AbemaTVなどのメディア事業やゲーム事業、インターネット広告事業を展開する「サイバーエージェント」の決算を見ていきます。
2020年9月期第1四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収、すべての利益項目で2桁増益となっています。
売上高については、過去最高の四半期売上を達成したインターネット広告事業が牽引。広告市況は前四半期までは不透明感が漂っていましたが、徐々に回復してきているとのこと。
ゲーム事業は、「ワールドフリッパー」「ブレイドエクスロード」といった新作タイトルが貢献したものの、既存タイトルがやや落ち込み、前年同期比で減収に。
営業利益は増収に加え、販売管理費抑制が奏功し、2桁増益を達成。特に、広告宣伝費と人件費が前年同期比で大幅に減少しています。
一方、メディア事業はAbemaTVへの先行投資が響き、50億円の営業損失を計上。AbemaTVは有料会員数が前年同期比約1.7倍の59.3万人に伸長し、売上も伸ばしているものの、まだまだ投資フェーズです。
サイバーエージェントは1月29日、プロレスリング・ノアを運営するノア・グローバルエンタテインメント株式会社の発行済株式の全株式を取得し子会社化すると発表。
ノアは、全日本プロレスから独立した三沢光晴さんによって2000年8月に旗揚げされたプロレス団体ですが、経営が安定しない状況が続いていたとのこと。
一方、サイバーエージェントは、2017年にも株式会社DDTプロレスリングを子会社化し、AbemaTVを通じた試合の中継を行うなど、所属するレスラーの認知向上や団体の成長に取り組んでいます。
今後は、ノアの経営安定化を図るとともに、DDTとのグループシナジーを活かすことで、さらなる団体と業界の発展を目指すとしています。
画像出典元:プロレスリング・ノア公式HP
新日本プロレスがブシロード傘下に入って以降、急成長したように、ノアもDDTとともにどのように成長していくか注目です。
なお、通期の業績予想について変更はありません。
画像出典元:「株式会社サイバーエージェント」決算説明会資料
2019年9月期通期の業績は、前期に対し増収、営業利益ベースで増益となっています。売上高は過去最高を更新。増収となった主な要因は、既存事業が堅調に推移したことによるものです。
営業利益に関しては、AbemaTV等への先行投資をしつつも、過去最高水準の利益とほぼ同程度の利益を確保。ここ3年、AbemaTVに200億円規模の投資を続けています。
一方、ゲーム事業、広告事業、メディア事業において、終了予定のサービスや回収可能性を勘案し、減損損失を第4四半期において95億円計上。また、本社移転費用27億円を含め129億円の特別損失を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は16億9,400万円(前期比△65.1%)となりました。
セグメント別の業績を詳しく見ていきましょう。サイバーエージェントの主力事業は、インターネット広告事業、続いてゲーム事業、メディア事業です。
メディア事業には、「AbemaTV」「Ameba」「タップル誕生」等が属しています。
売上高は、AbemaTVが牽引し前期比で2桁増収。AbemaTVの売上高は、前期比1.8倍の111億円となっています。一方、長く収益に貢献してきたアメーバピグは2019年12月2日をもって終了。その影響で下期はやや売上高が減少しました。
営業利益は、前期に引き続きAbemaTVへの投資を行ったため、178億3,800万円の赤字。
AbemaTVは開局3年半で4,500万ダウンロードを突破し、WAUも1,000万WAU超えを果たしています。速報ニュースを中継することで、何かあったらAbemaTVで中継していると想起させるメディアに成長。また、コンテンツの強化により、恋愛リアリティショーは女子高生の3分の2は視聴しているというデータも。結果、有料会員数は51.8万人まで拡大。
今後は、徐々に赤字を縮小させていくとしています。
ゲーム事業には、㈱Cygames、㈱サムザップ、㈱Craft Egg等が属しています。
下のグラフのとおり、「ドラガリアロスト」以降、大きなリリースはなかったものの主力タイトルが好調に推移し、売上高は前期比で増収に。なかでも「グランブルーファンタジー」「プリンセスコネクト!Re:Dive」「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」は息の長い、多くのユーザに愛されるタイトルになっています。
営業利益は、広告宣伝費を適正化したことにより増益を確保。
今後、年間約6本の新規タイトルを提供予定ですが、10月25日にリリースした「ブレイドエクスロード」の初速は、当初目標を大きく上回って推移。自社IPであるため、当たれば大きな収益をもたらすことが期待できます。
インターネット広告事業には、インターネット広告事業本部、㈱CyberZ等が属しています。
売上高は、新規広告主の開拓に注力したことにより堅調に推移。一方、クリエイティブやアドテクノロジーなどの内製化を一気に進めたことにより人件費が増加し、前期比で減益に。営業利益率は前期比で0.9ポイント低下し7.9%と苦戦していますが、長い目で投資を回収していくとのこと。
投資育成事業にはコーポレートベンチャーキャピタル、㈱サイバーエージェント・キャピタルにおけるファンド運営等が属しています。
その他事業には、㈱CAM、㈱ウエディングパーク、㈱マクアケ等が属しています。
購入型クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake(マクアケ)」を提供する株式会社マクアケは、2019年12月11日に東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場しました。
2020年9月期の業績予想は、前期に対し増収を見込んでいますが、利益に関しては初めてのレンジ予想となっています。
利益率の高いゲーム事業において予想が困難なため、また景況感の先行きに関して広告主が警戒心を抱いているためレンジ予想になったとのこと。今後、AbemaTVの赤字がどこまで縮小していくか注目です。
画像出典元:「株式会社サイバーエージェント」決算説明会資料
AmebaTV(アベマティーヴィー)に大規模投資真っ只中の「サイバーエージェント」の決算を見ていきます。
2019年9月期第3四半期連結累計期間の売上高は前年同期に対し+9.6%成長したものの、利益面においてはすべての項目で減益となっています。
事業別に見ると、すべての事業で増収となっていますが、主力事業の広告事業とゲーム事業はともに減益、メディア事業は138億7,500万円の赤字という結果に。
累計ではこのような結果ですが、コストコントロールにより第3四半期では営業利益が前年同期比38.8%増と持ち直しています。
売上高が期初の予想を下回って推移したことを受け、1月30日に業績予想を大幅に下方修正しましたが、全社一丸となってコスト削減に取り組んだことより、第3四半期では前四半期比15億円のコスト削減に成功しています。
【グラフ】販売管理費推移
なお、ゲーム事業、広告事業、メディア事業において、終了予定のサービス等の減損損失57.4 億円、本社移転の費用15.3億円等、78億円の特別損失を計上しています。
ここで、大規模投資真っ只中のAbemaTVについて詳しく見ていきます。
AbemaTVが属するメディア事業の第3四半期の売上は、「アメーバーピグ」終了発表と季節要因が重なり全四半期比で減収となりましたが、前年同期比では+14.6%成長しています。営業利益は、AbemaTVへの先行投資で赤字続き。しかもその額は巨額です。
テレビ朝日との合弁会社であるAbemaTVは開設当初から、広告ビジネスを成立させるためには大きなメディアに成長させる必要があるとし、1,000万WAU(1週間あたりの利用者数)を目標に損益度外視で先行投資を続けてきました。
さまざまなプロモーションでDL数を伸ばしてきましたが、ここ最近では広告費をつぎ込まなくてもDL数が伸びるようになり、2016年4月の開局以降、3年2ヶ月で4,200万DL突破。そして、とうとう目標の1,000万WAU超えを直近で3度達成するに至っています。
1度目は、山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見ノーカット生中継。2度目は、「AbemaTV 3周年記念1000万円シリーズスペシャルマッチ 那須川天心vs亀田興毅」の生中継。3度目は、宮迫さんと田村亮さんの闇営業問題に対する緊急謝罪会見ノーカット生中継。
特に、宮迫さんと田村亮さんの緊急謝罪会見は、地上波では難しい全篇ノーカット生中継により、過去最高のWAUを記録。
AbemaTVは地上波(テレビ朝日)との連携やコンテンツ拡充も進み、6月末には有料会員数は44.8万人と順調に会員数を増やしています。いよいよマネタイズに本腰を入れていくタイミングとなったと言えるでしょう。
2019年9月期の業績予想は1月30日にいったん下方修正されましたが、コスト削減に成功したことにより、7月24日に営業利益と経常利益が上方修正されています。
以下、期初の業績予想→下方修正→上方修正の数字です。
サイバーエージェントの事業区分は、「メディア 事業」「ゲーム事業」「インターネット広告事業」「投資育成事業」「その他事業」となっています。既存事業のインターネット広告事業とゲーム事業で利益を積み上げ、「AbemaTV」をマスメディアにするべくメディア事業に投資しています。
【主要なサービス】
スマートフォン向けゲーム事業等
【主要なサービス】
広告代理事業・動画広告事業、アドテクノロジー事業等
【主要関連会社】
株式会社CyberZ、株式会社CyberBull、株式会社CyberACE
コーポレートベンチャーキャピタル事業、ファンド運営等
ファンサイト事業、スマートフォンサービスの運営等
中長期の営業利益イメージ
画像出典元:「株式会社サイバーエージェント」決算説明会資料・公式HP
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