最近ますます話題の逆求人ですが、みなさんは一体何が「逆」なのか、ご存知でしょうか。
それは、従来の企業側が募集をかける方法とは「逆」で、企業側からアプローチをかける手法だということを意味しています。
では、このように、企業が選ぶ立場から選ばれる立場へと逆転したことにはどのような意味があったのでしょうか?
この記事では、そんな逆求人の本当の意味や逆求人の実施方法まで、わかりやすく説明します。
売り手市場となっている昨今の労働市場の中で生まれた逆求人は、効率よく理想の人材と出会うための、言わば次世代の新卒採用スタイルです。
その特徴を押さえ、是非とも自社に取り入れていきましょう。
このページの目次
従来の新卒採用では、企業側が就活サイトなどに採用募集情報を流し、学生側が興味のある企業を選んで応募するという形式が一般的でした。
そのため、初めから高い認知度を持った大企業の方が学生を集めやすいことから、中小企業などは不利な立場にありました。
一方、それに対して逆求人は、学生側が自己アピールを行い、企業側が興味のある学生を選んでにアプローチをかけるという形式を取ります。
これにより、中小企業と大企業が同じ立場で優れた学生の採用機会を得られるなど、様々なメリットが生まれるのです。
全体の構図としては、リードマーケティングとABMの関係にも似ていると言えるでしょう。
ダイレクトリクルーティングとは、企業から学生に直接アプローチをかける手法のことを指します。
この採用手法は海外では一般的で、主にダイレクトリクルーティングサービスやSNSなどを用いて優秀な学生を見つけ、企業から個別にアプローチをかけます。
日本でも、ダイレクトリクルーティングサービスである、スカウト型求人サイトが徐々に増えてきており、ビズリーチなどが代表的です。
そして、このダイレクトリクルーティングの一種が逆求人と言えます。
一般に、ダイレクトリクルーティングは新卒採用も中途採用も含みますが、逆求人は新卒採用の形式を指します。
ですので、逆求人とは、言い換えれば「新卒ダイレクトリクルーティング」と言えるでしょう。
では、逆求人はどういった経緯で注目されるに至ったのでしょうか。その背景についてまとめます。
近年の少子高齢化による人材不足で、日本の就活市場は「超売り手市場」と化しています。
実際、2019年3月に厚労省と文科省が行った調査によると、大学生の就職率は97.6%となっています。
また、リクルートワークス研究所の調査によれば、2020年度卒の大卒求人倍率は1.83倍で、リーマンショック以降2番目の高さとなりました。
このように、新卒採用市場において学生側が強い立場となることで、学生が企業を選ぶ逆求人が注目されてきました。
昨今、多様な人材を積極的に受け入れることで企業の生産性が高められるという考え方が、様々な企業に広まっています。
一般に、このような考え方は「ダイバーシティ(Diversity)」と呼ばれています。
1990年代アメリカにおけるマイノリティの権力拡大運動に端を発するこの動きは、日本でも、2004年に経済同友会が人事・経営戦略としてダイバーシティを提起したことが一つのきっかけとなって広まりました。
このような中で、逆求人は、自社にこれまで来なかったような人材に対してアプローチ出来ることから、ダイバーシティに寄与するとして評価されることとなりました。
では、具体的な企業にとっての逆求人のメリットとは何なのでしょうか。
逆求人では、企業が選ぶ立場となるため、採用確度が高く理想人材により近い就活生に、リソースを集中させてアプローチ出来ます。
つまり、従来的な選ばれる立場の採用スタイルでは、全員への一様な対応が要求されましたが、逆求人では自社に適した人材を囲い込むことで、より確実に獲得することができるのです。
近年、新卒の高い離職率が問題となっており、多大なコストを投下して獲得した人材の3割近くが3年以内に退職してしまうと言われています。
そのような状況下で、企業と就活生のミスマッチを大きく減らせる逆求人は、非常に有用な採用スタイルであると言えるでしょう。
大量に候補を集めて絞り込むという従来の新卒採用では、多く募集を集めるための広告費に大きなコストがかかり、集めた応募者を複数段階に分けて絞り込むのにも膨大な時間的コストがかかります。
一方、逆採用では、認知拡大とスクリーニングの手間が省けるため、採用業務の費用と時間が大きく削減できることになります。
特に、一般的な認知度が相対的に低く、応募者獲得に高いコストがかかっていた中小企業などにとっては、大きなメリットとなるでしょう。
従来型の採用では、集まる人材に「自社に興味がある」という前提条件が付いたため、性格や能力に偏りがありました。
しかし、逆求人では、自社を知らない人材も選択肢に含められるため、以前より多種多様な人材と出会うことが出来ます。
また、自己アピールを行う学生の中で目立つ存在は、優秀かつ意欲的である可能性が高いという側面もあります。
しかし、逆求人も万能という訳ではなく、いくつかの注意すべきポイントが存在します。
各企業の採用基準がどれだけバラけていても、やはり優秀な人材は引く手数多となり、激しい競争が起こります。
特に、昨今では大企業も逆採用を導入しつつあるため、従来型採用と同様に、ブランド力のある大企業に対して不利な戦いを強いられることもあります。
そのため、本当に求める人材が確保できなかったり、少数の人材に多大なコストをかけてしまう可能性があることは頭に入れておくべきでしょう。
前項と通ずるところでもありますが、逆採用では、希望の人材に目をつけるだけでなく、積極的に確保する必要があります。
そのため、従来の説明会などで実施していた以上の、魅力的な自社アピールを用意する必要性があるでしょう。
初めに選ぶ立場なのは企業側ですが、最終的に選ぶ立場になるのはやはり学生であることを忘れてはなりません。
候補者を絞るのと選ぶのでは大きく違うため、新たな人材に求める要素を一層ハッキリさせる必要があります。
採用基準が曖昧なまま声をかけていては、逆採用の有用性を活かすことが出来ません。
どのような性格が合うのか、どのような能力が必要なのか、どのような自己実現欲求を満たしてあげられるのか、丁寧に明文化した上で逆採用に臨みましょう。
逆求人を行う方法は、大きく2つあります。
1つ目は、逆求人型就活サイトです。利用の流れは次のようになります。
サイト上に登録された学生プロフィールの中から、自社の求める人材を検索し、選んでいきます。
企業は、学生の自己PR内容や顔写真を見て、どんな人材かを判断することになります。
また、サイトによって細かい設定は異なりますが、スキルや資格、インターン実績などの項目による絞り込み検索も可能です。
企気になる学生を見つけたら、面談などのオファーをかけることができます。
オファーをかける際は、テンプレートなメッセージではなく、選んだ理由など学生に合わせた内容を盛り込むと、興味を持ってもらえます。
ちなみに、オファーの「開封率」や「承諾率」を公開しているサイトもありますので、必要な場合はサイト選びの際に注意しましょう。
学生からオファーの承諾を受けたら、採用試験や採用面接に移行します。
直接会ってコミュニケーションを取り、採用条件に合致していることを確認出来れば、内定を出すことになります。
ただ、優秀な学生は複数の内定を獲得ことが多いので、内定後のフォローなども重要となってきます。
二つ目は、逆求人イベントです。
逆求人イベントは、一般的な合同説明会などとは逆で、学生がブースを構え企業が出向く形となります。
まずは、企業と学生との顔合わせが行われます。
全体で顔合わせをする場合と、事前に登録されたプロフィールを見て企業が学生のブースに足を運ぶ場合があります。
ちなみに、逆求人サイトを通してイベント前にアプローチをかけてしまうというテクニックもあります。
企業は、顔合わせの印象やエントリーシートなどを基に、面談を行いたい学生を選びます。
人気の学生がいた場合は、抽選となることもあります。
30分程度の時間で、個別に面談が行われます。ここで学生によるプレゼンや質疑応答が行われる場合もあります。
形式ばった対応は学生を委縮させるため、笑顔やアドバイスにより親近感を演出することでより印象に残りやすくなるでしょう。
企業は気に入った学生に声をかけ、採用試験や採用面接のアポイントを取ります。
イベントによっては、そのまま会場で採用面接が行える場合もあります。
ここでは、よく使われている逆求人型就活サイトを5つご紹介します。
公式サイト:https://campus.doda.jp/enterprise/business
●オファー開封率80%
●学生満足度*が2年連続No.1で、Z世代の現役学生から高い支持を得ている
*2021/ 2022年 オリコン顧客満足度®調査 逆求人型就活サービス ランキング
●登録学生にベネッセのオンラインキャリア講座でキャリア教育を実施している=優秀な学生に出会える
「doda(デューダ)キャンパス」は、大学1~4年生までの幅広い学生データベースを保有する国内最大級規模の新卒向けダイレクト・リクルーティングサービスです。
(株)ベネッセホールディングスとパーソルキャリア(株)が2社の強みを活かすために設立した合弁会社によって運営されています。
料金プランは、定額制と成功報酬制が用意されているので、自社の採用スタイルに合わせて選択できます。
企業情報の掲載では、作成フォローや配信ターゲット設定のアドバイス、掲載後のふりかえりや月次レポートの共有、効果改善策の提案など、採用成功まで継続的なサポートで伴走してくれるので、安心して始められるでしょう。
公式サイト:https://www.offerbox.jp
●オファー開封率87%
●入社した学生の77%が第一志望以外の業界へ
●月間アクティブユーザーを公開
OfferBoxは、株式会社i-plug(アイプラグ)が運営する逆求人サイトです。
OfferBoxの特徴は、学生が一度に受け取れるオファー数と企業が送れるスカウト上限が決まっていることです。
企業側には学生を慎重に選ぶインセンティブが働き、学生側には届いたオファー全てに目を通すインセンティブが働くため、両者のコミュニケーションが発生する可能性が高まります。
また、OfferBoxを利用して就職した学生のうち77%の就職先が、もともと知らない企業だったというデータもあり、中小企業にも有用なサイトと言えるでしょう。
公式サイト:https://kimisuka.com
●登録学生数:77,000人
●プラチナスカウト開封率79.1%
●他社の選考状況がわかる
キミスカは、株式会社グローアップが運営する逆求人サイトです。
本気度の高さに応じて、「プラチナ」>「本気」>「気になる」という3種類のスカウトを使い分けることができ、プラチナスカウトの開封率は79.1%となっています。
また、学生の他社選考状況が見られることも大きな特徴の1つです。
「○○社の二次面接まで通る人材なら、自社も一次面接は免除してプラチナスカウトを打ってみよう!」というような戦略が立てられます。
公式サイト:https://jobrass.com/gakusei
●就活生の4人に1人が登録中
●なるべく多くの学生と出会いたい「オファープラン」
●採用コストを極力抑えたい「新卒紹介プラン」
JOBRASS新卒紹介は、全国に人材サービスを展開する株式会社アイデムが運営する逆求人サイトです。
約100,000人という登録者数の多さに加え、オファープランと新卒紹介プランという2つの採用プランから選択できるということが大きな特徴です。
オファープランは、「使えるコンピュータ言語」や「希望勤務地」など、条件を細かく設定しながら、自ら学生を探してオファーを送るプランです。
一方、新卒紹介プランは、キャリアコンサルタントに学生の選定や日程調整などを委託し、厳選された学生を紹介してもらうプランです。
公式サイト:https://iroots.jp
●スカウト開封率82%
●3つの条件をクリアした企業のみ登録可能
●「主体性」「変革性」など37の特性を数値化する適性診断
iroots(アイルーツ)は、東証一部上場の大手人材会社エン・ジャパン株式会社が運営する逆求人サイトです。
他のサイトと違うのは、企業が登録する際「本業公益性」「成長性」「透明性」に関する3つの条件を満たす必要があることです。
これには、オファーをかけた企業に対する学生側からの印象をアップする効果があります。
また、これまでに6,000社・50万人以上の使用実績を持つ独自の性格・価値観診断を使用しており、周囲を変える影響力を持つ人材(変革人材)の出現率が通常マーケットの2倍と言われています。
逆求人を行うことができる代表的なイベントについても紹介します。
公式サイト:https://www.studenthunting.com/gf
●ターゲットにピンポイントで会いに行ける
●1対1で話せてじっくり自社の魅力つけができる
kITエンジニア・総合職・グローバルの3つのジャンルごとに開催
逆求人フェスティバルは、株式会社ジースタイラスが運営する逆求人ナビ主催の逆求人イベントです。
IT・総合職・グローバルと、はじめから業種ごとに区別されるため、より希望にマッチした人材と出会える場となっています。
また1対1で30分ほどかけてじっくり面談できるため自社の魅力を伝えやすく、1日で効率よく採用活動を行うことができます。
実際に逆求人を導入した企業の例をご紹介します。
3人に1人が最終選考に。採用目標も160%達成。 ー理想科学工業株式会社/採用担当宮村さん
今までアプローチできていなかった学生と会えています。
オファー承認後の初回の接点で面談を実施しています。その面談の際に、当社のことを事前に知っていたかと尋ねてみると、ほとんどの学生が知らなかったと答えます。
また、OfferBoxの登録学生が十分にいることから、当社からアプローチしたい学生に確実にオファーを送ることができているため、ターゲット学生とのミスマッチも以前の採用手法と比較して、かなり解決できています。
(OfferBox活用事例より引用)
逆求人の導入によって、新卒採用における母集団がリッチになることがわかる好例です。
特に、大手企業以外にとっては、自社を認知していない学生にもアプローチ出来ることが、とても大きなメリットになるのです。
また、この企業では、ターゲットの選定に適性検査を活用、さらに大手企業に先手を打つために利用時期を早めるなどの工夫を行い母集団の形成に成功したようです。
適性検査をターゲット選定に最大限活用するためには、あらかじめ高評価者の明確な基準を設定しておくことが必要です。
採用の多様性が重要 ーミニストップ株式会社/採用担当浅田さん
これまでは接客等に興味を持っている学生の方からの応募が多かったですが、志望業界は異なるもののマーケティングやプロモーション等に興味を持っている学生の方とお会いできるようになりました。 この点で採用の多様性が重要だと強く感じました。
また、ミニストップ店舗は国籍、年齢、性別を問わず、様々なお客様が来店されます。そのためダイバーシティの推進が不可欠です。
キミスカご利用企業様の声より引用“
こちらは、ダイバーシティの推進を志向して逆求人を導入した事例です。
就活サイトでは、有名な企業ほど学生側の一方的なイメージが強く、応募者の希望職種にも偏りが出やすくなります。
逆求人により様々なタイプの学生にアプローチをかけることで、ダイバーシティの推進にもつながります。
逆求人とは、企業側から学生にアプローチをかける、新しい形の採用スタイルです。
企業側と学生側双方にメリットが大きいこの手法は、今後も利用者が増えていくことが予想されます。
一般的には未だ就活サイトの利用が多いですが、だからこそ、いち早く逆求人を導入することで先手を打てると言えるのではないでしょうか。
是非とも、あなたも逆求人の導入を一度検討してみては?
画像出典元:Burst、o-dan、写真AC、各逆求人就活サイト
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