株式会社ネクソンの決算/売上/経常利益を調べ、IR情報を徹底調査

執筆: 山中恵子

365億円で買収したgloopsを1円でジーアールドライブに売却する「ネクソン」の第3四半期決算

2019年12月期 第3四半期決算

  • 売上収益:1,992億9,900万円(前年同期比△4.0%)
  • 営業利益:900億700万円(前年同期比△4.7%)
  • 税引前利益:1,265億1,500万円(前年同期比+13.4%)
  • 四半期利益:1,123億8,900万円(前年同期比+11.1%)

オンラインゲームの開発・配信・運用を行う「ネクソン」の決算を見ていきます。

2019年12月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、営業利益ベースで減益となっていますが、概ね計画通りに着地しています。

減収となった主な要因は、中国事業の売上収益が減少したことと、円高の進行により為替レートのマイナス影響を受けたことによるものです。

ネクソンの売上収益は中国と韓国で約8割もたらされていますが、中国は減速傾向。一方、韓国では16年目を迎えた「メイプルストーリー」が引き続き好調で、PC・モバイルともに当第3四半期において過去最高の四半期売上高を達成しました。

営業利益については、費用が減少したものの減収により前年同期比で減益に。税引前利益及び親会社の所有者に帰属する四半期利益は、外貨建ての現金預金等に関して発生した為替差益を金融収益に計上したことにより前年同期比で2桁増となりました。

gloopsを1円で売却

ネクソンは、利益率の高いオンラインマルチプレイヤー分野に注力していくとし、利益率が低く、競争環境が厳しいモバイルゲーム分野の事業や子会社の売却を決定しました。

1. ブラウザゲーム事業をマイネットに売却

10月24日、連結子会社である株式会社gloops(グループス)のブラウザゲーム事業を会社分割(吸収分割)により株式会社MYLOOPSへ承継させたうえで、MYLOOPSの全株式を株式会社マイネットに売却すると発表。

譲渡株式数は10株、売却価額は5億円、株式譲渡実行日は2019年12月1日。

【対象主要タイトル】
  • 「大戦乱!!三国志バトル」
  • 「KYLOCK(スカイロック)」


画像出典元:「株式会社マイネット」公式HP

2. gloopsをジーアールドライブに売却

12月24日、連結子会社である株式会社gloopsの全ての株式を、コンシューマ機やスマートフォン用アプリの3DCG制作を行う株式会社ジーアールドライブに譲渡すると発表。

2012年10月にモバイルゲーム事業戦略を加速させることを目的として、当時モバイル・ソーシャルゲーム最大手開発会社の一つであるgloopsを連結子会社としたものの、モバイル・ソーシャルゲームの開発・運用は当初の想定より困難な状況が続いていました。そこで、経営資源の選択と集中を行うことを決定。gloopsを売却し、今後はマルチプレーヤー型オンラインゲームタイトルに注力していくとしています。

画像出典元:「株式会社gloops」公式HP

なお、gloopsの直近3年の業績は、16年12月期は△4億1,100万円、17年12月期は△1億4,600万円、18年12月期は△2億8,800万円と赤字が続いており、厳しい状況です。譲渡株式数は540株、譲渡価額は1円、株式譲渡実行日は2020年2月1日の予定です。

2019年12月期の業績予想

非開示だった通期の業績予想が公表されました。2019年12月期は、前期に対し減収、営業利益ベースで減益となる見込みです。

  • 売上収益:2,406億9,600万円〜2,437億5,300万円(前期比△5.1〜△3.9%)
  • 営業利益:959億8,300万円〜982億1,600万円(前期比△2.4〜△0.1%)
  • 税引前利益:1,357億2,100万円〜1,379億5,400万円(前期比+15.6〜+17.5%)
  • 当期利益:1,199億5,400万円〜1,218億1,000万円(前期比+11.4〜+13.1%)

韓国では、「メイプルストーリー」が引き続き好調を維持すると見られますが、中国では主力タイトルの「アラド戦記」の売上減少が続く見込みです。

画像出典元:「株式会社ネクソン」決算説明資料

 

 

2019年12月期 第2四半期決算(19年9月更新)

  • 売上収益:1,469億4,200万円(前年同期比+6.2%)
  • 営業利益:655億8,800万円(前年同期比△7.3%)
  • 税引前利益:838億9,500万円(前年同期比△3.5%)
  • 四半期利益:725億4,500万円(前年同期比△8.0%)

2019年12月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益となっています。

韓国、日本、北米、その他地域事業の成長により売上収益は前年同期比で増加。なかでも、韓国「メイプルストーリー」は、PC・モバイルともに6四半期連続で2桁以上の成長を記録。

一方、中国は「アラド戦記」の売上収益が減少したことと、為替レートによるマイナス影響により売上収益は減少しています。

費用面では、『FIFA ONLINE 4』等に係るロイヤリティ費用や、モバイルゲームのラインナップ増加に伴うクラウドサービス費用増により、売上原価が前年同期比で増加。

また、研究開発費の増加やプラットフォーム費用の増加により、販売費及び一般管理費も増加。

売上原価や販管費の増加に加え、使用権資産や前払ロイヤリティ等に係る減損損失を計上した影響により、営業利益は減益に。特に、第2四半期の営業利益は前年同期比18.8%減と大幅な減益となっています。

一方、営業利益率は44.6%と高水準を維持しています。

純利益は、米ドルに対して韓国ウォン安が進行し、在外子会社が保有する米ドル建ての現金預金等に関して発生した為替差益59億円を金融収益に計上したことにより業績予想は上回りましたが、前年同期で計上した為替差益の金額を下回ったことから前年同期比で減少しています。

ネクソンは8月8日、上限300億円の自社株買いを発表しましたが、業績予想下振れをカバーしきれず株価は急落。また、野村証券は14日付で、ネクソンの目標株価を1,900円から1,700円に引き下げました。

ネクソンの株価推移画像出典元:SBI証券

Embark Studiosの完全子会社化

ネクソンは8月5日、Embark Studios AB(所在地:スウェーデン王国ストックホルム市)を完全子会社化すると発表。

Embark はストックホルムに拠点を置き、最新テクノロジーを活用し、次世代オンラインゲームの開発を行うスタジオです。Embark を完全子会社化し、ネクソングループ内の重要拠点とすることで、北米及び欧州でのネクソンのゲーム開発力を高めていくとのことです。

2019年12月期第3四半期(累計)の業績予想

2019年12月期第3四半期(累計)の連結業績予想は、前年同期に対し減収減益となる見込みです。

  • 売上収益:1,985億3.800万円〜2,029億1,000万円(前年同期比△4.4%〜△2.3%)
  • 営業利益:861億7,400万円〜899億9,400万円(前年同期比△8.8%〜△4.7%)
  • 税引前利益:1,076億4,400万円〜1,114億6,400万円(前年同期比△3.5%〜△0.1%)
  • 四半期利益:943億6,900万円〜975億2,800万円(前年同期比△6.7〜△3.6%)

第3四半期では、すべての地域において売上減少を予想。利益面においては、利益率の高い中国事業の減収が響き、減益となる見込みです。

【グラフ】中国業績推移

画像出典元:「株式会社ネクソン」決算説明資料

 

 

2019年12月期 第1四半期決算(19年6月更新)

  • 売上収益:930億7,700万円(前年同期比+2.8%)
  • 営業利益:526億100万円(前年同期比△3.9%)
  • 税引前利益:618億1,200万円(前年同期比+15.9%)
  • 四半期利益:534億円(前年同期比+14.6%)

2019年12月期第1四半期連結累計期間の業績は、前払いロイヤリティなどに係る減損損失29億円が発生したため営業利益は前年同期に対し減益となったものの、全ての項目において業績予想を上回る好業績となりました。

主に、利益率の高い中国及び韓国におけるPCオンラインゲームの売上収益が想定を上回ったことが要因です。具体的には、中国における「アラド戦記」、韓国における「メイプルストーリー」「FIFAONLINE 41」、新作モバイルゲーム「Lyn2」が牽引。

なかでも、韓国「メイプルストーリー」の売上収益は前年同期比で69%成長し、5四半期連続の2桁あるいは3桁成長となりました。

日本においては前年同期比では成長しましたが、予想を下回って着地しました。


第2四半期(累計)の連結業績予想

2019年12月期第2四半期(累計)は、売上収益の増加を見込む一方で費用の増加を予想し、増収減益となる見込みです。

ネクソンとは

ネクソンは、1994年にNEXON Corporation(現 NEXON Korea Corporation)として韓国にて創業されました。

2002年に日本法人「株式会社ネクソンジャパン」を設立し、翌2003年東京に本社を移転。2005年には親会社をネクソンジャパンに異動し、2009年に商号を「株式会社ネクソン」に変更。

2011年には、東京証券取引所市場第一部に上場。2012年に株式会社gloopsを買収し、モバイル・ソーシャルゲームに本格参入しました。

事業概要

「メイプルストーリー」「アラド戦記」などの主要事業であるPCオンラインゲームに加え、「OVERHIT」や「FAITH」等のモバイルゲームを含む、60を超えるゲームタイトルを世界190を超える国と地域に向けて配信しています。

ネクソンの強みは、ロングランタイトルから創出される安定的な収益基盤があること。例えば、「メイプルストリー」は2003年に正式運営され、15年以上もロングランを続けるタイトルですが、韓国ではいまだ人気は衰えていません。

ロングランタイトルから創出される安定的な収益を元手に豊富な新作ラインナップを創出しています。

息の長い主要タイトル

アジア市場で人気IPシリーズを保有しているのも強みの一つで、売上の8割が中国・韓国で占められています。

2018年度においては、売上構成比が中国52%、韓国29%、日本6%に。日本が占める割合はわずかなものですが、従業員数も韓国が約5,000人なのに対して、日本の従業員数は10分の1の約500人となっています。

地域別主要タイトル

業績推移を見ると、日本においては成長が鈍化していますが、中国・韓国におけるPCオンラインゲームは成長し続けています。中国・韓国においてPCオンラインゲームの人気の高さが伺えます。

【グラフ】業績推移

画像出典元:「株式会社ネクソン」決算説明資料

 

 

2018年12月期 通期決算(19年3月更新)

  • 売上収益:2,537億2,100万円(前年比+8.0%)
  • 営業利益:983億6,000万円(前年比+8.7%)
  • 税引前利益:1,174億4,400万円(前年比+67.8%)
  • 四半期利益:1,029億7,700万円(前年比+82.2%)
  • 親会社の所有者に帰属する四半期利益:1,076億7,200万円(前年比+89.7%)

2018年12月期通期の業績は、前期に対し増収増益となりました。
売上収益、営業利益、当期利益のすべてが前期比で成長し、PC・モバイル事業ともに過去最高の通期売上高を達成しています。

各国での業績

【グラフ】2018年度 売上構成

地域別でみると、中国、北米及びその他の地域の事業の牽引により売上収益が前期比で増加しました。

中国では主力PCオンラインゲーム「アラド戦記」の主要アップデートがユーザーに好評だったこと、北米及びその他の地域では、2018年半ばに配信を開始した「メイプルストーリーM」や「Darkness Rises」が好調だったことが要因となっています。

一方韓国では、主力PCオンラインゲーム「メイプルストーリー」や、昨年5月にローンチしたモバイルゲーム「OVERHIT」が増収に寄与しましたが、「EA SPORTS ™ FIFAOnline 3」と「EA SPORTS ™ FIFA Online 3M」が「EASPORTS ™ FIFA ONLINE 4」と「EA SPORTS ™ FIFA ONLINE 4M」へサービス移行した影響により、PC・モバイルの売上収益が減少しました。

日本では、PCオンラインゲーム及びモバイルゲームともに減収となっています。

ネクソンのこれから

19年12月期の連結業績予想については、現時点で第2四半期(累計)及び通期の合理的な業績予想の算定が困難であるため、第1四半期(累計)の業績予想のみが開示されています。

韓国ウォンの対円為替レートが前年同期比で円高に推移し、業績にマイナス影響を与えることが予想されることから、韓国における売上収益は前年同期比で減少すると見込んでいます。

日本では「FAITH」、「真・三國無双 斬」、2019年2月に配信開始の新作モバイルゲーム「Dark Avenger X」からの寄与により、前年同期比で増収となると予想。

費用面では、従業員数の増加に伴う人件費の増加、モバイル事業の拡大に伴う外注費やクラウドサービス費用の増加が要因で減益となる見通しを立てています。

 

 

2018年12月期 第3四半期決算(18年12月更新)

  • 売上収益:2,076億4,000万円(前年比+13.9%)
  • 営業利益:944億5,300万円(前年比+19.9%)
  • 税引前利益:1,115億8,700万円(前年比+55.9%)
  • 四半期利益:981億4,700万円(前年比+67.0%)
  • 親会社の所有者に帰属する四半期利益:1,011億6,800万円(前年比+71.6%)

2018年第3四半期連結累計期間の業績は増収増益となり、堅調に推移しています。第3四半期としても売上収益は前年同期比15%増の693億円となり、過去最高を更新

中国においてのPCオンラインゲーム「アラド戦記」、韓国においてのPCオンラインゲーム「メイプルストーリー」・モバイルゲーム「メイプルストーリーM」が牽引しました。

各セグメントの業績

日本では、PCオンラインゲーム・モバイルゲームともに減収となりました。

韓国では、PCオンラインゲーム「メイプルストーリー」の売上収益が前年同期比で129%成長しました。モバイルゲームは、「メイプルストーリーM」は好調だったものの「ダークアベンジャー3」及び「AxE」の減速により売上収益は減少しました。

中国では、PCオンラインゲーム「アラド戦記」の国慶節アップデートに合わせたパッケージ販売の初動が好調であったことから売上収益が増加しました。一方で、課金ユーザー数は減少しました。中国でオンラインゲームの規制が始まりましたが、今のところ影響はないようです。

北米 ・欧州及びその他の地域では、ピクセルベリー・スタジオズ、「メイプルストーリーM」 や「DarknessRises」からの寄与により売上収益が2倍超成長しました。

「アラド戦記」は中国で10周年、「メイプルストーリー」は韓国で15周年を迎えましたが、いまだ成長し続けています。通期では増収増益を見込んでいますが、第4四半期は売上収益の減少と人件費・広告宣伝費の増加等によって減益となる見通しを立てています。

画像出典元:「株式会社ネクソン」決算説明資料

会社概要

会社名 株式会社ネクソン(NEXON Co., Ltd.)
事業内容 PCオンラインゲームの開発及びサービスの提供
モバイルゲームの開発及びサービスの提供
ポータルサイトの企画及び運営
所在地 東京都港区六本木1丁目4番5号
設立日 2002年12月18日
代表 オーウェン・マホニー(Owen Mahoney)
資本金 141億9,900万円(単体)
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