契約書の保管を、法令を遵守しながら効率的に行いたいが、方法がわからないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、紙の契約書をファイリングする方法、紙で契約書を保管するメリット・デメリットについて解説します。
より効率的な方法として電子データで管理する3つの方法、法律的な観点から各書類の保管期間についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
契約書は、企業にとって重要な法的文書であり、適切な保管が求められます。
ここでは、紙の契約書をファイリングする際に、どのような整理方法があるかご紹介します。
企業の管理体制に合わせて、必要な方法を組み合わせてください。
この方法は1社あたりの契約書の枚数が多い場合に有効です。
1つの企業に対して1つのファイルを用意して整理することで、特定の取引先の契約書を簡単に探し出すことができます。
企業名を五十音順に並べると、より探しやすくなります。
ただし、人によって略称・英語表記・ひらがな・カタカナなどの表記ゆれがないように注意が必要です。
企業名は必ず「正式名称+(略称)」に統一するといった表記ルールがあるとよいでしょう。
「通信関連」「人事関連」「法務関連」など業務カテゴリごとにファイリングする方法で、同じ種類の契約書をまとめて管理できる点がメリットです。
ただし、業務カテゴリによっては幅広い内容の契約書が存在し、ファイルの中からピンポイントで探すのが難しいケースもあります。
ただファイリングするのではなく、契約内容に応じてさらに分類し、インデックスシートなどを活用すると便利です。
特定のプロジェクトや取引に関連した契約書をまとめて保管する方法です。
例えば、「プロジェクトA」「プロジェクトB」といった形でファイリングすれば、それぞれの案件に関する全ての契約書を一括管理できます。
一方で、同じ企業の異なるプロジェクトを確認したい場合には、複数のファイルを探す必要がある点には注意が必要です。
エクセルファイルや契約書管理システムを活用して、どの契約書がどのファイルに入っているかを一覧で整理しておくとよいでしょう。
シンプルで標準化しやすく、誰が整理しても一貫性を保てる方法です。
特定の数字を基に検索しやすく、契約更新や変更の管理に適しているため、法務部内での契約書整理でよく活用されています。
どの企業がどこにファイリングされているのかを、エクセルファイルや契約書管理システムでまとめておく必要があります。
契約書を適切にファイリングしても、管理が不十分だと情報漏洩や破損に繋がる可能性があります。
ここでは、契約書を保管する上での注意点を解説します。
原本に穴を開けてしまうと、契約書が破れたり、穴が開いた部分の内容が読めなくなったりするリスクがあります。
また、原本は正式な契約書として、改ざんされていないことを示す重要な証拠です。
裁判などで契約書を提出する際、穴を開けたことで改ざんの疑いをかけられ、不利になる可能性があります。
契約書は機密性の高い情報を含んでいるため、安全に保管する必要があります。
鍵のかかるキャビネット・専用の保管庫・防火金庫に保管することで、物理的なセキュリティが強化され、情報を守ることができます。
適切な場所に契約書を保管し、情報漏洩・改ざん、さらには火災や水害といったリスクにも備えましょう。
契約書は企業にとって重要な書類であるため、必要な人が適切に取り扱え、不正な閲覧を防げるルールを構築してください。
例えば、「契約書の閲覧や管理は許可された人のみに限定する」「閲覧した際は記録を残す」などがあります。
紙で契約書を保管する方法には、下記のようなメリット・デメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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契約書の原本は信頼性の高い証拠であるため、万が一トラブルが発生した際に役立ちます。
また、紙の契約書は自社に合ったファイリング方法で保管できるので、確認しやすい状態で整理できます。
一方で、法令によって契約締結日の翌日から5〜10年間保管することが義務付けられており、物理的にスペースが圧迫される点はデメリットといえるでしょう。
さらに、取り扱いや保管に気をつけないと紛失・改ざんのリスクがあり、企業の信頼に大きな影響を与えるため注意が必要です。
前述の通り、紙の契約書を保管する場合はデメリットの方が多くなってしまいます。
そこで、原本の保管と併用して電子データで保管する方法を導入すれば、セキュリティ・業務上の両面でメリットを得られます。
電子データで保管する方法は下記の3つです。
電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たした上であれば、契約書をデータ化してPDFとして保管できます。
パソコンやタブレットがあれば、場所を問わずに契約内容を確認ができるため、迅速にデータを管理・検索できるメリットがあります。
コピー機があれば簡単にスキャンできるため、多くの企業で採用されている方法です。
紙で契約書を締結した際は、あくまで原本は紙の契約書であり、スキャンしたPDFデータは単なる”原本のコピー”という扱いになります。
民事訴訟などでは、紙の原本と同等の法的証拠としては認められないため、原本の保管も並行して行わなくてはなりません。
また、データ化したPDFは外部からの不正アクセスや改ざんリスクを考慮し、適切なセキュリティ対策を講じる必要もあります。
契約書管理システムとは、契約書を電子データ化し、効率的に保管・管理・検索するためのソフトウェアを指します。
大量の契約書を一元管理できるため、検索性に優れているだけでなく、契約期限・更新日の管理や承認フローの追跡も可能です。
アクセス権限の設定により、誰がどの契約書を閲覧できるかを管理できるので、不正アクセスの防止に役立ちます。
電子契約サービスとは、契約書の作成・署名・締結までを全てオンラインで完結できるソフトウェアです。
契約書を印刷・郵送する手間が省けるだけでなく、印刷代や収入印紙代、保管スペースの削減にも繋がります。
電子署名やタイムスタンプにより、「契約が改ざんされていない」「当事者が合意した」ことを証明でき、法的効力が保証されるという点もメリットといえます。
契約書には、法律で定められた保管期間があります。
ここでは、契約書の保管期間について押さえておくべきポイントを解説します。
法人税法において、契約書は「書類」に含まれるため、確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保管が義務付けられています。
ただし、下記に該当する特定の事業年度については、保管期間が異なるため注意しましょう。
これらの事業年度に関しては、帳簿や書類を10年間(2018年3月31日以前に開始した事業年度については9年間)保管する必要があります。
契約書の保管期間については、紙の契約書・電子契約どちらの場合でも7年間が原則です。
ただし、契約が存続している間は、7年間という期間を過ぎても保管し続ける必要があります。
契約終了後も契約相手とのトラブルや確認が発生した際に備えて、一定期間は契約書を保管しておきましょう。
一般債権の消滅時効期間を基準にして、少なくとも5年間は保管しておくことが推奨されます。
企業は、法人税法だけでなく、様々な法律に基づいて書面の保管が義務付けられています。
下記は、主要な法律に基づく書面の保管期間の一覧です。
保管期間 | 書面の内容 | 法律 |
2年 | 健康保険 厚生年金保険 雇用保険に関する書類 |
健康保険法施行規則34条など |
3年 | 労災保険に関する書類 | 労働者災害補償保険法施行規則51条 |
3年 | 労災保険の徴収 納付等に関する書類 |
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則72条 |
3年 | 派遣元管理台帳 | 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律37条 |
4年 | 雇用保険の被保険者に関する書類 | 雇用保険法施行規則143条 |
5年 | 会計監査報告 | 会社法442条 |
5年 | 有価証券届出書 有価証券報告書 |
金融商品取引法25条 |
10年 | 会計帳簿 | 会社法432条 |
10年 | 貸借対照表 損益計算書 附属明細書 |
会社法435条 |
紙の契約書をファイリングする方法、保管する際の注意点、紙で契約書を保管するメリット・デメリットについて解説してきました。
紙の契約書は、原本を閲覧することができ、検索方法を自社のニーズに応じてカスタマイズできますが、保管するスペースの確保が必要であり、破損や改ざんのリスクもあります。
法人税法においては、紙でも電子契約でも7年間の保管義務があるため、より効率的な管理を実現できる契約書管理システムや電子契約サービスを活用してみてください。
画像出典元:O-DAN
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