契約書のペーパーレス化は、業務の効率化やコスト削減、コンプライアンスの強化にもつながります。
本記事では、契約書をペーパーレス化する方法や電子化の手順、メリットを詳しく解説します。
電子契約の注意点についても解説しますので、ぜひ契約書のデジタル化を検討してください。
このページの目次
契約書の電子化とは、既に締結された紙の契約書をスキャンして電子化して保管することです。
契約書だけでなく、領収書も電子化することが可能です。
契約書の電子化が進んだのは、保存義務がある書類の電子化について定めたe-文書法の規制緩和によるものです。
以前は契約書や領収書の電子化は3万円未満のものしか認められていませんでした。
金額によって電子化できるものと電子化できないものが別れていたため手間がかかり、電子化のメリットを十分に享受できるものではありませんでした。
しかし、2015年にe-文章法が一部改正され、金額にかかわらず電子化できるようになったのです。
契約書を電子化することで、検索しやすくなったり共有しやすくなったりするというメリットがあります。また、紙を保存しておく必要がないので保管のスペースを省略化できます。
しかし、一方で紙の契約書をスキャンする手間や改ざん防止のためのコストや手間もかかるので、注意も必要です。
電子化した契約書だけでは不安なので、紙の契約書を残しておくという場合もあるでしょう。そうすると管理するべきものが逆に増えてしまい、メリットを感じられないこともあり得ます。
◾️電子契約書の作り方に関してはこちらの記事をご覧ください。
契約書の電子化と似た言葉として、電子契約があります。
契約書の電子化は、元々紙で交わした契約書を電子化することですが、電子契約はインターネットを使い、契約自体を電子ファイルで行うことを意味します。
電子契約では紙の契約書と違い、電子署名やタイムスタンプを利用します。
電子署名とは、紙の契約書における署名や印鑑に相当し、偽造防止を目的としています。また、タイムスタンプはある時刻の電子データの存在を証明するもので、改ざん防止として使われます。
最近では電子契約も増えていきていますが、電子契約の広がりには電子署名法が大きく関係しています。
電子署名法が整備されたことで、電子署名があれば、紙の契約書類の押印と同等の法的効果が付与されるようになりました。
さらに、タイムスタンプがあれば、改ざんされていないことが証明されるので、より安心して使えるようになりました。
◾️電子契約について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
契約書をペーパーレス化する方法は、「契約書のPDF化」と「電子契約サービスの導入」といった2つが一般的です。
特別なシステムを導入しなくても、紙の契約書をスキャンしてPDFに変換すれば、手軽にペーパーレス化を進められる点が大きなメリットです。
ただし、PDF化した契約書は、「原本のコピー」という位置づけになり、紙の契約書に比べると法的証拠力が劣る可能性があります。
契約書の有効性を担保するには、電子帳簿保存法の要件を満たした状態で保管しなければなりません。
電子契約サービスを利用すれば、安全かつ効率的な契約書のペーパーレス化ができます。
多くの電子契約サービスには、電子署名やタイムスタンプの機能が搭載されており、契約の真正性を保証できます。
また、電子契約では契約書データ自体が「原本」になるため、紙に印刷して保管する必要もありません。
契約業務の効率化や法的リスクの低減を図りたい場合は、電子契約サービスの導入がおすすめです。
契約書をペーパーレス化するには、事前の準備が重要です。
以下の手順に沿って、電子契約の導入を進めましょう。
まずは、契約書のペーパーレス化を進める目的を明確にしてください。
以下のような自社の課題やニーズを洗い出し、最適なペーパーレス化の方法を選択しましょう。
前述のとおり、契約書のPDF化を優先するのも一つの方法ですが、契約の効率化を重視する場合は、電子契約サービスの導入がおすすめです。
契約書をペーパーレス化すると、契約書の保管がクラウド上になったり、印章が不要になったりと、業務フローが大きく変わります。
そのため、ほとんどの企業に存在する2つの社内規程の変更が必要です。
また、電子契約を進めるには、電子署名の運用ルールを文書化した「電子署名管理規程」を策定し、電子署名の適用範囲や運用ルールを文書化しておかなくてはなりません。
契約書を安全かつ効率的にペーパーレス化するためには、自社の契約業務に適した信頼できる電子契約サービスを選びましょう。
主な選定ポイントは、次の6つです。
また、多くの電子契約サービスにはトライアル期間があるので、実際に操作して使いやすさや機能を比較してください。
電子契約を導入したあとは、スムーズな運用ができるように社内の体制を整備しましょう。
運用方法の整備ポイントは以下の通りです。
電子契約の利用が初めての企業は、一部の契約から試験的に導入し、運用しながら課題を洗い出してください。
また、従業員向けに利用方法の研修を実施し、電子契約の基本ルールを周知しておくことも重要です。
契約書のペーパーレス化を進めるには、取引先の同意が必要です。
ほとんどの契約書が電子契約で締結できるようになりましたが、すべての企業が電子契約に対応しているわけではありません。
また、下請業者や消費者の保護などを目的に、一部の契約では相手方の同意・承諾が必要な場合があります。
電子契約を導入する意図やメリット、法的効力を説明し、相手先の理解を得てスムーズに移行できるよう調整を行いましょう。
電子契約の基礎知識について学んできましたが、電子契約にはいくつもメリットがあります。
契約書を紙から電子契約に変えることで得られるメリットについて解説します。
電子契約のメリットの1つは、コストの削減です。
紙の契約書の場合、契約書を印刷したり、郵送する必要があります。
また、紙の場合は契約によっては収入印紙が必要な場合もあります。
しかし、電子契約ではインターネットを使ってアップロードするだけですぐに契約書を確認でき、収入印紙も必要ありません。
1件にかかるコストは小さくても、何百件、何千件と契約書を交わしていれば、そのコストは無視できません。電子契約により契約書の作成、送付にこれまで必要だった諸々のコストを削減することができるのです。
電子契約は業務効率化にもつながります。
紙の契約書の場合は、契約書の印刷、製本、郵送、捺印など契約締結までにいくつものステップが必要でした。
一連のステップを終えて契約が完了するまでに数日〜数週間かかることも普通です。さらに、契約書に不備があれば契約書の送り直しなども発生します。
しかし、電子契約であればいくつものステップを省略でき、契約締結までのスピードを格段に早めるさせることができます。
ペーパーレス化により、どこでも契約書を扱えるようになるのも電子契約のメリットです。特に新型コロナウイルスの影響でテレワークが推進されている状況では、捺印するために会社に行かなくては行けないということが避けられるのは大きなメリットです。
また、電子契約で契約書がデータ化できると、契約書を保管するスペースも不要になり、検索しやすくなるというメリットもあります。
電子契約書は、ほとんどの場合暗号化や改ざん防止などの機能が搭載されており、紙の契約書よりも安全性が高くなっています。いつ誰がどの端末で署名したかなど記録に残るので、透明性も高くなります。
様々なメリットがある電子契約ですが、注意点もいくつかあります。注意点を知っておくことで、電子契約をより効率的に使うことができますので、注意点についても学んでいきましょう。
電子契約を実現するにはまず社内の理解と周知が必要です。
これまでの紙の契約手続きとはオペレーションも変わるので、担当者に十分説明した上で、電子契約の一連の業務をできるようになってもらう必要があります。
新しいことに抵抗がある人や従来のやり方を変えることを嫌がる人もいるので、事前の準備と周知を怠らないようにしましょう。
電子契約にするには契約相手に電子契約を納得してもらわなければいけません。
電子契約は徐々に広がりつつあるものの、詳しくない方や安全性などを不安視されている方もまだまだ多いのが現状です。
電子契約のやり方や安全性の説明など確認や説明し、電子契約についてメリットを感じてもらうことが大切です。
定期借地契約や定期建物賃貸借契約など、書面での契約が義務付けられているおり、電子化できない契約書もあります。
新型コロナウイルスの影響でテレワークが推進される現状を考えると、契約書の電子化や電子契約はこれからさらに広がっていくことでしょう。
電子化のメリットと注意点を十分に理解した上で賢く利用していきましょう。
画像出典元:写真AC、 pixabay
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