台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の電機メーカー「シャープ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益となっています。減収減益とはなりましたが、業績は回復基調にあり、営業利益率・最終利益率はともに3四半期連続で回復。
まずは、売上高構成比を見ていきましょう。セグメント別では、テレビやディスプレイデバイスなどの8Kエコシステムが全社売上の半分を占めます。続いて、白物家電やカメラモジュールなどのスマートライフと続きます。
ICTは通信事業やIoT事業、Dynabook株式会社等が含まれており、売上構成比は15%ですが、DynabookやIoT事業は伸長しています。
次に、売上高推移について。
売上高は、8Kエコシステムが足を引っ張るかたちで前年同期比で減収に。テレビが消費増税の影響で国内で減収となったこと、ディスプレイデバイスが新製品の発売時期の違いなどからPC・タブレット向けが減収となったことや、車載向けなども市場環境の影響を受けたことなどが響きました。
営業利益は、コストダウン・モデルミックスによる収益の改善があったものの、売価ダウン、8Kエコシステムの売上減少等により、前年同期比で減益となりました。
2019年12月27日、朝日新聞等において「シャープとジャパンディスプレイは、ジャパンディスプレイ白山工場をシャープに譲渡する協議を進めている」という報道がありました。
シャープは「当社の発表に基づくものではない」とコメントしましたが、白山工場の取得によって生じる業績への寄与やリスクの有無・程度など、様々な観点から慎重に検討を進めていることを認めました。
通期の業績予想について、売上高のみ下方修正されましたが、前期比で増収増益見込みであることに変更はありません。
売上高は、デバイス事業の需要回復が当初想定より遅れていることに加え、部品隘路の影響が見られることなどから、前回予想から2,000億円減の2兆4,500億円に下方修正。
利益については、売上高よりも利益の確保を優先する方針で事業運営を進めていることから据え置かれています。四半期業績推移を見ると、2018年度第4四半期を底に回復基調にあり、第4四半期の売上高・利益についても第3四半期を上回る見込みです。
ただし、新型コロナウイルスの業績への影響は今回の予想には織り込まれていません。
【グラフ】四半期業績推移
2月17日には、国内で初となる第5世代移動通信システム(5G)に対応したスマートフォン「AQUOS R5G」を発表。本年春の5Gの商用サービス開始に合わせて発売予定で、8Kカメラも搭載。5Gサービス開始で、スマートフォンメーカー間の競争過熱は加速していくと思われます。
画像出典元:「シャープ株式会社」プレゼンテーション資料・公式HP
2020年第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益、すべての利益項目で2桁減益となっています。
米中貿易摩擦が長期化し厳しい事業環境が継続していますが、2018年度の第4四半期を底に回復基調にあるとシャープは強気の姿勢を見せています。実際、当第2四半期は前四半期比で増収増益となっています。
とはいえ上半期の業績予想、売上高1兆2,000億円、営業利益440億円、経常利益420億円、純利益370億円に対して、売上高794億円、営業利益71億円、経常利益89億円、純利益97億円未達と計画を大きく下回って着地しています。
【グラフ】業績推移
減収となった主な要因は、市況の影響から車載向けパネルの販売不振が続いたこと、 国内や中国、欧州でテレビの販売が落ち込んだことによります。一方、カメラモジュールやセンサーモジュールなどのデバイス事業やスマートフォン用パネルは、前年同期には及ばなかったものの回復しつつあります。
営業利益は、コストダウンやモデルミックスがプラスに働いたものの、売価ダウンや経費増が響き、前年同期比2桁減益に。
なお、第2四半期の業績回復を受け、株価は急伸しました。
上半期は計画未達となりましたが、業績は着実に回復しているとし、通期の業績は据え置かれています。
商品事業では、 5G対応機器などを投入する通信事業、 グローバル展開を強化する白物家電事業、 8K/4Kやスマートテレビなど国内外で商品ラインアップを強化するテレビ事業で大幅な増収を見込んでいます。
また、デバイス事業でも、回復基調にある顧客需要を着実に取り込むことで、 スマートフォン向けやPC・タブレット、産業用ディスプレイなどが大きく伸長すると見込んでいます。
これらの取り組みにより、通期では前期に対し大幅な増収増益を見込んでいます。
シャープは8月1日、ベトナムに子会社を設立すると発表。複合生産工場を建設し、2020年度から空気清浄機、液晶ディスプレイ、電子デバイス等の生産を開始する予定。米中貿易摩擦の影響を回避を狙ったものです。
9月5日には、サムスン電子とLTEを含む無線通信規格必須特許のライセンス契約を締結。なお、親会社の鴻海精密工業の創業者、郭台銘氏は来年1月の台湾総統選への出馬を見送ると9月16日に表明しました。
画像出典元:「シャープ株式会社」プレゼンテーション資料
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の電機メーカー「シャープ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し減収減益となっています。すべての利益項目が2桁減益となり、通期業績予想に対しても低調な進捗率となっています。
米中貿易摩擦による中国経済の減速を受け、スマートフォンや自動車向け部品の販売が低迷。厳しい市場環境が続いています。
一方、体質改善が進んだことにより、営業利益率と最終利益率は前四半期から回復しています。
【グラフ】連結業績推移
また、希薄化リスクや優先配当などを有するA種種類株式108,000株を全数取得・消却するなど、資本の質は向上しています。
前期の事業セグメントは、「スマートホーム」「スマートビジネスソ リューション」「IoTエレクトロデバイス」「アドバンスディスプレイシステム」の4区分でしたが、今期より「スマートライフ」「8Kエコシステム」「ICT」の3区分に変更されています。
事業ビジョンである「8K+5G Ecosystem」「AIoT World」の実現を目指し、2019年7月1日付で組織再編を行ったことに伴うものです。
セグメント別の業績をもう少し詳しく見ていきましょう。なお、前年同四半期との比較については、前年同四半期の数値を変更後の区分に組替えた数値で比較しています。
エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの販売が伸長したものの、カメラモジュールやセンサモジュールなどの販売が減少した結果、売上高は前年同期比で減少。
一方、 利益面は、コストダウンによる効果もあり増益に。
PCやタブレット向けの液晶パネルが伸長したものの、スマートフォン用液晶パネルの販売が減少したことや、中国などでテレビの販売が減少したこと、また車載向け液晶パネルにおける顧客の需要変動の影響から大幅な減収減益に。
新商品発売時期の違いや、キャリアの料金体系変更の影響などがあり、通信事業の売上は減少したものの、Dynabookを連結子会社化した効果により増収増益に。
なお、業績予想に変更はありませんが、長引く米中貿易摩擦の影響は引き続き受けるものと思われます。
画像出典元:「シャープ株式会社」プレゼンテーション資料
2019年3月期通期(2018年度)の業績は、売上高、営業利益、経常利益ともに前年を下回りましたが、最終利益は前年に対し+5.7%となりました。
米中貿易摩擦や大手顧客と見られるアップルの減速などを踏まえ、業績予想を下方修正しましたが、年度末にかけ想定以上に厳しい市場環境となり下方修正した予想をも下回る結果となりました。
一方、「量から質へ」の転換を進めたこともあり、 前年度を上回る最終利益と最終利益率を確保。2016年度 第3四半期以降、10四半期連続で最終黒字を継続しています。
セグメント別では、スマートホームが順調に伸長した一方で、 アドバンスディスプレイシステムが 全体を押し下げました。
エアコンや洗濯機、冷蔵庫の販売が増加。また、2018年10月にDynabook(株)を連結子会社化した効果もありました。
海外の複合機などの販売が増加。
半導体は伸長したものの、センサモジュールなどの販売が減少。
「量から質へ」の転換を図るために中国でテレビの販売を抑制し、液晶テレビの売上が減少。また、 スマートフォン用パネルの売上も減少しました。
2020年3月期(2019年度)は、大幅な増収増益を見込んでいます。
2018年度は、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下でのV字回復にブレーキがかかりましたが、2019年度も米中貿易摩擦激化やアップル減速などの影響が継続し、 第1四半期は厳しいものになると考えられます。
親会社の鴻海もアップル減速の影響を受けており、加えて会長を務める郭台銘氏は台湾の総統選挙に出馬を表明。
混沌とするなかでも、8K+5G EcosystemとAIoTの最先端技術を核に新規事業を創出するとともに、グローバルブランドの強化を図ることで、2019年度は売上高・各利益とも前年度を上回る予想としています。さらなるコストダウンにも取り組むとのこと。今後、どのようにシャープが成長軌道に回復してくるか注目です。
画像出典元:「シャープ株式会社」プレゼンテーション資料
2019年第3四半期連結累計期間の業績は、売上高、営業利益、経常利益ともに前年同期を下回りましたが、最終利益は前年同期に対し+13.9%となりました。
減収の主な要因は、米中貿易摩擦によるデバイスの需要変動と中国においてテレビ販売を抑制したことによるものです。
中国市場では「質より量」の戦略で格安テレビを販売してきましたが、それがブランドイメージの低下を招きました。ブランドイメージの立て直しを図るため、「量から質へ」の転換に向けた取り組みの一環として従来モデルの販売を意図的に抑制しました。
米中貿易摩擦による市況の悪化や大手顧客とみられる米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の不振により、スマートフォン用部品の販売減少も響きました。
一方、継続的に体質改善を推進している効果もあり、第1四半期から第3四半期までの累計の最終利益率は、四半期開示を開始して以来、過去最高となりました。
2019年第3四半期連結累計期間の各セグメントの売上高は
IoTエレクトロデバイスとアドバンスディスプレイシステムの2部門が全体を押し下げました。
スマートホームは好調に推移。エアコンやエネルギーソリューションの海外EPC事業が大きく伸長し、掃除機や洗濯機などの白物家電も好調でした。昨年10月にDynabook株式会社を連結子会社化した影響もありました。
IoTエレクトロデバイスは、大手顧客用のスマートフォン用センサーモジュールやカメラモジュールなどが前年同期を下回りました。
アドバンスディスプレイシステムは、中国でのテレビ販売抑制や大手顧客のスマートフォン用パネルの需要変動がありました。
米中貿易摩擦の影響などにより、デバイスを中心に顧客需要に変動が生じたことなどから今期2度目の業績予想の修正をしました。
親会社株主に帰属する当期純利益については、「量から質へ」の転換を図っており、体質改善も進んでいることから上期の決算発表時に上方修正した前回予想を達成できる見通しです。
最終利益率は、平成の30年間で過去最高となる見込みです。
シャープという社名は、創業者である早川徳次氏が「早川式繰出鉛筆(初代シャープペンシル)」を発明したことに由来し、1970年に早川電機工業株式会社からシャープ株式会社に社名変更しました。
日本有数の大手電気機器メーカーに成長しましたが、2015年、2016年には2,000億円を超える赤字を抱え、経営危機に。2016年には台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に買収され、東証2部に降格。
その後、鴻海(ホンハイ)の支援により業績はV字回復し、わずか1年4ヶ月で東証1部に復帰しました。
現在は、「8KとAIoTで世界を変える」という事業ビジョンのもと、超高精細映像技術「8K」と、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を組み合わせた「AIoT」を中心とした事業を展開しています。
携帯電話機、電子辞書、電卓、ファクシミリ、電話機、ネットワーク制御ユニット、冷蔵庫、過熱水蒸気オーブン、電子レンジ、小型調理機器、エアコン、洗濯機、掃除機、空気清浄機、扇風機、除湿機、加湿機、電気暖房機器、プラズマクラスターイオン発生機、理美容機器、太陽電池、蓄電池等
POSシステム機器、電子レジスタ、業務プロジェクター、インフォメーションディスプレイ、デジタル複合機、各種オプション・消耗品、各種ソフトウェア等
カメラモジュール、カメラモジュール製造設備、センサモジュール、近接センサ、埃センサ、CMOS・CCDセンサ、半導体レーザ、車載カメラ、FA機器、洗浄機等
液晶カラーテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、IGZO液晶ディスプレイモジュール、CGシリコン液晶ディスプレイモジュール、アモルファスシリコン液晶ディスプレイモジュール等
画像出典元:「シャープ株式会社」プレゼンテーション資料
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