みなさん、ABMって何だかご存知でしょうか。
ABMとは、「アカウントベースドマーケティング (Account-Based Marketing)」の略で、アメリカで戦略化されたBtoBマーケティングにおける概念の1つです。
実は、この概念自体はさほど新しいものではありません。
しかし、これを用いたマーケティング戦略は、ROIを高める効果が非常に強いということで、日本でも注目されつつあります。
そこでこの記事では、ABMの概念自体から、ABMの実践方法まで、わかりやすく説明していきます!
あなたの企業に本当に適しているのは、実はABMなのかもしれませんよ……
このページの目次
先述の通り、ABMとは、「アカウントベースドマーケティング (Account-Based Marketing)」の略称です。
ここで言う「アカウント」とは、おおよそ企業のことを指しています。
そのため、全体をざっくり和訳すれば、「企業単位で行うマーケティング 」ということになります。
ただ、これだけでは定義が広くてわかりにくいので、次に、対概念であるPBMについて説明します。
PBMというのは、ピープルベースドマーケティング (People-Based Marketing)の略です。
恐らく耳慣れない言葉かと思うのですが、それもそのはずで、今やPBMとはあまりにも一般的なことなので、取り立てて話題になることはありません。
こちらもざっくり和訳すれば、「消費者単位で行うマーケティング」ということになります。
これはすなわち、個人個人の興味関心に寄り添ったマーケティングのことです。
簡単な例を挙げれば、Amazonの商品おすすめ機能や、Googleなどのリターゲティング広告などがそれに当たります。
消費者の情報チャネルや購買行動が多様化する中で、One to Oneマーケティングを可能にするものとして、今では多くの人にとって当然の技術となりつつあります。
で、このような手法をBtoBマーケティングにも使える戦略へ落とし込んだのが、昨今日本でも普及しつつあるリードマーケティングです。
リードマーケティングとは、上記のような流れで行われる、徹底的に効率化されたリード管理の下でのマーケティングプロセスのことです。
この手法には、全ての見込み客を、一貫した機械的なマーケティングプロセスに乗せることで、膨大な数でも非常に効率的に処理できるという強みがあります。
詳しくは以下の記事をお読みください。
さて、このリードマーケティングには、以下の2つの特徴があります。
これは同時に、PBMの特徴でもあります。
消費者の行動からその興味関心を読み取り、その段階に応じたアプローチを仕掛けます。
また、この読み取り処理は全体に一律のもので、だからこそ高い効率性を保つことが出来ます。
BtoCマーケティングから生まれた手法であることもあり、扱う見込み客の多さを志向しています。
そのため、より多くの消費者に届くような認知拡大戦略を用い、たくさんの見込み客を獲得することが出発点となります。
また、これは言い換えれば、インバウンド・マーケティングであるということになります。
ざっくり言えば、選ぶのではなく選ばれる立場で市場に臨むのがこの手法であるということです。
これらの特徴が故に、リードマーケティングは強固な効率性を発揮します。
しかしながら、これらの点を裏返すと、リードマーケティングの負の側面が現れてくるのです…。
リードマーケティングの弱点は、大きく3つあります。
リードマーケティングでは、効率化のために全ての見込み客を一律の基準で評価すると言いました。
そのため、その基準はどうしても客観的な行動記録が重視される傾向にあります。
もちろん、見込み客の属性的なデータも組み込まれてはいますが、限界があるため、大きな利益を生むと見込まれる顧客も切り捨てられる可能性があるのです。
リードマーケティングでは、出来るだけ多くの見込み客を獲得し、その全てに一律のアプローチを行います。
コンバージョン可能性や見込み利益に基づく重み付けは行われますが、結果的に費用対効果が悪くなるような案件も受け入れるため、そこには余剰コストが増大する可能性が存在します。
悪く言えば、リードマーケティングは少し無駄の多いマーケティング手法ではあります。
リードマーケティングにおいて、各部門の評価指標(KPI)はそれぞれ異なってきます。
例えば、マーケティング部のKPIがリード獲得数で、営業部のKPIが契約数だったとしましょう。
このとき、マーケティング部にはとにかく多くのリードを営業部に渡すインセンティブがある一方、営業部はより確度の高いリードを求めています。
そうすると、営業部が、マーケティング部は確度の低いリードでも引き渡してくると考え、営業部のリード無視率が上がり、結果として組織間不和が生じる可能性があるのです。
実際に、マーケティング部と営業部の間に軋轢があるというのは、ある話ではないでしょうか。
これらを踏まえて言えば、リードマーケティングとは、「大きな仕込み罠による狩り」に近いものと言えるでしょう。
多くの獲物を受動的に狩れる一方で、最終的に手に入れる獲物を選ぶのは困難です。
こうして見てきたように、実はリードマーケティングも万能というわけではありませんでした。
そして、そこで生まれてきたのがABMなのです。
ABMというのは、先述のリードマーケティングとは非常に対照的なマーケティング手法です。
というのも、リードマーケティングは見込み客を待つ姿勢のインバウンド・マーケティングでしたが、ABMは狙いをつけた顧客を掴みに行く、アウトバウンド・マーケティングなのです。
つまり、ABMというのは、
「理想的な顧客を自社の側から選定し、積極的にアプローチをかける手法」
なのです。
この手法のメリットは、大きく3つあります。
これが最も大きなメリットと言えます。
ABMの場合、必ずしも相手企業側が初めから自社に興味を持っている必要はないため、認知拡大戦略はそれほど要しません。
取引が始まった後も、対象の企業にリソースを集中させるため、取引コストを節約出来ます。
また、優良顧客を選んでいるわけですから、当然その利益は増大します。
ROI=効果÷費用であるわけですが、
費用…広告費や、取引先が減った分のコストが下がる
効果…優良顧客を選定するため、利益が上がる
というわけで、ROIは非常に大きく高まるのです。
リードマーケティングでは、非常に多くの案件を取り扱います。
そのため、汎用性を持たせる必要があり、完全なOne to Oneマーケティングの実現は不可能です。
一方、ABMでは、取引先を絞り込むため、顧客にピッタリと合わせたパーソナライズが出来ます。
ある程度の使い回し感のあるメールと、明らかに自分向けに書いてくれたメール、どちらが読む気になるかは自明でしょう。
先ほど、リードマーケティングではマーケティング部と営業部の間に軋轢が生まれうると話しました。
しかし、ABMでは、始めに顧客を選定した後は、マーケティング部と営業部が協力して、同一の取引先にアプローチします。
ここでは、目先の優良顧客を口説き落とすという共通の目的が生まれるため、組織間の摩擦が発生することは少ないでしょう。
PBM≒リードマーケティングと対比することで、ABMの構図が非常にわかりやすくなったように思います。
この手法を狩りに例えるのであれば、「1匹に狙いを定めた集団的な狩り」と言えるでしょう。
ただ、ここまでで感じた方もいるかと思いますが、実はこの概念は特に新しいものではありません。
むしろ、特定の企業と濃厚な関係を持つことの多い日本の企業にとって、非常に馴染み深い考え方と言えるでしょう。
では、どうしてABMという手法が注目されるようになったのでしょうか。
確かに、ABMというのは昔からある概念ではありました。
実際、例えば、営業部隊による飛び込み営業だって、ABMと呼べないこともないでしょう。
それが注目を浴びるようになった最も大きな理由は、データ解析・統合システムの大幅な進歩です。
ABMとは、大きい利益が見込めるいくつかの顧客に対して、自社の大幅なリソースを費やして行う手法です。
そのため、いくら当たればデカいとはいえ、ハズレが続けば結局ROIは下がってしまい、本末転倒です。
でも、現代の先進的なデータ処理ツールを使えば話は別。
取引の確度を大きく引き上げることによって、ABMは、机上の空論から効果的なマーケティング手法へ昇華したのです。
ただ、当然ABMも万能の手法ではないので、企業によって向き不向きがあります。
一体、どのような企業にABMが適しているのでしょうか。
ABMは、少数の優良な顧客を相手取るマーケティング手法です。
そのため、ABMが効果を発揮するのは、
①主に大手の重要顧客を非常に少数だけターゲットにする場合
②似たような特徴を持つ非常に狭い企業群をターゲットにする場合
となります。
①の例としては、上位30社の小売企業が最適な場合、②の例としては、特定の規模の病院が最適な場合などが挙げられるでしょう。
逆に、多くの顧客数を必要とするような場合には、ABMは不向きであり、リードマーケティングの方が適していると言えます。
ABMとは何なのかがわかったところで、次に、実際のABMの行程を見ていきましょう。
まず初めに、どの企業を選ぶのかを決めなければなりません。
この行程は、企業によって事情が異なるため、選び方はそれぞれです。
ただ、その基準はいくつかあるので、ご紹介しましょう。
取引先を絞る分、得られる報酬は大きなものでなければ、割りに合いません。
いくら最新の技術で売り込むとはいえ、勝ち目のありそうな相手を選ぶべきです。
案件ごとの利益が大きくても、回転数を上げた方が業績は上がります。
戦略的に重要な企業をモノにした方が、その後の事業展開が優位になるでしょう。
既に教育済みのユーザーを、リソースを集中させて競合から奪いましょう。
どの企業にするのか決まったら、次はその企業についての情報収集です。
まずは、自社のデータベースに情報がないか調べてみましょう。
もし以前にセミナーに訪れていたりすれば、興味関心のレベルが少し高いところからスタート出来ます。
また、当該企業の意思決定者の把握も重要です。
リード先行であれば、取引相手を人単位では選びにくいですが、ABMではこちらからある程度決め打ちでアプローチできます。
初めから意思決定者とコンタクトを取ることで効率よく取引を進めましょう。
他にも、当該企業の財務状況など、サービスのパーソナライズの精度を上げるためにも、より多くの情報を集めておくと良いと思います。
ここからは、一般的なリードマーケティングと似たような手順を踏みます。
リードマーケティングでは、ある程度広いペルソナを仮定して購買シナリオを作ります。
ですが、ABMの場合は対象企業が定まっているため、より具体的なカスタマージャーニーが組み立て可能でしょう。
これは、リードマーケティングの場合と全く同様です。
提供するコンテンツを決めて、作ったカスタマージャーニーの各ステージと紐づけていきます。
ここまで下準備が済んだら、いよいよ取引が開始されます。
予め組んだ計画に従って、マーケティング部・営業部ともに協力して取引に臨みましょう。
以上が、実際のABMの行程です。
その利点をしっかり把握していれば、手順自体はさほど難しいものではありません。
ただ、1つ見落としてはならないポイントがあります。
それは、これらの行程にはデジタルツールが必要不可欠であるということです。
では、最後に、ABMのためのデジタルツールをご紹介していきましょう。
とは言っても、現状日本にあるツールの中で、ABMに適したツールは多くありません。
その中で、最も有名かつ使いやすいのが、「FORCAS」です。
ABMの場合、リードマーケティングとは違い、主体的に顧客企業を選定します。
そのため、一般的なMAツールのように入力したデータを処理するだけでなく、予め市場に出ている企業の情報がデータベースに備わっている必要性があるのです。
その点、「FORCAS」には約141万社の企業情報が入っており、そのデータを元にターゲット企業を選定する機能までついています。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
また、実際の利用者の声が聞きたい方は、以下の記事もご参照ください。
以上、ABMの概要から実践までをまとめてきました。
ご説明した通り、ABMは非常に効果的な手段ですが、同時に、向き不向きが分かれる手段でもあります。
是非、みなさまの企業でも一度、ABMの導入を検討してみては?
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