e-文書法を知っていますか?
電子帳簿保存法と間違えてしまう人も多いですが、実際はまったくの別モノです。
いざ文書を電子化する際に困ったことならないよう、その違いを理解しておきましょう。
この記事では、e-文書法と電子帳簿保存法の違い、対象文書、技術要件、メリットについて解説します。
このページの目次
今まで紙ベースで保存していた文書の「電磁的記録としての保存(以後、電子化)」を容認した法律です。施行の背景を確認しましょう。
今まで企業や病院では、法定保存文書は紙ベースで保管することが義務付けられていました。
しかし、毎日増える紙の法定保存文書は膨大な量です。文書を保存するために倉庫を借りる企業もあるなど、保管は一苦労です。さらにその中から目的の文書を探すには多大な労力が必要でした。
デジタル時代に突入し、ネットワーク環境も整備されてきていますので、文書のデジタル保存を求める声が大きくなったのは当然の帰結でしょう。
そういった背景があり、2005年、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が施行されました。
前者は「通則法」、後者は「整備法」で、2つ併せて通称「e-文書法」と言います。
通則法は、今まで紙でのみ保存が認められていた文書を電子化することを容認した総則的な法律です。厚生労働省による概要の元の文章を確認しておきましょう。
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(以下「e-文書法」という。)は、民間事業者が行う文書の保存、作成、閲覧等について、原則として電磁的記録によることを可能とするもの。
通則法では補えず、例外など、個々に改正が必要な法律に対して対応するのが整備法です。e-文書法が施行され、ほかの各種法令が順次改正されているのは、整備法の影響を受けているからなのです。
軽く100を超える法令が紙ベースでの文書保存を定めています。e-文書法はそれらの法令に対して、文書の電子化を容認しています。
各方面での法定保存文書全てと言うことができます。企業関係の書類例を見てみましょう。
上記は企業関係の対象文書です。ほかにも、医療関係では「紙カルテ」「紹介状」「同意書」など、建築関係では「建築図面」などの電子化を容認しています。
・すぐに見ることができなければならない(見読性/可視性が高い)もの
例:船舶上での手引書など
・すぐに現物確認ができなければならない(現物性が高い/携帯しなければならない)もの
例:免許証、許可証、保険証
・条約で制限されているもの など
e-文書法は、電子化の対象外書類も定めています。上記のように、すぐに見ること、現物確認する必要があるものは対象外とされています。
対象文書を電子化しようとしたとき、それぞれ満たさなければならない要件があります。
4つの技術要件が定められていますが、全てを満たさなければならない文書はありません。
ほとんどの文書は「見読性」が求められており、重要度が高いものについては「完全性」や「検索性」が求められています。
しかし、「見読性が要件」と言われても、理解しづらいものです。分かりやすくそれぞれの要件についてみていきましょう。
ディスプレイや紙に出力したときに見やすいこと
(例:解像度が低いと、記載内容を読み取れないこともあるので注意しましょう)
全ての文書に求められる要件
セキュリティーがしっかりしていること
(例:特定の人のみが閲覧可能で、かつ、閲覧履歴がきちんと残るようにしましょう)
機密性が要件となっている文書はいまのところ無し
原本として取り扱うので、改ざんや不正がされないこと
(例:バックアップなどをとりましょう)
帳簿など、間違ってはならない文書に対して求められる要件
膨大な資料の中から、目的の資料をすぐに検索できること
(例:すぐ探し当てられるよう体形的にデータを保存しましょう)
地方税法関係など、検索を容易にしたい文書に対して求められる要件
首相官邸「e-文書法の施行について」において、「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」で求められる技術要件の一覧を見ることができます。
2つの法律は類似しているように見えますが、似て非なるものです。その違いや関係性を見ていきましょう。
正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存法等の特例に関する法律」は1998年に制定されました。
従来紙で保存しなければならなかった帳簿ですが、電子化が可能となったのです。
しかし、当初の電子帳簿保存法では要件が厳しく、運用を実現した企業は多くはなかったのでしょう。
2005年のe-文書法施行時、電子帳簿保存法が改正されました。
一部ですが書類のスキャナ保存が容認されたのです。「最初からデータで作成した文書」と「紙ベースで作成し、スキャナで取り込んだ文書」が容認されました。
それでも、固定式の限定的なスキャナのみ使用が可能であり、電子化対象書類は「金額3万円未満の契約書・領収書」のみでした。
さらに、電子署名は必須で、全ての書類がカラー保存が必要だったのです。これらの要件は現在撤廃・一部緩和されていますので、詳しくは後述の「これまでの要件緩和における変更点」をご覧ください。
前述したe-文書法の範囲における書類例に、電子帳簿保存法の適用範囲を加えると以下のようになります。
e-文書法が電子化を容認する文書のうち、なんと半数は国税関係です。e-文書法が国税庁管轄の電子帳簿保存法と同一視されるのも無理はありませんね。
電子帳簿保存法に則っていても、「よし今やろう」と思ってすぐに電子化できるわけではありません。
所轄の税務署長に申請書を出し、認められて初めて電子化することができるのです。
電子化を開始する3ヵ月前までに申請書を提出し、認められる必要がありますのでご注意ください。
国税庁の「電子帳簿保存法関係」手続きより見ることができます。
e-文書法の技術要件は前述しましたが、電子帳簿保存法にも技術要件があります。
「電子帳簿保存法施行規則第3条」に要件が定義してあります。
国税庁はその第3条の要点を「電子帳簿保存法上の電子データの保存要件」においてまとめてありますのでご一読ください。
簡単にまとめると、技術要件は「可視性」と「真実性」です。
ディスプレイや紙に出力したときに見やすいことと、検索機能も確保すること
原本として改ざんや不正がない状態で正しく保存されており、「入力者に関する情報」と「タイムスタンプ」が付与されていること
「可視性」と「真実性」には、e-文書法の要件である「見読性」と「完全性」と「検索性」が含まれていると読み取れます。
法律によって、要件の定義も様々です。国税関係の文書を作成する場合には、国税帳簿保存法の要件をクリアする必要がありますので、ご注意ください。
◾️電子帳簿保存法について詳しい解説はこちらをご覧ください。
電子帳簿保存法は、e-文書法が施行された時にスキャナ保存を容認しました。その後、税制改正などにともなって厳しかった要件が一部緩和されています。
大きな改正が行われた主な要件緩和の内容を見ていきましょう。
対象文書の金額基準が撤廃
電子署名が不要となり、入力者情報とタイムスタンプの付与に変更
カラー保存ではなく、白黒保存が容認
①相互けんせい
②定期的なチェック
③再発防止策
つまり、担当者間での相互チェックの体制を整え、定期的な検査をし、さらに問題が発生したら再発防止につとめなければならないということ
など
固定型のスキャナからの取り込みに限定せず、スマートフォン経由で取り込んだ領収書なども容認
スキャニングと同時に付与する必要がありましたが、3営業日以内というタイムラグが容認(該当する国税関係書類に署名は必須)
7年間の保管義務が撤廃
小規模企業者の特例として、税務代理人が②定期的なチェックを行う場合、①相互けんせいは不要
など
スキャナ保存の承認を得る前の重要な書類も電子化の対象に追加
保存時のタイムスタンプは、発行者側のタイムスタンプがあれば、受領者側は不要
システムの多様化で、受領側が自由に入力し直したりすることができないものも出てきたので、それらのシステムの利用を容認(クラウド型等)など
◾️帳票のメリットやデメリット、紙帳票との比較解説についてはこちらをご覧ください。
法定保存文書の電子化が容認された今、どのようなメリットがあるでしょうか。メリットを最大限享受して、業務の効率化を目指しましょう。
顧客コード順にファイリングしたり、経理にわざわざ紙の領収書を持参したり、数年前の書類を探しに書庫で誇りまみれになったりする手間がなくなるでしょう。
今までファイリングや経理や書庫への移動や作業時間がカットされるわけですから、その時間をほかの仕事にあてることができます。
手間が削減されれば、それは人件費の削減になります。
契約書などを初めから電子化すれば、紙代や製本代なども削減できます。地味に痛い「印紙代」や「切手代」も不要になります。
その他にも、書類を保管しておく場所を削減できれば、その場所を有意義に使用することができます。もし倉庫を借りているのであれば、レンタル費用がかからなくなるでしょう。
ネットワークが整備され、文書が電子化されれば、オフィスにいなくても問題ないわけです。
コロナウィルスの蔓延でテレワークを導入した企業も多い今だからこそ、文書を電子化し、働き方を大改革するのも一つの手でしょう。
通勤のための従業員の交通費(定期代)を削減できたら、さらなるコスト削減が望めるかもしれませんね。
e-文書法について、ご理解いただけたでしょうか。
e-文書法と電子帳簿保存法は、時代の流れに沿ってこれからも改正されていくと予想されます。
いつか、完全文書電子化時代も到来するかもしれませんね。
画像出典元:Pixabay
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