紳士服・婦人服等の企画・仕入・販売を行う「ユナイテッドアローズ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益となっています。上半期2桁増益から一転、減益と苦戦しています。
増収となった主な要因は、新店出店に伴う増収やネット通販の伸長等によるものです。
一方、当第3四半期の売上高は、消費税増税による駆け込み需要の反動減、大型台風の上陸に伴う店舗売上高の減少、暖冬に伴う冬物衣料品販売の苦戦、システム開発の不具合による自社ネット通販サイト「ユナイテッドアローズ オンラインストア」の2ヶ月強の停止に伴うネット通販および実店舗売上へのマイナス影響等により、前年同期から3.4%減となっています。
下のグラフは、ユナイテッドアローズ単体の10月~1月の売上高、売上総利益計画差を表したものですが、マイナス要素が重なった10月に最も苦戦していることがわかります。
営業利益は、暖冬に伴う秋冬商品の値引販売の拡大等による売上総利益率の低下と、ネット通販に関連する広告宣伝費や人件費増等による販管費率の増加が響き、前年同期で減益に。
親会社株主に帰属する四半期純利益が前年同期比18.9%減となったのは、自社ECの開発に関わる無形固定資産(ソフトウェア)や営業店舗の一部について、計9億8,800万円の減損損失を特別損失に計上したこと等によるものです。
なお、グループ全体での新規出店数は19店舗、退店数は13店舗、当第3四半期連結累計期間末の店舗数は364店舗となりました。
足元の業績を踏まえ、通期の業績予想が下方修正されました。
上半期まで増益基調で推移していましたが、暖冬・大型台風・増税反動減・自社EC停止等が重なり苦戦しています。さらに減損損失が追加で発生する可能性もあるとのことです。
新型コロナウイルスに関しては、店舗の営業時間が変更になるなど既に影響が出ています。実店舗の影響をネット通販でカバーしていくとしていますが、どこまでカバーできるでしょうか。
商品については、ユナイテッドアローズ単体のオリジナル企画商品のうち約45%が中国産で、売上に占めるオリジナル企画商品の割合は60%弱。 4月末までの商品は既に手配が済んでいるということですが、長期化すると5月以降に影響が出てくると思われます。
画像出典元:「株式会社ユナイテッドアローズ」決算説明会資料
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益、すべての利益項目で2桁増益となっています。
増収となった主な要因は、新店出店に伴う増収、ネット通販の伸長等によるものです。実店舗は前年同期を下回ったものの、小売+ネット通販合計で前年同期を上回って推移。
自社ネット通販サイトの開発遅延により、9月12日からサイトは停止となったものの、他ショッピングサイトへ在庫を配分することでネット通販は前年同期比2桁増収と好調に推移。また、消費税増税前の駆け込み需要も売上を押し上げる要因となりました。
営業利益は、増収に加え、コーエンの宣伝販促費やユナイテッドアローズの固定費の減少等により2桁増益に。
グループ全体での新規出店数は12店舗、退店数は11店舗、当第2四半期連結累計期間末の店舗数は359店舗となりました。
ユナイテッドアローズは、今秋を目処に自社ECサイトの自社運営化を予定していましたが、サイトの切り替え直前に開発の遅延が発覚。従来、運営を委託していたZOZO子会社のアラタナとの契約は9月中旬終了予定としていたため、9月12日より自社ECサイトを停止する事態となりました。
サイトで商品を確認してから実店舗に来店する顧客が増えるなか、サイト停止は大きな機会損失に。そのため、自社運営化とオムニチャネル施策の開始を一旦延期し、アラタナに運営を再委託。11月27日に自社ECサイトは再オープンしました。
再オープンしたUAオンラインストア
自社運営化によるオムニチャネル施策を重点施策と謳っているユナイテッドアローズは、社内の組織体制を変更し、12月1日付で自社EC開発部を社長直下に新設。また、開発遅延とサイト停止に至った原因と責任の所在を明らかにし、調査結果に基づき、適切な処置を下すとしています。
ユナイテッドアローズは11月6日、株式会社Designs(デザインズ)を吸収合併すると発表。Designsは、客単価10万円超と富裕層を中心に売上が好調に推移しているものの、本部経費等をまかなえず収益面では赤字が続いていました。吸収合併することで効率的な運営をし、ハイエンドマーケットを担う事業として育てていくとしています。なお、当期の業績へ与える影響は軽微とのこと。
また、中国に現地法人を設立することも決定。グリーンレーベル リラクシングおよびコーエンを展開する予定です。
次に、CHROME HEARTS JP合同会社(以下、CHJP)について。CHJPは2016年から段階的にブランドホルダーへCHJPの株式を有償譲渡。2020年12月末に連結から外れ、2024年12月末に100%譲渡が完了します。
2020年12月末のCHJPの非連結化により、業績に一定のマイナスインパクトがあると見られます。
クロムハーツ
なお、10月以降、消費税増税による駆け込み需要の反動が見られますが、通期の業績予想に変更はありません。前期に対し、増収増益の見込みです。
画像出典元:「株式会社ユナイテッドアローズ」公式HP
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し増収、すべての利益項目で2桁増益となっています。中期経営計画最終年度は順調なスタートを切りました。
各社ともネット通販が伸長し、増収に貢献。売上総利益率は、天候不順の影響により値引販売が増加したことから前年同期比0.1ポイント低下の54.7%に。
大幅な増益となった要因は、コーエンにおける宣伝販促費やユナイテッドアローズの固定費減少により販管費率が前年同期から1.3ポイント低減したことによるものです。
●単体の業績
ユナイテッドアローズ単体では、販売チャネルではネット通販が、品目ではメンズドレス、メンズカジュアルおよびウィメンズ全般が好調に推移。
売上高は、小売+ネット通販合計で前年同期比2.2%増となったものの、実店舗では1.7%減と実店舗はやや苦戦しています。ネット通販は前年同期比14.5%増と好調に推移し、ネット通販の売上構成比は20.8%と前年同期より上昇。
主要サイトの動向としては、アマゾン以外では売上高が前年を上回っています。ネット通販の売上の半数はゾゾタウンが占めており、ユナイテッドアローズはゾゾタウン比率が高いことがわかります。
主要サイトの動向
●主な連結子会社の業績
グループ全体での新規出店数は5店舗、退店数は2店舗、当第1四半期連結累計期間末の店舗数は361店舗となりました。
なお、第2四半期では販管費が伸びる予定ですが、通期業績予想には変更ありません。
グループは、ユナイテッドアローズと5社の連結子会社(フィーゴ、コーエン、台湾聯合艾諾股份有限公司、Designs、CHROME HEARTS JP合同会社)および1社の持分法適用関連会社(fitom)の計7社で構成されています。
事業内容は、紳士服・婦人服等の衣料品ならびに関連商品の企画・仕入・販売を主たる業務としています。2019年6月末現在、グループ全体での店舗数は361店舗となっています。
店舗数:240店舗(2019年6月末現在)
ユナイテッドアローズは、国内外から調達したデザイナーズブランドとオリジナル企画の紳士服・婦人服および雑貨等の商品をミックスし販売するセレクトショップを展開しています。
主にトレンドマーケットを担っています。
主にミッドトレンドマーケットを担っています。
各事業の過年度在庫や期中スローセラー商品を継続的に消化する役割を担っています。
画像出典元:「株式会社ユナイテッドアローズ」公式HP
2019年3月期通期の業績は前期に対し増収増益となり、2期連続の増収増益を達成しました。会社別ではユナイテッドアローズ、コーエン等が増収し、販売チャネルではネット通販が大幅増。
暖冬の影響で冬物商品の値引増がありましたが、在庫の効率化が進み、売上総利益率は前期とほぼ同水準の51.4%に。
既存店売上高は前期比6.2%増と好調に推移し、うち小売が1.6%増、ネット通販が21.7%増と、小売、ネット通販ともに前年、及び計画を上回り順調に推移しました。
売上構成比は、ネット通販が前期比1.7ポイント増の20.0%に。
ユナイテッドアローズ単体においては、高価格帯ではメンズカジュアルおよびウィメンズ全般が、中価格帯ではウィメンズ全般が好調に推移。小型事業では、特にドゥロワーが好調に推移しました。
DRAWER(ドゥロワー)
グループ全体での新規出店数は29店舗、退店数は18店舗、当連結会計年度末の店舗数は358店舗となりました。
ユナイテッドアローズは、この10年で2度の減益局面を経験しています。1度目は2007年3月期から2009年3月期までの3年間、2度目は2015年3月期から2017年3月期までの3年間。
1度目の減益局面においては、創業者の重松理氏(現・名誉会長)が会長から社長に復帰し立て直しを図った結果、2010年3月期に4期ぶりの増益を果たしました。その後5年間、増益基調にあったものの、2015年3月期から2度目の減益局面に。
これを打開すべき「UAグループ中期ビジョン」を策定。この中期ビジョンに沿った戦略が奏功し、2018年3月期には4期ぶりの増益を果たしました。
① 強い経営基盤の確立
② 実店舗の強みを活かしたEC(ネット通販)の拡大
③ 既存事業のマーケット変化への対応
④ 未来の成長に向けた取組の実施
2018年3月期は「収益性の早期改善」、2019年3月期は「中期戦略の徹底推進」を単年度経営方針として掲げ、すべての定量目標が計画を上回り推移しました。
【グラフ】売上高と経常利益の推移画像出典元:総合レポート2018(2018年3月期)
具体的な取り組みとして、まず不採算2事業の撤退を実行。加えて退店すべき店舗を見極め、2年間で49店舗の出店、51店舗の退店を実行。これらの施策により、小売既存店の売上高は2年連続で前年を上回りました。
また、2018年3月期にはブランドサイトと自社ECサイトの統合、ネット通販在庫の拡充、自社EC体制変更に向けた準備等を進め、2019年3月期には自社EC体制変更も踏まえた物流機能の再編を実施。これらの取り組みにより、ネット通販の既存店売上高は4期連続で2桁増となりました。
出店に関しては、中価格帯の店舗出店を拡大させました。
2020年3月期は、3期連続の増収増益となる見込みです。
今秋の自社ECサイトの運営体制変更により、ネット通販の強化を図るとともに、実店舗では付帯業務に限定したアルバイト採用を拡大し販売員が接客に集中できる環境を整えていくとのこと。
4月には、7年ぶりに経営理念の改定を実施。「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」という新たな経営理念を軸に、強い経営基盤を確立し、持続的な成長へつなげていくとしています。
画像出典元:「株式会社 ユナイテッドアローズ」決算説明会資料・公式HP
2019年第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期に対し+2.3%の増収となりました。第3四半期において冬物商品の早期値下げ等を実施したため、営業利益、経常利益は減益となりましたが、計画を上回り進捗しています。
販売費及び一般管理費は、ユナイテッドアローズにおける物流倉庫再編にかかるコストや株式会社コーエンにおける宣伝販促費の増等に伴い、前年同期比+3.3%となりました。
【グラフ】連結売上高と営業利益率の推移
上のグラフのとおり、売上高は年々増加していますが、営業利益率は減少傾向にあります。2018年度は少し持ち直して6.8%となりました。物流センターの移管やUAオンラインストア開発・運営体制の変更により、今後どこまで持ち直すか注目です。
なお、今期の業績予想は増収増益となっています。
当第3四半期連結累計期間において、単体の既存店売上高は前年同期に対し+5.9%となりました。既存店小売が+2.0%なのに対し、ネット通販は+20.4%と2桁増となりました。単体ネット通販売上構成比も前年同期から1.3ポイント上昇し、19.0%となりました。
連結子会社においてもネット通販は好調に推移しています。主な連結子会社の業績は、株式会社フィーゴが減収減益、株式会社コーエンが増収減益、CHROME HEARTS JP 合同会社が減収減益となりました。
グループ全体での新規出店数は21店舗、退店数は12店舗、当第3四半期連結累計期間末の店舗数は356店舗となりました。
ユナイテッドアローズは、将来的なUAオンラインストアの運営も視野に入れた流山物流センターを2018年5月に開設しました。これに伴い、これまで外注でZOZO子会社のアラタナがUAオンラインストアの運営を担ってきましたが、来期下期には自社主導での開発・運営体制に移行します。
外部に委託していた物流とカスタマーサポートも自社運営に切り替え、実店舗とネット通販を融合させたオムニチャネル化を推進していきます。なお、自社ECの運営委託を解消してもZOZOTOWNへの出店は継続します。
画像出典元:「株式会社ユナイテッドアローズ」決算説明会資料・公式HP
新店出店に伴う増収、既存店の増収、ネット通販の伸長等により2019年第2四半期連結累計期間は増収・増益に。販売チャネルではネット通販が、品目ではウィメンズが好調に推移しました。
グループ全体での新規出店数は15店舗、退店数は9店舗により、店舗数は353店舗となりました。
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