「電子契約は、印鑑が不要って本当?」「印鑑不要でも法的に問題ない?」
この記事では、そのような疑問をお持ちの方へ、法的な理由もわかりやすく解説します。
また、電子契約で重要となる「電子署名」と、電子印鑑・電子サインの違いも、見た目の見本例や具体例とともに説明しますので、ぜひご参考になさってください。
このページの目次
皆さまの中には、「電子契約書」のファイルに印鑑のような画像がついているのを見たことがある方も多いかもしれません。
しかしながら、実は、電子契約書には印鑑そのものは不要です。
まず大前提として、電子であっても紙であっても、契約の成立の条件を示した民法に「押印が必要」という記載はありません。
それなのになぜ、印鑑を押すのが通例とされてきたかというと「本人の意思で契約した」とわかる証明が必要だという法的解釈が、追加的に示されているからです。
電子契約において、それを示すのは「電子署名法」という法律です。
■電子署名法
「電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」
(電子署名法第3条より引用)
ポイントは、「本人による電子署名・・・が行われているときは、真正に成立したものと推定する」という部分です。
つまり、電子契約書では「電子署名」によって、本人の意思があったとする法的効力を発揮します。
印鑑や印影などはこの条件に全く関係がないので、よって“電子契約において印鑑は不要”です。
なお、電子署名とはデータ上に残す鍵やサインのようなものです。後章で詳しく解説します!
電子契約の法的効力は、前述の電子署名が行われていれば、書面契約と全く同等の効力を有します。
法令によって電子契約が行えないと定められている契約書も一部ありますが(事業用定期借地契約など)、そうでない限りは電子契約を選択したからといって法的に不利になることはありません。
もし仮に電子契約書で締結した内容について裁判になったとしても、証拠として提出することも可能ですのでご安心ください。
一方、書面の契約書の締結には印鑑が必要とされており、そのことは法的にも示されています。
書面契約における押印の必要性は、最高裁判決の判例と民事訴訟法によって示されています。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
(民事訴訟法228条4項より引用)
どういう意味か、かみ砕いて説明すると、
①「山本さんの印鑑による押印があるということは、山本さんの意思によって押印したと推定できる」・・・最高裁判決
②「山本さんの(意思によって押した)押印がある場合は、法的に正しく成立したものということができる」・・・民事訴訟法
という二段構えで、紙の契約書では、押印によって契約書の法的効力が認められることを示しており、この二段構えの論拠は「二段の推定」と呼ばれます。
これを覆す法令・解釈は早々には出てきづらいので、今後も「書面契約=押印必須」の商習慣は日本では続いていくでしょう。
◾️電子契約に関する法律について詳しく知りたい方はこちら
電子契約の普及とともに、電子契約書に印鑑が不要であることへの理解は徐々に広まっています。
それでありながら、有名電子契約サービスの多くが「赤丸のハンコのような印影」を表示する仕様となっているのはなぜでしょうか?
理由は簡単で「ユーザビリティ」です。
紙の商習慣から、電子契約に切り替えたばかりのユーザーも多いため「契約締結し終わった」ということをパッと目で見てわかりやすいよう、どのサービスも印鑑(印影)機能を備えているのです。
このデータ上に押す印鑑は「電子印鑑」と呼ばれますが、使い方には注意が必要です。
一見、電子印鑑も、紙の契約書に用いているものと同じのほうが良いのではないか、と思いがちですが、実はリスクがあることを理解しておきましょう。
本物の実印や契約印の印影をスキャナで取り込んで、電子印鑑として利用した場合、それを複製して偽造印鑑が作られてしまう可能性があります。
認印程度であれば利用してもOKですが、会社実印や銀行印・契約印などは画像データとして使用するのは避けましょう。
◾️電子印鑑の解説についてはこちら
電子契約上にハンコのように押されている電子印鑑は、文字通り「印鑑」なので、その画像データだけでは法的有効性はありません。
では、どのような場面で使い分けていけばよいのでしょうか?
その利用場面例・有効性を、電子サイン・電子署名と比較しながらさらに詳しくみていきましょう。
形式 | 利用場面例 | 紙の契約書における役割 | |
電子印鑑 (画像のみ) |
印影を単に画像化したもの | 社内回覧文書など | 認印 |
電子サイン | 手書きタイプと印影タイプがある | ジムの入会手続きのサイン 一般的な営業契約・注文書や発注書など |
認印・社印 |
電子署名 | 第三者機関の電子証明書・タイムスタンプがついているもの | 重要な契約書の締結 | 実印+印鑑証明 |
電子印鑑 (画像+電子署名) |
電子印鑑に電子署名の機能がついたもの | 重要な契約書の締結 | 実印+印鑑証明 |
電子印鑑とは、デジタル上に押すハンコの画像のことです。
電子印鑑には、①画像のみのもの、②画像に電子署名がついているもの、の二種類があり、②の機能は電子署名と全く同じになるので、ここでは①の画像のみのものを説明します。
電子印鑑(画像のみ)は、文字を打ち込むだけで印影風の形にデザインしてくれるサービスや、実際の印影をスキャンして取り込むといったサービスを利用して作成します。
簡単に作れる半面、複製もしやすいため、それだけでは十分な法的効力があるとはいえません。
紙でいえば、100均で買える量販型の認印と同じような使い方だと理解しておくとよいでしょう。
電子サインとは、デジタル上に行う手書き署名や押印のことです。
押印=つまりハンコの画像なので、電子印鑑と何が違うのか?と混同しますが、電子サインの押印の場合は、メールなどによる本人認証が原則セットになっています。
対面でのタブレット端末への手書き署名は、なりすましでない限り、本人が同意したという一定の法的効力を持つといえます。
また、法的効力は「本人であるかどうか」が重要なので、メール認証による本人確認をしたうえでのデジタル上の押印(電子サイン)も、一定の効力があるといえます。
ただし、メールアドレスは乗っ取りや他人の利用も想定できるため、強固な仕組みとはいえません。
紙でいえば、注文書や請求書に使う認印や、権限移譲などで代理押印が可能な、定型の営業契約などに用いる社印などと同等と考えるとよいでしょう。
電子署名とは、デジタル上の契約で最も法的効力が強い方法です。
見た目上は、電子印鑑のデータのような形式をしていることもありますが、その裏側に、「確かに本人が〇〇年〇月×日に締結した」ということを第三者機関が発行した電子証明書とタイムスタンプを紐づけて証明しています。
電子証明書の発行のためには、厳密な本人確認や、本人確認書類の提出が必要となるため、これを通過しているということは非常に強い法的有効性を持ちます。
紙でいえば、実印を用いた会社としての重要な契約と同じであると考えるとよいでしょう。
電子署名がついていることの表示方法は、電子契約サービスによって様々で、ハンコ風の画像を押して確認したり、ポップアップのような形式で画面上に示されることもあります。
気になる方は、各サービスの見本例なども見てみましょう。
「契約書を正式に相手方と締結したい」、「法的に有効な電子契約を結びたい」という場合には、電子署名を使いましょう。
電子印鑑や電子サインでも契約行為は行えますが、前章の説明のとおり、法的な有効性に違いがあるので、取引先と安心して契約を締結するのであれば「電子署名つき」の電子契約がおすすめです。
電子証明書の発行などの手続きがあり、いきなり使うのは難しく感じるかもしれませんが、多くの企業では電子契約サービスを用いて締結を行うのが一般的ですのでご安心ください。
ここからは、電子署名が使いやすい、編集部おすすめの電子契約サービスを紹介していきます。
無料資料がダウンロードできるものもありますので、ぜひご活用ください。
「電子印鑑GMOサイン」は、契約の締結から管理までをワンストップで行えるクラウド型電子契約サービスです。契約締結にかかる手間や時間の大幅な短縮により、業務の効率化を実現できます。
"重要契約書などは本人確認を付けることで、特定の人物でしか開けないように設定ができます。"という口コミにもあるとおり、重要な書類を安全に取り扱うことができます。
電子署名・高度電子署名・ハイブリッド署名の全ての署名方法が利用可能なので、契約書ごとに使い分けることができます。
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慣れるのに時間がかかった
クラウドサインに比べると、感覚的な使いやすさが劣っていると思うので、ユーザビリティという点では低いと言えるかもしれないです。
「クラウドサイン」は、弁護士監修のもと開発された国内で圧倒的な利用実績を誇る電子契約サービスです。立会人型電子契約サービスとして初めて、電子署名法が定める「電子署名」に該当することを法務省・デジタル庁に認められています。
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メール認証による署名での契約締結。締結のしやすさを重視する企業に向いています。
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画像出典元:「マネーフォワード クラウド契約」公式HP
「マネーフォワード クラウド契約」は、電子契約も紙の契約も一元管理できるため、紙の契約書も管理しながら少しずつ電子契約も導入していきたい企業におすすめな電子契約サービスです。
ワークフロー機能が標準で備わっているため、社内での申請・承認から契約締結までを一つの画面内で行うことができる点も優れています。
個人向けの基本プランは月額800円から展開しています。
▼マネーフォワード クラウドシリーズの法人向け各プラン基本料金
スモールビジネス (年額プラン) |
ビジネス (年額プラン) |
|
税抜き金額 | 2,980円/月~ | 4,980円/月~ |
公式ホームページでは料金は公開されていませんが、編集部の調査によると、ワークフロー機能・紙の契約書との一元管理機能・他社API連携機能がついて、月々50,000円程度で利用できます。
サービス/外食/レジャー
2人~10人
銀行口座取引中心の会社に向いている
・仕訳から自動的に会計帳簿が作られる。
・勘定科目がプルダウンで選択出来て効率的である。
・オンライン口座やカード決済のデータ連携が簡単に出来る。そのまま仕訳作業につながるので手動の手間が省ける。
金融/保険
11人〜30人
連携できる銀行口座に制限がある
・連携できる銀行口座に制限があり、使用中の銀行口座が対象外である場合は手間がかかる。
・たとえば、スタッフの口座反映ができない、取引先の会社へのスムーズな取引ができないといった不便があり、手動で明細を入力しなければならなかった。
画像出典元:「リーテックスデジタル契約」公式HP
「リーテックスデジタル契約」は、受注契約から電子記録債権による決済まで、一つのソフトウェアですべての文書・資料の電子保存・管理が行える取引電子クラウドです。国の指定機関による厳重な本人確認や法人の存在・意思確認の徹底により、業界最高峰の法的安定性を誇るサービスです。
誰でも扱いやすいのが魅力で、サポート対応も充実しているため、操作や運用に不安のある企業におすすめです。
電子証明書を発行して契約締結を行います。
リーテックスデジタル契約の料金プランは、以下の5つのプランから選択できます。
エントリー | トータル 600 |
トータル 1200 |
トータル 3000 |
プレミアム 12000 |
|
初期費用 | 無料 | ||||
利用料 | 無料 | 18,000円/月 216,000円/年 |
27,000円/月 324,000円/年 |
50,000円/月 600,000円/年 |
100,000円/月 1,200,000円/年 |
ユーザー数 上限 ※1 |
5名まで | 30名まで | 50名まで | 100名まで | 1,000名まで |
タイム スタンプ 契約発信 /電子保存 ※2 |
0回 (契約発信) |
600回 /年まで |
1,200回 /年まで |
3,000回 /年まで |
12,000回 /年まで |
契約受信件数 | 無料・無制限 | ||||
ストレージ 容量 ※3 |
1.0GBまで | 100.0GBまで | 100.0GBまで | 100.0GBまで | 1.0TBまで |
機能 | 契約受け取り のみ |
電帳法対応 電子取引保存 ワークフロー |
電帳法対応 電子取引保存 ワークフロー |
電帳法対応 電子取引保存 ワークフロー |
電帳法対応 電子取引保存 電子債権化 ワークフロー 100年 電子契約 初期導入支援 |
(税別)
※1:上限を超過した場合、20名単位で2,000円/月(税別)の追加料金が発生。
※2:上限を超過した場合は100回単位で10,000円/月(税別)の追加料金が発生。
※3:上限を超過した場合は100GB単位で10,000円/月(税別)の追加料金が発生。
【ファイル添付オプション】
1契約につき 5件まで |
1契約につき 10件まで |
|
利用料 | 2,000円/月 24,000円/年 |
3,000円/月 36,000円/年 |
(税別)
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251人〜500人
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51人〜100人
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「この項目はいらなくないかな?」と感じるものも必須項目として多数あったので面倒くさく感じました。最低限の事項だけで簡略化されてほしいと思いました。
電子契約サービスのシェアランキングにご興味のある方は、こちらもご覧ください。
今回は「電子契約書に印鑑が不要な理由」や「電子印鑑」「電子署名」の違いなどを解説しました。
紙面での契約から電子契約に切り替えることのメリットは非常に大きく、その法的効力も十分に安心できるものであるとご理解いただけたかと思います。
実際どのように導入していけばよいか迷ってしまう方もいるかと思いますが、電子契約サービスの多くは相談無料からスタートできますので、ぜひ検討してみてください。
画像出典元:Shutterstock、PhotoAC、イラストAC
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