静岡県に本店を置く地方銀行「スルガ銀行」の中間決算を見ていきます。
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収となったものの、黒字に転換しています。
経常収益は、貸出金利息の減少に伴う資金運用収益の減少により前年同期比で109億6,500万円減少。貸出金利息の減少は、貸出金残高の減少と貸出金利回りの低下によるものです。
貸出金期末残高は約4,000億円、預金期末残高は約3,000億円、それぞれ1年で減少しています。
一方、実質与信費用が減少したこと等により、経常利益、中間純利益ともに予想を上回って推移し、黒字に転換しました。
スルガ銀行は2019年10月25日、創業家ファミリー企業との融資・資本関係の解消に向けた弁済合意書を締結したと発表。創業家ファミリー企業が所有するスルガ銀行株式と不動産の売却により融資金の回収を進め、2019年度中に全額回収する予定です。
また、2019年10月29日付で創業家とそのファミリー企業の保有する同行のすべての株式が株式会社ノジマに売却され、創業家及びファミリー企業との資本関係についても解消。ノジマは株式13.52%を約140億円で取得し、既保有株式と合わせて18.52%所有することになり、スルガ銀行の筆頭株主へと躍り出ました。
2019年11月20日の日本経済新聞の記事によると、「スルガ銀行による不正な融資で過大な借り入れをしたシェアハウスの所有者が、物件を手放せば借金の返済を免除されることで調整が進んでいる」とのことですが、この件に関してスルガ銀行からの正式発表はありません。
シェアハウス向け融資とその他投資用不動産融資に関する元本一部カットの受付はされていましたが、その受付も2019年11月30日をもって終了。
シェアハウスローン残高は2019年9月末において1,992億円、延滞率は40.66%と残高は減少しているものの延滞率は上昇しています。
シェアハウスの不正融資問題ばかりに目が行きがちですが、一棟収益ローンの残高は実に1兆円を超えています。
その⼀棟収益ローンの債務者区分が、2019年11月に発表された中期経営計画で公表されました。一棟収益ローン残高1兆1,619億円のうち、正常先残高は1,995億円、率にして正常先はなんと17.2%のみという衝撃的な数字でした。
2023年度以降、⼊居率が低い債権が減少していくとしていますが、予断を許さない状況であると言えるでしょう。
足元の業績を踏まえ、通期の業績予想を上方修正しました。また、非開示だった経常収益の予想値も開示されました。
当期純利益は2019年度は155億円の見込みですが、中期経営計画によると2022年度は70億円と半減となる計画。創業家との関係は解消されますが、まだまだ問題は山積です。
画像出典元:「スルガ銀行株式会社」決算短信
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し減収増益、前期最終971億4,600万円の赤字から黒字転換しています。
減収となった主な要因は、貸出金利息の減少による資金運用収益の減少等によるものです。
一方、不良債権処理額等の与信費用が減少したことなどにより経常費用が前年同期比で45億2,300万円減少し、大幅な増益に。
スルガ銀行単体の業績を見ていきましょう。
●コア業務純益
本業の儲けを示すコア業務純益は、資金利益の減少等により前年同期比30%減の99億円に。前年同期から42億円も減少しています。資金利益の減少とは、主に貸出金利息の減少によるものです。
●貸出金
その貸出金は、依然減少傾向にあります。当第1四半期における貸出金期末残高は、前期末比1,726億円減の2兆7,262億円となっています。有担保ローンはすべてにおいて貸出金利回りが低下し、結果全体の貸出金利回りも前期末比で0.13%低下の3.19%に。1年で貸出金は4,242億円しています。
●預金残高
預金残高も減少しています。当第1四半期における預金期末残高は、前期末比238億円減少の3兆1,418億円に。1年で7,297億円減少しています。
以上、業績は思わしくありませんが、一方で経費は前年同期比で5億円減少、実質与信費用は37億円減少しています。なかでも人件費は6億円も減少しています。退職者が多いのでしょうか。
シェアハウスローンの延滞率は39.93% 。いまだ苦しんでいる人が多数いることがわかります。なお、業績予想については変更ありません。
画像出典元:「スルガ銀行株式会社」決算短信
2019年3月期の連結決算は、最終971億4,600万円の赤字となりました。
経常収益は、貸出金利息の減少による資金運用収益の減少等により前期比166億4,300万円減少。
一方、経常費用は、シェアハウス関連融資等にかかる与信費用の増加により前期比682億2,600万円増の2,139億7,800万円となった結果、経常利益、当期純利益ともに大幅な赤字となりました。
スルガ銀行の株価推移画像出典元:SBI証券
不正融資問題発覚前は2,500円前後と高水準で推移していた株価は、400円前後まで暴落。
5月14日には、スルガ銀行行員がデート商法に加担したとして、20代女性がスルガ銀行を提訴。シェアハウスや投資用不動産以外でも不正融資が行われていた模様です。
この件に関してスルガ銀行は調査を行い、事実を認め、当該行員は懲戒解雇処分に。今後は再発防止に努めるとしています。
本業の儲けを示すコア業務純益は、資金利益の減少等により前期比で155億円減少。業務純益は、一般貸倒引当金繰入額の減少により前期比で44億円増加しました。
実質与信費用は、前期比723億円増の1,363億円に。うち、シェアハウス関連融資先が977億円、投資用不動産ローンが222億円、創業家ファミリー企業が134億円となっています。
自己資本比率(単体)は、前期比3.35ポイント低下の8.80%となりました。
実質与信費用・貸倒引当金について
前期末比で、貸出金は3,471億円減、個人ローンは2,611億円減、貸出金利回り(全体)は前期比0.29ポイント低下の3.22%となりました。
シェアハウスローンの延滞率は39.76% 。うち、改ざん・偽造等の不正が認められた案件の延滞率は38.47%となっています。
前期末比で、預金期末残高は9,240億円減、個人預金期末残高は6,861億円減、預金利回り(全体)は、前期比0.04ポイント低下の0.04%となりました。
貸出金・預金ともに減少ペースは低下傾向にありますが、顧客離れは進んでいます。
5月15日、新生銀行、家電量販店のノジマと業務提携に関して基本合意したと発表。一方、ゆうちょ銀行とは業務提携を解消すると5月30日に発表しました。
スルガ銀行は、シェアハウス関連融資等の問題について、シェアハウス向け融資およびその他投資用不動産融資に関する元本一部カットの個別相談を受ける(元本カット基準あり)ことを5月15日に発表しました。
2020年3月期の連結業績は、黒字転換の見込みとなっています。
●連結の業績予想
今期は黒字転換の見込みとしていますが、不透明感は否めません。
画像出典元:「スルガ銀行株式会社 」決算説明資料
2019年第3四半期連結累計期間の経営成績は、△961億6,500万円の赤字となりました。経常収益は、貸出金利息の減少による資金運用収益の減少等により前年同期比85億6,300万円減少しました。
経常費用は、シェアハウス関連融資等にかかる与信費用の増加により前年同期比1,210億2,800万円増加しました。
スルガ銀行の不正融資問題の影響は他銀行にも及び、個人投資家向け融資審査の厳格化が進みました。
金融庁は昨年10月5日、10月12日から4月12日までの6ヶ月間、「新規の投資用不動産融資を停止すること。また、自らの居住に当てる部分が建物全体の50%を下回る新規の住宅ローンについても同様に停止すること」という厳しい処分を下しました。
行政処分以前から、既に貸出金が減少しているのがグラフからわかります。当第3四半期会計期間末残高は、前年度末比で
となりました。
シェアハウス向け融資では金利交渉に応じていることもあり、貸出金利回りは下がっています。それでも延滞率は38.7%と非常に高い数値となっています。
貸出金もさることながら、預金残高は前年度末比で8,600億円流出しています。
不良債権処理額は991億円。実質与信費用は、前年同期比1,225億円増加の1,281億円となりました。
かつては自己資本比率12%を超える優良銀行でしたが、不正融資事件が発覚以降、急低下。9月末には8.65%まで下がりましたが、12月末には9.05%となりました。
金融庁の行政処分を受け、業務改善計画を11月30日に提出しました。
これによると、「不祥事の根本原因である創業家本位の企業風土を抜本的に改め、ガバナンス態勢及びコンプライアンス体制を再構築し、顧客本位の業務運営を行っていく」と示しています。
シェハウス物件オーナーから565億円の賠償請求を求めて提訴され、前途多難のスルガ銀行の通期業績予想は△975億円の赤字です。
画像出典元:「スルガ銀行株式会社 」決算短信
2019年上半期の経常収益は、貸出金利息の減少により前年度から7億4,800万円減少しています。さらに、シェアハウス関連融資にかかる与信費用が1,584億4,500万円に上ったことにより、経常利益は△834億1,800万円、△985億9,500万円となりました。
個人預金期末残高は前年に比べて6,601億円減少して、2兆円7,433億円となっています。不正融資問題によって預金流出が相次いでいることが伺えます。
※2018年9月11日更新
2019年第1四半期の経常収益は352億6,800万円、経常利益は47億2,700万円となりました。経常収益は、貸出金利息の資金運用収益が減ったことにより、前年同期比7%減です。
特に注目すべき点は、経常利益が前年同期に比べて約70%減少している点です。
経常費用を見てみましょう。
左:前期 右:今期 (百万円)
経常費用の中で、「その他経常費用」が前年同期の約4倍の120億円に膨れ上がっています。この原因はシェアハウス関連融資について、貸倒引当金繰入額等の与信費用が増加したことによります。
貸倒引当金繰入額とは、将来的に回収できなくなる可能性のある売上債権や金銭債権を見積もって費用に繰り入れることです。実際に貸倒れた場合は貸倒損失を計上、貸倒れの見積もり金額は貸倒引当金繰入額として計上します。
決算短信からは、個人向け融資を債権者から回収できない可能性があると読み取れます。その額は2018年4月から7月の間でおよそ120億円。また、昨年2017年4月から2018年3月の間では約402億円となりました。
では、なぜここまで貸倒引当金繰入額が膨れ上がったのでしょうか。最近話題となっているスルガ銀行の不正融資問題について見ていきましょう。
問題の発端となったのは、女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社スマートデイズです。
同社のビジネスモデルは表面利回りが高く、長期間一定の家賃収入を保証する「サブリース」。不動産会社がアパートを一括で購入し、入居者の有無に関わらず所有者に一定の家賃を支払うことを保証します。そのため、入居者がゼロでも所有者には家賃収入が入るというビジネスモデルです。
所有者は土地購入や建設費を自己負担する必要がありますが、ここでデータの改ざんをして融資をしたのがスルガ銀行です。しかし、スマートデイズが2018年4月に経営破綻し、所有者は多額の借金を抱え、スルガ銀行は回収ができない可能性がある貸倒引当金繰入額を計上することになりました。
では、なぜスルガ銀行は不正をしたのでしょうか。
2018年9月に第三者委員会が発表した調査報告書では、スルガ銀行のビジネスモデルが個人融資に依存したことにより、融資審査が機能しなかったと発表しました。
スルガ銀行は早期に企業向け融資から個人向け融資へ事業転換。低金利の日本経済の中で、アパートローンで高めの金利を設定し、利益を確保してきました。
(単位:百万円)
実際、2019年第1四半期の貸出金3兆1,504億円のうち、約91%に当たる2兆8,573億円が個人ローンです。個人融資の欠点としては、他銀行がより低い金利のローンを提示して顧客を奪い合う可能性があることです。そのため、スルガ銀行は営業員に常に高いノルマを設定していました。
不正問題となった不動産融資の時にも、土地代の融資以外に、不必要なフリーローンを組んでノルマ達成をしたといいます。
一連の騒動を受けて、特に影響が大きかったのは個人預金額期末残高です。
2018年6月は前年同期に比べて、個人預金期末残高が1,852億円減少しました。個人預金者離れが続けば、経営破綻の可能性もあります。今後、どう対応していくのか注目が集まります。
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