日本初の総合商社「三井物産」の決算を見ていきます。
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となっています。
これは、金属資源・エネルギーにおいて、鉄鉱石の市況堅調に加え、エネルギーではトレーディングが好調だったことによるものです。機械・インフラも概ね計画通りに進捗。
一方、化学品は、基礎化学品をはじめとした市況悪化による影響を受け、苦戦しています。
三井物産は10月30日、キャッシュ・ フローの配分を見直し、発行済み株式の1.7%(自己株式を除く)に当たる3,000万株・上限500億円の自社株買いを決定。年間配当金予想は引き続き80円とし、中間配当は40円。この結果、株主還元総額は今期約1,900 億円、3年間累計で約5,000 億円になる見通しです。
なお、通期の業績予想に変更はありません。化学品・生活産業・鉄鋼製品の各セグメントでは景気減速などの影響を受けていますが、資源分野での堅調な業績推移により史上最高の当期利益4,500億円となる見通しです。
画像出典元:「三井物産株式会社」決算説明会資料
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し増収増益となっています。純利益は前年同期比66億円増の1,250億円となり、事業計画に対する進捗率は28%と順調に推移。
これは主に、金属資源・エネルギーが堅調に推移したことによるものです。金属資源は、鉄鉱石の価格上昇が寄与。エネルギーは、繰延税金資産の計上やトレーディングが好調だったことにより大幅増益に。
今後、米中貿易摩擦の影響もあり景気減速が続くと予想されますが、通期の業績予想に変更はありません。純利益は、史上最高益となる4,500億円を見込んでいます。
三井物産は2016年3月期、金属資源・エネルギーの市況悪化を主因に、多額の減損を計上したことで、創業以来初の赤字に転落。商品市況下落時の下方耐性が不十分であったことが露呈しました。
2017年3月期には資源価格の上昇により、業績はV字回復。前期834億円の赤字から3,061億円の黒字に転換しましたが、変化やリスクに耐えうる収益基盤の確立が最重要課題だとし、2017年5月に中期経営計画を策定。2020年に向けた4つの重点施策を設定しました。
【2020年に向けた4つの重点施策】
① 強固な収益基盤づくりと既存事業の徹底強化
② 新たな成長分野の確立
③ キャッシュ・フロー経営の深化と財務基盤強化
④ ガバナンス・人材・イノベーション機能の強化
まず、中核分野においては、強固な収益基盤づくりと既存事業の徹底強化。
「金属資源・エネルギー」「機械・インフラ」「化学品」の3分野が中核分野。三井物産において圧倒的な主力分野であり、全体の9割の利益を生み出しています。
次に、4つの成長分野を定め、次の収益の柱を確立していくとしました。
4つの成長分野とは、「モビリティ」「ヘルスケア」「ニュートリション・アグリカルチャー」「リテール・サービス」。主要ターゲットは、中間層が拡大するアジアと経済成長を続ける北米。
投資の配分としては、投資総額1.7〜1.9兆円のうち、中核分野に約65%(うち金属資源・エネルギーが約半分)、成長分野に約35%を配分。
投資の配分
中期経営計画の進捗状況は概ね計画通り。
当初、2020年3月期に当期利益4,500億円、基礎営業キャッシュ・フロー6,300億円、ROE10%を定量目標としていましたが、直近で発表された業績予想において当期利益と基礎営業キャッシュ・フローはともに中期経営計画にて公表した数字を上回る計画となっています。
2020年3月期 業績予想
三井物産は、世界各地の販売先及び仕入先に対する多種多様な商品の売買及びこれに伴うファイナンスなどに関与し、国際的なプロジェクト案件の構築などに取り組んでいます。
事業セグメントは、7つの商品別セグメントに分類。主力分野は、金属資源・エネルギーなどの資源分野ですが、非資源分野も成長しています。
なお、グループの連結決算対象会社の総数は491社で、その内訳は連結子会社が海外208社、国内70社、持分法適用会 社が海外168社、国内45社(2019年3月31日末現在)となっています。
インフラ鋼材、自動 車部品、エネルギー鋼材 他
鉄鉱石、石炭、銅、 ニッケル、アルミニウム、製鋼原料・環境リサイクル 他
電力、海洋エネルギ ー、ガス配給、水、 物流・社会インフラ、自動車、産業機械、交通、船舶、航空 他
石油化学原料・製品、無機原料・製品、合成樹脂原料・ 製品、農業資材、飼料添加物、化学品タンクターミナル 他
石油、天然ガス、 LNG、石油製品、原子燃料、環境・次世代エネルギー 他
食料、繊維、生活資 材、不動産、ヘルスケア、アウトソーシングサービス 他
アセットマネジメント、リース、保険、 バイアウト投資、ベンチャー投資、商品デリバティブ、物流センター、情報システム 他
画像出典元:「三井物産株式会社」決算説明会資料・公式HP
2019年3月期通期の業績は、前期に対し減益となりました。
期首の業績予想は当期利益4,200億円でしたが、原油・ガス価格の上昇と堅調な非資源分野の進捗を踏まえ、10月に4,500億円に上方修正しました。
その後、出資するブラジル資源大手Vale(ヴァーレ)が所有する鉱山のダム決壊事故の影響による配当金見送りを織込み、2月に4,400億円に下方修正したものの未達となりました。
化学品部門において、米国ターミナル事業での火災による一過性損失や、米国メチオニン事業における増設プロジェクト見直しに伴う損失の発生などが響きました。一過性の要因を除くと、ほぼ通期予想どおりとのことです。
なお、5大商社のうち三井物産のみ減益となり、ほか4社は過去最高益を達成しました。
【参考】5大商社の最終利益
1位 三菱商事:5,907億円(前期比+5.5%)
2位 伊藤忠商事:5,005億円(前期比+25.0%)
3位 三井物産:4,142億円(前期比△1.0%)
4位 住友商事:3,205億円(前期比+3.9%)
5位 丸紅:2,309億円(前期比+9.3%)
三井物産は、金属資源とエネルギー部門が中核事業ですが、非資源分野が大きく成長しています。各セグメントの利益は以下のとおりです。
前期におけるカセロネス評価損失の反動、及び前期における Valepar 再編に伴う評価益の反動を主因に大幅な減益となりました。
増益の主な要因は、前期におけるシェールガス・オイル事業での米国税制改正を理由とした減益の反動や、原油・ガス価格の上昇とコスト減少を主因とした三井石油開発の増益、 LNG 事業からの受取配当金の増加によるものです。
前期における中南米融資案件に対する引当金の反動、及び前期における英国発電所の売却益の反動を主因として減益となりました。
米国ターミナル事業での火災による一過性損失や、前期における米国税制改正を理由とした増益の反動があったことに加え、米国メチオニン事業における増設プロジェクト見直しに伴う損失の発生が主な要因です。
火災事故による損失は206億円計上しました。
減益の主な要因は、前期におけるGestampへの出資参画に伴う価格調整条項の評価益や、一時的な取扱数量増の反動によるものです。
マルチグレイン撤退に伴う前期における損失の反動や当期における引当金の一部取崩益が主因として大幅な増益となりました。
前期における新興国携帯通信事業の公正価値評価損や、インドTV ショッピング事業における減損損失の反動を主因に大幅な増益となりました。
2020年3月期の業績は、前期に対し増益となる見込みです。
非資源分野の成長により、当期利益と基礎営業キャッシュ・フローはともに中期経営計画にて公表した数字を上回る計画となっています。
画像出典元:「三井物産株式会社」プレゼンテーション資料
金属資源・エネルギー分野は、原油・ガス価格の上昇やLNG配当金の増加によって好調。化学品分野でもメタノール事業が成長しています。
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