電子契約と紙の契約書との違いは?電子化のメリットと注意点を解説

電子契約と紙の契約書との違いは?電子化のメリットと注意点を解説

記事更新日: 2025/04/01

執筆: 桜木恵理子

紙の契約書から電子契約に移行する企業が増えており、今後も普及が進むと予想されます。

しかし、電子契約の導入にあたって、セキュリティ面や法的面に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、電子契約と紙の契約書の違いをわかりやすく解説します。

電子化するメリット・デメリットや法的効力、注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。

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電子契約と書面契約の違いとは?

電子契約と書面契約の違いは、以下の通りです。

  電子契約 書面契約
形式 電子データ 紙の契約書
署名方法 電子署名 印鑑
本人性の担保 電子証明書 印鑑証明書
完全性の担保 タイムスタンプ 契印・割印
保管方法 サーバー 書棚・倉庫
送付方法 インターネット通信 手渡し・郵送
収入印紙 不要 必要


電子契約では、契約書の作成から締結、保管までをインターネット上で行います

紙の契約書と違い、対面で押印・署名したり書棚で保管したりする必要がありません

電子契約の法的有効性

電子署名法では、電子契約が法的効力を満たすための条件を定めています。

法的有効性を与える仕組みをまとめました。

電子署名

「電子署名」は押印の役割を、公的機関や民間事業者の認証局が発行する「電子証明書」は印鑑証明書の役割をはたします。

電子的に作成した書類に本人が電子署名をしていれば、真正に成立したものとすることが可能です。

これにより、本人が自分の意志で作成したとすること(本人性)と、改ざんがないこと(非改ざん性)を証明できます。

電子署名の高度な安全性を実現しているのが「公開鍵暗号方式」です。

署名者は「秘密鍵」で署名を作成し、取引先は電子証明書に含まれる「公開鍵」を使って署名の正当性を確認します。

この仕組みにより、署名者の識別情報に改ざんがないことを確認できるわけです。

また、書面に対して署名・記録を証明する「電子サイン」という方法もあります

電子サインは電子証明書を発行せずに利用できるため、利便性は高いものの、電子署名と比較すると法的な有効性は低くなります。

タイムスタンプ

タイムスタンプとは、「ある時刻にデータが存在していたこと」と「それ以降に改ざんがされていないこと」を証明する技術です。

一度付与されると変更できないため、データの作成・受信時刻を証明し、信頼性を確保できます。

データの改ざん有無は、タイムスタンプの情報とオリジナルの電子データの情報を比較することで、確認可能です。

もしデータを修正・変更する場合は、新しいタイムスタンプを付与する必要があります。

電子署名が「誰が」「何を」を証明するのに対し、タイムスタンプは「いつ」「何を」を証明する役割を果たし、電子契約の法的効力を強化します。

紙の契約書を電子化する5つのメリット

では紙の契約書を電子化すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは電子契約の主なメリットを5つ紹介します。

  • 契約関連コストの削減
  • 業務プロセスの効率化
  • 契約業務の可視化
  • リモートワークに対応可能
  • コンプライアンス強化

それぞれ詳しく解説していきます。

契約関連コストの削減

課税文書に該当する契約書を作成する際には、金額に応じた収入印紙が必要です。

電子文書は課税文書の作成にあたらないので、印紙税がかかりません

契約の件数が多かったり契約金額が大きくなりやすい業界だったりする場合は、大幅なコスト削減が期待できるでしょう。

さらに電子化すれば印刷代や封筒代、郵送代がかからなくなります

紙で保管しなくてよくなるため、保管するスペースを用意する必要もありません。

業務プロセスの効率化

紙の契約書の場合、契約書を印刷・郵送し、署名・押印後に送り返してもらう工程が必要です

このやり取りには、1週間以上かかることもあり、手間と時間がかかります。

一方、電子契約ならシステム上ですべての手続きを完結できるため、契約締結までの時間を大幅に短縮し、一連の業務を効率化できます。

さらに、契約書はシステム上で保管できるため管理が簡単です。

日付やキーワードで簡単に検索できるので、すぐに必要な契約書を参照できます。

契約業務の可視化

電子契約システムを活用すれば、契約業務の進捗を可視化することが可能です。

契約手続きが現在どの段階なのかをリアルタイムで把握できるため、遅れがあればすぐにフォローできます。

送ったはずなのに届いてないといったトラブルが発生することもありません。

リモートワークに対応可能

電子契約はオンラインで締結できるので、場所や時間を選びません。

押印や郵送、受取作業のために出勤する必要がなく、リモートワークでもスムーズに契約手続きを進められます。

多様な働き方にも柔軟に対応できるので、従業員のニーズに応えやすくなるでしょう。

コンプライアンス強化

電子契約では、IPアドレスのアクセス制限や承認制限によって、意図しない第三者の閲覧を防止できます。

また、契約の締結までの過程がログとして記録されるため、

いつ・誰がどのような操作をしたか明確に把握でき、捏造や改ざんなどのリスクを下げることが可能です。

さらに、締結までの工程を可視化できるので、契約漏れや更新・解約漏れのリスクを防げます。

定期的なバックアップの実施により、万が一データの紛失や改ざんがあっても復旧できます。

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電子契約化する4つのデメリット

メリットが多い電子契約化ですが、一方でデメリットも考えられます。

導入したあとのトラブルを防ぐために、あらかじめチェックしておきましょう。

  • 全ての契約に対応していない
  • 取引先との調整が必要となる
  • 契約業務の流れを変更する必要がある
  • サイバー攻撃のリスク

それぞれ詳しくみていきましょう。

全ての契約に対応していない

2025年3月現在、以下の契約は電子契約に対応していません。

  • 事業用定期借地契約
  • 企業担保権の設定または変更を目的とする契約
  • 任意後見契約書

これらの契約は公正証書(公務員である公証人が作成する公文書)による契約締結が定められているため、書面での締結が必要とされています。

一方で2022年に不動産売買・賃貸借等に関する契約書の電子化が認められており、対応する契約は増えてきています。

取引先との調整が必要となる

契約の締結には二者以上の同意がいるため、電子契約を取引先が拒否した場合は利用できません

電子契約を利用したことがない取引先の場合は、まず理解を得ることから始めることになります。

有効性の説明や調整が必要になり、手間と時間がかかることもあるでしょう。

一部の企業から理解を得られなかったときは、紙の契約書と電子契約を併用した運用が必要です。

電子契約と書面契約の双方の管理が必要になることで、業務が煩雑になる可能性があります。

契約業務の流れを変更する必要がある

紙の契約書と電子契約では、締結までのフローが異なります。

正しく運用するためには、契約業務の流れを変更する必要があるでしょう。

新しいフローを構築したうえで、社内に周知を徹底することが重要です。

初めて利用する従業員に対しては、電子契約システムの利用方法を含め教育する必要があります。

サイバー攻撃のリスク

電子契約はオンライン上でやり取りをするため、サイバー攻撃やウイルス感染のリスクは避けられません。

セキュリティ対策が不十分な場合、情報漏洩やファイルの破損につながる可能性があります。

サイバー攻撃やウイルス感染により重要な契約書が多くの人の目に晒される可能性があるため、正しい運用や強固なセキュリティ対策が必要です。

PDF化された契約書の法的効力はどうなる?

スキャンなどでPDF化された電子契約は、電子署名法によって法的効力が認められています

電子署名やタイムスタンプで本人性や改ざん防止が証明されれば、紙の契約書と同等の効力を持つためです。

ただし、スキャンによってPDF化したときに文字が判別できない場合、十分な法的効力を持たない可能性があります。

ほかにもスキャナ保存には満たすべき要件があるので、あらかじめ確認しておきましょう。

電子署名後に改ざんされるリスクは?

電子署名を用いた電子契約でも、契約内容を改ざんされるリスクはゼロではありません。

しかし、電子署名を施すときに生成される「ハッシュ値」によって、改ざんの有無を検知することが可能です。

ハッシュ値は、電子文書の内容をもとに計算される固有の数値であり、文書が少しでも変更されるとまったく異なる値になります。

そのため電子署名を施したときのハッシュ値が変更されていれば、元データの改ざんがあったことが判明します。

紙の契約書をスキャンしてPDF化する際の注意点

紙の契約書をスキャンしてPDF化して管理する場合、契約書の真正性を証明しなければなりません。

PDF化した契約書はあくまでも原本のコピーであり、法的効力を持たせるには一定の要件を満たす必要があります。

特に、訴訟になったときは原本との一致を証明する必要があるので、紙の契約書もあわせて保存してください。

電子契約化する際の注意点

紙の契約書をスムーズに電子契約化するためには、注意点を把握しておくことが重要です。

トラブルを防ぐために、あらかじめ確認しておきましょう。

現場の意見を取り入れ調整する

現場の意見を無視して電子契約を導入すると、混乱や反発を招く可能性があります。

疑問や課題を事前に把握し、調整を重ねながら進めることが重要です。

電子契約のメリットや運用方法を丁寧に説明し、反対意見があれば対策を検討しましょう。

従業員が安心して電子契約を導入できるように、十分な準備を整えることが成功のポイントです。

事前に取引先の理解を得ておく

紙の契約書から電子契約に変更するときは、取引先の理解を得る必要があります。

導入していない企業の場合は、仕組みや締結までの流れなどを丁寧に説明することが重要です。

また、電子契約システムによっては、取引企業側も同じシステムを導入する必要が生じることがあります。

手間と負担を強いることになるため、より丁寧な説明やサポートが求められるでしょう。

契約書の種類により紙での保管が必要なことも

一部の契約書は紙での保管が定められています。

紙での保管が必要な契約がないか、電子契約を導入する前にチェックしておきましょう。

電子契約とあわせて、紙の書類を適切に保管できるような体制を整えておくことが重要です。

導入するシステム選びは慎重に

機能や費用を比較したうえで、自社のニーズにあった電子契約システムを導入しましょう。

電子契約サービスの中には、事業者名のみで電子署名を行う形式のものがあります。

この場合、PDFファイルをダウンロードする際に長期署名が付与されず、誰が・いつ・契約書に同意したのかの記録がクラウドサーバー上にしか残らないことがあります。

そのため、電子ファイルを他サービスに移行したとき当事者の電子署名が残らず、システムの変更が難しくなる可能性があります。

こうしたリスクを避けるため、以下のポイントを確認しましょう。

  • 契約締結済みのファイルに契約当事者名が記録できる「当事者指示型」のシステムか
  • 他のクラウドサービスに保存しても記録が長期間消えない「長期署名」を付与できるか

ベンダーロックインにならないように、慎重にシステムを選択してください。

 

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まとめ

紙の契約書を電子化すると、コスト削減や業務効率化などさまざまなメリットがあります。

一方で電子契約に対応していない契約がある、取引先との調整が必要などデメリットも考えられるでしょう。

スムーズに電子契約を導入するために、書面契約との違いを事前に把握しておくことが重要です。

基礎知識や注意点をチェックしておけば、導入の際のトラブルやリスクを軽減できます。

画像出典元:O-DAN

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