トステム、INAX 、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合して誕生した株式会社LIXILを中核とした持株会社「LIXILグループ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益、最終利益は14倍と好調に推移しています。LIXILグループは、売上収益の7割が国内事業。その国内事業において、消費増税前の駆け込み需要があったことが牽引しました。
特にリフォーム事業が消費増税の影響を受け、上期は好調に推移。さらに工事能力が需要に追いつかず、工事が10月以降にずれ込んだことで10月も引き続き好調に推移。
一方、11月中盤からは需要の反動減が見られ、12月はかなり冷え込んだことにより、第3四半期は苦戦。累計では増収増益ですが、第3四半期単独では減収減益となりました。
海外事業に関しては、売上は伸び悩んだものの、セールスミックスの変化等により増益を確保。
足を引っ張っているペルマスティリーザ社は、当第3四半期までに1億ユーロ(1ユーロ=120円換算で約120億円)の資本注入を実施。リストラクチャリングにより来期には黒字化する見込みです。
最終利益は、事業利益の増加に加え、⼦会社株式・関連会社に対する持分の売却益124億円の計上を主因として大幅な増益となりました。
LIXILグループは構造改革の遅れを取り戻すため、さまざまな施策を実施、または予定しています。
1月27日、LIXILグループは100%連結子会社であるLIXILとの合併について検討を開始すると発表。
合併検討の⽬的は、LIXILグループとLIXILの⼆層構造解消による意思決定の迅速化、経営・⼈的資源の重複解消による経営効率の改善、経営の透明性向上によるコーポレート・ガバナンスの強化。
合併完了時期等、詳細はまだ決まっていませんが、オペレーションとしては4月より一体の会社として運営していくそうです。
また、2月7日付けの『日経ビジネス電子版』において「建材・住設機器大手のLIXILグループが、ホームセンター事業を手掛ける上場子会社LIXILビバを売却する検討に入った」と報じられたことを受け、LIXILビバの株価は続伸。ただし、この件に関してLIXILグループは「現段階において決定している事実はない」とコメントしています。
2019年11月25日、LIXILグループは早期退職社を優遇する「キャリアオプション制度」の導入を発表。
運用期間は5年で、対象者は50歳以上かつ勤続10年以上の正社員。初年度の募集期間は2020年2月17日から2月28日までで、退職日は6月25日。募集人数は定めていません。
特別退職⾦・再就職⽀援サービスにかかる費⽤は、第4四半期に販売費及び⼀般管理費として費⽤計上する予定です。
利益に関しては既に計画を上回っていますが、通期業績予想は据え置かれています。
構造改革の遅れを取り戻すためのコストが読み切れていないことに加え、消費増税後の需要減や新型コロナウイルスの影響がどこまで出るか不透明であるためです。
瀬戸氏が社長に返り咲き、業績はV字回復していますが、消費増税後はリフォームや新設着工数減と市場は縮小傾向。また新型コロナウイルスの影響もあり、第4四半期以降の業績に不安視する声も上がっています。不安材料を払拭できるか、今後の構造改革に注目です。
画像出典元:「株式会社LIXILグループ」決算説明資料
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し売上高は+4.2%成長、事業利益は2.5倍、最終利益は黒字に転換しています。利益に関しては計画を大きく上回って着地。
増収となった要因は、ビルディングテクノロジー事業を除くすべての事業が好調に推移したことによるものです。なかでも、基幹事業であるハウジングテクノロジー事業とウォーターテクノロジー事業が牽引。1-3⽉期の新設着⼯数の増加、消費税増税前の駆け込み需要増等を背景に国内事業が好調に推移しました。
売上総利益率が前年同期比で1.0ポイント上昇し31.2%となったのは、セールスミックスが良かったことと、利益率の高いエクステリア・インテリア建材の売上が伸長したことによるものです。
一方、海外事業はほぼ横ばいで推移。地域別に見るとヨーロッパは善戦し、アフリカは赤字を脱却。アジアは、東南アジアは苦戦していますが、中国は依然好調です。
【グラフ】売上収益・事業利益の増減
事業利益は、増収に加え、タレントの不祥事で上半期はCMが放映できなかったこと、セールスミックス改善等により前年同期比2.5倍と大幅な増益に。
最終利益が大幅な増益となったのは、事業利益の増益に加え、⼦会社株式・関連会社に対する持分の売却益125億円を計上したことによるものです。
LIXILグループは10月31日、昨年の代表執行役の異動にかかる意思決定プロセスと、2019年5月25日開催の第77回定時株主総会の運営についての諸問題について、ガバナンス委員会の検証結果を発表。
検証の結果、ガバナンス体制自体に重大な欠陥はないものの、「コーポレートガバナンス・ガイドライン、指名委員会規則におけるあいまいな表現の存在」「客観性および公平性の欠如」の2点が根本原因として引き起こされたものであるということです。
再発防止のための是正措置として、取締役会および法定の委員会の運営を定めるすべてのガイドライン、規則の明確化と、ガバナンス委員会を取締役の中に常設させるとしています。
上半期は、利益については計画を大きく上回って推移しましたが、通期の業績予想は据え置かれています。これは、上半期は消費税の駆け込み需要があったこと、新設着⼯数が減少していることを踏まえ、売上収益に関して慎重に見ているとのこと。
また、上半期はタレントの不祥事で行えなかったマーケティングを下半期は行うこと、8ヶ月間不在で着手できなかった構造改革に着手すること、そして為替の影響も鑑みると、利益水準が下半期は低くなる見込みです。
画像出典元:「株式会社LIXILグループ」決算説明会資料
建材・設備機器の製造、販売など住宅関連サービスを幅広く展開する「LIXILグループ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し増収増益、最終利益は4倍になっています。
事業別に見ると、ビルディングテクノロジー事業を除く全事業において増収増益を達成する一方で、ペルマスティリーザ社及び同社子会社に関連する事業が含まれるビルディングテクノロジー事業は29億円の赤字に。
国内の売上収益は、ハウジングテクノロジー事業とウォーターテクノロジー事業が牽引し+5.1%成長しています。
ハウジングテクノロジー事業ではエクステリア、インテリア建材が、ウォーターテクノロジー事業では衛生陶器の売上が好調に推移。これは、1-3⽉期の新設着⼯数が増加したことによるものです。
一方、海外の売上収益は、北⽶・アジア地域でウォーターテクノロジー事業が苦戦したことや、為替の影響もあり、前年同期⽐2.6%の減収に。為替影響を除くと海外売上成⻑は+0.3%となります。
【グラフ】売上収益・事業利益の増減
事業利益は、販管費抑制により前年同期比2.5倍に。ピエール瀧さんの問題でCMを中止せざるを得なくなったことも販管費抑制につながりました。抑制というよりも、使えなかった部分も。
最終利益が大幅な増益となっているのは、販管費抑制による事業利益の改善と、関連会社に対する持分の処分益110億円を計上したことによるものです。
業績もさることながら、お家騒動の結末も気になるところではないでしょうか。
6月25日の定時株主総会で、プロ経営者と言われる瀬戸氏が取締役代表執行役社長兼CEOに就任、創業家の潮田氏と社長の山梨氏は、それぞれ代表執行役会長兼CEO、取締役代表執行役社長兼COOの座を退任することが決定されました。
これで、2018年10月に瀬戸氏が社長兼CEOを突然解任されて以降、勃発していたお家騒動に一旦の決着が着いたことになります。騒動が収束するまで8ヶ月要しました。
画像出典元:SBI証券
株価推移を見ると、瀬戸氏が解任された後、株価は急落しましたが、瀬戸氏が社長兼CEOに返り咲くと回復しています。市場が瀬戸氏に期待していることが伺えます。
瀬戸氏が返り咲いたことで、今後の戦略的方向性も一転しています。潮田氏体制のもとでは、「MBO・本社移転・シンガポール上場という一連の計画を検討することを取締役会で決議している」という報道も出ました。
瀬戸氏が社長に返り咲くと一転、「本社機能の国外移転、国内の証券取引所における上場廃止および海外の証券取引所における上場については検討を行わない」と正式に発表されました。
業績予想に変更はありませんが、懸念事項はペルマスティリーザの構造改革費用と、新設着工数の減少です。4月、5月の新設着工数が前年同期比で減少しているので、第2四半期の売上収益に影響があると思われます。
瀬戸氏もそのことに危機感を持っており、今後は事業構造・コスト構造の見直しを行うとともに、損益分岐点を下げ、外部環境の変化に影響を受けにくい経営構造への変⾰を加速させていくとしています。返り咲いた瀬戸氏の手腕に注目です。
画像出典元:「株式会社LIXILグループ」決算説明会資料
2019年3月期連結会計年度における業績は、前期に対し増収減益、最終522億円の赤字となりました。
上期には国内自然災害による落ち込みの影響があったものの、下期は国内事業が持ち直し、売上収益は前年並みに。
利益面においては、ペルマスティリーザ社の業績悪化に伴い、今後の物件完成までに要する工事コストの損失引当や貸倒引当金の計上等を実施した結果、大幅な減益となりました。
加えて、ペルマスティリーザ社の売却を前提として前連結会計年度に計上していた繰延税金資産の減少に伴う法人所得税費用の増加等により、最終522億円の赤字となりました。
業績悪化の要因であるペルマスティリーザ社の中国企業への売却が米国の対米外国投資委員会(CFIUS)から承認されなかったことは、LIXILグループにとって大きな痛手となりました。
⽇本事業の売上は横ばい。海外事業は積極的なマーケティングが奏功し、中国を中心に増収に。
一方、販管費削減を進めるも、商品構成の変化に伴う粗利減や資材価格の上昇、アジア地域におけるショールーム設置等の先行投資が響き減益となりました。
下期における需要回復により、増収。
一方、利益面においては、コストダウンによる粗利率改善に努めたものの、上期に発生した国内自然災害による工事遅延の影響や資材価格の上昇などもあり減益に。
ペルマスティリーザ社及び同社子会社の事業等から生じる損益を継続事業からの損益として表示することとなったことに伴い、同社及び同社子会社の事業を「ビルディングテクノロジー事業」に含めています。
堅調なビル需要により、国内事業は増収。
一方、ペルマスティリーザ社の収益性回復に向けた再生計画の策定にあたり全受注物件について厳格な精査を実施した結果、北米地域を主とした工事コストの引当や貸倒引当金の大幅な増加などにより、381億円の赤字となりました。
リフォーム関連売上が既存店売上を牽引し、増収増益となりました。
重点施策である新事業領域・⾮新築領域への注⼒により、増収増益となりました。
2020年3月期は、前期に対し増収増益、黒字転換を見込んでいます。
M&Aで急拡大してきたLIXILグループですが、買収後の海外子会社の不祥事や業績悪化が続いています。また、トップ人事を巡って混乱を極め、株価も大幅に下落。
今期は増収増益、中期経営計画においては2024年3月期に売上収益2兆円、事業利益1,250億円を見込んでいますが、先行き不透明感は拭えません。
米中貿易摩擦やブレグジット(英国のEU離脱)問題に加え、消費税増税の景気への影響が懸念されています。また、ペルマスティリーザ社の構造改革費用も見込まれます。
中長期的には新設住宅着工戸数の減少傾向が予想され、赤字が続くのではないかという見方も。
6月25日には定時株主総会が控えています。まずはトップ人事を巡る混乱に終止符を打てるか、注目です。
LIXILグループでは、「ウォーターテクノロジー事業」「ハウジングテクノロジー事業」「ビルディングテクノロジー事業」「流通・小売り事業」「住宅・サービス事業等」の5区分を報告セグメントとしています。
衛生設備、水栓金具、バスルーム、システムキッチン等の製造及び販売
サッシ、ドア、シャッター、内装建材類等の製造及び販売
カーテンウォール等の製造及び販売
生活用品、DIY用品、建築資材等の販売
住宅ソリューションの提供、不動産の販売・管理、介護付マンションの運営等
画像出典元:「株式会社LIXILグループ」決算説明資料・中期経営計画
2019年第3四半期の連結業績は、増収減益となりました。
前年同期で比べると減益していますが、上期に86億円の赤字だった四半期利益が、今期は21億円に回復しています。
主力の国内事業が貢献し、中でもハウジング事業が増収増益となり、全体の減益幅が縮小しました。
第1四半期連結会計期間より、報告セグメントを6区分から5区分に変更しています。
第3四半期3ヵ⽉においては、ハウジング事業の貢献を主因として増収、減益幅縮⼩となりました。
2017年8月、LIXILグループの財務体質を悪化させる要因となっていたイタリア建材子会社「ペルマスティリーザ」の株式を、中国の建築装飾の設計・施工などを手掛ける「グランドランド社」に約600億円で譲渡すると発表していました。
しかし18年11月、対米外国投資委員会(CFIUS)から売却の承認を得られず、この契約は解除となりました。
これにより、ペルマスティリーザが継続事業となり235億円の減益要因となったため、19年3月期の連結純利益は、従来見込んでいた500億円から15億円に下方修正しました。
株式会社LIXILグループは、LIXILグループの純粋持株会社です。
建築材料・住宅設備機器を扱う「株式会社LIXIL」や、ホームセンター・ビバホームを運営する「株式会社LIXILビバ」など、約300社の事業会社で構成され、約150の国と地域で商品・サービスを提供しています。
1949年に「日本建具工業株式会社」設立。2012年、現在の社名に変更しました。
主な事業は、住宅資材・住宅設備機器製造で、アルミサッシ・水回り製品でトップクラスです。
東京証券取引所第1部と名古屋証券取引所第1部に上場しています。
2019年上半期の事業利益は1,379億円、前年比-66.1%となりました。
2019年第1四半期で新取引制度を導⼊したことで約35億円を計上したことが響いています。その他、国内では自然災害の影響によってリフォーム事業が軟調に、海外では資材価格の上昇によって費用が膨らみました。
2019年下半期は、売上高9,568億円、事業利益313億円を見込んでいます。
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