電子契約の法的効力とは?法的根拠と改ざん防止を解説!

電子契約の法的効力とは?法的根拠と改ざん防止を解説!

記事更新日: 2023/05/10

執筆: 編集部

この記事では、電子契約の法的効力を徹底解説します。

電子契約に関する法律の表、契約とは何かという基礎的な説明、電子署名による改ざん防止、導入する前に確認すべきことが分かります。

2020年に入り、コロナウイルスの影響から「リモートワーク」や「在宅勤務」の流れが従来より加速しつつありますが、押印業務のために出社しなければならない「ハンコ出社」という言葉も聞かれるようになりました。

こういったバックオフィス業務の課題を背景に、紙面での契約から電子契約への切り替えを検討している方は参考にしてみてください。

電子契約の法的効力

契約に関連する法律まとめ

「契約」「契約書」「電子契約」に関連する法律を確認していきます。

ビジネスをする上では、法律家でない限り細かい内容まで抑えておく必要はありませんが、ポイントとなる条文の存在程度は知っておくと良いでしょう。

「契約」「契約書」「電子契約」に関連する法律を簡単にまとめると以下表のようになります。

根拠条文 概要 条文内容
民法第522条 「契約」の成立 1. 
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2. 
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
(民法第522条より引用)
民事訴訟法第228条 「文書」の成立 1. 
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4.
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
(民事訴訟法第228条より抜粋)
電子署名法第3条 電子契約の
法的効力
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
(電子署名及び認証業務に関する法律第3条より引用)
電子署名法第2条 電子署名とは

この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
(電子署名及び認証業務に関する法律第2条より引用)

関連する根拠条文を4つほどまとめてみましたが、ポイントは太字ハイライト箇所です。

1. 民法第522条

民法第522条には、「契約とは何か」でお伝えした内容の根拠が記されてます。

双方の合意や意思表示をもって契約が成立する点、そして形式は問わない点が確認出来ます。

2. 民事訴訟法第228条

民事訴訟法第228条では、契約書が「文書」として成立するための要件、つまり訴訟時の証拠として用いるための要件が記されています。

本人による署名または押印が必要ということが確認出来るかと思います。

そして、電子契約に関する法律が表内の下2つとなります。

3. 電子署名法第3条

電子署名法第3条にあるように、本人による「電子署名」がされていれば、電子契約として効力を有し、訴訟時の証拠としても用いることが可能となります。

4. 電子署名法第2条

電子署名法第2条で「電子署名」の内容を確認してみると、電子署名とは「①本人が作成したものであり」「②作成後改ざんがされていないことを確認出来るもの」と規定されています。

以上のように、関連する条文を読み解くことで、冒頭でお伝えしたポイントの理論的背景を理解することにも繋がります。

電子契約の改ざん防止

ここからは、デジタル上での契約である電子契約の法的効力と改ざん防止を支えているデジタル技術として「電子署名とタイムスタンプ」「電子サインと電子印鑑」の2つについて紹介しておきたいと思います。

電子署名とタイムスタンプ

まず、電子署名とは紙契約における「押印」や「署名」に相当する行為を指します。

この電子署名を行うようにするためには、認証局から印鑑証明書に相当する「電子証明書」を発行してもらい、電子証明書に含まれる秘密鍵などを用いる必要があります。

認証局というのは、電子契約を結ぶ際に重要となる要件(①本人であること、②改ざんがされていないこと)を担保し、電子証明書を管理する第三者機関のことを言います。

電子署名は「第三者機関が保証する本人確認」の観点から強い証明力を持つ点がメリットです。

しかし、契約書双方が電子証明書を取得する手間や導入・運用コストを負担しなければならない点がデメリットとも言えます。

2001年に電子署名法が施行されたにも関わらず、このデメリットが電子契約の導入が進まなかった理由とも言われています。

また、電子署名をすることで、「誰が」「何を」契約したかがわかるような仕組みになっていますが、「いつ」を示す情報が含まれていません。

これを補うために存在するのが「タイムスタンプ」です。

タイムスタンプは「いつ」「何を」契約したかがわかるような仕組みになっており、電子契約が改ざんされていないことを証明するためにも重要な役割を果たします。

電子契約では、電子署名とタイムスタンプをあわせて用いることで「誰が」「いつ」「何を」契約したかが明確になり、完全性を保つことが可能になります。

 

電子サインと電子印鑑

証明力の強さという観点からは「電子署名」を用いるのが望ましいですが、当事者双方が電子証明書を取得しなければならないため、導入のハードルが高いとも言えます。

電子署名を用いた電子契約を「当事者署名型」と言いますが、最近では「事業者署名型」と言われる事業サービスが登場してきています。

これは、メール認証や手書きサインなどによる認証を可能とすることで、電子契約の導入を促進することを目的としたサービスで、電子署名と対比して「電子サイン」を呼ばれることもあります。

電子サインと似た言葉として「電子印鑑」という用語も存在します。

これは、印鑑の印影を電子上で再現したもので、PDFなどの電子ファイルに使われるものです。

証明力の観点からは、電子署名が最も強く、電子サイン、電子印鑑の順に弱くなります。

事業サービスでは様々なタイプのプランが用意されているため、企業のセキュリティポリシーに照らして適切なサービスを選択するようにしてください。

 

契約と契約書と電子契約|3つの違いとは

契約とは

まず最初に、そもそも「契約」とは何か確認しておきましょう。

事業をしている経営者の方や、法務・営業担当者であれば目にする機会も多いかと思いますが、契約自体の意味について考える機会は少ないかもしれません。

契約とは「当事者双方の合意によって成立する約束」のことを言います。

つまり、口約束でも「契約」です。

例えば、A社がB社に商品を提案し、B社が「その商品いいですね、欲しいです」と意思表示した段階で契約は成立することになります。

「口約束でも問題ないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、法律上は契約当事者の意思表示(合意)さえあれば問題なく契約は成立することになります。

しかし、口約束だけだと問題になるケースが多々あるので注意が必要です。

契約書とは

契約書とは「口約束の証拠書類」とも言えます。

「商品を100個頼んだのに、納入されたのは50個だけだった」

「月末までに代金100万円を振り込む約束をしたのに、未だ振り込まれない」

上記のようなトラブルが発生しても、口約束では「契約」の証拠や内容を確認する方法がありません。

そこで必要となるのが「紙面の契約書」です。

取引内容や業界慣行によって記載内容は異なりますが、取引に関する決定事項(価格,条件等)を文書として記したものが契約書となります。

契約書とは、契約当事者で決定した取引内容を「文書」として残すことで、客観性や正確性を担保し、取引の安心を支える役割を果たしています。

電子契約とは

2000年以降になり、インターネットの発達や実務界の要請に応じて登場したのが「電子契約」です。

先ほどの契約書の媒体が「文書(紙面)」であったのに対して、電子契約は契約の媒体が「電子(電磁的記録)」である点が大きな違いと言えます。

契約という観点から言えば、取引の正確性や客観性を担保する媒体が「文書」から「電子」に変わっただけですが、電子契約の場合は文書と比べて「実体がない」ため、わかりにくい側面があるのも事実です。

契約書(文書)で使っていた用語を電子契約で置き換えた場合のイメージが下記となります。

  • 印鑑    ・・・ 電子証明書に含まれる「鍵(秘密鍵や公開鍵)」が相当
  • 印鑑証明書 ・・・ 認証局が発行する「電子証明書」が相当
  • 押印    ・・・ 電子署名が相当

ここまでの話を簡単にまとめると、当事者が合意した約束を「契約」といい、その契約内容の正確性や客観性を保つために「契約書」「電子契約」が用いられることになります。

契約の効力自体は双方の合意で成立しますが、裁判などで争う際の証拠として用いるためにはいくつかの「要件」が定められています。

要件としては当たり前の内容が記されていますが、重要なポイントにもなるので、「電子契約の法的効力」の章で提示した法律の表で内容を確認しましょう。

 

電子契約を導入する前に

最後に、電子契約を導入する前に確認すべき事項を見ていきましょう。

電子化する契約書の確認

まずは、電子化の対象とする契約書の確認から進めていくことをオススメします。

契約書の種類によっては、電子化が出来ないケースがあるためです。

電子契約書に対応していない「紙面での契約」が求められている契約としては、以下のような取引が該当します。

  • 任意後見契約(任意後見契約に関する法律第3条)
  • 事業用定期借地権設定契約(借地借家法第23条第3項)
  • 定期借地権設定契約(借地借家法第22条)
  • 更新の無い定期建物賃貸借契約(借地借家法第38条第1項)
  • 取壊し予定の建物の賃貸借契約(借地借家法第39条)
  • 農地の賃貸借契約(農地法第21条)
    など

これらは一例です。

実際の契約時には動向を確認しながら各省庁へ問い合わせるなどして対応するようにしてください。

契約業務フローの見直し

続いてのステップとしては、契約業務フローの見直しがあげられます。

これは、先ほどのメリットで紹介したように、アナログの契約業務からデジタルの契約業務に移行するためには、既存の業務フローがどうなっているかを整理する必要があるためです。

契約書を作成してから顧客に送付するまでのフローを書き出した上で、誰がどのように担当しているかを見直し、電子契約をどのように組み込むかを検討してみると良いかと思います。

取引先と社内へ説明と承諾

契約業務フローの見直しと並行して進めた方がいいものとして、取引先と社内への説明や承認作業が存在します。

社外である取引先は、実際に契約を結ぶ相手となるため、相手方が電子契約でのやり取りに同意するかを確認しておく必要があります。

その際には、導入する趣旨や相手側へのメリットなどをイメージ出来るように伝えると良いでしょう。

また、社内である従業員に対しても、同様に電子契約を導入する意図をしっかりと説明することが必要となります。

実際の業務では、現場の人間が契約を締結するケースが多いため、経営層だけで一方的に業務フローを変えるのは、現場の反発に繋がりかねないです。

以上のポイントや流れを意識した上で、電子契約の導入を進めてみてください。

 

必ず押さえておきたい!おすすめの電子契約サービス5選

ここからは編集部が厳選したおすすめの電子契約サービス5選を紹介していきます。

1. 圧倒的知名度を誇る!「クラウドサイン」

画像出典元:「クラウドサイン」公式HP
 

特徴

弁護士ドットコム株式会社が運営していることで人気が高い「クラウドサイン」。CMも活用し、知名度・利便性で他社を一歩リードしているサービスです。実際に大手企業の導入実績も多数あります。

クラウドサインはメール認証での契約締結になるため、比較的締結が簡単です。

そのため個人事業主やアルバイトなど対個人の契約や海外企業との契約でも気軽に利用できます。従業員を対象とした雇用契約書や秘密保持契約書や、取引先企業との発注書や受注書のやり取りなどでも活用しやすいです。

ただし契約書の送信はPDF形式のみ・1回ごとの送信料が200円と他社と比較しても少し高めの設定になっている点がネックです。

料金プラン

プラン 月額費用 送信件数ごとの費用 特徴
Standard 10,000円 200円 全ての基本機能搭載
Standard plus 20,000円 200円 Standard+インポート機能
Business 100,000円 200円 高度なリスク管理機能

 

 

 

2. 送信料が無料!「NINJA SIGN by freee」

画像出典元:「NINJA SIGN by freee」公式HP
 

特徴

「NINJA SIGN」は、Googleドキュメントを使用することで、テンプレートやドラフトの編集をシステム上でできる機能がとにかく画期的です。

自社で修正した箇所は履歴として自動保管されるなど、ワードファイルでは実現不可能な効率化を実現してくれます。

さらに他サービスでは書類を1件送る毎に料金が発生する従量課金制のものが多いですが、NINJA SIGNは送信料が0円なので書類送信件数が多ければ多いほど得をする料金体系となっています。

他社サービスと比較検討してNINJA SIGNの導入を決めるユーザーが90%を占めており、人事部のみが契約書を確認できるようにする、といった”フォルダ権限設定”ができることが、ユーザーに高く評価されているポイントです。

ただしFreeプランで送信できるのは月に5通まで、Lightプランでは送信数無制限・送信料0円で4,980円(税込5,478円)/月という料金ですが、これは1アカウントの利用料金なのでこの2点は注意が必要です。

現在、対応言語は英語とベトナム語があります。署名方法

メール認証、二要素認証による署名での契約締結になります。締結のしやすさを重視する企業に向いています。

料金プラン

プラン 初期費用 月額固定費用 機能
Free 0円 0円 基本機能のみ
Light 0円 4,980円
(税込5,478円)
テンプレート登録数無制限
Light Plus 0円 19,800円
(税込21,780円)
Wordテンプレート登録等追加
Pro お問合わせ 50,000円~
(税込55,000円〜)
専任サポート等追加
Pro Plus お問合わせ 120,000円~
(税込132,000円〜)
全機能、全オプションが利用可能


詳しいプランの違いや料金詳細は資料をご参照ください。

 

 

3. Word形式で送信可能「BtoBプラットフォーム契約書」

 


画像出典元:「BtoBプラットフォーム契約書」公式HP

特徴

「BtoBプラットフォーム 契約書」は、良心的な価格・優れた機能・強固なセキュリティと三拍子揃っているので、どんな規模の企業にもおすすめできるサービスです。

また、他のBtoBプラットフォームシリーズと連携させることで、契約書だけではなく、見積・受発注・請求の際の帳票類をすべて電子データ化できる点が魅力です。

ただし電子証明書型の電子署名方法を提供しているため、1回きりの契約が多く、クライアントに手間・工数をかけさせたくない、という企業にとっては少しハードルが高い可能性があります。

料金プラン

プラン 初期費用 月額費用 特徴
フリープラン 0円 0円 無料プランでもユーザー数無制限
シルバープラン お問い合わせ 10,000円〜 電子契約のみ利用可能
ゴールドプラン お問い合わせ 30,000円〜 電子契約に加え電子保管が利用可能


料金は全体的に割安
だといえます。

文書送信1通あたりの費用も50円/通と、他のサービスと比べても安いです。

また現在、オプション機能「ドキュメントScanサービス」のスキャン費用10万円を無料提供する特典プランもあります。

詳細は資料をご覧ください。

 

 

4. 充実したサポート体制が評判!「ジンジャーサイン」

 画像出典元:「ジンジャーサイン」公式HP

特徴

ジンジャーサインは電子契約サービスを初めて導入する企業でもスムーズに利用しやすいサービスです。

使いやすいUIときめ細やかなサポート体制で、導入企業・契約先企業ともに安心して利用できます。

多彩な機能によって、契約書起案・レビュー・契約締結・保管など、契約締結に関する業務がWEB上にてワンストップで行えるのも特徴です。

料金

ジンジャーサインの料金の詳細はお問い合わせが必要です。

 

 

5. 文書の性質や相手に合わせて署名方法が選べる「電子印鑑GMOサイン」

画像出典元:「電子印鑑GMOサイン」公式HP

特徴

「電子印鑑GMOサイン」は、16万社以上の企業のITインフラを支えるGMOが運営している電子契約システムです。20年以上日本のインターネット基盤を支えている企業ならではの充実機能には定評があります。

導入企業数は2022年4月で140万社を超え、国内電子契約サービスにおける導入企業数No.1*。弁護士監修の点も安心です

また電子印鑑GMOサインはトップレベルのセキュリティを誇る電子契約システムです。一つひとつの契約データごとに暗号化して保管していたり、契約データのバックアップも毎日行っているので、重要な書類を安全に取り扱うことができます。

お試しフリープランは無料で利用できるので、まずは試験的に使ってみて、その後導入を検討してみるのが良いでしょう。

*2022年5月GMO社調べ(国内主要電子契約サービスの公表数値を比較)
「電子印鑑GMOサイン」(OEM商材含む)を利用した事業者数(企業または個人)
1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウント/契約社は60万社(複数アカウントの場合、重複排除)

署名方法

当事者型(実印タイプ)・立会人型(契約印タイプ)・ハイブリッド署名の全ての署名方法が利用可能なので、文書の性質や相手に合わせて使い分けることができます。

料金プラン

「契約印&実印プラン」は月額利用料9,680円(税込)で利用できます。

詳しいサービス内容・料金を知りたい方は、以下の無料資料をダウンロードしてご確認ください。

 

 

まとめ

今回は、電子契約の法的効力を中心に関連する法律やメリット、導入手順までを紹介してきました。

電子契約の導入に興味がある方は、導入手順で紹介したようなプロセスを経て社内状況の整理をした上で、導入メリットがどの程度あるかを検討してみると良いでしょう。

電子契約の導入を通じて、よりスピード感を持った健全な企業経営を目指してみてはいかがでしょうか。

画像出典元:Shutterstock

この記事を書いた人

TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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