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スクウェア・エニックス・グループを統括する純粋持株会社「スクウェア・エニックス・ホールディングス」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となっています。特に利益が大きく伸長し、営業利益2.2倍、経常利益1.7倍、純利益2.1倍となり、各段階利益の進捗率は既に計画を上回っています。
増収となった主な要因は、デジタルエンタテインメント事業と出版事業が好調に推移したことによるものです。主力のデジタルエンタテインメント事業は前年同期比3.1%増の1,369億円となりましたが、なかでも「ロマンシング サガリ・ユニバース」や2019年9月より配信を開始した「ドラゴンクエストウォーク」が好調に推移。
ということですが、スマートデバイス・PCブラウザ等をプラットフォームとしたコンテンツの売上・営業利益はともに当第3四半期に大きく伸長していることから、「ドラゴンクエストウォーク」の貢献度が大きいと言えるでしょう。
営業利益に関しては、すべての事業で増益を確保。特に、デジタルエンタテインメント事業は前年同期比93.6%増の295億円と大幅増益を達成しています。
また出版事業において電⼦書籍等のデジタル販売が⼤幅に増加したことも寄与し、営業利益率は前年同期から7.8ポイント上昇の14.6%になりました。
なお、既に利益に関しては計画を上回っていますが、通期の業績予想は据え置かれています。事業環境の変化が第4四半期以降の業績に及ぼす影響において慎重に精査する必要があるためとのこと。前期に対し減収減益を見込んでいます。
画像出典元:「株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス」決算説明会資料
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となっています。事業別においても全ての事業で増収増益を達成しましたが、なかでもデジタルエンタテインメント事業と出版事業が貢献。
営業利益率は前年同期から4.4ポイント改善し、13.2%に。経常利益は、前年同期は為替差益47億3,400万円計上したのに対し、今期は為替差損8億9,700万円計上したことにより、前年同期比6.1%増にとどまりました。
セグメント別の業績を詳しく見ていきましょう。
① デジタルエンタテインメント事業
まずは、主力事業のデジタルエンタテインメント事業から。売上高は854億600万円(前年同期比4.2%増)、営業利益は166億8,600万円(前年同期比33.0%増)と増収増益、営業利益は2桁増と好調です。
MMOでは、拡張パッケージ「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」が大きく貢献。スマートデバイス・PCブラウザ等では、「ロマンシング サガ リ・ユニバース」が引き続き好調。また、9⽉より配信開始した「ドラゴンクエストウォーク」の出足も好調です。
一方、HDゲームは新規⼤型タイトルの発売がなかったため前年同期⽐で減収となり、前期に発売した新作のリピート販売が弱かったため営業損失を計上。
② アミューズメント事業
アミューズメント機器で新規タイトルの発売がなかったものの、店舗運営が好調に推移したことから、売上高228億2,200万円(前年同期比11.2%増)、営業利益は13億3,000万円(前年同期比83.3%増)と増収増益。
③ 出版事業
マンガアプリの「マンガUP!」を含む電子書籍形式の販売が大幅に増加。また、紙媒体での販売も好調に推移したことから、売上高は90億6,400万円(前年同期比42.3%増)、営業利益は32億1,100万円(前年同期比87.2%増)と2桁増収増益に。好調です。
④ ライツ・プロパティ等事業
自社コンテンツの新規キャラクターグッズ等の投入があったことから、売上高は45億1,100万円(前年同期比35.3%増)となり、営業利益は6億3,100万円(前年同期比112.9%増)と増収増益に。営業利益は3桁増となっています。
下期以降、「ドラゴンクエストウォーク」の収益貢献や、10月24 日に発売した「ドラゴンクエスト X」の拡張パッケージも計画通りに堅調な売上を見せていいるなど期待がかかりますが、通期の業績予想に変更はありません。通期では減収減益となる見込みです。
画像出典元:「株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス」決算説明会資料
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し2桁増収、営業利益は1.9倍となっています。
すべての事業が前年同期比で増収増益と好調に推移。なかでもデジタルエンタテインメント事業は、「ファイナルファンタジーXIV」の課金会員者数の伸長が寄与し、売上は55億円、利益は20億円前年同期より伸長し、業績を押し上げました。
経常利益が前年同期比で減少したのは、前年同期は営業外収益として為替差益33億4,700万円あったのに対し、円高の影響で当第1四半期では為替差損9億5,700万円計上したことによるものです。
スクウェア・エニックス・ホールディングスの株価推移画像出典元:SBI証券
営業利益が大幅な増益となったことを受け、8月6日の決算発表後、株価は急上昇。
さらに9月12日には、コロプラと共同開発した「ドラゴンクエストウォーク」を配信。翌日にはセールスランキング1位を獲得、1週間で500万ダウンロードと好調な滑り出しとなりました。
「ドラゴンクエストウォーク」の好調を受け、コロプラの株価は一時ストップ高となりましたが、スクウェア・エニックス・ホールディングスも年初来高値を更新しました。
セグメント別の業績をもう少し詳しく見ていきましょう。
売上の7割を占めるデジタルエンタテインメント事業は、HDゲームにおいて新規大型タイトルの発売がなかったものの、スマートデバイス向けの既存タイトルの好調や、「ファイナルファンタジーXIV」の課金会員者数の伸長により、前年同期比で2桁増収増益と好調に推移。
●HDゲーム
家庭用ゲーム機向けタイトルにおいて、「ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター」と「ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ」のNintendo Switch版・Xbox One版等を発売したことにより、前年同期比で増収、小幅な黒字転換となりました。
第2四半期以降、新規タイトルの「鬼ノ哭ク邦」「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めてS」「FINAL FANTASY VII REMAKE」等の発売を予定。また、複数の過去作のリメイクやリマスター版の発売も予定しています。
●MMO
多人数参加型オンラインロールプレイングゲームにおいては、「ファイナルファンタジーXIV」拡張パッケージの発売に先行して課金収入が好調に推移したことから、前年同期比で大幅な増収増益に。
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」
「ファイナルファンタジー」シリーズの14作目となる「ファイナルファンタジーXIV」は、2013年に「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」としてサービスを開始して以来、2年に1度のペースで拡張パッケージを発売しています。
発売からおよそ6年を経てもなお勢いは留まらず、日本をはじめ、北米、ヨーロッパ諸国や中国、韓国でもサービスを展開し、累計プレイヤー数は1,600万人を突破。「ファイナルファンタジーXIV」3作目となる拡張パッケージ「漆黒のヴィランズ」は、最新拡張パッケージ発売前に有料会員数が過去最高を記録しました。
なお、「ドラゴンクエストX」の拡張パッケージも10月24日に発売されます。
●スマートデバイス・ PCブラウザゲーム等
スマートデバイス・PCブラウザ等をプラットフォームとしたコンテンツにおいては、2018年12月にサービスを開始した「ロマンシング サガ リ・ユニバース」が好調に推移。
2019年3月期は新作が不調でしたが、2020年3月期は4月にサービスを開始した「ラストイデア」が好調な出足となりました。
なお、7月にサービスを開始した「とある魔術の禁書目録 幻想収束」は、出版事業のマンガタイトルをゲーム化した成功事例に。マンガタイトルのゲーム化を重要な施策として進めています。
アミューズメント機器で新規タイトルの発売がなかったものの、店舗運営が好調に推移したことから、前年同期比で増収、営業利益は3倍と大幅な増益に。
マンガアプリの「マンガUP!」を含む電子書籍形式の販売が大幅に増加。また、紙媒体での販売も好調に推移し、前年同期比で大幅な増収増益に。
デジタル売上比率が上昇したことにより、当第1四半期では営業利益率が前年同期比12.4ポイント上昇し32.8%に、営業利益は2.4倍と拡大。
自社コンテンツの新規キャラクターグッズの投入等があったことから、前年同期比で大幅な増収増益に。
2020年3月期は、前期に対し減収減益となる見込みです。
2019年3月期は、大型タイトルの投入による各種費用の増加により、営業利益は前期比で35.7%減、またグループ会社の事業方針見直しに伴う特別損失を計上したことから当期純利益は前期比で28.5%減と大幅な減益となりました。
2020年3月期は、2019年3月期並みの水準を計画しています。スマートデバイス・PCブラウザゲーム等において、2019年3月期の第3四半期までに投入した新作が不振であったため、当初見込んでいた収益の実現が難しいことに加え、2019年3月期に投入したHDゲームの新作タイトルのリピート販売を保守的に見込んでいることが要因です。
【グラフ】中期業績⽬標
スクウェア・エニックス・ホールディングスは、スクウェア・エニックス・グループを統括する純粋持株会社です。
沿革を簡単に振り返ると、現スクウェア・エニックス・ホールディングスの名誉会長である福嶋康博氏が株式会社営団社募集サービスセンターを1975年(昭和50年)に設立したのが始まり。公団住宅情報誌の発行を事業化したものでした。
1982年に株式会社エニックスに商号を変更し、オフィスコンピューター販売を手掛けます。1985年に家庭用ゲーム機市場に参入。翌1986年にはファミリーコンピュータ用ロールプレイングゲーム(RPG)「ドラゴンクエスト」を発売。
1999年に東京証券取引所一部に上場。2003年に「ファイナルファンタジー」を生み出した株式会社スクウェアを吸収合併し、商号を株式会社スクウェア・エニックスに変更。
2005年に株式会社タイトーを連結子会社化し、翌2006年には完全子会社化したことに伴い、タイトーは上場廃止に。
2008年に持株会社体制へ移行し、商号を株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスへ変更。新設分割の方法により、株式会社スクウェア・エニックスを設立しました。
スクウェア・エニックス・グループは、日本、アメリカ、イギリス、カナダ等に事業拠点と開発スタジオを置き、「デジタルエンタテインメント」「アミューズメント」「出版」「ライツ・プロパティ等」の4つの領域で事業を展開しています。
グループの強みは自社IP。「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」の2大IPのほかにも「キングダムハーツ」「サガ」などのビッグタイトルを有し、国内だけでなく海外にも多くのIPが受け入れられています。
家庭用ゲーム機(携帯ゲーム機を含む)、PC、スマートフォン等に双方向のデジタルコンテンツを提供
アミューズメント施設の運営、アミューズメント施設向けのアミューズメント機器の販売、レンタル
コミック単行本、ゲームガイドブック、定期刊行誌等の出版
二次的著作物の企画・制作・販売・ライセンス許諾等
画像出典元:「株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス」決算説明会資料・公式HP・有価証券報告書
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