役員とは一般的には会社経営を行う幹部職員を示しますが、法律上の位置付けや会社での地位は、さまざまな捉え方があります。
今回は役員の種類や役員報酬、役割、地位、執行役員やみなし役員、社員との違いのほか、法律上の取り扱いなどについて解説します。
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役員とは、一般的には会社経営を行う幹部職員を示します。
例えば社長、会長、副社長といったものや、専務、常務などに加えて、代表取締役や執行役員などさまざまなものがあります。
しかし法律によっては、役員の範囲や名称に違いがあります。
では役員とはどのような人のことを示し、どのような役割や責任を担っている人なのでしょうか。
役員の定義は、その根拠により違いがあります。
「取締役」「会計参与」「監査役」
上記に加え「執行役」「理事」「監事」「その他これに準ずる者」
会社法における役員に加え「みなし役員」
「社長」「会長」「副社長」「専務」「常務」「執行役員」「CEO」など
上記を表にまとめると、このようになります。
会社法 | 取締役・会計参与・監査役 |
会社法施行規則 | 上記に加え、執行役・理事・監事・それに準ずる者 |
法人税法 | 会社法における役員に加え、みなし役員 |
会社組織内での呼称 | 社長・会長・副社長・専務・常務・執行役員・CEOなど |
役員の特徴は、以下の3点です。
役員と会社との関係は委任契約によるものです。
役員は会社(株主)から会社経営に関する意思決定を委任され、その対価として役員報酬を受け取ります。
雇用契約に基づいて労務を提供し、対価として給与を受け取る一般の従業員とは関係性が異なります。
役員と会計監査人は株主総会の決議により選任されます。
また役員報酬や退職金、解任についても同様に株主総会の決議によります。
役員は会社の最高決定機関である取締役会に参加し、会社経営における重要な議題を議論し方針を決定します。
会社経営に関する意思決定と監督が役員の役割となります。
会社法における役員は取締役・会計参与・監査役です。
それぞれの役割は以下の通りです。
会社の最高決定機関である取締役会に参加し、会社経営における重要な議題を議論し方針を決定します。
会社の重要事項・方針についての決定権を持ちます。
取締役に協力して会社の会計に関する計算書類を作成します。
専門性が高く、会計参与になれるのは税理士か公認会計士に限定されます。
企業経営の健全性を保つために、取締役と会計参与の業務について監査します。
会社内での役員の立ち位置は、それぞれの会社ごとに異なります。
一般的な会社での役員の呼称と、権限は以下の通りです。
会社内で最も権限を有しています。
取締役会の代表も兼ねているケースがほとんどであり、「代表取締役社長」と表記されることが多くあります。
一般的には社長を退任された後につくポストです。
名誉職的な意味合いであったり、財界や業界団体との交流をしたり、後任社長をサポートしたりとその役割は様々です。
一般的には社長・会長・その他役員を退任された後につくポストです。または外部より招へいし、経営に関する助言を受けることもあります。
名誉職的な意味合いであり、ラインの意思決定には加わらないことが多いです。
社長の業務を補佐・サポートするポストです。
取締役を兼ねることが多くあります。
管理する業務の範囲や権限の順番は副社長が最も広く、専務・常務と続きます。
社長と会長がいる場合、その序列や役割などはわかりにくいことがあります。
会社法においては、取締役会の中の代表である「代表取締役」が、社内で最も大きな権限を有しています。代表取締役は会社の意思決定機関である取締役会のなかで最高責任者と言えます
一般的には社長が代表取締役となり会社の最高権限を持ち、会長は社長を退いた後の名誉職的な役割や後任社長のサポートを行います。
代表取締役は1名を選出することが多いですが、複数名を選出することも可能です。
そのため「代表取締役社長」「代表取締役会長」がいる場合には、どちらも同等に権限を持っているといえます。
社長・会長といった役職は会社法では定められているものではありませんので、その役割や権限は会社ごとに異なり、社長と会長の関係性によっても異なります。
例えば創業者が長く社長を務めた後に、その子供に社長を譲り、自身が会長となるケースはよく見られますが、表面的には子供が社長になったとしても、オーナーであり業務について精通している会長が口を出し、経営の実権を手放さないことはよく聞かれます。
役員給与という言葉は役員に支払われる給与という意味で使われることがありますが、正確な言葉ではありません。
給与 | 従業員が提供した労働の対価として会社から受け取るもの |
役員報酬 | 役員がその経営成果に対する報酬として会社から受け取るもの |
給与と役員報酬は違うものであり、原則として同時に両方を受け取ることはありません。
役員報酬は給与とは異なり損金算入が出来ません。
会計上では経費として計算することができますが、税務上では損金として計上することができないので、注意が必要です。
役員報酬を例外的に損金に算入するためには下記のような方法が定められています。
1か月以下の一定期間で定期的に同額を支給。税務署への届出は不要。
予め税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届出書に記載の通りに支払う。
有価証券報告書に記載されている「利益に関する指標」を基準にして支払う。
役員報酬の金額や支払い方法の決定に関しては、ルールが定められています。
役員報酬を恣意的に増減させ、利益調整に使われないようにするためです。
①役員報酬は事業年度開始の日から3ヵ月以内に決定
②定款又は株主総会の決議が必要
③株主総会から1ヵ月以内に税務署へ届ける必要あり
株主総会では個々の役員の報酬額を決めるのではなく、役員報酬の総額のみを決議し、同時に個々の役員の報酬額決定は、取締役会または代表取締役に一任するのが一般的です。
その後に取締役会などで個々の役員報酬を決定します。
役員報酬が高すぎる場合は税務署などから否認されるケースもあるので注意が必要です。
役員の役割や権限の内容、同業他社の水準などを踏まえて適正に設定しなければなりません。
役員退職金は役員が退職する際に払うものです。
役員報酬と同様に、その金額や支払い方法を決めるためには、定款又は株主総会の決議が必要です。
また役員退職金を恣意的に操作し利益調整に使われたと指摘されないようにしなければなりません。
役員退職金は一般的に役員在任期間・報酬額・功績などをもとに計算します。
退職時役員報酬月額×任期期間×功績倍率
功績倍率は、
・社長や会長 ・・・ 3倍
・専務 ・・・・・・・・・ 2.5倍
・取締役 ・・・・・・・ 2倍
功績倍率を用いずに金額を設定することもできますが、同業他社や一般常識に照らして過大な金額と税務署が判断した場合には、損金算入ができなくなりますので、気を付けなければなりません。
また分掌替えや、常勤から非常勤への変更の場合にも、退職金を支払うことはできますが、退職の実態を伴っているかなどには、注意が必要です。
前述の通り、役員と会社との契約は委任契約によるものです。
役員は会社(株主)から会社経営に関する意思決定を委任され、その対価として役員報酬を受け取ります
一般の社員と会社との契約は雇用契約によるものです。
社員は会社からの指示命令に従って労務を行い、その対価として賃金を受け取ります。
また役員の労働基準法における位置付けは「労働者」ではなく「使用者」です。そのため、労働者に与えられていた様々な権利が認められなくなります。
執行役員は、役員と付いていますが、会社法上で定められた役員ではありません。
取締役でない場合は会社法上の役員ではなく、一般の社員と同じ取扱いです。
執行役員と会社との関係は雇用契約によるものです。
執行役員は取締役会のメンバーではありませんので、役員のような経営に関する決定権は持っていません。
役員が経営の意思決定を主な役割とすることに対して、執行役員は業務の遂行が主な役割です。
役員の意思決定に基づいて、執行役員は業務を遂行するということになります。
みなし役員は、会社法上では役員に該当していないが、法人税法上で役員とみなされた者を示します。
みなし役員の要件は以下の2点です。
①使用人以外の者で経営に従事している者
・・・役員と同等の業務に携わっている者
②同族会社の使用人のうち特定条件を満たす者
・・・経営に携わっており、株式所有割合の一定要件を満たした者
典型的な例では、家族経営の企業における社長の配偶者や家族です。
こうしたケースでは会社情報では役員ではなくても、経営に関わっている場合と判断される場合にはみなし役員とされます。
使用人兼務役員とは、会社法上では取締役として役員に該当するが、会社内の役割は部長・課長などの使用人としての職制上の地位で、かつ常時使用人として従事している者です。
例えば、取締役営業部長や取締役総務課長などの役職の場合、役員ではある一方で、社内では部長・課長など使用人の地位で業務に従事しています。
中小企業の場合ではこうしたケースも時折みられます。
使用人兼務役員の場合には賞与の支給が認められています。
なお社長や会長、副社長・専務・常務などは使用人兼務役員となることはできません。
役員は会社法・法人税法などによりその定義は異なります。
その内容や役割を正しく理解して運用するとともに、役員報酬などの取扱いについては、後になって税務署から指摘を受けるようなことがないように、税理士等とも相談しながら進めてゆかねばなりません。
画像出典元:O-DAN
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