人手不足が進む昨今、特に中小企業では新卒採用に苦戦している担当者の方も多いのではないでしょうか。
その理由として「大企業に比べて知名度が低い」「採用リソースが足りない」などが考えられます。
しかし有効な対策を講じれば、自社に適した人材を採用することは不可能ではありません。
そこで今回は、中小企業が新卒採用で実践すべきことや注意点、役立つツールやサービスについて解説します。
目次
はじめに大学新卒者の就活動向について詳しく見ていきましょう。

上記のグラフからもわかるように、大卒者の求人倍率は企業規模によって大きく異なります。
特に従業員数300人未満の中小企業では、コロナ禍で極端に低下した2021年以降、求人倍率は右肩上がりで、常に5倍以上が続いている状況です。
一方規模の大きな企業では、1倍前後と採用しやすい状況が続いており、中小企業の求人倍率と大きな差があることがわかります。
つまり中小企業では、新卒を募集しても応募者が少なかったり、内定を出しても辞退されたりするリスクが非常に高い状況です。
参照:リクルートワークス研究所 第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)

昨今では23年度を機に、大企業を志望する学生が増え始めています。
近年の著しい物価上昇や、実質的な賃金低下による経済的な不安から大企業を希望する傾向になっていると考えられます。
一方「やりがいのある仕事であれば中小企業でも良い」という学生も少ないわけではありません。
しかし、本音の部分では大企業に落ちた際の保険や面接練習のためといった動機で志望する例も多く、そのような学生は最終面接まで進まなかったり、内定を辞退したりする可能性が高いでしょう。

中小企業が新卒採用に苦戦する主な要因として以下の4つが考えられます。
それぞれ具体的にみていきましょう。
大企業に比べて中小企業はネームバリューが低いため、学生の就職候補になりにくいです。
認知されたとしても「名前を聞いたことがない」「何をしている会社かよくわからない」といった理由で敬遠されることが少なくありません。
知名度が低いというのは安心感が希薄で信頼性や将来性に不安を持たせるため、採用までこぎつけるのが容易ではないのです。
中小企業では、採用に必要な人材やコスト、時間が不足しがちです。
社員数が限られているため他の仕事とかけ持ちしたり、トップが自ら人材確保に動かなければならなかったりします。
新卒採用にあたっては、複数の適切な手法を併用しながら学生に合わせたきめ細やかなフォローを行う必要があります。
しかし、中小企業にとってその予算や時間の確保は難しいのが現実です。
中小企業では、新卒よりも即戦力となり得る中途採用をすることが多いです。
そのため新卒採用のノウハウが蓄積されていなかったり、遅れたりしている傾向にあります。
その結果学生へのアプローチや募集、面接といった採用フローが思うように進まないという状況に陥っている可能性があります。
たとえ採用できてもミスマッチにつながるリスクがあるでしょう。
大企業と比べて待遇面で見劣りする点も新卒採用を阻む要因です。
給与や福利厚生、研修制度といった雇用条件や仕事環境は、学生が就職先を決める重要なポイントになります。
特に近年は、人材確保のため大企業を中心に新卒の給与を大幅に引き上げるケースが増えており、中小企業にとってはますます不利な状況です。
中小企業が新卒採用にあたって実践すべき以下の5つについて、詳しく解説していきます。
まず自社に必要な人材の属性や特徴、条件などをできるだけ明確にします。
ターゲットがはっきりすれば、それに見合った募集方法も見えてくるでしょう。
広く網をかけて手当たり次第にアプローチするのは危険です。
リソースを浪費するうえ、ターゲットを無視して採用してもミスマッチが起きて早期退職につながるリスクがあります。
また中小企業の場合、大企業と比較すると採用枠は限られています。
そのため、応募者数は少なくてもニーズに合致した学生を確保し、確実に採用に繋げる視点が大切です。
自社に適した優秀な人材を採用するには、早い段階から学生とコンタクトを取ることが重要です。
早期に接触して自社の魅力や働き甲斐をアピールすれば、就職先候補にしてもらえる可能性が高まります。
アプローチ方法を変えることで、採用候補となる学生を増やせる可能性もあります。
例えばハローワークを多用している中小企業が多いですが、成果が乏しい例が少なくありません。
それより学生に人気の就職サイトを洗い出したり、SNS採用やダイレクトリクルーティングを試したり、社員や取引先を通じてリファラル採用を取り入れるのもよいでしょう。
都市部を中心とした採用活動は、大企業や企業数自体が多く応募者確保に苦戦する可能性が高まります。
一方で地方には、地元志向が強い学生や、やり甲斐があれば中小企業でも良いという人材も多いため、採用エリアを変えたり拡大したりすると成果が期待できます。
採用ターゲットを学生に限定しないことも大切です。
近年では、一旦入社したものの3年以内に離職する第二新卒の存在感が増しています。
第二新卒は社会人経験がある分、新卒と比べると即戦力になる可能性が高いです。
今後は少子化の影響でますます新卒を採用しにくくなる恐れがあるため、第二新卒までターゲットを拡大すれば採用の難易度が低くなると期待できます。

新卒採用は必ずしも利点ばかりではありません。
中小企業が新卒を採用する際の注意点を確認していきましょう。
新卒採用のデメリットとして、リードタイムが長期化する点が挙げられます。
「募集→応募受付→会社説明会やインターン→面接→合否通知→入社までのフォロー」という採用フローは一年以上に及ぶこともあり、中小企業にとってかなりの負担を強いられます。
また新卒の就活期間は、中途とは違い限定的です。
そのため、同時期に複数の企業から募集がかかったり、アプローチされたりします。
すると多くの企業の中に埋もれ、就職候補にしてもらえないまたは内定辞退などのリスクが生じるでしょう。
こうしたリスクを想定した採用計画を立てることが大切です。
費用対効果も無視できません。新卒の採用フローは長期化するだけでなく以下のようなコストもかかります。
新卒採用には社内のリソースを一定数割く必要があります。
また、採用ノウハウが社内に蓄積されていなければ、コンサルティングや採用代行など外部の力を借りなければなりません。
こうした人的コストが必要になることは念頭に置いておくべきです。
加えて手間と時間をかけて採用した学生が戦力になるには、さらなる時間と労力が必要になります。
以上のような事情をよく考慮した上で、どのような新卒採用システムが適切かを見定めなければなりません。
新卒採用に成功している中小企業の事例を3つ紹介します。
人材採用コンサルティングの同社は、従業員94名という規模にもかかわらず、毎年1万7,000人もの新卒応募者が集まる人気の中小企業です。
下記4点を実践していくことで、多数の応募者が集まり、採用成功につながっています。
中でもインターンシップに注力することでSNSでも良い噂が拡散され、応募者が拡大していったそうです。
また、第二新卒もリファラル採用しています。
社員全員がリクルーターとして自覚をもつことによって採用数が増えるだけでなく、社員自身が採用対象者に魅力を感じてもらえるように自己を磨き上げる姿勢が高まっています。
この影響で社内に前向きな空気が広がり、採用活動との相乗効果が生まれているそうです。
参考:1万7,000人の新卒がエントリーする会社に学ぶ地方の中小企業を元気にする人材採用術
同社は、鳥取県のIT受託開発・制作企業です。
リモートで都市部の大手企業の一次下請け案件を受託し、都市部と変わらない業務を行うことで就職希望者を呼び込んでいます。
具体的には、リファラル採用や自己応募と並行して新たに求職者と企業をマッチングするビジネスSNSを利用し、中途と新卒を募集。
とりわけ「地方創生」を積極的にアピールすると、関心を示す学生が多く、東京や大阪、北海道からも応募が集まるようになりました。
業種柄、若者向けにITを全面に出すのが一般的ですが、あえて「地方創生」にスポットを当てる作戦が奏功しました。
2017年までは1〜2名の新卒採用が、2019年に14名、2020年には21名と確実に拡大しています。
交通費を支給せずとも鳥取の本社まで面接に訪れる学生もいて、その意欲に驚いているそうです。
参考:鳥取県で年間40名以上の応募獲得。地方採用に一石を投じたWantedlyの採用術とは。
教育、人材マッチング、投資事業を展開する同社は、2020年の6月と8月の2回に分けて新規事業立案のインターンをオンラインで開催しました。
内容は、グループワークを行って最終日にプレゼンするというものです。
同社会長や、博報堂、ボストンコンサルティンググループなど有名企業出身者からフィードバックが貰えるというインセンティブを設けました。
しかも参加報酬5万円で、優勝チームには10万円賞金を授与しました。
これにより約30名の応募枠に3,800名のエントリーがあり、その63%が採用基準に合致していたそうです。
前年にオフラインで初めて開催したインターンには1,600名の学生が参加しましたが、その評判が口コミで広がり翌年の成果につながりました。
参考:エントリー数昨対比200%超え、通過率1%未満|ユナイテッドの超難関オンラインサマーインターンシップの仕掛けとは
参考:『1日完結選考』を地方でも実施|ユナイテッドの事例

ここでは、新卒採用に効果的な中小企業向けサービスを3つ紹介していきます。
新卒向け就職サイトは、就活中の学生が利用しているのでダイレクトに訴求できます。
インターンシップの募集、DMやスカウトメール、動画広告・バナー広告の掲載などさまざまなサービスがあります。
短期間で多くの学生との接点を増やせるため、母集団形成にも役立つでしょう。
大手から中小まで規模もさまざまで、大手の場合は競争率が高くなります。
中小規模のサイトなら中小企業の利用が多く、学生もそのつもりで閲覧するためマッチングしやすいメリットがあります。
また基本的に連絡や採用した人数によって料金が変わらない点は、中小企業にとって大きな利点です。
採用代行サービス(RPO)では、採用計画の立案に始まり、母集団形成、面接、結果通知、内定後のフォローなどをアウトソーシングできます。
中小企業の場合、新卒採用のノウハウやリソースが不足しているため、採用のプロに任せることでニーズに合った新卒人材を確保できる可能性が高まります。
採用業務に充てていた人手を他の重要な業務に回せる利点もあるでしょう。
自社内で採用システムを構築するよりコストを削減できるケースもあるため、中小企業にとってはさらにメリットが期待できます。
採用コンサルティングサービスは、自社の採用プロセスを分析の上、課題や具体策を明確にしてもらえるので成果が上がりやすくなります。
サービスによっては内定後の辞退を回避するための研修やフォローをサポートしてくれます。
通常は、新卒採用のトレンドや他社の採用状況、成功事例などを詳しく正確に知ることは困難です。
しかし採用コンサルティングサービスならこれらが可能になり、効率よく採用が進むため、コスト面でもメリットが期待できるでしょう。
中小企業が新卒採用する場合、どうしても大手企業に比べて苦戦を強いられます。
しかし新卒採用の成功は、ターゲットを明確にしたり、アプローチ方法を改善したりすれば決して不可能ではありません。
自社で無理してすべてを行わなくても、採用代行や採用コンサルティングサービスを上手く活用すれば飛躍的に成果が出ることもあります。
ぜひ自社にとって最適な新卒採用手法を確立してください。
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