マネックス証券を中核とする金融持株会社「マネックスグループ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益となっています。
これは主に、日本事業において市場の取引高と信用残高の減少に伴い、委託手数料と金融収支が減少したことによるものです。
コインチェック(クリプトアセット事業)は、仮想通貨市場において、40万円台だったビットコインの価格が2019年6月に一時150万円 近くまで急上昇し、仮想通貨の取引も活況となったものの、2019年9月末時点で90万円を、 2019年12月末時点で80万円を下回る価格となり取引量も減少。第3四半期には再び赤字に転落しています。
アジア・パシフィック事業は赤字幅拡大。好調だった米国事業も、VIX低下およびゼロ手数料プラン (TSGo/Select) の影響による委託手数料減、金利の低下による金融収支減により収益が低下しています。
なお、経済環境や相場環境等の影響を大きく受け、業績予想が困難な状況であるとし、業績予想は開示されていません。実際、新型コロナウイルスの影響で株価は暴落、仮想通貨市場は全面安の展開となっており、先行きは不透明感が増しています。
画像出典元:「マネックスグループ株式会社」決算説明資料
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収減益となっています。
これは主に、日本事業において個人投資家の株式売買が低調だったことが主な要因です。市場での取引代金減少に伴い、委託手数料と金融収支は減少。日本事業は今後も厳しい状況が続く見込みです。
一方、米国事業は増収増益、グループ内で一番利益を出している稼ぎ頭となっています。アメリカでは既に手数料ゼロ化が行われていますが、それに対する手は打ってあるので問題はないとのこと。
クリプトアセット事業(コインチェック)は費用削減に成功し、2四半期連続で黒字に。
第2四半期は前四半期比で減収減益となっていますが、これはビットコインの加熱が一服したためです。コインチェックにおいては、新規通貨や新サービスを増やす余裕もでき、相場の風が吹けば儲けを出すのは間違いないそうです。
Libraが起爆剤となる可能性がありましたが、逆風が吹いてなかなか前に進みません。一方で、中国は近くデジタル人民元を発行すると示唆しています。
ビットコインチャート
なお、直近のビットコインの相場ですが、10月24日に急落し、26日に急騰しています。急落したのは、グーグルが「量子コンピューターがスーパーコンピューターを超えた」と発表したため、急騰したのは、習近平主席が10月24日に開かれた中国共産党中央委員会の幹部会でブロックチェーンに言及したためと言われています。
グループの3本柱、日本・米国・クリプトアセットのうち米国とクリプトアセットについては順調に推移する見込みですが、日本は厳しい状況が続く見通しです。
株式市場活性化に向けた施策として、マネックス・アクティビズム・ジャパン・イニシアチブ(MAJI)を設立したり、マネックス証券とコインチェックとの連携を推進したりとさまざまな施策を行い、日本における構造改革を進めていくとしています。
画像出典元:「マネックスグループ株式会社」決算説明資料
2018年にコインチェック株式会社を子会社化した「マネックスグループ」の決算を見ていきます。
2020年3月期第1四半期の業績は、前年同期に対し減収減益となっています。
これは主に、国内における個人投資家の株式取引量が約7年ぶりの低水準で推移し、委託手数料が減少したことによるものです。
国内市場が低迷する一方で、米国では預かり資産と稼働口座数が順調に拡大し、米国セグメントはマネックスグループの稼ぎ頭へと成長しています。
また、コインチェックはグループ入り初の四半期黒字化を達成しました。
ここで、コインチェックが属しているクリプトアセット事業について詳しく見ていきましょう。
クリプトアセット事業の当第1四半期の業績は、営業収益12億7,500万円(前年同期比35.4%増)、セグメント利益1億4,200万円(前年同期は2億5,900万円のセグ メント損失)と黒字化を達成しています。
これは、費用削減に加え、新規口座開設の増加、新規取扱い通貨の追加、仮想通貨市場の活況によるものです。
費用削減に関しては、仮想通貨交換業登録の完了により専門家報酬が減少しています。
コインチェックは2018年11月末で全取扱仮想通貨の取引が可能となり、2019年6月には新たにモナコインの取扱いを開始しています。
取扱う仮想通貨は10種類です。
●Coincheck(コインチェック)の取扱通貨・銘柄
仮想通貨市場は低迷が続いていましたが、当第1四半期連結累計期間においてビットコインが急騰。40万円台だったビットコインの価格は6月に一時150万円近くまで急上昇し、2019年6月末時点では120万円台となりました。
仮想通貨の取引が大きく増加したことからトレーディング収益が大幅に増加。トレーディング収益は前年同期比41.5%増の12億円となっています。
グループの中で成長が見られるクリプトアセット事業ですが、不安要素としては安全性の問題があります。
コインチェックでは、かつて約580億円相当の仮想通貨NEM(ネム)の不正流出事件があり、最近ではビットポイントジャパンから約30億円の仮想通貨が流出する事件がありました。
常に安全性の問題がつきまとう仮想通貨ですが、コインチェックでは内部管理とサイバーセキュリティーを強固にしたとのことです。
決算説明会でマネックスグループの松本大CEOは、 Facebookの仮想通貨Libra(リブラ)の運営団体であるリブラ協会に参加する意向を表明しました。
画像出典元:libra.org
ただ、Libraは米議会で批判が噴出しているため、今後の動きはまだ不透明です。
画像出典元:「マネックスグループ株式会社」決算説明会資料
2019年3月期通期の業績は、前期に対し減収減益となりました。米国セグメントは好調だったものの、日本における株式市場売買代金の減少や仮想通貨市場の低迷などにより減収となりました。
また、日本株取引ツール「トレードステーション」の固定資産について減損損失を計上したことやコインチェックの赤字が響き、前期に対し8割減益となりました。
日本セグメントは、主にマネックス証券株式会社で構成されています。日本セグメントは成長が鈍化しているとはいえ、グループ内ではトップの営業収益を維持しています。
昨年、相場が大きく崩れたことにより日本の株式市場において個人投資家の売買が減少したこと、また信用取引手数料を引き下げたことにより委託手数料が減少し、受入手数料が133億100万円(前期比△21.6%)に。受入手数料が前期比で36億6,700万円も減少したことが響き、減収となりました。
また、前連結会計年度には新証券基幹システムのライセンス供与6億1,000万円が含まれていたこと、日本株取引ツール「トレードステーション」に関する固定資産の減損損失18億円を計上したことにより、日本セグメントは大幅な減益となりました。
一方、FX収益は増加しており、減収とはなりましたが、相対的に収益の下支えとなりました。
米国セグメントは、主にTradeStation Securities, Inc.で構成されています。
金利上昇で金融収支が増大し、取引量拡大により委託手数料も増加。大幅な増収増益となり、セグメント利益は前期比7倍と大きく成長し、過去最高となりました。
アメリカ子会社は、今や稼ぎ頭へと成長しています。
アジア・パシフィックセグメントは、主に香港拠点のMonex Boom Securities(H.K.) Limited(マネック スBoom証券)、豪州拠点のMonex Securities Australia Pty Ltd(マネックスオーストラリア証券)で 構成されています。
香港市場の取引量の減少により減収、4,800万円の赤字となりました。
クリプトアセット事業セグメントは、コインチェック株式会社で構成されています。
仮想通貨市場の低迷に加え、内部管理態勢の整備のための費用がかさみ、17億円の赤字となりました。
販売費及び一般管理費は、人件費や事務委託費などにより47億6,600万円かかっており、今後は収益の強化を行うとともにコストの見直しが課題となります。
投資事業セグメントは、主にマネックスベンチャーズ株式会社、MV1号投資事業有限責任組合で構成されています。
保有株式評価益および売却益で4億円計上。なお、前連結会計年度の金融収益は、 保有銘柄の売却による売却益を計上したことによるものです。
4月よりマネックス証券での取引でたまる「マネックスポイント」の交換先として、コインチェックが取扱う仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップル)と交換できるようになりました。仮想通貨に興味はあるが購入までには至らないというユーザーに気軽に仮想通貨を持ってもらおうという狙いです。
また、ビットコインお小遣いアプリ「Cheeese(チーズ)」では、簡単なアンケートの回答や仮想通貨の記事を読むだけでビットコインを獲得することができます。
今後は日本セグメントだけでなく、好調な米国セグメントとも連携し、コインチェックの黒字化を目指すとのこと。
仮想通貨市場は低迷していましたが、ここに来てビットコインが急騰。2ヶ月で42万円から86万円に。今後の仮想通貨市場の動向に注目です。
ビットコインチャート
成長が鈍化している日本セグメントにおいては、コスト管理や選択と集中を行っていくとのこと。さらに、AIなどのテクノロジーの融合を促進し、新しい技術を使ったブロックチェーン開発に投資を行い、新しい金融を目指すとしています。
なお、2020年3月期の業績予想は開示されていません。
画像出典元:「マネックスグループ株式会社」決算説明資料
2019年第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益となりました。コインチェックの赤字が響きました。
受入手数料が減少したのは、日本セグメントで委託手数料が減少したことによるものです。トレーディング損益が大幅な増加となったのは、コインチェックを連結の範囲に含めたことによるものです。
金融収益が増加したのは、日本セグメントにおいて信用取引収益が増加したことや米国セグメントにおいて受取利息が増加したことによるものです。
費用合計:375億5,600万円(前年同期比+12.3%)
費用が増加したのは、コインチェックを連結の範囲に含めたことなどにより販売費及び一般管理費が前年同期比+13.5%となったことによるものです。
コインチェックは新規口座開設及びサービスの一部を停止していましたが、2018年10月に新規口座開設及び一部取扱仮想通貨の取引を再開し、11月末で全取扱仮想通貨の取引が可能となりました。
また、2019年1月11日に仮想通貨交換業の登録が完了しました。
サービス再開によりクリプトアセット事業の収支が改善していますが、当第3四半期連結累計期間のセグメント損失は11億7,200万円となりました。2019年度中の黒字化を目指します。
マネックスグループは、仮想通貨の巨額流出問題を起こしたコインチェックを買収したことによりリスクを抱えることになりましたが、一方でブロックチェーンに関わる若くて有能なエンジニアを得ることができました。
日本では仮想通貨市場は低迷していますが、米子会社 TradeStation Crypto を通じて2019年中に米国の仮想通貨市場に参入すると発表しました。
マネックスグループは、金融商品取引業、仮想通貨交換業、有価証券の投資事業を主要な事業とし、日本・米国・中国(含む香港)・オーストラリアにリテール向けのオンライン証券ビジネスの本拠地を持ちます。
グローバルFX事業、資産運用事業、投資教育そしてM&Aアドバイザリーサービスを含む幅広い事業・サービスを展開するグローバルなオンライン金融機関グループです。
2018年4月にコインチェックを完全子会社化し、当第1四半期連結会計期間よりコインチェックをグループに加えました。
さらに、マネックスベンチャーズを中心とした有価証券の投資事業も拡大していることから、従来の「日本」「米国」「アジア・パシフィック」の3つの報告セグメントから、「日本」「米国」「アジア・パシフィック」「クリプトアセット事業」「投資事業」の5つの報告セグメントに変更しました。
(日本における金融商品取引業)
主に、マネックス証券株式会社
(米国における金融商品取引業)
主に、TradeStation Securities, Inc.
香港、豪州における金融商品取引業)
主に
(仮想通貨交換業)
コインチェック株式会社
投資事業セグメント
(有価証券の投資事業)
主に
画像出典元:「マネックスグループ株式会社」決算説明会
営業収益の内訳
費用の内訳
その他セグメント別状況
コインチェックは既存顧客が保有する仮想通貨の売却のみ受け付けており、収益源が売却時の手数料に限定されるため、2019年上半期は約8億円の赤字となりました。
一方で、2018年10月31日のプレスリリースで新規口座開設・仮想通貨の入金/購入を再開することを発表。マネックスグループのCEO松本大氏は「業務が再開できれば、早期に黒字化可能」と見通しを示していたので、2019年下半期には期待したいです。
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