進研ゼミをはじめとする教育、語学、介護・保育事業を展開する「ベネッセホールディングス」の決算を見ていきます。
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益、利益項目はすべて大幅増益を達成しています。営業利益は1.7倍、経常利益は1.9倍、純利益は2.8倍と前年同期比でそれぞれ大幅に伸長。絶好調です。
5月の決算説明会で「会員数成長から利益成長へ戦略変更する」と宣言したとおり、進研ゼミの利益成長を重視した戦略が功を奏したかたちとなりました。
増収となった主な要因は、国内教育事業、グローバルこどもちゃれんじ事業、介護・保育事業が好調に推移したことによるものです。
国内教育事業においては進研ゼミの値上げと、Classi、EDUCOMの連結子会社化が寄与。グローバルこどもちゃれんじ事業においては中国と国内のこどもちゃれんじの値上げ、介護・保育事業においては高齢者向けホームの入居者数増加がそれぞれ増収に貢献。
営業利益については、増収による増益となりましたが、なかでも4月に進研ゼミを値上げしたこと、8月の「1か月キャンペーン」取りやめなどで販売費を削減したこと等により国内教育事業が前年同期比95.7%の増益となったことが寄与しました。
【グラフ】国内教育事業の業績推移
一方、グローバルこどもちゃれんじ事業は為替の影響や販売コスト増により前年同期比1.4%の減益。ベルリッツ事業は、語学教育事業のフランチャイズ化の影響やELS事業(留学支援事業)の減収により前年同期比5.3%の減収となりましたが、赤字幅は縮小しました。
なお、こどもちゃれんじを含んだ国内の進研ゼミの10月時点の会員数は、前年同期比で1万人減少の235万人となりました。
業績は好調ですが、ベネッセホールディングスが関与する大学新共通テストは迷走しています。
まず、2020年度から導入予定だった、大学入試英語成績提供システムは、萩生田文部科学大臣の「身の丈」発言を機に制度の不公平さが露呈し、導入延期が決定。大学入試英語成績提供システムの成績提供の対象となる予定だった資格・検定試験は6団体が行う22試験で、ベネッセコーポレーションのGTEC(ジーテック)も採用されていました。
GTECとは、ベネッセコーポレーションが実施する、スコア型英語4技能検定のことです。
文部科学省によると、グローバル化が急速に進展する中、英語の「読む」「聞く」「話す」「書く」といった4技能の習得は重要で、大学入試においても4技能を適切に評価する必要があると。しかしながら、約50万人規模で同一日程一斉実施型試験による共通テストとして試験を実施することは極めて困難であるため、民間事業者等による資格・検定試験の活用を推進することになったとしています。
具体的には、受験生が大学を受験する年度の4月から12月までの期間に受験した2回までの資格・検定試験の成績を、大学入試センターが集約・管理し、大学の求めに応じて提供。ただし、実際に英語の資格・検定試験を活用するかどうかは各大学の判断に委ねられます。
大学入試英語成績提供システムの概要(文部科学省より)
しかし、資格・検定試験には検定料が必要で、なかには2万円以上かかるものもあります。また、僻地や離島に住む受験生にとっては試験会場に行く費用も重荷となります。一方で、腕試しと称して何回も試験を受ける受験生が出てくる可能性も。このような地域格差、経済格差に対して、萩生田文部科学大臣は「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」という趣旨の発言をし、その発言に批判が集まりました。
この発言がきっかけとなり、制度の不備や問題が露呈し、結果、大学入試英語成績提供システムは見送られることになりました。
導入延期によるGTECへの影響や減損リスクは、現在精査中とのことです。
英語民間試験の導入は延期となりましたが、次に大学入学共通テストの記述採点についての問題が取り沙汰されています。
現行のセンター試験は全てマークシート方式で実施されていますが、2020年度から国語と数学では記述問題が導入されます。この記述問題の採点業務をベネッセホールディングスの子会社である株式会社学力評価研究機構が、独立行政法人大学入試センターより受託。
株式会社学力評価研究機構トップページ
採点者の中には学生アルバイトも含まれることから採点の質や信頼性、公平性への懸念が広がっています。これに対して学力評価研究機構は11月12日、「採点は3人体制で行い、採点結果にブレは生じない」など記述採点の準備状況を公表。
それでも不安は拭きれず、さらにはベネッセホールディングスと文科省との癒着疑惑が浮上したり、一方で記述式関連業務の受注を営業活動に利用したとして文科省が口頭注意を行ったとの報道がある等、大学入学共通テストを巡っては次々と問題が浮上する事態となっています。
中期経営計画では、「入試改革を最大の事業機会と捉えている」としていたベネッセホールディングスですが、英語民間試験の導入延期に加え、記述問題導入についても中止や延期を求める声が日に日に高まっています。
なお、業績予想について変更はありません。前期に対し増収増益を見込んでいます。
画像出典元:「株式会社ベネッセホールディングス」決算説明会資料
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し増収増益、営業利益は黒字に転換しています。最終15億9,700万円の赤字となりましたが、前年同期から赤字幅は縮小しました。
増収の主な要因は、国内教育事業、グローバルこどもちゃれんじ事業、介護・保育事業の増収、及びClassi、EDUCOMの連結子会社化が寄与したことによるものです。
営業利益は、国内教育事業と介護・保育事業における増収による増益等により、前年同期22億7,000万円の赤字から黒字に転換。
セグメント別の業績をもう少し詳しく見ていきましょう。
「進研ゼミ」で価格改定と延べ在籍数増加による増収、及びClassi、EDUCOMを連結子会社化したことが寄与し、前年同期比7.2%の増収。一方、利益面では、増収による増益等により損失が半減したものの、12億5,900万円の赤字に。
台湾で延べ在籍数減少による減収があったものの、中国と国内の「こどもちゃれんじ」で価格改定による増収があったことにより、前年同期比4.9%の増収に。一方、営業利益は、中国における販売コスト増、及び国内事業において販売費の投下時期を早めたこと等により、前年同期比27.0%の減益に。
高齢者向けホーム及び住宅数を前年同期比8ホーム拡大し、入居者数が順調に増加。前年同期比で増収増益となり、当四半期では圧倒的な収益の柱となっています。
為替換算時のマイナス影響に加え、中国からの留学生の減少等によるELS事業(留学支援事業)の減収、及び北欧の語学教育事業のフランチャイズ化による減収により前年同期比6.5%の減収。
利益面は、コスト削減により損失が縮小したものの、13億3,400万円の赤字に。
以上、国内教育事業とベルリッツ事業は赤字、グローバルこどもちゃれんじ事業は増収減益、介護・保育事業は増収増益と、事業別では介護・保育事業が好調です。なお、通期業績予想に変更はありません。
画像出典元:「株式会社ベネッセホールディングス」決算補足資料
2019年3月期通期の業績は、前期に対し増収、営業利益は大幅な増益となったものの最終利益は前期比△60.5%となりました。
国内教育事業、グローバルこどもちゃれんじ事業、介護・保育事業が好調に推移し、TMJ譲渡により剥落した売上高やベルリッツ事業の赤字等を吸収。
当期純利益は、前期においてTMJの株式譲渡による子会社株式売却益126億円の計上があったこと等により、前期比△60.5%の減益となりました。営業利益率は前期比0.8%増の3.7%、ROE(自己資本当期純利益率)は前期比4.4%減の2.9%に。
【グラフ】業績ハイライト画像出典:公式HP
ベネッセは、2014年に個人情報流出が発覚して以降、「進研ゼミ」の会員数が減少し、2015年3月期、2016年3月期と2期連続の赤字となりました。とはいえ、一時期400万人を超えていた会員数は、個人情報流出以前から減少傾向にありました。
2017年より会員数は増加に転じていますが、2019年4月の国内通信教育講座「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」の会員数は274万人という目標に届かず262万人止まりに。背景には少子化、「スタディサプリ」などのオンライン学習サービスへのシフト等があります。
中期経営計画では2020年度に300万人という目標を掲げていますが、今後は「会員数成長」から「利益成長」の戦略へ変更するとのことです。
画像出典:2018年3月期 定時株主総会プレゼンテーション資料
ベネッセは、「進研ゼミ」事業の再生と再成長に向けた施策に注力する一方、「進研ゼミ」依存の事業構造から、バランスのとれた収益構造を持つ事業ポートフォリオへの転換を目指し、「事業の選択と集中」に取り組んできました。2017年にTMJの保有全株式をセコムに譲渡したのも、その一環です。
また、2018年度からは、5カ年の中期経営計画「変革と成長 Benesse2022」をスタートさせました。中期経営計画1年目の業績を詳しく振り返ります。
基幹事業である国内教育事業は、進研ゼミ、学校向け教育事業、学習塾事業、英語事業等それぞれ堅調に伸び、増収増益となりました。
進研ゼミの商品強化や、「GTEC(スコア型英語4技能検定)」関係の投資など教育改革に対する投資を行いましたが、増収による増益がこれらの投資を吸収しました。
グローバルこどもちゃれんじ事業は、日本事業と中国事業が好調に推移し、増収増益となりました。
国内においては、「こどもちゃれんじ」の延べ在籍数が増加。中国においては、延べ在籍数が増加したことに加え、価格改定により増収となりました。「しまじろうコンサート」等の周辺事業も順調に伸長。
一方、台湾の在籍数は減少。なお、2018年7月号から、インドネシアにおいて「こどもちゃれんじ」を開講しました。
2番目に大きなセグメントへと成長した介護・保育事業は、高齢者向けホーム及び住宅数を前期比6ホーム拡大し、入居者数が順調に増加し、増収増益となりました。
増収による増益に加え、前年に実施した処遇改善により社員の充足が進み人材委託費用が減少したこと等により大幅な増益となりました。
ベルリッツ事業は、中国等からの生徒の減少によるELS事業の減収、及び欧州等において語学レッスン数が減少し、47億円の赤字となりました。
2020年3月期の業績は、前期に対し増収増益となる見込みです。
ベルリッツ事業を除く全ての事業において増収増益を見込んでいます。
具体的な要因としては、「進研ゼミ」の延べ在籍数増加、ClassiとEDUCOMの連結子会社化の影響、「こどもちゃれんじ」の日本・中国の延べ在籍数の増加、介護・保育事業における延べ入居者増等。
ベルリッツ事業においては、構造改革を進めることで2021年3月期には黒字転換の予想。
中期経営計画では、2020年度(2021年3月期)に売上高5,000億円、営業利益350億円、営業利益率7.0%、ROE10%以上を業績目標と掲げているベネッセ、目標達成なるか注目です。
画像出典元:「株式会社ベネッセホールディングス」決算説明会資料
2019年第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益となりました。
減収の主な要因は、TMJの全株式をセコムに譲渡したことに伴い売上高126億6,200万円が剥落したこと、東京教育研及びお茶の水ゼミナールの決算期変更、ベルリッツ事業の減収等によるものです。
減益の主な要因は、「進研ゼミ」の期初の商品強化と販売費の前倒しによる費用の増加、ベルリッツ事業の減収による減益、グローバルこどもちゃれんじ事業の減益等によるものです。
国内教育事業とグローバルこどもちゃれんじ事業は増収減益、介護・保育事業は増収増益、ベルリッツ事業は減収減益となりました。介護・保育事業は好調に推移していますが、ベルリッツ事業は伸び悩んでいます。
介護・保育事業は、高齢者向けホーム及び住宅数を拡大し入居者数が増加したことにより前年同期比+5.4%の増収に、人材委託費用が減少したこと等により前年同期比+58.3%の増益となりました。
ベルリッツ事業は、米国への留学生が減少し、欧州等においての語学レッスン数も減少しています。ベルリッツ事業は30億円の営業赤字となりました。
2019年1月8日付で、プラットフォームの開発・運営を行うClassi株式会社を連結子会社としました。
Classiは、株式会社ベネッセホールディングスとソフトバンク株式会社(現ソフトバンクグループ株式会社)の合弁会社として、2014年4月に設立されました。
「Classi(クラッシー)」は先生・生徒・保護者がつながる学習支援プラットフォームで、全国の小中学校・高校・専門学校・大学で活用されています。特に、高校領域において強みを持ち、全国の高校(約5,000校)の4割超となる約2,100校に導入され、国内トップクラスのシェアを誇ります。
スマートフォン/タブレット向け「Classi ホーム」を提供開始
さらに同日付で、Classi株式会社が公立小中学校向け校務支援システムの開発・販売を行う株式会社EDUCOM(本社:愛知県春日井市)を連結子会社としました。
EDUCOMは、「元気な学校づくり応援します。」という企業スローガンのもと、全国の小・中学校や教育委員会向けに教職員の校務の効率化を支援する統合型校務支援システム「EDUCOM(エデュコム)マネージャーC4th」をクラウド・オンプレミス双方で提供しています。
ClassiとEDUCOMは、「学習支援」×「校務支援」に関する教育サービスを共同提供する目的で戦略的パートナーシップを締結しました。
これにより、校務負荷の軽減と効率化を図り、先生が子どもたちと向きあう時間の確保につなげていきます。加えて、Classiの授業・学習支援系データとEDUCOMの各種校務系データとを連携・活用し、質の高いきめ細やかな学校指導サービスの提供を目指すとしています。
今期より、事業セグメントを従来の「国内教育カンパニー」「海外事業カンパニー」「介護・保育カンパニー」「語学カンパニー」の4区分から「国内教育事業」「グローバルこどもちゃれんじ事業」「介護・保育事業」「ベルリッツ事業」の4区分に変更しました。
小学生から大学受験者までを対象とした通信教育事業、学校向け事業、学習塾・予備校事業、子ども向け英語教室事業等を行っています。
【主なグループ会社】
(株)ベネッセコーポレーション、(株)東京個別指導学院、(株)アップ、(株)東京教育研、(株)お茶の水ゼミナール、(株)進研アド、(株)ベネッセビースタジオ、ベネッセ教育総合研究所
日本、中国、台湾、インドネシアで、幼児向けを中心とした通信教育事業等を行っています。
【主なグループ会社】
(株)ベネッセコーポレーション、倍楽生商貿(中国)有限公司
入居介護サービス事業(高齢者向けホーム及び住宅運営)、在宅介護サービス事業、介護研修事業、看護師及び介護職の人材紹介事業、保育園・学童運営事業等を行っています。
【主なグループ会社】
(株)ベネッセスタイルケア、(株)ベネッセMCM、(株)ベネッセパレット、(株)ベネッセシニアサポート
語学教育事業、ELS事業、グローバル人材教育事業等を行っています。
【主なグループ会社】
ベルリッツ コーポレーション
【主なグループ会社】
(株)ベネッセコーポレーション、(株)ベネッセインフォシェル、(株)サイマル・インターナショナル
画像出典元:「株式会社ベネッセホールディングス」決算補足資料・公式HP
2019年第2四半期連結累計期間の業績は、減収減益となりました。減収の要因は、(株)TMJの全株式をセコム(株)に譲渡したことに伴い、同社及びその子会社5社の前年同期の売上高126億6,200万円が剥落したことと、学習塾の決算期変更によるものです。
減益の要因は、「進研ゼミ」の期初の商品強化と販売費の前倒しによる費用の増加、ベルリッツ事業の減収減益等によるものです。
国内教育事業は、「進研ゼミ」の延べ在籍数が増加したこと等により増収となりました。「高校講座」は伸び悩んでいますが、「こどもちゃれんじ」と「小学講座」は好調です。2014年に顧客情報の漏洩が発覚した後、会員数は減少しましたが、徐々に回復してきています。
次年度以降、教育改革の中で小学生に課せられるプログラミング教育を先取りしたプログラミング教材の受講希望者が多く、既に14万人利用しています。教育事業はマーケティング強化のため追加投資する予定です。
グローバルこどもちゃれんじ事業においても、国内の延べ在籍数が増加し増収となりました。
介護・保育事業は、高齢者向けホーム及び住宅数を拡大し入居者数が増加したことにより増収となりました。介護・保育事業は安定的に拡大しています。
ベルリッツ事業は、米国への留学生の減少等によるELS事業の減収、及び欧州と中南米において語学レッスン数が減少したことにより減収となりました。
画像出典元:「ベネッセホールディングス」決算説明会資料
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