電子契約の普及率が増加する一方、法律上の有効性への懸念から導入を迷う声もあるようです。
また万一裁判になった際に、電子契約で問題にならないのかなどが気になる方もいるでしょう。
この記事では電子契約の定義や手続き、法的有効性にまつわる7つの法律について紹介します。
それぞれの法律が「何に対して」「何をOKとしているのか」についてピックアップして解説していきますので、一体どの法律から見ればよいのかわからないという方もぜひご参考ください。
このページの目次
電子契約にまつわる法律は7つあり、それぞれおおまかに以下のような内容について説明や定めを記しています。
電子契約が紙契約と同様に法的有効性が認められることを主に示したのは、契約の成立について示した「電子署名法」「民事訴訟法」の2つです。
また、ほかの5つの法律によって、契約が電子的に行われることの前提や使い方が、包括的に定義し認められています。
情報化・デジタル化の広まりにあわせ、ここ10年程で国内の法整備も進んできたので、法の規定のもとに安心して電子契約を利用する基盤が整ってきています。
次の章からの各法律の解説を参考に、電子契約の有効性や信頼度を確認していきましょう。
◾️電子契約の法的効力について詳しく知りたい方はこちら
これまで書面のみで契約を締結していた企業には驚くような事実ですが、実は、契約の形態が原則自由であることは民法において定められています。
民法第522条第2項
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
これは、2020年4月の民法改正の際に規定されたもので、契約の成立に書面の作成は必須ではなく、形態を自由に決めてよいことを示しています。
契約の成立は、口頭の意思表示だけでもOKですし、メール文面や、web上での電子締結なども全て法的に問題はないのです。
ただし、「特別の定めがある場合を除き」という注釈には注意が必要です。
<書面作成が必須と決められている契約の例>
例えば、訪問販売などのクーリングオフでは、契約内容を明らかにする書面を交付しなければならず、書面がなければクーリングオフ期間そのものが進行しないこととなっています。
とはいえ、特定の定めがない一般的な契約に関しては、「電子契約で問題ない」ということが大前提として規定されていることは大きな安心要素となるでしょう。
契約書の種類について詳しく知りたい方はこちら
電子契約の法的有効性を裏付ける重要な法律の一つが2001年に施行された「電子署名法」です。
正式には「電子署名及び認証業務に関する法律」という名称で、電子署名が手書きの署名や押印の付された文書と同等に通用する法的基盤を確立すること等を目的に作られました。
私たち利用者にとって重要なのは第3条の有効性を示す条文です。
電子署名法 第3条
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
この部分を根拠として、本人による電子署名があればその契約書などの電子文書は、正しく成立したものと推定できるようになりました。
"推定"というのは法律用語でわかりづらいですが、前提となる事実の反証がなされない限りは成立するという意味なので、本人による電子署名であることが証明できれば=本物として成立する、ということです。
電子署名法では、「電子署名」の要件についても次のように示しています。
電子契約サービス各社ではこれらの要件を満たした電子署名手続きを提供するよう整えていますので、安心して利用することができるでしょう。
なお、電子署名の仕組みや種類の詳細については、こちらの記事もご参考ください。
契約は書面でなくても成立し、電子署名があれば本物として認められるという定めは確認しましたが、「契約が成立すること」と「裁判で証拠として認められること」は同義ではありません。
民事訴訟法は、裁判手続の進め方やどのように解決するのかに関する法律です。
その中では、電子契約についてどう扱われているのでしょうか。
民事訴訟法
第228条 4項
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
第231条
この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。
第247条
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
これはまず、文書に本人の署名や押印があれば、反証がない限り、その文書は真正に成立しているとして扱われるという意味です。
またそれに加え、法律の文書に関する規定は、情報を表すために作成されたほかの形態のもの(電子書面)も、文書に準ずるものとして扱われることが説明されています。
さらに、真実として認めるかどうかは、証拠などを見て、自由に事実認定の判断をしてよいものとする原則が示されています。
したがって、文書であろうと電子署名であろうと、その内容の信憑性が高い場合には、証拠として同様に認められることができます。
例え紙への押印であっても信憑性の証明には印鑑証明が必要となるように、電子署名においては電子証明書があるので、万一の際には押印と同じ効力をもって証拠として用いることができるのです。
リーガルテックサービスについて詳しく知りたい方はこちら
電子帳簿保存法は、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」という名称です。
これまでは所得税法や法人税法により、契約書を含む国税に関係する書類は原則として紙の形で7年間保存することが義務でした。
しかし、電子帳簿保存法により、一定の条件を満たせば、これらの書類を電磁的記録による方法によって保存することが認められるようになりました。
一定の条件とは、真実性・見読性・検索性の確保など保存に関する条件を満たし、税務署への事前申請を行うことなどとなります。
条件が厳しいようにも感じますが、情報化社会への対応のため、これまでも段階的に要件の緩和が行われているので、今後も保存のしやすさが増していくことが期待されています。
電子帳簿保存法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
IT書面一括法は、電子商取引の促進を意図した法律です。
正式名称は「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といい、50の法律をまとめて改正したので「IT書面一括法」と呼ばれています。
2001年に施行されたこの法令により、従来は書面による交付や手続きを義務付けていた文書がEメールなどの電子的な方法で交付や手続きができるようになりました。
たとえば、
などに関係する書類が、幅広く電子的方法でやり取りができるようになりました。
e-文書法は、
この2つの法律で構成されています。
2005年に施行されたこの法律により、会社法や商法、法人税法などで紙媒体での保管が義務付けられていた文書を電子データで保存可能となりました。
電子データで保存可能となったものには、契約書をはじめ、帳簿類、請求書や領収書、納品書などが含まれています。
さらに会社の定款、決算書に関係する賃借対照表や損益計算書、株主総会や取締役員会の議事録も電子的方法で保存可能です。
e-文書法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
印紙税法により、契約書は課税文書とみなされ印紙税を納めなければならないと定められています。
契約書の法的有効性を保証しているのは国が定めた法律ですから、それを保証している国にお金を納めてくださいという理屈です。
実は条文内には、「電子契約は対象外」とする規定は明確にはありません。
しかしながら、国税庁の法令解釈通達により、"法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう"と示されました。
このことから、電子契約は用紙を使わないので、印紙税は課されないと判断できることとなりました。
国税庁や政府見解や、印紙不要の一部例外などについての詳しい説明は、以下の記事もご参考ください。
これまで紹介した7つの電子契約に関係する法律を一覧表にまとめます。
民法 | 契約の形態は文書だけでなく、口頭やメール、電磁的方法など自由であることが示されている |
電子署名法 | 本人による電子署名があればその契約書などの電子文書は、署名・印鑑のある紙文書と同じように本人の意思によるものと推定できるようになった |
民事訴訟法 | 電子文書も紙に準ずるものとして扱われ、信憑性が証明できれば証拠として用いることができる |
電子帳簿保存法 | 真実性の確保・見読性の確保・検索性の確保などの保存に関する条件を満たせば契約書などが電子データで保存ができるようになった |
IT書面一括法 | 金融商品取引法・建設業法・旅行業法・保険業法などの50の法律について書面での交付や手続きが電子的方法に代替可能となった |
e-文書法 | 法人税法や会社法、証券取引法、商法などで保管が義務付けられている文書、たとえば契約書・領収書・請求書・納品書・定款・株主総会や取締役会議の議事録・決算書類などが電子データで保存できるようになった |
印紙税法 | 紙の契約書や領収書などには収入印紙を貼らなければならないが、国や国税庁の見解によれば、電子契約の場合には収入印紙は必要ない |
こうした法律により、電子契約も紙契約と同じ法的有効性が認められるようになり、契約書の保存も紙だけではなく電子データで行えるようになりました。
企業や個人が安心して電子契約を導入できるよう、国もさらに法整備を進めており、今後ますます利用が促進されていくでしょう。
電子サインと電子署名の法的効力の違いについてはこちら
ここからは編集部が厳選したおすすめの電子契約サービス5選を紹介していきます。
弁護士ドットコム株式会社が運営していることで人気が高い「クラウドサイン」。CMも活用し、知名度・利便性で他社を一歩リードしているサービスです。実際に大手企業の導入実績も多数あります。
クラウドサインはメール認証での契約締結になるため、比較的締結が簡単です。
そのため個人事業主やアルバイトなど対個人の契約や海外企業との契約でも気軽に利用できます。従業員を対象とした雇用契約書や秘密保持契約書や、取引先企業との発注書や受注書のやり取りなどでも活用しやすいです。
ただし契約書の送信はPDF形式のみ・1回ごとの送信料が200円と他社と比較しても少し高めの設定になっている点がネックです。
メール認証による署名での契約締結。締結のしやすさを重視する企業に向いています。
プラン | 月額費用 | 送信件数ごとの費用 | 特徴 |
Standard | 10,000円 | 200円 | 全ての基本機能搭載 |
Standard plus | 20,000円 | 200円 | Standard+インポート機能 |
Business | 100,000円 | 200円 | 高度なリスク管理機能 |
画像出典元:「ContractS CLM」公式HP
ContractS CLMは、電子契約締結だけでなく、契約の作成・相談・承認・締結・更新管理をワンプラットフォームで行える上に、Word編集機能やナレッジマネジメント機能なども備えており、契約プロセス全体の効率化を実現できるシステムです。
電子契約サービスを利用したい場合だけでなく、「紙と電子の契約書両方の管理を行いたい」、「システム導入によって契約関連業務すべてを効率化したい」などといった本格的な導入を考えている企業に向いているサービスです。
ContractS CLMによる締結に加えて、DocuSign/クラウドサインを利用した電子締結が可能です。
上の図のように、プランは4種類あり、初期費用は別途発生します。
契約期間は1年単位です。
料金の詳細はお問い合わせする必要があります。
「NINJA SIGN」は、Googleドキュメントを使用することで、テンプレートやドラフトの編集をシステム上でできる機能がとにかく画期的です。
自社で修正した箇所は履歴として自動保管されるなど、ワードファイルでは実現不可能な効率化を実現してくれます。
さらに他サービスでは書類を1件送る毎に料金が発生する従量課金制のものが多いですが、NINJA SIGNは送信料が0円なので書類送信件数が多ければ多いほど得をする料金体系となっています。
他社サービスと比較検討してNINJA SIGNの導入を決めるユーザーが90%を占めており、人事部のみが契約書を確認できるようにする、といった”フォルダ権限設定”ができることが、ユーザーに高く評価されているポイントです。
ただしFreeプランで送信できるのは月に5通まで、Lightプランでは送信数無制限・送信料0円で4,980円(税込5,478円)/月という料金ですが、これは1アカウントの利用料金なのでこの2点は注意が必要です。
現在、対応言語は英語とベトナム語があります。
メール認証、二要素認証による署名での契約締結になります。締結のしやすさを重視する企業に向いています。
プラン | 初期費用 | 月額固定費用 | 機能 |
Free | 0円 | 0円 | 基本機能のみ |
Light | 0円 | 4,980円 (税込5,478円) |
テンプレート登録数無制限 |
Light Plus | 0円 | 19,800円 (税込21,780円) |
Wordテンプレート登録等追加 |
Pro | お問合わせ | 50,000円~ (税込55,000円〜) |
専任サポート等追加 |
Pro Plus | お問合わせ | 120,000円~ (税込132,000円〜) |
全機能、全オプションが利用可能 |
画像出典元:「BtoBプラットフォーム契約書」公式HP
「BtoBプラットフォーム 契約書」は、良心的な価格・優れた機能・強固なセキュリティと三拍子揃っているので、どんな規模の企業にもおすすめできるサービスです。
また、他のBtoBプラットフォームシリーズと連携させることで、契約書だけではなく、見積・受発注・請求の際の帳票類をすべて電子データ化できる点が魅力です。
ただし電子証明書型の電子署名方法を提供しているため、1回きりの契約が多く、クライアントに手間・工数をかけさせたくない、という企業にとっては少しハードルが高い可能性があります。
電子証明書を発行して締結を行います。取引先にも、招待メールのリンクから電子証明書の設定を行ってもらいます。
電子証明書を用いているので、法的効力が強い電子契約サービスです。
プラン | 初期費用 | 月額費用 | 特徴 |
フリープラン | 0円 | 0円 | 無料プランでもユーザー数無制限 |
シルバープラン | お問い合わせ | 10,000円〜 | 電子契約のみ利用可能 |
ゴールドプラン | お問い合わせ | 30,000円〜 | 電子契約に加え電子保管が利用可能 |
料金は全体的に割安だといえます。
文書送信1通あたりの費用も50円/通と、他のサービスと比べても安いです。
また現在、オプション機能「ドキュメントScanサービス」のスキャン費用10万円を無料提供する特典プランもあります。
画像出典元:「電子印鑑GMOサイン」公式HP
「電子印鑑GMOサイン」は、16万社以上の企業のITインフラを支えるGMOが運営している電子契約システムです。20年以上日本のインターネット基盤を支えている企業ならではの充実機能には定評があります。
導入企業数は2022年4月で140万社を超え、国内電子契約サービスにおける導入企業数No.1*。弁護士監修の点も安心です。
また電子印鑑GMOサインはトップレベルのセキュリティを誇る電子契約システムです。一つひとつの契約データごとに暗号化して保管していたり、契約データのバックアップも毎日行っているので、重要な書類を安全に取り扱うことができます。
お試しフリープランは無料で利用できるので、まずは試験的に使ってみて、その後導入を検討してみるのが良いでしょう。
*2022年5月GMO社調べ(国内主要電子契約サービスの公表数値を比較)
「電子印鑑GMOサイン」(OEM商材含む)を利用した事業者数(企業または個人)
1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウント/契約社は60万社(複数アカウントの場合、重複排除)
当事者型(実印タイプ)・立会人型(契約印タイプ)・ハイブリッド署名の全ての署名方法が利用可能なので、文書の性質や相手に合わせて使い分けることができます。
「契約印&実印プラン」は月額利用料9,680円(税込)で利用できます。
詳しいサービス内容・料金を知りたい方は、資料チェックできます。
電子契約に関係する法律を7つ紹介しました。
電子署名法によって、電子契約の有効性が保証されることとなり、その他、民法・電子帳簿保存法・IT書面一括法・e-文書法などによって、電子的保存や交付・手続きなどが認められるようになりました。
テレワークの推進や仕事の効率化などを考えると、電子契約の導入は企業にとって必須となりつつあります。
行政も法整備を整えることで電子契約の導入を後押ししているので、この機会に電子契約の導入を検討するのはいかがでしょうか。
※本記事では、2021年11月時点の情報に基づき、法律の概要解釈や説明を目的として紹介をしています。詳細の法的助言などが必要な場合は専門家にご相談ください。
画像出典元:Pexels
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