ミドリムシを活用し食品や化粧品の製造・販売、バイオ燃料の研究を行っている「ユーグレナ」の決算を見ていきます。
2020年9月期第1四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、最終2億5,200万円の赤字となっています。赤字幅が大幅に縮小したのは、前年同期は実証プラントの一括費用計上があったためで、一括費用計上を除くと実質赤字幅は拡大していることになります。
減収となった主な要因は、ユーグレナ食品領域が減少基調であるため。また、化粧品の定期購入者数も減少しています。広告宣伝投資の比重を、新規顧客獲得施策からマーケティング施策にシフトしていくため、今後も売上高は減少する見込みです。
【グラフ】定期購入者数推移と広告宣伝費推移(直販)
営業利益については、エネルギー・環境事業において先行投資が続いているため赤字に。
バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの本格稼働、バイオジェット燃料による有償フライトの実現に向けた取り組みにより、今後も赤字が継続する見込みです。
ユーグレナは1月31日、バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントに導入しているバイオ燃料アイソコンバージョンプロセス技術が、1月30日にバイオジェット燃料の製造技術の国際規格であるASTM D7566規格の新規格を取得したと発表。
新規格取得により、バイオ燃料製造実証プラントで製造したバイオジェット燃料は、民間航空機に搭載可能な燃料であると国際的に認められたことになります。
さらに2月4日、国土交通省の通達「航空機に搭載する代替ジェット燃料(ASTM D7566 規格)の取扱いについて」の一部改正が2月3日付で交付・施行されたことにより、バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントで製造するバイオジェット燃料が日本国内でも正式に使用可能になったと発表。
これを受け、ユーグレナの株価は急騰。
なお、通期の業績予想に変更はありません。前期比で減収、最終9億円の赤字となる見込みです。
画像出典元:「株式会社ユーグレナ」決算説明資料
2019年9月期通期の業績は、前期に対し減収減益、最終97億9,800万円の赤字となっています。創業以来初の減収および業績予想未達という結果となりました。
減収となった主な要因は、ヘルスケア事業の不振によるものです。なかでも、広告宣伝費を大幅に圧縮した影響により、ミドリムシを使用した食品の販売が落ち込んでいます。
【グラフ】売上高推移
営業利益、経常利益は、2018年10月に竣工したバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設費用63億7,000万円を研究開発費として全額費用計上したことが響き、赤字幅が拡大。一括費用計上を除いたベースでの営業利益、経常利益も業績予想より下振れとなりました。
当期純利益は、子会社ののれん及び固定資産について23億8,300万円の減損損失を計上した影響で最終97億9,800万円の赤字に。計画に対し31億2,500万円も下回っています。
さらに、バイオ燃料製造実証プラントの本格稼働開始およびASTM認証の取得を2019年9月期中に実現できず、2019年9月期は期待を裏切る結果となりました。
セグメント別の業績を見ていきましょう。
売上高は前期比で減少したものの、広告宣伝費抑制により前期赤字から黒字に転換。事業別では、直販事業と流通事業が減少基調。注力した直販化粧品は売上増を達成するも、広告投資を抑制した直販食品の自然減をカバーできませんでした。
【グラフ】売上構造推移
63億7,000万円を研究開発費として全額費用計上したことにより赤字幅が大幅に拡大。
また、2019年秋に見込んでいたASTM認証取得と次世代バイオディーゼル燃料の供給開始が、 2020年9月期第2四半期(1~3月)に再度順延されました。試運転期間中、フェーズごとに課題発生と対応が続いた結果、供給開始時期が遅延されたとのことです。
2020年9月期は、前期に対し減収となるも、赤字幅は縮小する見込みです。
ユーグレナ食品需要低迷の理由の一つとして、青汁など他の競合素材と比較すると認知度が低いことが挙げられます。ユーグレナの非認知層は52.4%に上ります。
また、オフライン広告でのシニア層顧客獲得に投資が偏重したことにより、購入者の6割は60歳以上。また、企業・素材・商品ブランド間の連携が弱く、ポテンシャルが活かせていません。
これらを改善すべく、今後はデジタルマーケティング、ミドル層へのアプローチに注力し、素材・ブランディング・事業基盤整備に投資比重をシフトしていくとしています。
中期目標であった「2020年9月期連結売上高300億円」は撤回し、2020年9月期も減収予想とし、来期以降の売上再成長に向けた投資を優先していくとのこと。黒字化への道のりは遠いです。
画像出典元:「株式会社ユーグレナ」決算説明資料
2019年9月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、最終65億3,700万円の赤字となっています。
売上の99%を占めるヘルスケア事業の売上高は、広告宣伝費を抑制した影響で前年同期比6.4%減の104億1,700万円に。一方、第3四半期では、広告宣伝費の漸増とM&Aにより前四半期比で増加しています。
【グラフ】収支構造推移
営業利益については、実証プラント一括費用計上額63億7,000万円を除いても3億3,600万円の赤字。ヘルスケア事業は黒字に転換していますが、エネルギー・環境事業の赤字が重荷になっています。
【グラフ】セグメント別営業損益推移
財政状態は、現金及び預金が前年同期比39億1,759万円増の83億4,453万円、自己資本比率68.5%。
ヘルスケア事業において、株式会社MEJを子会社化したことにより、のれんが5億6,850万円増加、またスポーツ・イノベーション株式会社を吸収合併したことにより、負ののれん発生益538万円を計上しています。
ユーグレナは、幸楽苑とコラボしたり、18歳以下のCFOを募集したりと話題に事欠きませんが、エネルギー・環境事業の投資フェーズであるため赤字が続いています。また、株価は、デンソーとの包括提携を機に一時上昇していましたが、再び下落しています。
新株予約権の行使に伴う新株の発行により、資本金及び資本準備金がそれぞれ18億9,354万円増加。また、吸収合併及び株式交換に伴う新株発行により資本準備金が9億574万円増加。
この結果、当3四半期連結会計期間末において資本金が73億1,778万円、資本剰余金が118億7,974万円となっています。なお、通期の業績予想に変更はありません。最終66億円の赤字の見込みです。
画像出典元:「株式会社ユーグレナ」決算説明会資料
2019年9月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収、赤字幅が拡大しました。
赤字幅拡大の要因は、2018年10月に竣工したバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設費用63億7,000万円を研究開発費として全額費用計上したことによります。
売上は前年同期比で減少したものの、実証プラント一括費用計上額を除いた利益面は大幅に改善し、経常損益は黒字化を達成。固定費の削減により収益性が改善しました。
全体の売上の99%を占めるヘルスケア事業は、売上高68億7,800万円(前年同期比4.1%減)、セグメント利益5億8,100万円(前年同期はセグメント損失△4億5,100万円)となりました。
広告費を抑制したことにより売上も減少しましたが、広告宣伝費を積極投下し赤字となった前年同期から収益性が改善され、黒字転換しました。
2018年12月よりドラッグストアに直販主力製品「ユーグレナの緑汁」を展開。量販店とドラッグストアの取扱店舗数の合計は1万1,000店を突破しました。
自社スキンケア化粧品ブランド「one」の積極的な広告宣伝投資の実施可否は、下期中頃に判断するとのこと。
また、「AGEST(エイジスト)」などの健康食品・化粧品等をオンライン専門で展開するヘルスケアD2Cを主軸とした次世代ベンチャー、株式会社MEJを6月1日付で子会社化。これにより、デジタルマーケティング強化と若中年の顧客層へのアプローチ拡大が期待できます。
実証プラントの建設費用63億7,000万円を研究開発費として全額費用計上したこと等より、売上高4,100万円(前年同期は売上高750万円)、セグメント損失は66億7,300万円(前年同期はセグメント損失△2億3,400万円)となりました。
2019年2月に株式会社デンソーとの間で、微細藻類の培養技術開発や、バイオジェット・ディーゼル燃料への原料供給を目的として、微細藻類を活用した事業開発で包括的に提携する基本合意書を締結。
ユーグレナの株価推移画像出典元:SBI証券
デンソーとの包括提携が好感され、下落トレンドだった株価が基本合意書を締結した2019年2月を起点に上昇トレンドに。
バイオジェット燃料実用化に向けた進捗状況は、ASTM認証は今期秋頃取得となる見込みですが、2020年に日本初となるバイオジェット燃料有償フライトの実現時期に変更はありません。2019年9月期の業績予想についても、変更はありません。
株式会社ユーグレナは、ミドリムシ(学名:ユーグレナ)を中心とした微細藻類を活用し、人と地球を健康にする3つの事業分野にて事業展開しています。
●ミドリムシ(学名:ユーグレナ)とは
ミドリムシ(学名:ユーグレナ)は、CO2を吸収しながら光合成で育つ、体長わずか0.05ミリの小さな藻の一種で、動物と植物両方の特徴を持つ珍しい自然素材です。
ビタミン類、必須アミノ酸、DHAなど59 種類の豊富な栄養素を持つことより、健康食材としての活用も進んでいます。
また、特有の成分として、β‑1,3‑グルカンの高分子体である天然物質「パラミロン」を持っています。「パラミロン」は難消化性で、吸収されずに排出されるほか、様々な働きをする可能性が示唆されており機能性食材としての活用が期待されています。
さらに、バイオ燃料の原料となることから、環境問題の解決の一助を担う素材としても注目されています。
栄養豊富なミドリムシ等を使用した食品を展開
主力商品の「緑汁」を中心に通販事業を展開
調剤薬局や理美容店などで購入できる「パラミロンDX」、クッキーバー「ユーグレナ・バー」、スーパーやコンビニエンスストアなどで販売する「飲むミドリムシ」シリーズ等を展開
ユーグレナ等を用いたサプリメントなどの他社製品を受託製造・加工
商社へ原料販売をし、大手の食品メーカーやコンビニエンスストアとのコラボレーション商品を展開
ユーグレナ等を使用したサプリメント等を展開
ミドリムシからとれる肌への有用成分を活かした化粧品を展開
石垣島の中心地にある商店街「ユーグレナモール」の隣接地に「ユーグレナガーデン」を開店するなど、ミドリムシを活用したヘルスケア事業の多角展開
いすゞ自動車と共同で進めているバイオディーゼル燃料実用化プロジェクト
DeuSEL(デューゼル)は、DIESEL(ディーゼル)とeuglena(ユーグレナ)を組み合わせた造語です。
「DeuSELプロジェクト」では、2014年7月より、いすゞ自動車藤沢工場と湘南台駅間で「DeuSELバス」の定期運行を開始。DeuSELバスは、通常のディーゼルエンジンを搭載したバスに、ユーグレナからつくった燃料DeuSELを入れて運行するシャトルバスで、平日は毎日20往復運行。
微細藻類ユーグレナを原料としたバイオディーゼル燃料は、DeuSELが世界初となります。
バイオジェット燃料実用化へ向けたプロジェクト
画像出典元:「株式会社ユーグレナ」決算説明資料
2019年第1四半期の連結業績は、前年同期比で減収減益となりました。
18年10月に竣工したバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設費用の約63億7,000万円を研究開発費として全額費用計上したことにより、大幅な減益となっています。
【グラフ】セグメント別営業損益推移
ヘルスケア事業は黒字を維持。エネルギー・環境事業では第1四半期のみの一過性費用として約63億7,000万円の実証プラント建設関連費用が計上されています。
連結売上高は前年同期比1.1%減の34億456万円、セグメント利益は2億9,350万円(前年同四半期はセグメント損失1億2,286万円)となりました。
【グラフ】定期購入者数推移と広告宣伝費推移
広告宣伝投下の抑制継続により、定期購入者は減少しています。
対策として、上期中に戦略商品の開発に注力する見込みです。
今期の施策としては、今までは自社ECサイトのみで扱っていた「ユーグレナの緑汁」をドラッグストアなど流通チャネルでも販売開始したり、18年12月に大阪営業所を開設し西日本エリアの販路拡大を進めたりしました。
約63億7,000万円を研究開発費として全額費用計上したことにより、連結売上高2,715万円(前年同四半期は連結売上高750万円)、セグメント損失は65億438万円(前年同四半期はセグメント損失9,510万円)となりました。
18年10月にバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが竣工し、本格稼働に向けた準備を進めています。
また、経済産業省資源エネルギー庁の「微細藻類燃料生産実証事業費補助金」を活用し、三重県にある多気クリスタルタウンにおいて、燃料用微細藻類の大規模、低コスト生産技術の確立を目指す研究開発活動を実施しています。
2020年に日本初の有償フライト実現に向けてミドリムシ(学名:ユーグレナ)由来の次世代バイオ燃料の実用化を目指しています。
19年9月期は、ヘルスケア事業においては、主に直販事業において広告投資の効率性を重視する方針を維持し、戦略商品の開発に注力していく予定です。
エネルギー・環境事業においては、バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが竣工することに伴い、建設費等63億7,000万円について研究開発費として全額費用計上した結果、セグメント損失が一時的に拡大する見込みと発表しています。
その結果、業績予想としては、売上は前年比を上回るものの、営利・親会社株主に帰属する当期純利益ともに赤字を見込んでいます。
なお、2020年9月期以降については、エネルギー・環境事業の研究開発コスト、その他の管理コストを上回る収益をヘルスケア事業において達成することで、営業利益の黒字回復を目指しています。
株式会社ユーグレナは、ミドリムシ(学名:ユーグレナ)を中心とした微細藻類に関する研究開発及び生産管理、品質管理、販売等を展開しています。
東京大学発ベンチャーとして、2005年に創業。
15年12月、世界で初めてミドリムシの食品用途屋外大量培養に成功しました。
これを基に、 健康食品や化粧品の開発・販売のほか、二酸化炭素固定化、水質浄化やバイオ燃料の生産に向けた研究を行なっています。
18年12月には、ユーグレナ粉末やユーグレナ特有の機能性成分であるパラミロン粉末を継続摂取することで、肝星細胞の活性化が抑えられ、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)肝臓の線維化が抑制されることを示唆する研究結果を公表しました。
画像出典元:「株式会社ユーグレナ」決算説明資料・公式HP
2018年通期では過去最高の売上高を達成するも、最終損益は△12億5,200万円と大幅な赤字に転落しました。
ヘルスケア製品の売上は順調ですが、上半期に広告宣伝投資を積極的に行ったこと、バイオ燃料製造実証プラントの建設・稼働準備やバイオ燃料関連研究の費用が増加したのが影響しました。
来期は日本初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが竣工することに伴い、建設費等63億7,300万円を研究開発費として全額費用計上するため、さらに赤字が拡大する見込みです。
画像出典元:「株式会社ユーグレナ」決算説明資料
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