スマホゲームや比較サイトの企画・開発・運営を行う「エイチーム」の決算を見ていきます。
2020年7月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し2桁減収減益となっています。特に利益に関しては計画を大きく下回って推移していますが、下期偏重型であるため計画どおりとのこと。
減収となった主な要因は、スマホゲーム不振が続いているため。既存ゲームの不振に加え、新たなヒット作も生まれず、厳しい状況が続いています。
利益については、新規協業ゲーム開発コストの費用計上及びライフスタイルサポート事業の新規事業への投資拡大が響き、前年同期比で大幅な減益となっています。
セグメント別の業績をもう少し詳しく見ていきましょう。
比較サイト・情報サイト等のウェブサービスを展開するライフスタイルサポート事業は、売上高は106億6,900万円(前年同期比2.9%増)、セグメント利益は9億5,200万円(前年同期比25.9%減)と売上高は微増となったものの、利益は2桁減益に。成長が鈍化しています。
売上高が微増にとどまった要因は、カードローン総合検索サイト「ナビナビキャッシング」及び車査定・車買取サイト「ナビクル」の利用件数減少のほか、引越し周辺サービスとして展開していたエアコン販売のサービス撤退等によるものです。
セグメント利益は、新規複数のサービスにおける投資費用が先行した結果、前年同期比で大幅な減益に。新規サービスが立ち上がってきているものの、売上寄与は限定的です。
スマートデバイス向けゲームアプリを提供するエンターテインメント事業は、売上高は41億100万円(前年同期比43.4%減)、セグメント利益は2億4,000万円(前年同期比72.8%減)と大幅な減収減益に。
一部の既存ゲームが年末年始イベント好調だったことにより前四半期比で増収となったものの、全体では引き続き減収傾向にあります。
利益については、マルチデバイス対応でグローバル展開を見据え新規開発中の大型IPゲームの開発コストを費用計上したため、前年同期比で7割減と大幅な減益となっています。
自転車通販サイト「cyma -サイマ-」を展開するEC事業は、売上高は12億4,300万円(前年同期比36.5%増)、セグメント損失は1億400万円(前年同期は1億3,100万円の損失)と増収とはなったものの、赤字が続いています。
エイチームは1月24日、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社と、全世界配信予定のスマートフォン向けゲーム『初音ミク-TAP WONDER-』を開発すると発表。なお、本ゲームはマルチデバイス展開ではありません。
クリプトン・フューチャー・メディアは本社を札幌市に置き、効果音やBGMのダウンロード配信や、歌声合成ソフトウェア「初音ミク」の開発などを行っています。
リリースは、2020年春頃を予定。
ゲームの開発や新規事業への投資拡大を経て、再び成長軌道に乗ることができるか今後の動向に注目です。なお、通期の業績予想に変更はありません。前期比で減収、すべての利益項目で2桁減益となる見込みです。
画像出典元:「株式会社エイチーム」決算説明資料
2020年7月期第1四半期の業績は、前年同期に対し減収減益、すべての利益項目で7割減となっています。大幅な減益となっていますが、季節要因等により下期に利益が偏重するため、業績予想に対しては計画通りに進捗しているとのこと。
減収となった主な要因は、既存ゲームアプリの不振によりエンターテインメント事業の売上高が前年同期比38.7%減と大幅な減収となったことによるもの。一方、EC事業はオペレーションの改善に加え、消費税増税前の駆け込み需要の影響もあり、前年同期比で24.8%増となっています。
営業利益は、エンターテインメント事業において新規開発費用を計上したこと、ライフスタイルサポート事業において新サービスへの先行投資を行ったこと、EC事業で赤字が続いていること等により前年同期比で大幅な減益に。
なかでも、エンターテインメント事業のセグメント利益は前年同期比84.1%減と大幅な減益となっています。
なお、ライフスタイルサポート事業は前年同期比で増収となったものの前四半期比で減収となっていますが、これはエアコン販売など繁忙期需要からの反動減によるものです。
今期より、ライフスタイルサポート事業において、サブセグメント区分を「デジタルマーケティング支援ビジネス」と「プラットフォームビジネス」の2つに変更。
デジタルマーケティング支援ビジネスではオウンドメディア等を通じて提携事業者へ見込顧客を送客し、プラットフォームビジネスではアプリケーションやウェブサイトなどを通じて情報を集めた「場」を提供。
プラットフォームビジネスは現在、女性向け体調管理アプリ「Lalune(ラルーン)」やプログラマのための技術情報共有サービス「Qiita(キータ)」等、ヘルスケア・エンジニア領域においてプラットフォームを展開しています。
ライフスタイルサポート事業において、プラットフォームビジネスの売上高が占める割合はまだ小さいですが、今後拡大させていくとしています。
なお、通期の業績予想に変更はありません。新規事業への投資拡大、新規協業ゲーム開発コストの計上により前期比で大幅な減益となる見込み。新規ゲーム開発パイプラインは、スマホカジュアル1本、大型タイトル1本、新規タイトル1本の3本で、スマホカジュアルは近々発表予定とのことです。
画像出典元:「株式会社エイチーム」決算説明資料
2019年7月期通期の連結業績は、前期に対し減収、利益面ではすべての項目で2桁減益となっています。
セグメント別に見ると、ライフスタイルサポート事業は過去最高の売上と利益を達成したものの、エンターテインメント事業はスマホゲーム失速で大幅な減収減益、自転車に特化した通販サイトを運営するEC事業は赤字が続いています。
概ね予想通りに着地しているとはいえ、6月に大幅に下方修正された業績予想に対してのものです。
【グラフ】連結業績推移
営業利益率は、前期比4.9ポイント低下の7.6%と悪化しています。
株価は、6月に業績予想を下方修正後、急落しましたが、今期も大幅減益となる見込みであることを受け、決算発表後に再び急落しています。
エイチームの株価推移画像出典元:SBI証券
セグメント別の業績を詳しく見ていきましょう。
【グラフ】セグメント別売上高・営業利益推移
ライフスタイルサポート事業では、比較サイト・情報サイト等のウェブサービスを展開しており、サブセグメントとして、引越し関連事業、自動車関連事業、ブライダル関連事業、金融メディア事業、その他があります。
新規先行投資を行いながらも、過去最高の売上高・セグメント利益を達成。好調です。
サブセグメント別の売上高は、自動車関連が前期比で横ばいとなっていますが、そのほかは堅調に推移しています。
【グラフ】四半期推移
好調なライフスタイルサポート事業ですが、今後はサブセグメントを見直し、「デジタルマーケティング支援ビジネス」と「プラットフォームビジネス」の2つに分けるとのこと。
エンターテインメント事業では、スマートデバイス向けゲームやツールアプリの企画・開発・運営を行っています。
2018年10月に新規ゲームアプリ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト –Re LIVE-」をリリースしたものの、既存の主力ゲームアプリ「ヴァルキリーコネクト」や「ユニゾンリーグ」等が減衰し、既存ゲームアプリ全体の売上減少分を十分には補えず、前期比で大幅な減収減益に。
国内スマホゲーム市場は成長が鈍化する一方で、開発費は高騰しているという背景を踏まえ、今後はスマホゲーム専業から脱却し、マルチデバイス展開でグローバル展開を狙っていくとのこと。
一時は収益の柱だったスマホゲームが、今や足を引っ張っている状態。この現状をどうやって打破していくのか、注目です。
EC事業では、東海、関東、関西3カ所に物流倉庫を構え、完全組立自転車を届ける自転車専門通販サイト「cyma-サイマ-」を展開しています。
運営の最適化に向けた体制整備を優先した結果、前期比で減収、赤字も解消されませんでした。
自動化のためのシステム投資を実施し、今期・来期は赤字となる見込みですが、2022年7月期には黒字となる見込みです。
2020年7月期の連結業績は、前期に対し減収減益、特に利益面では大幅な減益となる見込みです。
ライフスタイルサポート事業において新規事業への投資拡大、エンターテインメント事業において新規協業ゲーム開発コストの計上により大幅な減益となる見込みです。
今期のみの一時的な費用や投資拡大とのことです。
画像出典元:「株式会社エイチーム」決算説明資料
2019年7月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益となりました。
ライフスタイルサポート事業は好調に推移したもものの、エンターテインメント事業とEC事業は予想を下回って推移しました。
大幅な減益となった主な要因は、ライフ事業における新規サービスへの先行投資、及びエンタメ事業における利益寄与の減少によるものです。
特別損失4億3,200万円を計上したことにより、最終利益は11億円に。営業利益率は、前年同期比5.6ポイント減の7.8%となりました。
【グラフ】売上高・営業利益の推移
エンタメ事業は、既存ゲームアプリの不振が続き、2018年にリリースした新規ゲームアプリ「少女☆歌劇レヴュースタァライト -Re LIVE-」も伸び悩みました。
EC事業の自転車専門通販サイト「cyma(サイマ)」は、繁忙期の3月は単月で黒字を達成しましたが、通期での黒字化は未達となる見通し。
一方、ブライダル関連事業は、2016年にサービス名称を「すぐ婚navi」から「Hanayume(ハナユメ)」へと変更後、認知度が向上し、売上高が大幅に増加しました。
費用面においては、エンタメ事業の広告費用は大幅に抑制しましたが、ライフ事業の主要サービスのプロモーションを強化。また、人材獲得や人材育成を強化しているため人件費が増加しています。
エンタメ事業とEC事業が予想を下回って推移していること、「三国BASSA!!」に係る開発費等のソフトウェア資産を中心に4億3,200万円の特別損失を計上したことにより、今期の業績予想を下方修正しました。
新規ゲームの開発に向けた人員を増加しているとのことですが、新作リリースの予定は今のところありません。
画像出典元:「株式会社エイチーム」決算説明資料
2019年第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益となりました。エンターテインメント事業とEC事業の売上は減少しましたが、ライフスタイルサポート事業が好調に推移し、全体では増収となりました。
営業利益は、既存ゲームアプリの不振と新規事業への先行投資が響き、大幅な減益となりました。上期においては、8つの新規サービスを立ち上げました。
費用面では、人員増に伴い人件費・採用費が増加しました。
【グラフ】業績推移と進捗率
業績進捗率は上期としては一見低いように見受けられますが、ライフスタイルサポート事業とEC事業の繁忙期が例年第3四半期であるため、下期での収益貢献を上期より多く予想しています。
エンターテインメント事業の売上高構成比は41.7%。業績は以下のとおりです。
2018年10月にリリースした新規ゲームアプリ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」が好調に推移し、売上回復のけん引役となりました。
一方、既存ゲームアプリの売上が減少したため、エンターテインメント事業は前年同期比では減収減益となりました
ライフスタイルサポート事業の売上高構成比は54.1%。業績は以下のとおりです。
引越し関連、自動車関連、ブライダル関連、金融メディア、その他全ての事業において好調に推移しました。
一方、上期では以下の8つの新規サービスへの先行投資により利益率は低下しました。
EC事業の売上高構成比は4.2%。業績は以下のとおりです。
黒字化に向け、物流オペレーション等、運営の最適化に向けた体制整備を優先した結果、売上が前年同期比で減少しました。
2013年からサービスを開始した自転車専門通販サイト「cyma(サイマ)」、いまだ赤字から脱却できずにいます。
既存事業は営業利益ベースで2桁成長を見込みますが、中長期的な成長に向けた先行投資を実施予定のため、前期に対し減益となる見込みです。
画像出典元:「株式会社エイチーム」決算説明資料
エイチームの第1四半期決算の結果を見てみましょう。
2019年7月期第1四半期の営業利益は4億8,400万円となりました。前年同期と比べて49.7%減となっています。売上高は微増。
また、今年度の通期決算の予想は、以下のようになっています。
続いて売上・営業利益の推移のグラフです。
売上高はエンターテインメント事業及びEC事業が前期比で減少となったものの、ライフスタイルサポート事業が好調に推移し、全体では前年同四半期比で横ばいとなりました。
一方、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益については、エンターテインメント事業における既存タイトルの利益寄与の減少に加え、ライフスタイルサポート事業における新規事業への先行投資による費用増の結果、前年同四半期比で減少となりました。
エイチームの第4四半期決算の結果を見てみましょう。
2018年7月期第4四半期の営業利益は8億9,200万円となりました。前年同期と比べて32%減となっています。売上高も同じく減少。
また、今年度の通期決算の結果は、以下のようになっています。
2018年度通期決算の営業利益は47億円となりました。前年と比べて15.3%増となっています。売上高も同じく前年比増という好成績を収めています。
続いて、売上・営業利益の推移をより詳しくグラフで見ていきましょう。
売上高の推移は、2013年から2017年第3四半期まで右肩上がりとなっています。営業利益は上下を続けてはいるものの、赤字になる事なく徐々に増加しています。
メインだったエンタメ事業(前年比16%減)は、2017年に頭打ちとなり、既存アプリ売上高の緩やかな減少と、新規アプリ売上が期待に及ばず減収となりました。
代わりにライフスタイルサポート事業(前年比42.2%増)、EC事業(前年比27.4%増)が大きく成長を遂げています。ライフスタイルサポート事業『引っ越し侍』は業界トップシェアを誇るまでに成長し、EC事業では、繁忙期需要に上手く対応した事により自転車のECサイト『cyma』の売上が伸びました。
全体の業績はおおむね好調だと言えるでしょう。
エイチームには、以下の3事業があります。
モバイルゲーム事業。アプリゲームにおける課金収益がこれまでのエイチームを支えてきました。
引っ越しや自動車、ブライダル、金融など特定業界に特化したメディアを多数運営。高い専門性が強みです。
自転車専門通販サイト『cyma』を運営。失敗しない自転車選びをサポートしています。
エイチームは、1997年に個人事業主として創業し、最初は受託開発から始まりました。その後、2003年に初自社サービスを開発、販売を開始します。これまで様々なマーケットとネット技術サービスを組み合わせ、新たなビジネスモデルを生み出し、実績を積み上げてきました。
現在は、エンタメ事業とライフスタイルサポート事業を主な収入源とし、「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」という経営理念の元に、徐々に業績を伸ばしています。
続いてエイチームの今後の計画について、現在掲げている中長期的な目標から来年度目標へと順に説明していきます。
エイチームは、中長期的な計画として「既存事業を軸として今後も経営を行っていく」と発表しました。その一方で、新規事業への挑戦も積極的に行なっていく方針を固めています。
各事業別の計画は以下の通りです。
①ライフスタイルサポート事業:2020年、売上300億円規模達成。
②エンターテイメント事業:グローバル化を進め、世界に向けて月商10億円規模のアプリを複数創出し、海外売上比率50%到達。
③EC事業:自転車専門通販でNo.1サイトになる。自転車にまつわる新規サービスにも挑戦。
エイチームは、今後も枠に囚われず、インターネットを使った様々なビジネス領域に挑戦していく方針です。「今から100年続く会社にすること」という言葉通り、エイチームの見据える未来は大きいものと思われます。
エイチームは、上記で述べた中長期的な計画を達成するために、これからの1年間の目標として、以下のような具体案を打ち出しています。
①ライフスタイルサポート事業:既存事業の育成と並行して新規事業の立ち上げを積極的に行い、先行投資もより積極的にしていく。
②エンターテイメント事業:新規タイトルの開発に注力し、既存主力タイトルの収益最大化にも積極的に取り組んでいく。
③EC事業:投資回収を目指し、通期黒字化への施策に集中。
さらに、企業基盤の強化のため、事業投資だけでなく、人材採用・育成などの社内リソースへの先行投資も積極的に行なっていくようです。エイチームは既に社員の働く環境整備には十分力を入れており、Great Place to Work発表「働きがいのある会社」ランキングには5年連続ランクインしました。2018年6月には、福岡に新しいオフィスをオープンしています。
2012年11月東証マザーズ上場から、これまで業績黒字のまま事業を拡大してきたエイチーム、今後の成長ぶりにも大いに期待が出来るでしょう。
画像出典元:「エイチーム」決算説明会資料
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