音楽事業をはじめ、アニメ・映像事業、デジタル事業を展開する「エイベックス」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し大幅な減収減益となっています。
大幅な減収減益となった主な要因は、音楽事業において音楽ソフトの販売及びライヴの公演数が減少したこと等によるものです。エイベックスの主力事業はもちろん音楽事業で、全社売上の8割近くを占めています。
その音楽事業の売上高は前年同期比22.1%減の784億円、額にして222億円減少しています。ライヴの公演数は前年同期比で133公演減少し、音楽パッケージの売上は前年同期比で半減。
音楽パッケージにおいては、特に音楽DVD/Blu-rayは数字が一桁違います。前年の安室奈美恵さん引退効果の反動減が響きました。
アニメ・映像事業は映像関連イベント及びパッケージ作品の売上の増加等により増収増益を達成しましたが、音楽事業をカバーするほどの規模までには至っていません。
転換期を迎えているエイベックスですが、新規事業も積極的に展開しています。
2月4日、エイベックスは東芝デジタルソリューションズ株式会社(TDSL)との間で株主間契約を締結し、新会社「コエステ株式会社」を設立後、TDSLより第三者割当の形で出資を受けると発表。新会社は2月5日に設立されました。
エイベックスはTDSLとの間で、AIと音声合成技術を活用し、タレント・著名人の「コエ(声)」の新たなサービスを展開するための新会社設立に向けた基本合意を締結し、両社で検討を進めていました。
TDSLは音声合成技術を活用した声のプラットフォーム「コエステーション」を新会社に譲渡するとともに、3月中を目途に新会社に対して出資を行うとのこと。
画像出典元:コエステーション公式HP
新会社は、エイベックスが保有するIP(知的財産)に加え、国内外のあらゆる「コエ(声)」を利用したサービスを展開し、音声コンテンツの新しい市場の創造と拡大を目指していくとしています。
足元の業績を踏まえ、通期の業績予想を下方修正しました。
音楽事業の売上高減少により、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益が減少する見込みとなり、前期比増益予想から一転、減益予想となりました。
なお、「一部タレントに関わる損失等は現在精査中であるため織り込んでいない」とのことですが、一部タレントとは麻薬取締法違反罪で逮捕された沢尻エリカ被告を指しているのでしょう。損失が確定すれば、最終利益はさらに落ち込む可能性があると思われます。
また1月15日、エイベックス所属のアーティスト「AAA(トリプル・エー)」が 2020年12月31日をもって活動を休止すると発表。AAAは2005年にデビューしましたが、当初は8人だったメンバーが現在は5人に。リーダーが暴行容疑で逮捕されるなどのトラブルもあり、リーダーの蒲田直也さんは2019年12月31日付でグループを脱退しています。
音楽パッケージにおいては、1月22日に発売されたジャニーズ事務所のアイドルグループ、Snow Man(スノーマン)のデビュー曲「D.D.」が貢献すると思われます。
なお、同じくジャニーズ事務所のSixTONES(ストーンズ)はソニー・ミュージックレーベルズからのデビューですが、Snow ManのCDにはSixTONESのデビュー曲「Imitation Rain」も収録されています。逆も然り。そのため発売3日でミリオン達成しましたが、これは合算の数字です。
ライヴに関しては今後、新型コロナウイルスの感染拡大によっては中止となる可能性も。しばらく厳しい状況が続くと思われます。
画像出典元:「エイベックス株式会社」業績説明資料
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し大幅な減収減益、最終17億6,200万円の赤字となっています。
大幅な減収となった主な要因は、音楽事業の落ち込みによるものです。営業利益は、コスト削減が進んだものの、売上減少が響き赤字に転落。
11月16日、エイベックス・マネジメント所属の沢尻エリカが麻薬取締法違反の容疑で逮捕されました。同日、同社は「現在事実関係を確認中で、本人の処遇については、捜査の進捗を見守りつつ厳正に対処する」というコメントを発表。エイベックスの株価は18日に急落しましたが、20日には値を戻し、今のところそれほどダメージはないようです。
セグメント別の業績を見ていきましょう。
●音楽事業
音楽事業の売上高は、音楽ソフトの販売やライヴの公演数が減少したこと等により前年同期比30.7%減の476億4,400万円、営業利益は14億1,300万円の赤字に転落。
なかでも、音楽パッケージの売上高は前年同期比6割減と大幅な減収に。前年同期には昨年引退した安室奈美恵さんのDVD発売、またEXILE、三代目 J SOUL BROTHERSのアルバム発売があったことの反動によるものです。
ライブについては、公演数、観客動員数ともに減少しています。エイベックスの主力アーティストであるAAA(トリプル・エー)、東方神起のツアーは下期に予定されているため、売上は下期に偏る見込みです。
●アニメ・映像事業
アニメ・映像事業の売上高は前年同期比11.3%増の66億7,600万円、営業利益は8,000万円と、前年同期1億200万円の赤字から一転、黒字に転換しています。これは、高単価商品の販売が増加し、映像パッケージの単価が増加したことによるものです。
作品としては「ゾンビランドサガ」 SAGA. 3が好調です。
●デジタル事業
デジタル事業は、映像配信サービスの会員数の減少により前年同期比19.0%減の74億3,700万円となりましたが、営業利益は販売費及び一般管理費が減少し前年同期比32.4%増の11億6,700万円となりました。
●その他事業
その他事業は、売上高は前年同期比28.6%増の19億8,900万円、営業利益は5億2,200万円の赤字となりましたが、海外子会社の費用が減少したこと等により赤字幅は縮小。
上期は赤字となりましたが、下期にはAAA、東方神起、BLACKPINKといった主力アーティストのライヴがあります。また、ジャニーズのSnow Manや東方神起の作品も下期に発売予定。下期に売上が伸びるとしているため、業績予想に変更はありません。
エイベックスは11月7日、個人クリエイターが所属する株式会社LIVESTARと、ゲームの企画・開発を行う株式会社fuzzを子会社化したと発表。
また同日、子会社であるエイベックス・テクノロジーズ株式会社は、VR/AR/MR の企画・開発・コンサルティングを行う株式会社エクシヴィと合弁会社を設立すると発表。
ネットクリエイター領域、テクノロジー領域への新規ビジネスへの創出を目指したM&A、ジョイントベンチャーとのことです。
画像出典元:「エイベックス株式会社」業績説明資料
音楽事業をはじめ、アニメ・映像事業、デジタル事業を展開する「エイベックス」の決算を見ていきます。
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し減収、営業利益は2.3倍となったものの最終3億4,800万円の赤字となっています。
減収となった要因は、音楽事業において音楽ソフトの販売及びライヴの公演数が減少したことによるものです。アルバム、シングル、DVD/Blue-rayすべてにおいて単価・枚数ともに前年同期比で減少しています。アルバムに至っては、ほぼ半減の売上枚数に。
一方、音楽配信の売上は伸長しています。
なお、当第1四半期における主要タイトルの音楽パッケージ売上枚数は、アルバムCDでは、Kis-My-Ft2の「FREE HUGS!」が26万枚、シングルCDでは、V6の「ある日願いが叶ったんだ/All For You」が12.3万枚となっています。
営業利益が大幅増となったのは、アニメ・映像事業において映像ソフト作品の販売が増加したことや、デジタル事業において販売費及び一般管理費が減少したことによるものです。
純利益は、営業外費用や特別損失の影響等により赤字幅が拡大しました。
通期の業績予想に変更はありません。売上高は非開示ですが、営業利益、純利益ともに増益を見込んでいます。
エイベックスは、2017年まで6年連続メーカー別セールスシェア1位を獲得していましたが、2018年に1位の座をソニー・ミュージックエンタテインメントに明け渡し、2位に陥落。
エイベックスの売上の8割近くを占める音楽事業を取り巻く環境は、音楽パッケージ市場の縮小で厳しい状況が続いていましたが、有料音楽配信市場においてサブスクリプション型が貢献し、市場は回復基調となっています。にもかかわらず、エイベックスは伸び悩んでいます。
なお、2018年に音楽パッケージが伸びているのは安室奈美恵効果によるもので、一時的なものです。
参考資料
業績とは関係ないところで、浜崎あゆみとエイベックス松浦会長の交際を綴った小説「M 愛すべき人がいて」(幻冬舎)が8月1日に発売され話題になりましたが、話題になっただけで、8月8日の決算発表後、エイベックスの株価は急落しています。
画像出典元:「エイベックス株式会社」業績説明会資料
2019年3月期通期の業績は、前期に対して減収、営業利益は増益となったものの経常利益、純利益は減益となりました。
減収の主な要因は、NTTドコモとの協業によって提供する動画配信サービス「dTV」の会員減少によりデジタル事業の売上が大幅に減少したことによるものです。
営業利益においては、アニメ事業の利益が減少したものの、本社ビルの建て替えが完了し、仮移転先の家賃や備品等のコスト減少により増益となりました。
一方、純利益は特別損失を計上したことにより減益となりました。
セグメント別売上高変動の内訳
音楽事業は、音楽パッケージ販売の増加、販管費の減少等により増収増益となりました。
アルバム販売枚数が前期比で234万枚も減少したのは、2018年3月期には安室奈美恵の最後のベストアルバム「Finally」のリリースにより大幅な販売枚数増があったことによるものです。
DVD/Blu-rayの販売枚数が前期比で110万枚も増加したのは、安室奈美恵の「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」のリリースによるものです。2019年3月期は、DVD/Blu-ray売上の5割が安室奈美恵の「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」という結果になりました。
「引退バブル」とも言われましたが、この2年は安室奈美恵のエイベックスへの貢献度は計り知れないものとなりました。
ライヴにおいては、スタジアム公演が減少したことにより、動員数・チケット単価ともに減少しました。
2018年3月期はBIGBANGによるスタジアム公演がありましたが、メンバー5人中4人が入隊のため現在は活動休止中。最年少のV.I(スンリ)はソロで活躍していましたが、性接待疑惑により引退を表明。他のメンバーもスキャンダルが相次ぎ、5人での再活動は難しい状態です。
また、主力アーティストのAAA(トリプル・エー)のリーダー・浦田直也容疑者が暴行容疑で4月20日に逮捕されました。翌21日には釈放されて謝罪会見を開きましたが、株価は急落。アーティストの不祥事が株価や業績に影響を与える事態となりました。
エイベックスの株価推移
アニメ事業はヒット作が生まれず、赤字。利益率も低下しました。
映像配信サービスの会員数が減少したこと等により減収減益となりました。「dTV」の会員獲得に苦戦しています。
海外事業は赤字となりました。海外100%子会社であるAvex International Inc.の清算に伴い、減損損失、事業整理損失引当金繰入額及び事業整理損として10億9,000万円を特別損失に計上。
上記報告セグメント以外、不動産賃貸事業等を含むその他の事業は増収増益となりました。
売上高は非開示ですが、増益を見込んでいます。
テクノロジーが凄まじい勢いで成長し、新しいテクノロジーに対応できないと淘汰されるという時代背景のなか、エイベックスは「Entertainment×Tech×Global」をキーワードとした100%子会社、エイベックス・テクノロジーズ株式会社を設立。
事業内容は、クラウド及びブロックチェーン技術を用いたIP(ゲーム、映像、音楽及びVR等) 並びにシステムの企画、開発、制作及び販売等となります。
また、「成長戦略2020」の目標値を取り下げ、新たに2024年3月期に営業利益200億円を目標値に設定。やはり、2020年度に売上⾼2,500億円、営業利益200億円という目標は難しかったようです。
エイベックスグループは、エイベックス及び連結子会社19社並びに持分法適用関連会社6社の合計26社により構成されており、音楽事業、アニメ事業、デジタル事業及び海外事業を主として営んでいます。
音楽コンテンツの企画・制作・流通、アーティスト・タレントのマネジメント、マーチャンダイジング及びライヴ・コンサートの企画・制作・運営等
アニメにおける360度ビジネス
デジタルコンテンツの企画・制作・流通等
北米及びアジアにおけるエンタテインメントコンテンツの企画・制作・流通等
画像出典元:「エイベックス株式会社」業績説明資料
2019年第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となりました。増収の主な要因は、音楽事業において音楽ソフト作品の販売が増加したことによるものです。
増益の主な要因は、音楽ソフト作品の販売増加に加え、利益率の高い公演が増加したことによるものです。
累積では増収増益ですが、第3四半期においては前年同期に対し売上高△24.8%、営業利益△41.2%と大幅な減収減益となりました。
前年は、安室奈美恵の最後のベストアルバム「Finally」をリリース。200万枚以上販売し、最終的に前期のエイベックスのアルバム売上の4割が「Finally」という驚異的なセールスを記録しました。
昨年9月16日に引退した安室奈美恵のアルバムやミュージックDVD/Blu-rayのセールスが引退後も伸び続け、「オリコン年間ランキング2018」において年間アーティスト別セールス部門で首位を獲得しました。
8月29日に発売された「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」は175万枚売り上げ、年間総合ミュージックDVD/Blu-rayランキング1位を獲得。2位の嵐の2.4倍という累積売上数を叩き出し、圧倒的な差をつけての1位となりました。
エイベックスのDVD/Blu-rayの売上の7割弱が安室奈美恵となっています。
一方、アニメ事業はパッケージ販売の減少等に伴い減収減益、3億円の赤字となりました。デジタル事業は映像配信サービスの会員数減少により減収となりました。
エイベックスは、2016年に「avex group 成長戦略2020~未来志向型エンタテインメント企業へ~」という成長戦略を発表しました。
創業以来右肩上がりで成⻑し、2000年代の踊り場の局⾯では、第⼆の創業を掲げた構造改⾰の実施により成⻑軌道に復帰しました。しかし、近年は再び踊り場に直⾯。
そのため、「成長戦略の強化」「組織の改革」「理念の見直し」といった全社的な改革を実施し、これを第三創業と位置づけました。
第三創業に向けた成⻑戦略としては、成⻑市場への選択と集中として、ライヴ・アニメ・デジタル領域に注⼒。組織の改革としては、グループを大幅に再編し、2017年には事業ドメインを音楽・アニメ・デジタルの3つに集約しました。
業績が改善したのは2018年3月期で、5期ぶりの営業増益で着地。2020年度には、売上⾼2,500億円、営業利益200億円を目標とし様々な新規事業に取り組んでいます。
2018年で設立30周年の節目を迎えたエイベックスは、5月に社長交代の人事を発表しました。
創業者である松浦勝人氏は代表取締役社長CEOを退き、新代表取締役社長COOに黒岩克巳氏が就任。松浦勝人氏は代表取締役会長CEOに就任し、引き続きグループを統括するとともに新規事業創出に注力することとなりました。
今後は、引き続きコンテンツを中心に360°ビジネスを展開する会社であり続けることに加え、積極的に新事業を展開し、 戦略的投資・M&Aも行っていく予定です。
現状では、2020年度に売上⾼2,500億円、営業利益200億円の目標を達成するのは難しいと思われますが、積極的な姿勢のエイベックスに注目です。
画像出典元:「エイベックス株式会社」業績説明資料・公式HP
第2四半期累積業績は音楽ソフト作品の販売が増加したことや、利益率の高いライヴ公演が増加したことにより過去最高の売上を達成して黒字に転換しました。
音楽事業では前期のDVD/Blu-rayの売上枚数が49万枚に対して、今期は215万枚と約4倍に。そのうち180万枚が安室奈美恵の「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」となり、売上の8割を占めています。安室奈美恵が引退してしまった今、この数字は一時的なものと言えます。
アニメ事業は、パッケージ販売の減少に伴い減収減益。デジタル事業は、映像配信サービスの会員数の減少により減収となったものの、利益率は改善しました。
転換点を迎えるエイベックスは2018年10月にTikTokに大ヒット楽曲を含む2万5,000万曲を解放。新しいヒット曲を生み出せるか注目です。
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