素材から部品、デバイス、機器、サービスやネットワーク事業など多岐にわたる事業をグローバル展開する「京セラ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収となったものの、すべての利益項目で2桁増益となっています。
売上高は、M&Aによる増収貢献が約500億円あったものの、中国景気減速の影響等により部品需要が減少したことを主因に、同期間として過去最高を更新した前年同期には及びませんでした。
一方、利益は、減収による影響はあったものの、ソーラーエネルギー事業及び有機材料事業において前年同期に計上した構造改革費用等、約685億円の影響がなくなったことにより前年同期比で2桁増益を確保。
なお、為替変動により、 売上⾼は約300億円、税引前利益は約105億円、前年同期比で押し下げられました。
世界的な景気減速の影響や⾃動⾞関連市場等での需要低迷により通期の業績予想が下方修正されましたが、前期比で増収増益見込みに変更はありません。
ソーラーエネルギー事業や有機材料事業は、前期までに実施した構造改革が寄与し、採算改善が進んでいる一方で、自動車関連市場や産業機械市場向け製品の需要は、世界経済の低迷が長期化していることから第4四半期も低調に推移すると予想されます。
なお、これは1月30日時点での業績予想のため、新型コロナウイルスの影響は含まれていません。中国において生産を行っているものについては、物流を含め不確定な状況が続いているとのことです。
来期には半導体市場の回復が見込まれるとともに、5G関連製品の需要増が期待されるとしていますが、こちらも新型コロナウイルスがサプライチェーンに影響を及ぼすと思われます。
画像出典元:「京セラ株式会社」決算カンファレンスコール資料
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は前年同期に対し減収減益、すべての利益項目で2桁減益となっています。
機器・システム事業の売上は、国内向け携帯端末の販売増を主因に増加。一方、部品事業の売上は、米国工具販売会社サザンカールソン社のM&Aがあったものの、米中貿易摩擦や中国景気減速等の影響による産業機械市場及び自動車関連市場の需要鈍化を受け減少。その結果、売上高は前年同期比でほぼ横ばいとなりました。
営業利益が大幅な減益となった主な要因は、部品事業の減収や為替の影響、減価償却費の増加等によるものです。
なお、通期の業績予想について変更はありませんが、セグメント別の予想については上期実績と下期見通しを踏まえ、修正されました。
「産業・自動車用部品」は、M&A寄与により売上高を上方修正する一方、利益については、相対的に収益性の高い既存事業の売上が中国景気減速等の影響を受け、期初の想定に比べ低い水準で推移していることにより下方修正。
「電子デバイス」は、AVX Corporation において在庫調整が想定以上に長引いているため、売上、利益ともに下方修正。「コミュニケーション」は、上期実績及び下期見通しを踏まえ、上方修正しています。
中国景気減速の影響を受けてもなお、前期比で増収増益、3年連続で過去最高の売上高更新を目指している強気な京セラ、下期に挽回できる注目です。
京セラグループでは、素材から部品、デバイス、機器、さらにはサービスやネットワーク事業に至るまで、多岐にわたる事業をグローバルに展開しています。
【部品事業】
【機器・システム事業】
【研究開発】
世界的な情報サービス企業であるクラリベイト・アナリティクスが企業や研究機関の中から「特許数」「特許の成功率」「グローバル性」「引用における特許の影響力」をベースに毎年100社選定する、「TOP 100 グローバル・イノベーター2017」を受賞。2014年から、4年連続の受賞となります。
京セラグループは、研究開発の成果である知的財産分野でも世界をリードしています。
画像出典元:「京セラ株式会社」プレゼンテーション資料
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し減収減益、すべての利益項目で2桁減益となっています。
スマートフォンや半導体関連市場の伸び悩みに加え、米中貿易摩擦を起因とした先行き不透明感の高まりにより、売上高が前年同期比で減少。利益については、部品事業の減収に加え、減価償却費や研究開発費の増加、さらに創立60周年行事関連費用約55億円を計上したことにより、大幅な減益に。
セグメント別の業績をもう少し詳しく見てきましょう。
半導体関連市場の低迷、中国景気減速等の影響を受け、車載向けディスプレイや半導体製造装置用ファインセラミック部品等の売上が減少。事業利益は、減収の影響に加え、減価償却費の増加もあり、前年同期比で53.9%減と大幅な減益に。
スマートフォン用セラミックパッケージの売上が減少し、減収減益に。スマートフォンや通信インフラ等の需要は底打ちしたものの、不透明感は継続しています。
流通網での汎用品の在庫水準の高まりや米中貿易摩擦の影響等により需要が減少したことを主因に、米国子会社AVX Corporationの売上が減少。事業利益は、減収及び減価償却費、研究開発費の増加により減益に。
通信機器事業の国内向け端末の販売台数が増加したことにより、前年同期比で増収に。事業利益は増収に加え、原価低減により黒字化しましたが、前四半期比では減収減益となっています。
円⾼の影響により減収減益となったものの、⽣産性向上や原価低減等の取り組みにより、利益率は10%以上を維持しています。
ソーラーエネルギー事業の売上が減少したものの、前期までに実施したソーラーエネルギー事業での構造改⾰効果により損失は縮⼩。
以上、部品事業においては3セグメントすべてが減収減益に。なお、米中貿易摩擦が長引き、先行き不透明感があるものの、通期の業績予想に変更はありません。
画像出典元:「京セラ株式会社」決算カンファレンスコール資料
2019年3月通期の業績は、前期に対し増収増益となりました。当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ466億7,100万円(3.0%)増加の1兆6,237億1,000万円となり、2期連続で過去最高を更新しました。
ソーラーエネルギー事業の受注減により「生活・環境」の売上は減少したものの、前連結会計年度に実施したM&Aの貢献もあり、「電子デバイス」や「産業・自動車用部品」の売上が増加しました。
一方、利益は一時損失として、ソーラーエネルギー事業において、ポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用等523億1,300万円、有機材料事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失161億8,400万円をそれぞれ計上しましたが、増収及び各部門での原価低減効果により、前連結会計年度に比べ増加しました。
京セラのセグメントは、「産業・自動車用部品」「半導体関連部品」「電子デバイス」「コミュニケーション」「ドキュメントソリューション」「生活・環境」の6つに分かれています。
【表】2019年3⽉期 事業セグメント別売上⾼
生活・環境セグメントの売上が減少したものの、産業自動車用部品、電子デバイスの売上が増加。
半導体関連部品、生活環境事業が一時損失を計上したことで減益となりましたが、産業自動車用部品、電子デバイスの売上増加により、グループ全体では増収増益となりました。
以下、セグメント別に細かく見ていきましょう。
売上高は前期比9.3%増の3,143億3,900万円、利益は増収及び原価低減により、22.5%増の384億5,000万円となり、増収増益となりました。
前連結会計年度に実施したM&Aにより、機械工具の売上が増加したことに加え、産業機械向けファインセラミック部品の売上が堅調に推移しました。事業利益率は前連結会計年度の10.9%から12.2%へ上昇しています。
売上高は前期比3.1%減の2,492億1,700万円、利益は前期比64.8%減の109億3,200万円となり、減収減益となりました。
スマートフォン及び光通信用セラミックパッケージの売上が減少しました。また、有機材料事業において減損損失161億8,400万円を計上しています。事業利益率は前連結会計年度の12.1%から4.4%へ低下しました。
売上高は前期比19.6%増加の3,648億2,700万円、利益は前期比43.5%増の669億2,600万円となり、増収増益となりました。
前連結会計年度にAVXが実施したM&Aによる貢献に加え、スマートフォン向けセラミックコンデンサの売上が増加しました。事業利益率は前連結会計年度の15.3%から18.3%へ上昇しました。
売上高は前期比1.4%減の2,520億6,700万円、利益は前期比134.1%増の103億9,300万円となり、減収増益となりました。
エンジニアリング事業を中心に増収となったものの、通信機器事業は主に国内向け端末の販売台数の減少により、減収となりました。
一方、事業利益は、通信機器事業において低採算製品の縮小及び原価低減による収益性改善が進んだことから、増益となりました。事業利益率も前連結会計年度の1.7%から4.1%へ上昇しました。
売上高は前期比1.1%増の3,751億4,700万円、利益は前期比6.6%増の435億2,800万円となり、増収増益となりました。
為替変動の影響はあったものの、複合機等の販売台数が堅調に推移したことに加え、M&Aの貢献もあり増収となりました。
また事業利益は、増収に加え、コスト低減や生産性向上により増益となり、事業利益率は前連結会計年度の11.0%から11.6%へ上昇しました。
売上高は前期比28.6%減の801億1,400万円、利益は670億1,600万円の損失(前期は554億92百万円の損失)となり、減収減益となりました。
主な原因は、ソーラーエネルギー事業の売上が減少したことによるものです。ソーラーエネルギー事業において、生産拠点の集約等、原価低減に取り組んだものの、減収及びポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用等523億1,300万円を計上したことが影響しています。
2020年3月期の売上高は、3期連続で過去最高となる1兆7,000億円を予想。税引前利益も約3割の大幅増となる1,800億円を見込んでいます。
⽬標に向けての重点施策として、事業拡⼤に向けた積極投資の継続を掲げており、設備投資額、研究開発費は過去最高の見通しとなっています。
各セグメントの業績予想は以下の通り。
全セグメントで増収となる見通しですが、スマートフォン市場の伸び悩みが予想されることから増収率は1桁前半にとどまっています。
一方で機器・システム事業では、特にドキュメントソリューションや生活・環境事業の伸びを見込んでおり、急成長を見込んでいます。
京セラは、2021年3月期の目標として、売上高2兆円、税引き前利益率15%の達成を掲げています。
それに向けて「生産性向上やプロセス改革」と「社内シナジーの強化及び外部協業の加速」を挙げており、目標達成に向けた重点施策として「事業投資に向けた積極投資の継続」「生産性倍増プロジェクトの一層の推進」「ソーラーエネルギー事業の事業モデルの転換」の3つを柱に掲げています。
積極投資の継続の一つとして、注力分野でのM&Aを積極的に行っていくとしています。
また、設備投資額と研究開発費を合わせた事業への投資額は3年前の1,200億円台から大幅に増加し、今期は2,000億円を予想しています。
設備投資への一例として、19年4⽉に稼働開始したベトナムの「京セラドキュメントテクノロジーベトナム第3⼯場」、8⽉稼働開始予定の「⿅児島川内⼯場 20⼯場」など続々と増設予定となっています。
研究開発では、19年5⽉以降順次稼働予定の「みなとみらいリサーチセンター(横浜市⻄区)」、19年4⽉に再編した「けいはんなリサーチセンター(京都府相楽郡)」の2点に集約させ、研究開発のスピードアップを図るとしています。好⽴地を活かしたオープンイノベーションの推進及び⼈材獲得を狙っています。
他にも、自社設備の開発・製造の新拠点として「滋賀野洲⼯場 新⼯場棟」が2020年4月稼働開始予定となっています。
生産性倍増プロジェクトを加速させる重要拠点として、スマートファクトリーの早期実現に向けた取り組みを進めています。
ロボットやAIを活用した高度な生産設備を自社で開発・制作していくとし、新棟建設によって設備の開発・制作スペースを現在の2倍に拡張することで、別々の場所にある各部門を集約し、よりスピーディーな開発体制の確立を図っていく狙いです。
画像出典元:「京セラ株式会社」決算説明会資料
2019年第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益となりました。売上高は、第3四半期連結累計期間としては2期連続で過去最高を更新しました。「電子デバイス」や「産業・自動車用部品」の売上がいずれも2桁増となり、グループ全体の増収を牽引しました。
減益の主な要因は、ソーラーエネルギー事業において、ポリシリコン原材料に関するヘムロック社との長期購入契約の和解費用等523億1,300万円を計上したことに加え、有機材料事業において、有形固定資産及びのれんに係る減損損失161億8,400万円を計上したことによるものです。
上記図の赤枠の「電子デバイス」「産業・自動車用部品」「ドキュメントソリューション」は増収増益となったセグメントです。前期から行ってきた積極的な投資やM&Aの効果が現れ、業績を伸ばすことができました。
青枠の「コミュニケーション」は、低採算製品の縮小を進めてきたことにより収益が改善しました。
通信機器事業では、採算面で課題のあった海外端末事業において収益性を重視するという方針のもと、期初からラインナップの見直しを実施しました。これにより携帯端末の販売台数が減少し減収となりましたが、収益は改善しました。
緑枠の「半導体関連部品」「生活・環境」では、一時的な損失の計上により大幅な減益となりました。
「半導体関連部品」は、光通信やスマートフォン用セラミックパッケージの需要減により減収となりました。有機材料事業においては、スマートフォン向け基板の需要低迷等により赤字となり、生産設備及びのれんを減損しました。
「生活・環境」では、ソーラーエネルギー事業の売上が減少しました。
2019年3月期業績予想を下方修正しました。
下方修正した主な要因は2点あります。
1点目は、主要市場での需要減。スマートフォン市場の生産調整に加え、産業機械市場でも半導体製造装置用部品等での投資抑制の影響を受けています。また、「ドキュメントソリューション」では欧米市場での販売が、「生活・環境」ではソーラーエネルギー事業の売上が前回予想を下回る見通しです。
2点目は、第3四半期に計上した「半導体関連部品」での固定資産の減損損失の影響です。当期の業績予想は下方修正しましたが、2期連続で過去最高の売上高を更新できる見通しです。
画像出典元:「京セラ株式会社」説明会資料
画像出典元:「京セラ」公式HP
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