電子契約の普及率が増加する一方、法律上の有効性への懸念から導入を迷う声もあるようです。
また万一裁判になった際に、電子契約で問題にならないのかなどが気になる方もいるでしょう。
この記事では電子契約の定義や手続き、法的有効性にまつわる7つの法律について紹介します。
それぞれの法律が「何に対して」「何をOKとしているのか」についてピックアップして解説していきますので、一体どの法律から見ればよいのかわからないという方もぜひご参考ください。
このページの目次
電子契約が法的に有効かどうか不安を感じる方も多いかもしれません。
まずは、電子契約の法的根拠について具体的に解説します。
契約は、紙の契約書がなければ成立しないと考えている方も多いですが、、実は、民法において「契約の形態は原則自由」と定められています。
民法第522条第2項
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
これは、2020年4月の民法改正の際に規定されたもので、契約は口頭の意思表示でも成立し、メール文面や、web上での電子締結なども法的に有効です。
ただし、ごく一部の例外的な契約には注意が必要です。
<書面作成が必須とされる契約の例>
例えば、訪問販売などのクーリングオフでは、契約内容を明らかにする書面を交付しなければならず、書面がなければクーリングオフ期間そのものが進行しないこととなっています。
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「契約が成立する」ことと、「法的紛争時に証拠として認められる」ことは別問題です。
ここでは、電子契約が裁判においても証拠力を持つことを定めた法律を見ていきましょう。
電子契約の裁判における証拠力については、民事訴訟法で「電子契約書も紙の契約書と同等の証拠力を持つ」と明記されています。
民事訴訟法
第228条 4項
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
第231条
この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。
第247条
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
また、法律の文書に関する規定では、情報を表すために作成されたほかの形態のもの(電子書面)も、文書に準ずるものとして扱われることが説明されています。
さらに、真実として認めるかどうかは、証拠などを見て、自由に事実認定の判断をしてよいものとする原則が示されています。
したがって、文書であろうと電子署名であろうと、その内容の信憑性が高い場合には、証拠として同様に認められるのです。
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電子契約を安全に正しく運用するためには、関連する法律の理解が欠かせません。
ここでは、電子契約の成立や保存方法、税制上の取り扱いについて規定した主な法律をわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法は、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」という名称です。
契約書や請求書など国税に関係する書類を電子データとして保存するためのルールを定めています。
これまでは所得税法や法人税法によって、契約書を含む国税に関係する書類は原則として紙の形で7年間保存することが義務付けられていました。
しかし、電子帳簿保存法により、一定の条件を満たせば、電子データでの保存が認められています。。
保存に重要な要件は、大きく分けて「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つです。
それぞれの具体的な対応策を以下の表にまとめました。
概要 | 具体的な対応策 | |
真実性の確保 | データが改ざん・削除されて いない状態を保持する |
以下のいずれかで対応する
|
可視性の確保 | 保存したデータを適切に検索・ 閲覧できる状態にする |
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電子帳簿保存法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
IT書面一括法は、電子商取引の促進を意図した法律です。
正式名称は「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といい、50の法律をまとめて改正したので「IT書面一括法」と呼ばれています。
2001年に施行されたこの法令により、従来は書面による交付や手続きを義務付けていた文書がEメールなどの電子的な方法で交付や手続きができるようになりました。
e-文書法は、2005年に施行された法律で、商法、会社法、法人税法などの紙による保存が義務付けられていた文書を電子データで保存することを認めています。
電子データで保存可能となったものには、契約書をはじめ、帳簿類、請求書や領収書、納品書などが含まれています。
さらに会社の定款、決算書に関係する賃借対照表や損益計算書、株主総会や取締役員会の議事録も電子的方法で保存可能です。
e-文書法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
電子署名法は、2001年に施行された電子契約の法的有効性を裏付ける重要な法律の一つです。
正式には「電子署名及び認証業務に関する法律」という名称で、電子署名が手書きの署名や押印の付された文書と同等に通用する法的基盤を確立すること等を目的に作られました。
電子署名法の第2条では、電子署名の定義が明確に示されています。
電子署名法 第2条
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
つまり、電子文書において「文書の作成をした本人であること」「文書が改ざんされていないこと」の両方を証明できるものだけが、法的に有効な電子署名と認められます。
そして、最も重要なのは第3条の有効性を示す条文です。
電子署名法 第3条
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
この条文により、第2条で定められた「本人性」と「非改ざん性」を満たした電子署名が付与された電子契約は、正当な契約書とみなされます。
なお、電子署名の仕組みや種類の詳細については、こちらの記事もご参考ください。
契約書は、印紙税法によって課税文書とみなされ、印紙税を納めなければならないと定められています。
実は条文内には、「電子契約は対象外」とする規定は明確にはありません。
しかしながら、国税庁の法令解釈通達により、"法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう"と示されました。
このことから、電子契約は用紙を使わないので、印紙税は課されないと判断できることとなりました。
国税庁や政府見解や、印紙不要の一部例外などについての詳しい説明は、以下の記事もご参考ください。
法律の専門的な知識がなくても、関連する法律に対応した電子契約システムなら簡単に電子契約を導入できます。
最後に、電子契約システムのメリットと選び方のポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
電子契約に関係する法律を7つ紹介しました。
電子署名法によって、電子契約の有効性が保証されることとなり、その他、民法・電子帳簿保存法・IT書面一括法・e-文書法などによって、電子的保存や交付・手続きなどが認められるようになりました。
テレワークの推進や仕事の効率化などを考えると、電子契約の導入は企業にとって必須となりつつあります。
行政も法整備を整えることで電子契約の導入を後押ししているので、この機会に電子契約の導入を検討するのはいかがでしょうか。
※本記事では、2021年11月時点の情報に基づき、法律の概要解釈や説明を目的として紹介をしています。詳細の法的助言などが必要な場合は専門家にご相談ください。
画像出典元:Pexels
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