TOP > SaaS > 人事 > 労働状況管理 > 人事評価制度の成功事例10選!最新トレンドの評価手法や導入方法も解説
働き方改革や組織活性化への関心が高まる中、人事評価制度はますます重要になっています。
しかし、適切な評価方法や導入方法が分からないために、効果が実感できなかったり、導入を断念したりするケースが少なくありません。
そこで今回は、人事評価制度の成功事例10選と、最新トレンドを含む評価手法10選、そして具体的な導入方法をご紹介します。
本記事を通じて、自社に適した評価制度のヒントを見つけてください。
このページの目次
人事評価制度とは、社員のスキルや成果、貢献度などを基準に評価し、その結果を報酬や昇進・昇格、配置変更などに反映させる仕組みです。
では、人事評価制度を企業が導入する目的とは何でしょうか。
以下にその主な人事評価制度の目的をご紹介します。
企業が人事評価制度を導入する目的は多岐にわたりますが、主な目的は次の通りです。
目的 | 詳細 |
企業の目標と戦略の共有 | 人事評価制度を通じて、企業の目標や戦略を社員に明確に伝えることが可能。全員が同じ方向を目指して業務を進めやすくなる。 |
社員の行動規範と役割の定義 | 企業が社員に期待する行動や役割を定義することにより、目標達成に向けた行動を促進する。 |
社員の成長促進 | 評価結果をフィードバックとして活用することで、社員のスキルアップやキャリア開発を支援する。 |
社員の意欲増進と組織活性化 | 公平な評価により、社員のモチベーションを高め、組織全体の活性化を促す。 |
人材配置の最適化 | 評価結果を基に、各社員の能力や適性に応じた最適な配置を行うことで、組織の効率を高める。 |
公正な処遇の決定 | 人事評価制度で公平に評価した結果を基に、適切な報酬や昇進を決定することで、社員のエンゲージメント向上を図る。 |
このように、人事評価制度は、企業の業績向上や組織の活性化、社員のモチベーション向上など、さまざまな目的を達成するために役立つ重要な仕組みです。
企業は、自社の経営理念や目標、人材戦略に応じた適切な人事評価制度を導入することが重要です。
人事評価制度の導入と運用で成功を収めた10の企業の事例をご紹介します。
業界や規模を超えたさまざまな事例の中から、自社の課題解決につながるヒントや、より効果的な人事評価制度の運用方法を見つけてください。
株式会社フィードフォースは、BtoB領域におけるデジタルマーケティングを支援する企業として、顧客のビジネス成長に貢献しています。
以前の評価制度では、半年ごとの評価という評価頻度の低さや、評価基準の不明確さ、マネージャーの負担の大きさといった課題がありました。
これらの課題を克服するため、フィードフォースは月次評価制度へと移行し、評価基準を明確化しました。
この評価制度変更は、社員の成長支援やチームプレイの促進にもつながり、企業の発展に大きく貢献しています。
参考:feed forceのnote 半年に1回の評価制度を毎月の評価制度に変えた話
ビジネスコミュニケーションツールを開発・提供するChatwork株式会社は、2017年から本格的にOKRを導入しました。
しかし、導入初期は、OKRの達成率を評価制度に完全に連動させていたため、社員が目標達成に囚われてしまい、本来のOKRの目的である「挑戦」を阻害してしまうという課題が発生しました。
そこで、評価制度との連携を見直し、OKRを評価への参考資料として活用する運用方法にアップデート。
この変更により、社員は目標達成に固執することなく、より意欲的に挑戦できる環境が整いました。
参考:【OKR最前線vol.2】ChatWork流 「完璧を求めない」「カッコつけない 」理想の会社に近づけるためのOKR運用
フリマアプリ市場で急成長を遂げた株式会社メルカリは、バリュー評価と目標・成果管理(OKR)を重視しています。
バリュー評価では、メルカリが掲げる3つの行動規範の実践について評価。
一方、OKRでは、目標達成度だけでなく、目標達成に向けたプロセスを評価し、社員の主体性と成長を支援します。
評価制度は半年ごとにレビューされ、その都度、評価・報酬制度をアップデートすることで、社員の納得度向上を図ります。
これらの取り組みを通して、メルカリは社員一人一人の可能性を最大限に引き出し、共に成長できる組織づくりを目指しています。
参考:5段階の人事評価は、高評価も低評価もつけにくい メルカリの評価制度改革に学ぶ、社員の納得度の高め方
ゲームを中心に、Eコマース、オートモーティブ、ヘルスケア分野まで多角的な事業展開を行っている株式会社ディー・エヌ・エー。
同社の人事制度は、「成果(業績)」と「発揮能力(成長)」の2軸で評価を行うシステムが特徴です。
成果は、個々の社員が達成した具体的な業績を指し、ボーナスに反映。
発揮能力は、将来的な成長可能性を評価する指標であり、基本給に反映されます。
成果主義に基づいた評価制度は、個々の社員の努力と成果が正当に評価され、報酬に反映されるため、優秀な人材が集まりやすいというメリットがあります。
ディー・エヌ・エーのユニークな人事制度は、優秀な人材の獲得・育成だけでなく、組織全体の活性化にも寄与しています。
参考:DeNAの人事制度に学べ!(前編)基本給は「成果」ではなく「成長」で決まる!?
国内有数のスナック菓子メーカーであるカルビー株式会社は、2020年4月からバリュー評価を導入しました。
カルビーのバリュー評価制度は「行動と価値観」を評価軸に設定し、5つのバリューに基づいて基本給を決定します。
制度策定にあたっては、全国の事業所から集まった社員の声を反映し、各バリューについてグレードごとに具体的な行動例を定めています。
カルビーでは、社員を「人財」と呼び、イノベーションの重要な源泉と考えています。
挑戦や好奇心といったバリューを重視することで、社員が新しいアイデアを生み出し、推進する環境を創出しています。
参考:人財育成の考え方(カルビー株式会社HPより)
カルビーが「全員活躍」に向け評価制度を改革、働き方やオフィスも全て刷新
北欧スタイルの家具で知られるイケア・ジャパン株式会社は、画期的な人事評価制度を導入し、誰もが働きやすい職場環境作りに取り組んでいます。
イケア・ジャパンでは同じ仕事内容であれば同一の賃金が支払われるという「同一労働・同一賃金」の評価制度を採用。
フルタイム・パートタイムの雇用形態に関わらず、働くすべての人に正社員の待遇を保障し、公正な賃金体系を構築しました。
その結果、多様な働き方を可能にし、男女比5:5という理想的な職場環境を実現しています。
イケア・ジャパンの人事評価制度は、単に賃金体系を変えるだけでなく、社員の価値を認め、個々の能力を最大限に発揮できる環境づくりを目指したものです。
この取り組みは、多くの企業にとって参考となる先進的な人事評価制度の事例と言えるでしょう。
参考:同一労働・同一賃金、全従業員正社員化だけではない、働きがいのある職場を創り出すイケアの理念経営
1963年創業、奈良県の大浦貴金属工業株式会社は、貴金属加工品の製造販売を通して、事業を安定的に成長させてきました。
近年では新規事業にも積極的に取り組み、さらなる事業拡大を目指しています。
しかし、その成長を支える人材不足が課題となっていました。
この課題を解決するため、同社は求める人材像を明確に定義し、それに基づいた新しい人事評価制度を構築しました。
この評価制度では、人材育成に主眼を置き、各社員の成長を支援することに重点を置いています。
制度導入により、必要な人材を的確に採用できるようになり、社員のスキルアップも促進されています。
その結果、同社は人材の安定的な確保を実現し、事業のさらなる発展に向けて確実な進歩を遂げています。
参考:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の人材活用事例集(2023年6月)
大分県大分市でガソリンスタンド5店舗を運営する岩田商事株式会社は、競争の激しい業界にありながらも安定した好業績を維持しています。
しかしながら、従来の人事評価制度は形骸化しており、トップダウンで物事が決められていた風潮もあり、社員の自主性や納得感は十分に得られていない状況でした。
これを受けて、同社は社員の自主性を育成し、好業績を維持・向上させる新たな評価制度へと、抜本的な改革を実施。
社員自ら設定した評価項目を意識することで、各社員がこれまで以上に目的意識を持って業務に取り組むようになりました。
同社は今後も人材を育てることで、環境変化に対応し、企業を成長させていくことを目指しています。
参考:中小企業庁 中小企業白書(2022年度版) 第2節 人的資本への投資と組織の柔軟性、外部人材の活用
石川県能美市に本社を構える株式会社ヨネモリは、1918年創業の鉄鋼関連企業です。
同社は、1994年に職能資格制度を柱とした独自の考課システムを整備しました。
この考課システムは、「能力考課」「成績考課」「情意考課」の3つの考課から構成されており、評価結果は昇給、昇格、賞与の決定に活用されています。
評価項目の洗い出しは厳密に行い、評価基準点を明確にすることで、評価の公平性を高めています。
さらに、コミュニケーションを重視した風土づくりを推進することで、人事考課制度への理解と協力を得ています。
参照:厚生労働省 中央職業能力開発協会 職業能力評価基準 活用事例集
長野県にあるZESTIA株式会社は、食品機械や医療機器の部品加工などを手がけています。
同社では技能育成シートとスキルマップシートを導入し、月に1回の技術会議を通じて社員員の技術力と人間性を評価しています。
これらのシートは、社員の得手・不得手に合わせた人材配置を可能にし、生産性の向上を目指して活用されています。
この取り組みの結果、社員の士気は大幅に向上。
主軸稼働率(機械が稼働をしている時間)は2019年の26%から2022年には45%に増加しました。
さらに、社員自らが新たな人材を紹介するケースが増加し、人材不足も解消されつつあります。
ZESTIAはこの成果を基に「自走型企業」へと変革を遂げ、社員が自ら主体的に考え、行動する活気あふれる職場環境が構築されました。
参照:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の人材活用事例集(2023年6月)
人事評価制度は、社員のモチベーション向上や組織全体の成長に欠かせません。
しかし、従来の評価制度では、変化の激しい現代ビジネスに対応しきれないケースも増えています。
ここでは変化にも柔軟に対応できる最新トレンドを踏まえ、注目すべき10つの評価手法をご紹介します。
日常業務の中で、社員に対して働きぶりや成果について、タイムリーに意見や評価を行う手法です。
従来の年1〜2回の評価とは異なり、その場で問題点の指摘や、改善点のアドバイスができるため、社員の早期成長につながります。
ただし、フィードバックの頻度を上げ過ぎると管理職と社員双方の負担が大きくなるため、適度に行うことが重要です。
社員の評価において順位や点数、ランクを付けない評価制度です。
この制度では、社員の能力やキャリアプランに基づいた目標を個々に設定し、リアルタイムでフィードバックを提供します。
各社員の成長に焦点を当てることで、社員のモチベーションを高め、より生産性の高い職場環境を創出することが可能です。
評価が数値化されないため、管理職には観察力やコミュニケーション能力など、高いマネジメント能力が求められます。
同僚間で相互評価を行い、報酬や賞賛を贈りあう制度です。
給与や賞与の他に得られる報酬となるので、「第3の給与」と呼ばれることもあります。
上司による評価に加え、一緒に働く仲間からの声を取り入れることで、より客観的かつ公平な評価を実現できます。
また、制度を通じて同僚同士のコミュニケーションが活性化されるため、チームワークの強化にもつながります。
効果を発揮するには、制度設計や運用方法について丁寧に検討し、適切な環境を整えることが必要です。
企業が掲げる行動指針や価値観のことを「バリュー」と呼びます。
バリュー評価とは、このバリューに沿って社員がどれだけ忠実に仕事に取り組んでいるかを評価する手法です。
これにより、社員は企業のビジョンやミッションに対する理解を深め、組織力の強化と行動の一貫性が促進されます。
バリュー評価を成功させるためには、自社のバリューを明確に定義し、具体的な評価項目と評価方法を策定することが大切です。
OKRとは「Objectives and Key Results」の略称で、日本語では「目標と主要な結果」という意味です。
目標と結果を明確にし、進捗を管理することで、目標達成を加速させます。
目標は、企業全体だけでなく、部署やチーム、個人と階層別に設定することで、組織全体の方向性を一致させることができます。
OKRは、目標設定や進捗管理だけでなく、社員のモチベーション向上にも効果的です。
しかし、社員個人の評価には、目標達成度以外の要素も考慮する必要があるため、他の評価制度と併用することをおすすめします。
上司や部下、同僚など、周囲のすべての人々からフィードバックを収集する評価手法です。
多角的な視点から意見を集めることで、客観的な評価を行うことが可能です。
社員は周囲からの評価を通して、自身の強みと弱みを理解し、自己改善へとつなげることができます。
360度評価を実施するには、アンケートツールやインタビューなどの運営コストがかかるため、導入前に費用対効果を検討する必要があります。
社員の能力やスキルだけでなく、成果につながる行動特性を評価し、人材育成や人事考課に活用する評価手法です。
この評価では、価値観、態度、思考パターンといった内面的な要素も評価対象となります。
具体的な項目は、協調性、問題解決能力、コミュニケーション能力、リーダーシップ、主体性、創造性などです。
このように評価基準を明確に設定することで、評価者の主観が入り込みにくくなり、透明性と公平性の高い評価が行えます。
明確な指標があるため評価しやすい反面、組織に合致した評価基準を策定するまでには時間と労力がかかります。
簡易的なアンケートを短期間で繰り返し行い、社員のモチベーションやエンゲージメントを調査する手法です。
社員の意識を定期的に把握できるため、問題点を早期に発見し、迅速な対応を可能にします。
パルスサーベイは高頻度で実施するため、回答サイクルを調整し、アンケートに答える時間を確保するなど、社員の負担を配慮する必要があります。
上司と部下が定期的に面談を行い、業務内容や進捗状況などについて共有する人事評価手法です。
双方向のコミュニケーションを活性化することで、社員のモチベーション維持や課題の早期発見・解決につなげることができます。
面談には手間や時間がかかりますが、議題を事前に共有するなど、運用方法を工夫することで、スムーズな運用が可能となるでしょう。
社員の能力開発やキャリア形成を支援する制度です。
キャリアの方向性について上司と部下が話し合い、それぞれのキャリア目標に基づいて、研修やコーチングなどの機会を提供します。
この取り組みにより、社員のポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体の成長を促進することができます。
自発的な行動が少ない社員は、効果が実感しにくい可能性があるため、主体的な取り組みを促す施策が必要です。
人事評価制度の導入を成功に導くための具体的なステップを分かりやすく解説します。
それぞれのステップで、重要なポイントを詳しく説明していきますので、ぜひ自社の状況に合わせて参考にしてください。
人事評価制度を効果的に運用するためには、現行の人事評価制度や組織が抱えている課題を特定することが肝心です。
社員に対してアンケート調査やヒアリングを行い、人事評価制度に関する具体的な意見や要望を収集しましょう。
また、過去の人事評価データや離職率、満足度調査の結果などを分析することも、課題を把握する上で効果的です。
課題を特定することで、より効果的な評価制度を導入する際の改善策を検討することができます。
課題が特定できたら、人事評価制度を導入する目的を明確にしましょう。
目的は企業によってさまざまですが、代表的な例としては、「組織全体の業績向上」「社員の能力開発」「公平な人事評価」などが挙げられます。
状況に応じて適切な目的を設定することが大切です。
導入目的を明確にすることは、制度設計の指針となるだけでなく、運用後の効果測定にも役立ちます。
導入目的を達成するために、評価対象を具体的に定義します。
例えば、「スキル」「態度」「協調性」「成果」など、組織の戦略や求める人材像に基づいて基準を設定します。
評価基準を設定することで、社員はどのような行動や結果が高評価につながるのかを理解しやすくなり、客観性と公平性が確保できます。
評価基準を詳細化し、評価項目を策定します。
項目の内容は、職種や役職ごとに求められる能力や成果を踏まえ、調整することで、より適正な評価が可能となります。
ただし、評価項目が過度に増えると、評価作業が煩雑になり、評価の質が低下する可能性があります。
評価項目は、個々の能力や成果を的確に把握するため、必要最小限の数に絞りましょう。
評価項目の評価方法を決定します。
評価手法は大きく分けて、ノーレイティングと数値化やランク付けを行うレイティングの2種類があります。
それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、どちらか一方を選択するか、状況に応じて両方を組み合わせることも検討する必要があります。
評価は社員のモチベーションやエンゲージメントに大きな影響を与える重要な要素です。
適切な評価手法を選択することは、効果的な人事評価制度を構築するために不可欠です。
評価制度を運用する前に、社員に対してその内容を周知し、理解を促進します。
評価制度の意図と運用方法を丁寧に伝えるために、ガイドラインを作成して配布したり、説明会を開催したりしましょう。
制度の内容が社員に理解されていないと、評価結果に納得が得られず、制度への協力が得られなくなってしまう可能性があります。
円滑な運用のためにも、事前の準備と計画は必要不可欠です。
評価制度の導入は、組織の成長と発展のための一歩であり、決してゴールではありません。
時代の変化や組織の状況に合わせて定期的に見直し、評価制度を改善していくことが必要です。
常に現状に即した、効果的な評価制度を維持することで、組織の持続的な発展を支えることができます。
人事評価制度が適切に機能すれば、社員のモチベーション向上、業績の向上、人材育成など、さまざまなメリットが期待できます。
しかし、自社に合った評価制度を導入するのは容易ではありません。
成功事例や具体的な手法を参考に、自社に合った人事評価制度を構築していきましょう。
画像出典元:Unsplash