”モチベーション”にフォーカスした経営コンサルティング会社「リンクアンドモチベーション」の決算を見ていきます。
2019年12月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、すべての利益項目で2桁減益となっています。
まずは、売上収益構成比から見ていきましょう。M&Aを繰り返し行ってきたリンクアンドモチベーションの売上収益は、ALT配置事業と人材紹介・派遣事業で構成されるマッチングディビジョンが約半分を占めています。
売上収益は、個人開発ディビジョンが前年同期比で増加となったものの、組織開発ディビジョンとマッチングディビジョンは減少しています。
次に、売上総利益構成比を見ると、売上総利益は売上総利益率の高い組織開発ディビジョンが半分を占めます。その売上総利益は、すべてのセグメントにおいて前年同期比で減少。
売上総利益の減少に加え、モチベーションクラウドをはじめとする重点プロダクトへの投資を促進させたことで販売関連費用が大幅増となったことが響き、営業利益は前年同期比で大幅減となりました。
2019年12月2日、2020年度の経営体制変更を発表しました。伊原和之氏が代表取締役社長を退任し、新しく小高正敬氏が就任。また、麻野耕司氏も取締役を退任。麻野氏はオープンワーク取締役副社長も退任し、現在企業準備中だそうです。
リンクアンドモチベーションは2019年11月14日、持分法適用関連会社であるオープンワーク株式会社(旧社名:株式会社ヴォーカーズ)の株式を追加取得し子会社化すると発表。
画像出典元:OpenWork公式HP
オープンワークは、社員クチコミによる就職・転職者向け情報プラットフォーム「OpenWork」を運営。同社とリンクアンドモチベーションは、「OpenWork」上にて組織状態のスコアが高い企業と就職・転職を考えている個人をマッチングする「OpenWorkリクルーティング」を連携して実施していました。
今回の株式取得の目的は、オープンワークとともに、企業の労働市場適応をサポートし、従業員エンゲージメントの高い企業であふれる社会を実現することとのことです。
株式取得に関する契約は2020年1月1日に実行され、出資比率が56.22%となりオープンワークは連結子会社となりました。
なお、通期の業績予想に変更はありません。前期比で減収、利益は大幅減となる見込みです。
リンクアンドモチベーションは、2000年に創業した世界初の「モチベーション」にフォーカスした経営コンサルティング会社です。基幹技術である「モチベーションエンジニアリング」は、経営学、社会システム論、行動経済学、心理学などの学術成果を統合して生み出された独自の技術。
社員のモチベーションを成長エンジンとする「モチベーションカンパニー」を実現するため、組織変革をワンストップでサポートしています。
また、M&Aを繰り返し、教育領域や人材領域などにも事業の幅を広げ、またベンチャー企業への支援も行っています。
企業を取り巻くステークホルダー(社員・応募者・顧客・株主)との関係構築と関係強化を支援
独自の診断フレームに基づいて組織のモチベーション状態を診断し、採用、育成、制度、風土など、組織人事にかかわる様々な変革ソリューションをワンストップで提供
従業員エンゲージメントを管理するためのクラウドサービス「モチベーションクラウド」の提供しています。
「モチベーションクラウド」のイメージ
「モチベーションクラウド」は月額従量課金モデルのビジネスであり、継続的に組織改善のためのPDCAをまわすことで従業員エンゲージメントの向上が期待できます。
導入企業一例
企業の“モチベーションカンパニー創り”をサポートするため、事業活動上での様々なコミュニケーションシーンにおけるイベントやメディアを制作
小中高生から社会人を対象に、受験からプログラミング・資格・語学に至るまで、主体的・自立的なキャリア創りをトータル支援
「求人ニーズのある組織」と「キャリアアップをしたい個人」のマッチング、企業や学校法人への人材紹介・派遣・配置によって支援
全国の小・中・高等学校の外国語指導講師(ALT:Assistant Language Teacher)の派遣および英語指導の請負をサービスとして提供
出資に加え、組織人事コンサルティングのノウハウなどを提供し、上場を目指す成長ベンチャー企業を組織面からも支援
出資先の主な選定基準は
1. ”モチベーションカンパニー”創りへの共感
2. 株式上場を目指していること
の2点です。
出資先一覧
画像出典元:「株式会社リンクアンドモチベーション」決算説明資会資料
2019年12月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、利益面ではすべての項目で2桁減益となっています。
売上・利益ともに計画を下回って推移したのは、組織開発ディビジョンにおいてサブスクリプションモデルに重点的に注力した結果、販売管理費の増加と他の既存事業の成長鈍化が起きたことが要因です。
役所広司さんが社長役で登場する、モチベーションクラウドのテレビCM第3弾が8月17日より関東・関西エリアで放送を開始。費用増の要因の一つと言えるでしょう。
リンクアンドモチベーションは上半期の業績が計画を下回って推移し、業績予想を大幅に下方修正したことで決算発表後に株価は一時ストップ安に。発行済株式総数(自己株式を除く)の0.66%にあたる70万株、上限5億円の自社株買いを発表したもののカバーしきれませんでした。
リンクアンドモチベーション株価推移画像出典元:SBI証券
セグメント別の業績をもう少し詳しく見ていきましょう。
組織開発ディビジョンは、コンサル・アウトソース事業とイベント・メディア事業で構成されています。売上構成比率は30%ですが、売上総利益率は65.9%と断トツです。
●コンサル・アウトソース事業
「パッケージ」及び「コンサルティング」が想定以上に伸長せず、売上収益・利益ともに前年同期比大幅減に。
これは、サブスクリプションモデルのモチベーションクラウドに人員や資金等のリソースを積極的に投下した結果、既存のコンサル・アウトソースモデルに注力できなかったことが要因です。
一方、モチベーションクラウドの導入数および単月の月会費売上は順調に伸びています。
●イベント・メディア事業
景気感応度の低い「IR系メディア」に注力し、その他プロダクトを減少させたことに加え、事業全体として原価率の高い受注を意図的に減少させた結果、前年同期比で減収減益に。
個人開発ディビジョンは、キャリアスクール事業と学習塾事業で構成されています。
●キャリアスクール事業
キャリアスクール事業は、「会計」「国家試験」「英会話」が順調に推移したことで売上収益は前年同期比で増加。なかでも「英会話」は、グローバル人材への需要の高まりに加え、全国84教室に「英会話」を展開したことにより前年同期比66.1%増と大幅に成長。
一方、利益は微減となっています。
●学習塾事業
生徒募集が想定以上に伸長せず、前年同期比で減収減益に。
マッチングディビジョンは、ALT配置事業と人材紹介・派遣事業で構成されています。
●ALT配置事業
文部科学省が推進する英語教育の拡充を的確に捉え、堅調に推移したことで前年同期比で増収増益に。
●人材紹介・派遣事業
「外国人サポート」及び「動員・紹介」が伸長したものの、売上の大半を占める「販売職派遣」が伸び悩み、前年同期比で減収減益に。
上半期の業績予想値の未達と下半期の経営方針変更により、2019年12月期の連結業績予想を大幅に下方修正しました。
過去最高の業績を見込んでいましたが、一転減収減益、特に利益面では大幅な減益となる見込みです。
コンサル・アウトソースモデルの立て直しには時間を要し、サブスクリプションモデルに関しても、進捗の遅れから計画が後ろ倒しになるため、組織開発ディビジョンの下半期予想は当初予想値よりも約20億円程度下がる見込みです。
営業利益は、売上総利益率の高い組織開発ディビジョンの売上収益予想値が減少したことに加え、販売関連費用の増加を見込んでいるため大幅な減益となる見込み。営業利益の予想値は、45億円から18.8億円と大幅に下方修正されました。
売上総利益率の高い組織開発ディビジョンの業績回復が今後の鍵となるでしょう。
画像出典元:「株式会社リンクアンドモチベーション」決算説明会資料・公式HP
2019年12月期第1四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益となりました。
売上収益は、組織開発Divと個人開発Divが想定以上に伸長せず、前年比・予想比ともに下回りました。
減益の主な要因は、モチベーションクラウドなどの重点事業において、販売促進に大きく注力し販売管理費が一時的に増加したことによるものです。大幅な減益となりましたが、予定通りとのこと。
コンサル・アウトソース事業が伸び悩み、売上収益は25億5,500万円(前年同期比△17.5%)、セグメント利益は17億7,200万円(前年同期比△15.8%)と、前年同期比で大幅減となりました。
コンサル・アウトソース事業の人員が「会員・データベース」(モチベーションクラウド)の販売に注力した結果、「パッケージ」及び「コンサルティング」の売上収益が前年比大幅減に。
打開策として、「会員・データベース」(モチベーションクラウド)専任の組織と「パッケージ」及び「コンサルティング」専任の組織に分割し役割を明確にしました。
組織改善クラウドサービス「モチベーションクラウド」の累計導入件数は、2019年3月末時点で803件に達し、順調に推移しています。
学習塾事業が伸び悩んだものの、キャリアスクール事業が堅調に推移した結果、売上収益は18億9,300万円(前年同期比+1.0%)、セグメント利益は6億3,300万円(前年同期比△4.6%)となりました。
キャリアスクール事業においては、「会計」「英会話」の販売に注力した結果、「会計」の売上収益は前年同期比で+12.4%、「英会話」は+68.1%と大きく伸びました。
人材派遣事業が伸び悩んだものの、ALT配置事業の堅調な業績推移を受け、売上収益は50億2,900万円(前年同期比△1.0%)、セグメント利益は13億6,900万円(前年同期比+5.6%)となりました。
ALT配置事業は文部科学省が推進する英語教育の拡大を的確に捉え、堅調に推移したことで売上収益は前年同期比で増加。
一方、人材派遣事業は正規雇用を推進する流れを受け、売上の大半を占める「販売職派遣」が伸び悩み、売上収益が大幅減となりました。
外国籍人材雇用に対す需要の高まりから、自社ALT人数・紹介人数共に堅調に推移しています。
なお、2019年12月期の業績予想に変更はありません。売上収益・営業利益・当期利益全ての項目で過去最高の業績を見込んでいます。
画像出典元:「株式会社リンクアンドモチベーション」決算説明資会資料
2018年通期の業績は、売上収益・営業利益ともに過去最高を更新しました。組織開発ディビジョンのモチベーションクラウドの事業以外は予想を下回りましたが、「組織開発ディビジョン」「個人開発ディビジョン」「マッチングディビジョン」全てのセグメントにおいて増収増益を達成しました。
営業利益率は、前年9.1%から9.6%に向上しました。
一方、当期利益は、持分法適用会社であるインバウンドテック社の事業計画達成の遅れに伴い、持分法のれんの減損損失を4億円計上したため、前年比減となりました。
販売管理費は、業容拡大や本社移転などにより、人件費・地代家賃・販売関連費用等すべて増加しました。
セグメントは、「組織開発ディビジョン」「個人開発ディビジョン」「マッチングディビジョン」に区分され、それぞれに事業KPIが設定されています。
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、最終的な目標を達成するための過程を評価する指標です。
セグメント別 事業KPI
各セグメントのKPIは
となります。これを踏まえて各セグメントの業績を振り返ります。
組織開発ディビジョンは、コンサル・アウトソース事業とイベント・メディア事業で構成されています。組織開発ディビジョンの業績は、以下のとおりです。
【グラフ】モチベーションクラウド月会費売上の推移
【グラフ】顧客粗利単価の推移
事業KPIとして定めている、モチベーションクラウド月会費売上・顧客粗利単価ともに順調に推移しました。
次に、組織開発ディビジョンにおける、それぞれの事業の業績です。
イベント・メディア事業は前年比減となりましたが、利益率の高いコンサル・アウトソース事業は好調に推移しました。
1. コンサル・アウトソース事業
収益性の高い「コンサルティング」、モチベーションクラウドを含む「会員・データベース」が大幅に伸長しました。
重点指標である、組織改善クラウドサービス「モチベーションクラウド」は2016年7月よりサービス提供を開始以降、順調に推移し、2018年12月末時点で累計導入件数は718件に達しました。
2018年12月単月における「モチベーションクラウド」の月会費売上は1億3,000万円を達成。2019年末には2億1,000万円の月会費売上を見込んでいます。
2. イベント・メディア事業
コンサル・アウトソース事業から受注していたイベント制作を意図的に大幅に減少させた一方で、グループ会社の加入により、IR系メディア制作が伸長したことで売上収益は前年比で微減、売上総利益は前年比減となりました。
個人開発ディビジョンは、キャリアスクール事業と学習塾事業で構成されています。個人開発ディビジョンの業績は、以下のとおりです。
【グラフ】年間平均受講者数(左)とLTV(右)の推移
事業KPIとして定めている、年間平均受講者数・LTVともに順調に推移しました。
次に、個人開発ディビジョンにおける、それぞれの事業の業績です。
両事業とも好業績でしたが、特に学習塾事業は大幅に事業が拡大しました。
3. キャリアスクール事業
「プロシリーズ」「国家試験」「英会話」が順調に推移しました。なかでも「英会話」は、2017年4月よりグループインしたマンツーマン英会話教室の講座をオンライン化し、75を超える既存のキャリアスクールに展開したことで、売上が前年比+89.1%と大幅に増加しました。
4. 学習塾事業
中学受験生向け個別指導塾「SS-1」が2017年にグループインしたことにより、学習塾事業の教室数の展開が加速し、売上が前年比+54.7%と大幅に増加しました。
マッチングディビジョンは、ALT配置事業と人材紹介・派遣事業で構成されています。マッチングディビジョンの業績は、以下のとおりです。
【グラフ】年間平均派遣稼働人数(左)と年間紹介人数(右)の推移
事業KPIとして定めている、働人数・紹介人数ともに堅調に推移しました。
次に、マッチングディビジョンにおける、それぞれの事業の業績です。
人材派遣事業が伸び悩んだものの、ALT配置事業は堅調に推移しました。
5. ALT配置事業
文部科学省が推進する「英語教育」の拡大を的確に捉え、堅調に推移しました。
6. 人材紹介・派遣事業
収益性の高い「外国人サポート」「動員・紹介」に注力したことにより、売上収益は前年比微減となりましたが、売上総利益は前年比+13.7%となりました。
2019年12月期は、売上収益・営業利益・当期利益全ての項目で過去最高の業績を見込んでいます。
画像出典元:「株式会社リンクアンドモチベーション」決算説明会資料
2018年第3四半期連結累計期間においては増収増益となり、過去最高の業績を達成。全てのディビジョン(組織開発ディビジョン・個人開発ディビジョン・マッチングディビジョン)の収益性が向上したことで、営業利益は予想値を上回り、前年比+30.0%となりました。
組織開発ディビジョンでは、組織改善クラウドサービス「モチベーションクラウド」の累計導入件数が2018年9月末時点で641件に達し、順調に推移しています。
「モチベーションクラウド」は、業界・規模を問わず、従業員とのエンゲージメント向上を目指す各業界のリーディングカンパニーからの支持が高まっています。
個人開発ディビジョンでは、キャリアスクール事業における「プロシリーズ」「国家試験」「英会話」が順調に推移しました。
特に「国家試験」は、働き方改革によって拡大する働く個人の余暇時間を背景に、「社労士」や「宅建」などの資格取得ニーズが向上しています。
マッチングディビジョンでは、全国の小・中・高等学校の外国語指導講師(ALT:Assistant Language Teacher)の派遣および英語指導の請負サービスを提供していますが、民間企業で圧倒的なNo.1シェアを確立しています。また、2020年に開催される東京オリンピックを見据えて英語教育市場は拡大傾向となっています。
画像出典元:「リンクアンドモチベーション」決算説明会資料
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