TOP > SaaS > 法務 > 契約管理 > 雇用契約書の正しい管理方法を伝授!関連する法案や電子化のメリットも
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近年、雇用契約書の管理方法を巡るルールが変化しています。
電子帳簿保存法などのルールも含めて詳しく把握しておく必要があるでしょう。
本記事では、雇用契約書の保管期間をおさらいしつつ主な管理方法を解説します。
電子化のメリットも解説するので、まだ対応していない方もぜひ参考にしてみてください。
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このページの目次
雇用契約書の保存期間はどれくらいなのでしょうか。
現在法令で定められている雇用契約書の保存期間について解説します。
労働基準法には労働関係の記録の保存について条文が定められています。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
これによると、現在の法令では労働契約書の保存期間は5年であるとわかります。
労働基準法第109条の雇入れに関する書類の対象は、以下のとおりです。
労働基準法が改正され、2020年4月1日から雇用契約書の保管期間が5年に変更されました。
同年には民法改正によって賃金の債権に関する消滅時効が2年から5年に延長されています。
未払いの残業代や賃金を請求できる期間が延びました。
民法改正に合わせて労働基準法における保管期間も変更されたと考えられます。
法改正に伴い雇用契約書の保管期間が5年に延長されましたが、経過措置も講じられました。
具体的な期間は明記されていませんが、当分の間は5年ではなく3年が適用されるため、すでに保存期間が3年経過している書類は破棄しても問題ないといわれています。
経過措置が終了するタイミングは未定であり、政府の公式情報を随時確認して柔軟に書類を管理する必要があります。
雇用契約書の保存方法の種類について、問題点やルールなども含めて解説します。
雇用契約書は、基本的に台帳で書類として管理するのが一般的です。
ただ、従業員数が多い会社だと必要な書類をすぐに見つけづらくなります。
入社年度や氏名順などで管理するなどして、必要な雇用契約書をすぐに用意できるように保存しましょう。
契約書を台帳管理する問題点としては、災害による書類の消失・破損が挙げられます。
また、台帳管理では保管スペースが必要なほか、書類を管理・廃棄するのに人件費もかかります。
保管期間が過ぎた書類を廃棄しないと情報漏えいのリスクも高まるでしょう。
書類をシュレッダーにかける必要がありますが、忙しい従業員にとっては負担は大きいです。
雇用契約書は、電子契約にすると電子帳簿保存法第7条に該当し、データとして管理する必要があります。
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
引用:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第七条(e-Govポータル)
なお、労働基準法での保存期間が5年であるのに対して、データの場合は最低7年になります。
労働条件通知書を電子メールで送信したり、雇用契約書をクラウドサービスで授受したりした場合は、必ずデータとして管理しましょう。
電子帳簿保存法の詳しい情報については、後章の「雇用契約書を電子化する場合の注意点」にて解説しています。
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雇用契約書の電子化は面倒に思えるかもしれませんが、データで保管するメリットもあります。
雇用契約書を電子化すれば、採用プロセスを迅速化できます。
たとえば、面接が終了したあと優秀な人材にすぐ内定を出したとしましょう。
内定を受諾した立場としては、雇用契約書の郵送が遅ければ不安になりますし、心変わりして内定を辞退したくなるかもしれません。
その点、雇用契約書をデータで送信すればスムーズに契約書にサインしてもらえます。
採用プロセスが滞りがちな職場は雇用契約書の電子化を進めましょう。
雇用契約書を郵送する場合、封筒に宛先を書き、印刷した書類を中に入れて封をするなどして、郵送の手配をします。
その点、データ化された雇用契約書であれば、対象者にメールで送信できるため、これらの手間を省くことができます。
従業員が記入した情報をもとにハローワークや年金事務所に提出する書類まで自動作成できるツールもあります。
雇用契約書に関する事務作業の工数が大幅に減るので、業務効率が格段に向上します。
雇用契約書をデータ管理に切り替えれば、紙代や印刷費、郵送に必要な封筒代、切手代なども不要です。
毎年たくさんの従業員を採用する企業であれば多額のコストを削減できます。
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雇用契約書を電子化するメリットをお伝えしましたが、電子化にあたって注意点もあります。
電子化した雇用契約書は改ざんされるリスクがあります。
証拠力を確保するには、改ざんを防止できる対策を備えた電子契約サービスを利用する必要があります。
改ざんリスクの対策は主に電子署名とタイムスタンプです。
電子署名は、認証局と呼ばれる第三者機関から発行される電子証明書を用いる署名です。
本人認証と厳しい審査を通過して発行されるため、電子署名がされた雇用契約書のデータは、本人によって作成されたことを証明できます。
なお、電子署名が付与された文書が作成者以外の人に変更されると、警告が表示される仕組みです。
タイムスタンプに刻印されている時刻以前に該当する雇用契約書のデータが存在していたことを証明し、その時刻以降に改ざんされていないことを証明できます。
雇用契約書を電子化する場合に不可欠な仕組みといえるでしょう。
電子帳簿保存法では、保存期間だけではなく具体的な保存要件も定められています。
雇用契約書を電子化するうえでは、以下の要件を満たさなければなりません。
雇用契約書を電子化して管理するには、すでにお伝えしたタイムスタンプを付与しなければなりません。
ただ、コストが高くなるという批判から、訂正削除の履歴が残るあるいは訂正削除できないクラウドサービスによる保存も認められるようになりました。
雇用契約書のデータを事業所で素早く出力できるような体制にすることが求められます。
たとえば、データをディスプレイの画面に表示させたり、プリンターで書面として刷り出したりできるようにしておきます。
電子契約サービスにおいて、電子データの記録を検索できる機能を確保しておく必要があります。
従業員氏名や雇用開始日、賃金などでデータを検索できるように保存しなければなりません。
具体的な検索機能の要件として、2つ以上の項目を任意に組み合わせて検索できることも満たす必要があります。
雇用契約書を電子化してデータを管理する場合でも、労働条件通知書は交付する義務があります。
なお、労働条件通知書は原則として書面の交付が必要とされています。
労働者が希望していればメールやSNS、FAXなどでも明示することが可能です。
ただし、労働者が希望していないのに書面以外の手段で明示すると、労働基準関係法令の違反に当たるため、注意が必要です
参考:平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります(厚生労働省)
雇用契約書を保存する方法は台帳で書類として管理する方法と、データとして保存する方法に分けられます。
近年は電子契約が普及してデータ保存のルールも複雑になったので、電子帳簿保存法などの関係法令まで深く理解することが重要です。
とはいえ、雇用契約書を電子化すれば採用プロセスの迅速化や業務効率の向上、コスト削減などのメリットが期待できます。
ルールを正しく理解して電子化をベースとした管理方法を検討してみてください。
画像出典元:pixabay、unsplash