要ですが、その理由について解説しましょう。

労働基準法の対象外だから

役員は、会社と委任契約または準委任契約を結ぶ関係のため、労働者ではありません。

したがって、労働基準法も就業規則も適用されません

勤怠管理の目的の一つは、労働時間や年次有給休暇の取得状況などを明確にし、法令違反を防ぐことにあります。

しかし、役員にはその必要がないため、勤怠管理をする意味がないのです。

したがって役員には、タイムカードや残業・有給の申請などを求める必要はありません。

役員でも勤怠管理が必要なケース

役員であっても勤怠管理が必要なケースがあるので、具体的に解説しましょう。

出向元では従業員となるため勤怠管理が必要

役員の中には、出向元では役員ではなく、出向先で役員に就任するケースがあります。

この場合は、出向元で従業員となるため勤怠管理が必要になります。

執行役員は取締役ではないため勤怠管理が必要

執行役員は役員と名がつきますが、実際には従業員のトップという位置付けです。

そのため、勤怠管理が必要になります。

ちなみに、役員だった人が執行役員や従業員となった場合も、同じく勤怠管理が必要になります。


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まとめ

社長をはじめとする役員には、原則として勤怠管理は必要ありません

役員は、従業員とは根本的に法律上の立場が異なるため、契約形態も違います。

労働者ではなく使用人となるので、勤怠管理のみならず、労働保険も適用されません。

ただし、執行役員や兼務役員の場合は、事情が異なります。取締役が従業員扱いになった場合も、各保険の対象となるため、担当者の皆さんは十分に注意する必要があるでしょう。

画像出典元:unsplash

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