取引で使用される機会の多い契約書。仕事や普段の生活においても、目にする機会があることも多いはず。
契約書の種類には、企業形態や取引の形態・内容によって実に様々なものがあります。それは、法律に則って作られるためです。
そこで今回は、契約書をテーマに、契約書の種類にはどんなものがあるのか、作成~サインまでに注意すべきポイントなどを詳しくご紹介します。
これから起業を考えている方、会社で契約書を作成する方、契約書を受け取る側の方にとって契約書への理解が深まる内容です。
このページの目次
契約書と一口にいっても、その種類は多種多様です。民法やその他の法律によって定められた契約や取引を行う際に取り交わされるもののため、なかには一般に馴染みのないものまであります。
全ての契約書の種類を挙げると、あまりにも多くキリがないほどです。
なぜ、それだけの契約書が世の中に存在しているのかと言えば、民法で定められているために発生する契約書と、民法以外の法律で定められているために発生する契約書があるからです。
ここでは、企業間で用いる機会の多い契約書と普段の生活にも関わる契約書に絞り、ジャンル別に一覧表を作成しています。
表にあるのは、数ある契約書の中でも代表的なものから一部を抜粋したものです。
領域 | 契約書の種類 |
人事・労働契約 |
労働契約書 |
委任・委託・信託 |
業務委託契約書 |
請負 |
保守契約書 |
会社運営 |
株式譲渡契約書 |
商取引 |
取引基本契約書 |
不動産 |
定期借地権設定契約書 |
動産 |
自動車賃貸借契約書 |
金銭貸借・債権債務 |
金銭消費貸借契約書 |
知的所有権 |
プログラム使用許諾契約書 |
表題に「契約書」と明記されていなくても、実質的には契約書と同じ役割を果たすものもあります。特殊な状況下で有効になる契約書
特殊な状況下で有効になる契約書 |
覚書、示談書、合意書、受講申込書、会員規約、利用規約、誓約書、陳述書、告発状、請書(うけしょ)、受領書(領収書)、お預り証 など |
人によって身近な契約書は変わると思われますが、ここでは企業間でよく見かけるもの、一般生活において見かけるもの両面から、それぞれ代表的なものをピックアップしました。
身近な契約書の代表例 |
売買契約書、業務委託契約書、発注書、請負契約書、秘密保持契約書、サービス利用契約書(利用規約/会員規約)、不動産賃貸借契約書 など |
たとえば、音楽配信やクラウドなどのサービスを受けるときを思い出してみてください。私たちがそれらのサービスを利用する際、最初に会員登録を行います。
このとき、利用規約に同意してからサービスを利用しているはずです。
利用規約には、注意事項をはじめとしたサービス利用におけるさまざまな条文が記されています。
利用規約は契約書と同じ効力を持っており、それに同意することは契約書にサインするのと同じことなのです。
上記に挙げた例だけで見ても、多くの契約書があることがわかります。契約書類が多種多様にあるのは、取引で紛争が生じるのを前提にしたリスク管理の一環でもあるからです。
契約書を取り交わしておけば、契約内容が証拠として残ります。
仮に、取引後にトラブルが生じても、具体性・明示性のある契約書であれば無用な争いを避けられたり、関係を悪化させたりせずに済むからです。
契約書によっては書面に残さずとも、メールやチャットなどの電子テキストを有効と判断されることもあります。しかし、トラブルは双方の認識違いによって起こることもしばしば。
言葉一つで発信者と受信者の認識が変わってしまうことがあるからです。
それを踏まえると、同じ文体で同じ内容の同一書式を用いた契約書を交わしておいたほうが、認識の誤差を少なくできるはずです。
起業や法人化する際に、必要となる契約書にはどんなものがあるのでしょうか?
ここでは、起業家や経営者が知っておくべき契約書についてご紹介します。
起業や法人化で用いる機会のある契約書を、シーン別に一覧にまとめてみました。
シーン | 必要な契約書の種類 |
従業員を雇うとき | 雇用契約書 |
ローンなどでお金を借りるとき | 金銭消費貸借契約書 |
業務を外注するとき | 業務委託契約書 |
第三者に重要な情報を漏らされたくないとき | 秘密保持契約書 |
オフィスを借りるとき | オフィス賃貸契約書 |
年契約で支払いを約束してもらいたいとき | 売買契約書 |
業務提携を行うとき | 業務提携契約書 |
業務を請け負ったり、請け負ってもらうとき | 請負契約書 |
業務を委託したり、委託されたりするとき | 委託契約書 |
継続的に取引が発生したとき | 取引基本契約書 |
商品やサービスを購入したとき | 領収書 |
起業や法人化で契約書類が発生するのは、起業する業態や取引によって異なりますが、上記の例は代表的なものです。
用意すべき契約書の種類は、取引のシチュエーションから想定すると判断しやすいでしょう。
創業後、契約書を作成したり、サインしたりする場合にどんなことに注意すべきなのでしょうか。漏れや抜けがあると、それが原因でトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
ここでは、作成~サインまでの契約書における注意点を解説しています。
一度契約が締結すると、取り交わした契約書に効力が生じます。作成する際には、具体的かつ明確に記載・表現することが重要です。
具体性を欠いた曖昧な表現があると、意図とは異なる受け取られ方をしたり、トラブルに発展したりすることもあるからです。
そのほかにも、注意すべき点があります。それらを一覧にまとめましたので、契約書作成時の確認事項として参考にしてください。
契約書を作成する際のチェックポイント | |
ひな形のまま使用していないか? |
契約書でひな形を使う場合、条項や条文が取引の実情にマッチしていなことがあります。 実情にあったものを使うか、書き加えるなどして用いましょう。作成したものが実情に則しているのか不安な場合は、リーガルチェックを依頼するのが安心です。 |
固有名詞や数字に誤字脱字がないか? |
屋号や商品・サービス名、数量、金額、契約期間などの記載に誤りがないかを確認します。 もしも誤りがあれば、契約を締結しても無効になったり、トラブルのもとになりかねません。 |
すり合わせた内容が盛り込まれているか? |
契約書は、発行側の意図が強く反映されやすいものです。作成段階では、当事者同士ですり合わせを行うのがトラブル回避にもなります。 何度かやりとりをしてブラッシュアップしたうえで、その内容が反映できているかを確認しましょう。 |
条件や説明に抜け漏れがないか? |
契約書は今後の取引の指針にもなるものです。条文や説明に抜け漏れがあると、トラブルに発展しやすくなります。「これくらい書かなくてもわかるだろう」といった相手に忖度を求めるのは厳禁です。 契約の更新や契約満了などの重要事項においては、第三者が見ても理解できる文章かを基準に厳しくチェックをするのが望ましいです。 |
強行法規に反していないか? |
契約書に定義される内容は、基本的には当事者双方の自由ですが、内容によっては法律によって強制的に適用されるものがあります。これを「強行法規」あるいは「強行規定」といいます。 強行法規に反する契約内容は無効になり、場合によってはコンプライアンス違反リスクを抱える可能性もあります。 強行法規を多く含む法律は、下請法や労働法などです。不安な場合は、契約前に契約内容をリーガルチェックしてもらいましょう。 |
契約期間によっては、長期にわたり効力が発揮する契約書。サインしてしまえば、同意したことになりますから、あとから内容を覆すのが難しくなります。
一方的に不利な状況になってしまうのは、契約内容を隅々まで確認せずに、なんとなくわかったつもりでサインしてしまうからです。
サインする前に、しっかりと内容を確認して、本当にこれで契約を締結しても問題がないのかを見定めることが大切です。
サイン時に注意すべきチェックポイントは、契約書の作成時とほぼ同じです。契約書は作成する側の意図が強く反映されやすいため、特に気を付けるべきは、次の3点です。
契約書を受け取ったら、まずは条文や説明文に目を通し、自社にとって不都合を生じる箇所がないか、取引の実情に適したものになっているかを確認しましょう。
自社の意向が反映されていない契約書は、自社にとっての法的リスクを高める要因にもなりえます。契約が絡むトラブルでは、契約書の解釈や有効性が問題の争点になりがちだからです。
トラブルが互いの協議の末に解決するものならいいですが、もしも訴訟問題にでも発展すれば、解決に至るまでに長期間かかるうえ、当然コストもかかります。
サインする側が、後々のリスクをよく考慮して判断しなければ、何かの拍子に問題点が顕在化して経営に深刻な影響を及ぼすこともありえます。
これらを十分にイメージしてから、サインするようにしましょう。
契約書には多くの種類があり、用いる場合は適切なものを選ばなくてはなりません。自社に法務部門があるところでは、契約書を作るときに法的視点からチェックしてもらうことが可能です。
しかし、法務部門がない個人事業主やスタートアップのような零細・中小企業の場合は、多少のコストがかかっても、外部の弁護士にリーガルチェックを依頼するのが得策です。
どんな種類の契約書であれ、ひとたび契約を交わせば法的効力が発生します。
発行する側も発行される側も法的紛争を前提にイメージすることが、契約の取り交わしにおいてとても重要ということを忘れずにいましょう。
画像出典元:Pixabay
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