電子契約は署名や印鑑の押印で法的有効性を保証する紙の契約とは違うので、法的有効性が大丈夫か心配という意見があります。
この記事では電子契約の法的有効性と関連のある法律や、その他の法律を含めて、電子契約にまつわる法律を5つ紹介します。
さらに、電子契約ツール各社の資料請求ができます。
電子契約にまつわる法律を正しく理解して、積極的に電子契約ソフトの導入を検討しましょう。
このページの目次
紙媒体の契約では、契約内容に双方が合意していることを証拠として残すために、原本と写しの2部を作成し、それぞれに日付を記入し、署名し、印鑑を押印するという契約締結の方法が採用されていました。
この方法により、契約書は以下の3つの機能を持つようになります。
確認機能 |
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紛争予防機能 |
|
立証機能 |
|
紙の契約書の場合、署名や印鑑があることで、こうした法的有効性が保持できます。
しかし、署名や押印ができない電子データの電子契約は、法的有効性の部分がどうなのかという点が心配になります。
ここからは電子契約の法的有効性について見ていきましょう。
電子契約の法的有効性を裏付ける法律が「電子署名法」です。
2001年に施行された電子署名法には2つの目的があります。
(引用:総務省 電子署名及び認証業務に関する法律の施行(電子署名法))
簡単に説明すると、電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用するという法的基礎が備えられたということです。
この法律を根拠として電子署名のある契約書などの電子文書は、署名・印鑑のある紙の文書と同じように本人の意思により作成されたものと推定できるようになりました。
また、認証業務に関し一定の基準を満たしたものは、総務大臣・経済産業大臣・法務大臣から認定業者とみなされるという制度が導入されました。
電子契約が署名・印鑑のある紙の契約書と同じように法的有効性を持つには「電子署名」が必要です。
電子署名法は電子署名ついても説明しています。
”第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。”
(参考:電子署名法 第一章 第二条)
要約すると、電子署名とは次の2つの要件を満たすために電子文書に対して行われる措置です。
”第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。”
(電子署名法 第二章 第三条)
この部分は、本人による電子署名があればその契約書などの電子文書は、本人の意思によって成立したものと推定されると説明しています。
電子署名の機能や、電子署名による本人確認、改ざんの有無を確認する方法などについてはこちらの記事をご覧ください。
電子契約に法的有効性を持たせたのが電子署名法ですが、他にも電子契約に関係する法律があります。
次に電子契約に関係する次の4つの法律を簡単に紹介します。
1998年に施行されたこの法律の正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。
契約書を含む国税に関係する書類は原則として紙の形で7年間保存することが義務でした。
しかし、改正されたこの法令により、真実性・見読性・検索性の確保など保存に関する条件を満たしている契約書を含む電子文書が電磁的な方法で保存可能になりました。
電子帳簿保存法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
IT書面一括法は、電子商取引の促進を意図した法律です。
正式名称は「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といい、50の法律をまとめて改正したので「IT書面一括法」と呼ばれています。
2001年に施行されたこの法令により、従来は書面による交付や手続きを義務付けていた文書がEメールなどの電子的な方法で交付や手続きができるようになりました。
たとえば、
などに関係する書類が電子的方法でやり取りができます。
e-文書法は、
この2つの法律で構成されています。
2005年に施行されたこの法律により、会社法や商法、法人税法などで紙媒体での保管が義務付けられていた文書を電子データで保存可能となりました。
電子データで保存可能となったものには、契約書をはじめ、帳簿類、請求書や領収書、納品書などが含まれています。
さらに会社の定款、決算書に関係する賃借対照表や損益計算書、株主総会や取締役員会の議事録も電子的方法で保存可能です。
e-文書法について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
印紙税法により、領収書や手形、契約書は課税文書とみなされ印紙税を納めなければならないと定められています。
領収書や契約書の法的有効性を保証しているのは国が定めた法律ですから、それを保証している国にお金を納めてくださいという理屈です。
こうした文書には収入印紙を購入しそれを貼り付けることで、印紙税の納税証明とします。
しかし、電子データには収入印紙は貼れません。
よって、電子契約では収入印紙を貼る必要はありません。
電子契約で収入印紙がいらないいくつかの理由を紹介します。
国税庁の法令解釈通達によると、収入印紙の必要な課税文書の「作成」を次のように定義しています。
”第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。”
(国税庁:第7節 作成者等)
課税文書の作成を「用紙などに課税事項を記載し」と定義しています。
つまり、紙に書いて交付することが「作成」というわけです。
しかし、電子契約では契約書を紙に記しません。
電子データで契約書を作りメールで送信してもそれは収入印紙の必要な課税文書の作成には該当しないということです。
さらに国税局の公式ページには次のような回答があります。
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。
また、ファクシミリや電子メールを受信した貸付人がプリントアウトした文書は、コピーした文書と同様のものと認められることから、課税文書としては取り扱われません。
(引用:国税庁 コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い)
電子的に送信された請求書などは、実際の文書が交付されていないので収入印紙はいらない、受け取った側がそれをプリントアウトしてもコピーと同じ扱いなのでそれにも収入印紙はいらないということです。
さらに、国会でもこの問題が扱われました。
そのときの総理大臣の答弁は以下の通りです。
”事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。”
(出典:参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書)
国も電磁的記録により作成されたものは、印紙税は課されないと認めています。
このように電子契約では収入印紙がいらないので、それを導入すれば収入印紙代がコストカットできるというメリットが生まれます。
これまで紹介した5つの電子契約に関係する法律を表にまとめました。
電子署名法 | この法律により本人による電子署名があればその契約書などの電子文書は、署名・印鑑のある紙文書と同じように本人の意思によるものと推定できるようになった |
電子帳簿保存法 | 真実性の確保・見読性の確保・検索性の確保などの保存に関する条件を満たせば契約書などが電子データで保存ができるようになった |
IT書面一括法 | 金融商品取引法・建設業法・旅行業法・保険業法などの50の法律について書面での交付や手続きが電子的方法に代替可能となった |
e-文書法 | 法人税法や会社法、証券取引法、商法などで保管が義務付けられている文書、たとえば契約書・領収書・請求書・納品書・定款・株主総会や取締役会議の議事録・決算書類などが電子データで保存できるようになった |
印紙税法 | 紙の契約書や領収書などには収入印紙を貼らなければならないが、国や国税庁の見解によれば、電子契約の場合には収入印紙は必要ない |
こうした法律により、電子契約も紙契約と同じ法的有効性が認められるようになり、契約書の保存も紙だけではなく電子データで行えるようになりました。
企業や個人が安心して電子契約を導入できるように、国も法整備を整えています。
最後に電子契約と紙契約の違いについて触れておきます。
電子契約 | 紙契約 | |
契約書類 | 電子データ(PDFなど) | 紙 |
署名方法 | 電子署名 | 手書きの署名・印鑑の押印 |
契約までの流れ | 契約書のデータ作成 ↓ 相手側へメールで送付 ↓ 電子署名後契約完了 |
契約書の印刷・製本 ↓ 相手側へ郵送 ↓ 相手側から返送・受取後に契約完了 |
契約締結までの時間 | 短い | 長い |
契約場所 | オンラインならば時間と場所は問わない | 当事者・契約書・印鑑の揃ったオフィスなど |
契約書の保管場所 | サーバーや電子契約サービスのデータセンター | ロッカーや倉庫など |
契約書の保存期間 | 長期保存可能 | 保存方法がずさんであれば劣化する |
契約にかかるコスト | 電子契約サービス登録料 電子契約サービス利用料 電子証明書発行料 | 収入印紙代・印刷費・郵便代・人件費など |
法的有効性 | 電子署名により有効 | 署名・押印により有効 |
この比較表を見るとわかるように電子契約は以下の点で紙媒体の契約より優れています。
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画像出典元:「リーテックスデジタル契約」公式HP
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電子契約に関係する法律を5つ紹介しました。
電子契約の法的有効性を保証する法律は電子署名法です。
その他の電子帳簿保存法・IT書面一括法・e-文書法は契約書などの文書の電子的保存や交付・手続きを認めるものでした。
また、印紙税法で「電子契約に印紙不要」が認められています。
テレワークの推進や仕事の効率化などを考えると、電子契約の導入は企業にとって必須となりつつあります。
行政も法整備を整えることで電子契約の導入を後押ししているので、この機会に電子契約の導入を検討するのはいかがでしょうか。
おすすめの電子契約サービスについてはこちらの記事をご覧ください。
画像出典元:Pexels
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