部長とは、部署の責任者であり、最終的な意思決定を行う管理職です。
同じ管理職である課長とは異なり、部長には、経営に近い立場での幅広い視点が求められます。
この記事では、気になる部長の役割や仕事・必要スキルなどについて、詳しく解説していきます。
課長との違いや、部長を育成していくうえでの注意点も紹介しているので、ぜひご参考ください。
このページの目次
部長とは会社内の役職の1つです。
部長は、部署のトップであり部署全体をまとめる役割があります。
部長は管理職の中でも上位に位置する役職です。
一般的には、取締役の次に当たるポジションであり、部長の下には、課長、係長と続きます。
部長には大きく3つの役割があります。
1つは「ヒト・モノ・カネ」の経営資源を管理することです。
個人で成果を上げるだけでなく、部署の人間を動かすことやお金やモノをどこにどれくらい配分するかを決めることで部署全体として成果をあげる役割です。
2つ目は将来利益を生み出す仕組みを作り出すことです。
既存のビジネスで利益を上げるだけでなく、将来的に利益を生み出す仕組みを構築する役割です。
3つ目は部署だけでなく、会社全体のことを考える役割です。部署の成果を上げることはもちろん、部長になると会社の経営に参画する場合も出てきます。
部長と同じ管理職として身近なのが課長です。
部長と課長は同じ管理職ですが、どのような違いがあるのでしょうか。違いをまとめると次のとおりです。
部長 | 課長 | |
管理する規模 | 10人~100人単位 | 一般的に10名以下 |
指示の出し方 | 方針を示す | 具体的な指示を出す |
現場との係わり方 | 現場とは直接かかわらない | 直接現場とかかわって共に仕事をする |
求められるスキル | 意思決定力、マネジメントスキル | 業務を遂行するスキル |
一般社員からすると、どちらも「管理する人」で似ているように見えることもありますが、具体的に行うこと、求められているスキルなどは全く異なります。
主なポイントについて具体的に説明していきます。
部長と課長では管理する規模が違います。
課長は多くの場合10名以下を統括する場合が多いですが、部長は10名以上から、多い場合だと100名以上を管理することになります。
部長と課長では仕事内容も違ってきます。
課長は多くの場合、管理職としてだけでなく現場に出るプレイングマネジャー的な役割をします。
現場で部下と共に会社の戦略を実行するイメージを持っていただくと良いでしょう。
一方部長は、プレイヤーより管理職の役割が強く、実行する立場ではなく計画する立場、経営する立場にあります。
現場社員と関わるのではなく、課長や係長をマネジメントすることで部署として成果をあげます。
さらに、部長は意思決定するという部分で課長と大きな違いがあります。
課長や係長では上司に相談することも多いですが、部長は部のトップなので相談できる相手もほとんどなく、自分自身で部署や会社全体におよぶ意思決定をしなければいけません。
それでは、部長の仕事内容はどんなものなのでしょうか?
「あの部長って何しているの?」「現場は忙しいのに部長が仕事していないようにみえる」といった声があがることもあるように、部長の仕事は非常に外から見えづらく、わかりづらいものです。
この章では、部長の仕事を分解してわかりやすく説明していきます。
部署のトップである部長は、部署全体を管理するのが仕事です。
管理=見るだけ?と思われがちですが、具体的には次のようなことを行っています。
部署全体に目を配り、環境づくりから、リスクマネジメントまで対応しているのです。
ただし、部長自ら1人1人を見るのは不可能・非効率なので、「課長を通していかに管理するか」が肝となります。
また、人望のない部長に管理をされてもメンバーはついてこないので、日頃の小さなコミュニケーションから信頼感を得ることも重要です。
部長は、部のトップでありながら、経営層とのパイプ役でもあります。
そのため、経営陣が決めた経営戦略を実行に移すことも重要な仕事です。
経営戦略は、方向性や目標値など大枠のデザインであることが多いので、それを部門としてどう実行すべきか、計画に落とし込むことが必要です。
そのうえで、その実行計画を課長やメンバーにわかりやすく伝達し、浸透させ、目標達成できるまで支援・管理を行うのです。
なお、部長は、上から降りてきた戦略だけではなく、時には自ら新規事業の立ち上げや改革を提案することも必要です。
部の顔でもある部長は、対外的な窓口・交渉をすることも仕事です。
社内で他部門と利害が相反した場合は、その調整を行います。
取引先、顧客とのコンタクトの際の最終責任者になるのも部長です。
また、対外的に問題がおきた場合は、部署メンバーの起こした問題は全て解決まで責任を持ちます。
部下を適切に評価し、さらに能力を発揮できるよう教育するのも部長の仕事です。
部長が評価するのは課長だけの場合もありますが、部署メンバーの評価の最終決定者は部長であることが多いです。
もちろん1人1人の日々の仕事を把握するのは不可能ですが、チーム単位、役割ごとに、どんな仕事をしていて、どんなパフォーマンスが出せていれば評価を与えるべきなのか基準をしっかりしておくことが必要です。
また、従業員のモチベーションをアップし、より良いパフォーマンスを発揮してもらうため、将来に向けての教育活動も重要です。
必要に応じて、1on1などで本人の意向を聞いたり、アドバイスなども行います。
部門全体を管理・統率する仕事をする部長にとって、必要なスキルとは何でしょうか。
求められる3つのスキルについて説明します。
部長は部署としての目標を達成しなければなりません。
そのためには、達成に向けての業務プロセスを設計し、ゴールまで導く力が必要です。これが業務マネジメント能力です。
業務プロセスの設計とは、役割と期日を決めるだけでなく、「PDCAサイクル」と呼ばれる、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の一連の流れを組み立てることが重要です。
そのうえで人員・経営資源・予算の配分を行い、進捗管理を行いながら目標を達成させます。
これらを成功させるには、業務設計に関する知識や、全体を俯瞰する力、判断力なども求められるでしょう。
部長は、その部署に属するメンバーが「よりよく働ける」ようにしなければなりません。
そのためには、採用から育成、配置、評価までトータルで人材をマネジメントする力が必要です。これが人材マネジメント能力です。
部長が大きく関わるべきポイントは、育成、評価の2つです。
まず、直属の部下になる課長の育成、また課長を通じてメンバー全体の育成をマネジメントします。
また、適切な評価を与え、個人のモチベーションの向上と、さらなる成長を促すことが必要です。
部門長として力のあるメッセージを出し、1on1などで日々の行動や成果をなるべく広く把握したうえで、俯瞰的・客観的・公平に判断を行う力が求められるでしょう。
部長は、その部署の最終責任者なので、あらゆる問題やトラブルの対応責任を負います。
そのためには、問題の把握や解決策の検討、対外的な交渉力、リスクを事前に減らす・防ぐ力などが必要になります。これがリスクマネジメント能力です。
部署には沢山のメンバー、取引先・利害関係先があるため、全体を管理するうえでトラブルは避けて通れません。
迅速・有効なトラブル対応も大切ですが、リスクを未然に防ぐ仕組み作りや教育も重要な役割です。
また、部内のハラスメントや超過労働などの労務リスクの管理も行い、健全な組織運営ができるよう注視しておきましょう。
一般社員より高い視点やスキルをもって仕事を行う必要のある部長は、誰にでもすぐになれるものではありません。
どんな人が部長に向いているのでしょうか、またこれから部長を目指したい、部長候補を育成したいというときは、何に注意したらよいのでしょうか。
前述のとおり、課長にはプレイングマネジャー的な役割があるため、「現場において優秀な人」であれば課長の適正は、ある程度自然と身に着く側面があります。
しかしながら、部長には、複数の課を束ねるための幅広い知識やマネジメント力が必要なため、優秀な課長がそのまま部長になれるわけではありません。
経営視点、組織管理の力などが、『新たに』必要となってきます。
マネジメント力に関するノウハウは業界・業種が異なってもある程度共通なので、研修ノウハウが社内にない場合は外部に委託することも一つの手です。
また、内部からの昇進で適切な人材が見つけられない場合は、部長クラスの採用を検討することも有効でしょう。
社員側のトップの位置に属する部長ですが、それと同時に、経営陣からの指示を直接受け、また報告・調整を行う「経営側」に属する側面もあります。
そのため、経営陣の指示を受けるだけではなく、自ら新規事業を提案したり、改革に着手する視点を持たねばなりません。
また、その際重要なことは、部長だから=それをしなければならない、と思うのではなく、「経営の視点で働けるのが楽しい」と自然に思える人物かどうかという点です。
やらされ部長のままでは、その部は成長・業績拡大することはありません。
もちろん全部長に理想的な動き方をしてもらうのは難しいですが、経営視点をより強く持った部長が複数いる企業の力は各段に強くなります。
その仕事が周りからわかりづらい『部長』。
課長の頃は、メンバーと一緒に奔走していたはずなのに、部長になったとたん、その距離が遠くなってしまったと感じることも多いのではないでしょうか。
また、部長の仕事は、現場に具体的な成果物が見えるわけではないので、あの部長「仕事してないんじゃないか」と思われたり、自身が若手のころ実際にそういった不満を持ったこともあるでしょう。
これは「上級管理職の孤独」とも言われ、特に部長以上になると感じやすい現象です。
しかし、もっと現場と近くなりたい、と課長を飛び越して現場に関わろうとしたり、仕事について直接の報告を無駄に多く求めてしまっては本末転倒です。
部長職の孤独は、『孤高の存在』となり部署運営をうまく行うために必要な手段なのです。
などの役割は、一歩引いた立場にある部長だからこそ成し得るのだと自覚しましょう。
なお、「うちの部長は仕事してない?」と疑念を感じている方は、部長は敢えて俯瞰する立場で、これまでこの記事で触れてきた沢山の仕事をしているのだということをぜひ知ってください。
部長と部のメンバーの関係性が良くなれば、その部の業績・働き方も上向きになることでしょう。
部長の年収は、どのくらいなのでしょうか?
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」では、部長の平均年収は約930万円でした。
また、同じ部長でも、中小企業と大企業では平均値が異なり、平成30年の調査では、
と、約370万円もの差があったそうです。
平成30年の調査の平均年収は552万3,000円なので、平均と比べるとかなり高くなります。
さらに、部長になるためには時間を要することも多く、厚生労働省の調査でも、部長職に就いている人の平均年齢は52.6歳でした。
また、勤続年数が長ければなれるというものではなく、全体の1割〜2割しか昇進できないとも言われています。
2019年の研究機関の調査でも、大学・大学院卒で定年前55-59歳の方のうち、最終的に部長職であった方の比率は17.3%だったそうです*。
部長以上を目指したいという方は、若手のうちから視野を広げて知識を得て、マネジメントスキルの研鑽にも努めていくことが必要でしょう。
*出典:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2019」
部長はよく聞く役職ですが、意外に仕事や役割について分かっていないものです。
部長の仕事や役割がわかることで会社全体や管理職の役割についても理解が深まります。
部長を目指す人や会社の組織や仕組みについて理解したい方の参考になれば幸いです。
画像出典元:Unsplash
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