となりました。
市場変更・公募増資に伴う一時的な費用増の影響が見られます。
人工知能(AI)を活用したサービスを、個人向け・企業向けに提供する「HEROZ」の決算を見ていきます。
2020年4月期第2四半期累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となっています。概ね計画通りに推移。
HEROZはAI関連事業の単一セグメントですが、AIをBtoCビジネスとして展開する「AI(BtoC)サービス」と、AIをBtoBビジネスとして展開する「AI(BtoB)サービス」を提供しています。
AI(BtoC)サービス においては、「将棋ウォーズ」が牽引し安定的な収益を上げています。ただし、AI(BtoB)サービスへ人的資源を配分するため、2019年10月末をもって「ポケモンコマスター」のサービスを終了したことにより、AI(BtoC)サービスの通期売上は前期比で減少を見込んでいます。
AI(BtoB)サービスにおいては、AIサービス「HEROZKishin」を拡販し、初期設定フィーと継続フィーともに拡大。こちらも順調で、通期においてはAI(BtoC)サービスを上回る売上高となる見込みです。
【グラフ】業績推移
利益に関しては、売上原価や販管費の増加を増収により吸収し、増益に。なお、通期の業績予想に変更はありません。前期に対し、2桁増収増益を見込んでいます。
HEROZは12月6日、2020年1月31日を基準日として、普通株式1株につき2株の割合をもって分割すると発表。
また同日、新株式発行及び株式の売出しを発表。33万5,400株の公募増資、56万3,000株の株式売出し、13万4,600株のオーバーアロットメントによる売出しを実施するとのこと。発行価格及び売出価格は1株12,153円(ディスカウント率4.0%)で、資金調達した約40億円は、AI(BtoB)サービスにおける開発規模の拡大に伴い、エンジニア採用やサーバー設備の投資等に充当するとしています。
2018年4月20日に東京証券取引所マザーズに上場したHEROZは、2019年12月25日に東京証券取引所市場第一部に市場変更しました。
人工知能(AI)を活用したサービスを、個人向けには頭脳ゲーム等のアプリケーションとしてスマートフォンやタブレット端末上で展開し、企業向けには様々な領域における機械学習等のAIサービスとして提供しています。
人工知能関連技術を活かし、将棋・チェス・バックギャモン等の頭脳ゲームを主にスマートフォン上で展開。なかでも、「将棋ウォーズ」は会員数500万人以上を誇る世界最大のスマートフォン将棋ゲームアプリ(日本将棋連盟公認)に成長。
収益構造は、月額課金と棋神(AI)利用料等。
なお、「ポケモンコマスター」は、2019年10月末をもってサービスを終了しました。
頭脳ゲームの開発を通じて、他分野への応用が可能なビッグデータを用いた深層学習(ディープラーニング)を含む機械学習によるAI関連の手法を蓄積し「HEROZ Kishin」として各産業に提供。重点領域は、建設・金融エンターテインメント。
収益構造は、初期設定フィーと継続フィー。
画像出典元:「HEROZ株式会社」決算説明資料
2019年4月期通期の業績は、前期に対し増収増益となりました。売上高及び当期純利益までの各段階利益は、全て過去最高となっています。
HEROZ株式会社は、2013年に現役プロ棋士に初めて勝利した将棋AI「Ponanza」を開発したことで知られる企業で、AIサービスの単一セグメントで運営しています。
AI関連事業では、高度な機械学習を実施するためのサーバ投資等が必要となり、各種償却費が発生します。そのためHEROZでは、一過性の各種償却負担に左右されることなく、EBITDA(営業利益+減価償却費+敷金償却)の成長を通じて持続的に企業価値を向上させることを目指しています。
【グラフ】業績推移
2019年4月期は、売上高13億7,700万円(前期比+19.2%)、EBITDA4億7,000万円(前期比+31.7%)となり、期初業績予想を上回る実績となりました。
これは、 AI(BtoB)サービスにおいて、業績予想に含まれていなかった新規案件の獲得・売上計上等によるものです。
AIサービスを下記2つのグループに分けて展開しています。
2019年4月期通期では、前期比約2.2倍の売上となりました。
ディープラーニング等の機械学習技術を集約したAIサービス「HEROZ Kishin」に関わる業務の標準化を続けており、資本業務提携先をはじめとする様々な事業会社に「HEROZ Kishin」を拡販し、初期設定フィーと継続フィーともに収益を拡大しました。
また、持続的な成長のために、高度な機械学習アルゴリズム開発のための技術研究にも注力しています。
2019年4月期通期の売上高は、前期比約10%減となりました。
これは、前期に運営停止した不採算サービスが複数あり、それらの売上貢献がないことによります。
なお、AIによるサポート機能等を搭載したスマートフォンアプリ「将棋ウォーズ」の売上高は前期比で増加。引き続き安定した収益を上げました。
【グラフ】売上原価・販売費及び一般管理費の内訳推移
売上原価・販売費及び一般管理費の内訳推移のグラフを見ると、エンジニア人材の新規採用等により、人件費は前期比約30%増加しています。
また、来期以降のEBITDAの持続的な成長のために、開発ツール標準化・広告宣伝等へ積極的に取り組んだ結果、第4四半期に一時的な費用が発生したとのこと。
2020年4月期の通期の業績予想は、前期に対し増収増益を見込んでいます。
売上高16億3,000万円・EBITDA5億7000万円、収益性についてはEBITDAマージン35.0%を見込んでいます。
AI(BtoB)サービスの拡大により、それぞれ前期よりも増加すると予想しています。
【グラフ】中長期的な成長戦略
中長期的な成長戦略としては、AI(BtoC)サービスから生じるキャッシュフローを活用しながら、中長期的な成長の柱であるAI(BtoB)サービスへ投資を行い、EBITDAを成長させていく計画を発表。
AI(BtoB)サービスで、より多くの初期設定フィー段階のプロジェクトを獲得し、出来るだけ短期間で開発を完了して継続フィー段階に移行することを目指しています。
画像出典元:「HEROZ株式会社」決算説明資料
2019年第3四半期累計期間の業績は、2桁の増収増益となりました。
【グラフ】業績推移
業績推移をみると、EBITDAは順調に推移しており、対業績予想進捗率は90%に達しています。
第4四半期には、来期以降のEBITDAの持続的な成長のために、開発ツール標準化・広告・宣伝等に積極的に取り組む予定です。
それに伴い一時的に費用が増加し、第4四半期の営業利益率は第3四半期累計期間からの低下を見込んでいます。
一方、成長戦略の柱であるAI(BtoB)サービスについては、2019年4月期通期では前期比2倍超の売上になる見込みです。
中期的な戦略としては、BtoB領域では、産業向けのAIサービスの提供を加速させていくとし、BtoC領域は、引き続き、将棋AIや各種頭脳ゲームAIで、収益貢献と安定化を図っていくことを体制化して、さらにトップラインを増やしていく計画です。
IPO以降、取材や大手企業との取引も増加し、新規領域への拡充・ブランド力の向上に繋げています。
IPOで得た資金をサーバ等への投資をすることで、より競争力を強化していく方針です。
「1人でも多くのヒーローを誕生させたい」という願いから、「HEROZ(ヒーローズ)」という社名を付け、2009年4月に創業。
創業から2ヶ月後に、株式会社ジャフコなどから1億円の資金調達を達成しました。
「驚きを心に」をコンセプトとして、人々の生活が便利に楽しくなるように、人工知能(AI)を活用したサービスをBtoCおよびBtoB領域で展開しています。
会社設立のエピソードは、創業者のひとりである林 隆弘氏が、将棋大会のアマチュア代表として、プロ将棋棋士の羽生善治氏と対局し負けたことがキッカケになったとのこと。
この対局を機に、将棋が強くなる方法として「将棋のAIを、自分のトレーニングに活用できないか」と思い立ち、起業しました。
HEROZの特徴は、将棋AIなどの機械学習を中心としたエンジニアの集団であることです。
2013年、HEROZのエンジニアが開発した将棋AI「Ponanza」が現役プロ棋士に初めて勝利し、17年にはプロ棋士の佐藤天彦名人に勝利したことで話題となりました。
そして、その将棋AIで培ったテクノロジーを他のさまざまな領域の産業に活かす「HEROZ Kishin(ヒーローズ キシン)」を開発。
名前の由来は「棋神」、ここにも将棋への思いが表れています。
HEROZ Kishinでは、インプットとするデータを変えるだけで、幅広い産業で様々な課題に対して効率的にAIサービスを提供できる体制を構築しました。
社会のインフラとなる分野を非常に重要視しており、「建設」「金融」「エンターテインメント」を当面の重点領域と考えています。
現在は、SMBC日興証券株式会社や株式会社竹中工務店、株式会社バンダイなどへ提供しています。
画像出典元:「HEROZ株式会社」決算説明会資料
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