近年、コストダウンや業務効率化といった観点から電子契約を導入する企業が増え、電子契約のクラウドサービスを提供する会社も豊富になっています。
本記事では、電子契約の導入を検討する方に向けて、導入の手順やサービス選定のポイントを解説します。
電子契約のメリットとデメリットを把握して自社にベストな電子契約を導入できれば、コストダウンや業務効率化が望めるでしょう。
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このページの目次
電子契約とは、紙と印鑑を用いて企業間や個人間でやり取りをしていた契約書を電子文書にすることです。
電子契約を導入すれば、契約前の交渉などのコミュニケーションもネット上で行なえます。契約締結後の契約書の保管・検索・閲覧も電子化できます。
このように、契約前・本番の契約・契約後までの過程を電子化することで、契約に関わる様々な業務の効率化を図るシステムを指すのが電子契約です。
電子契約と書面による契約の特徴を比較してみると、どちらの方が便利なのかよく理解できます。
電子契約のほうが、契約完了までの業務を効率化できる、契約のために印鑑を持ってどこかに出かける必要がない、保管や閲覧が便利ということがよくわかります。
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次に導入を検討するために知っておくべき電子契約のメリットを紹介します。
電子契約導入には以下のメリットがあります。
電子契約を導入すれば以下の分野のコストが削減できます。
たとえば、請負契約に関する契約書を紙で作成した場合、収入印紙をはらなければなりません。
建設工事の請負契約で契約金額が300万円以上500万円未満ならば1,000円の収入印紙、500万円以上1千万円未満ならば5,000円の収入印紙が必要です。(※参考:国税庁「印紙税額」)
契約ひとつひとつの印紙代はわずかでも、こうした契約が定期的に交わされているならば、電子契約にすることでコストを大きく削減することができます。
契約書の作成業務には以下のものが含まれます。
電子契約を導入すればこうした業務すべてをオンライン上で行うことができるので業務効率化が達成できます。
膨大な数の紙の契約書を保管するためには、箱やファイル、キャビネット、ロッカー、倉庫などの保管スペースが必要です。
電子契約を導入すれば保管スペースがいりません。
空いたスペースを有効活用できます。
紙の契約書は災害や火災などでデータが失われるというリスクがあります。
失われた紙の契約書はほぼ復元不可能です。
しかし電子契約を導入すれば、クラウドサーバー上にデータを保存し、バックアップが簡単にできるので災害や事故によるデータ消失のリスクを回避できます。
電子契約を導入することで契約書の検索と閲覧が簡単にできるようになります。
紙の契約書では必要な書類を探すのが大変という場合がありますが、そうした苦労もなくなります。
電子契約にすれば、電子署名やタイムスタンプが付与されているので、契約書の改ざんを予防することができます。
さらに、システム上で契約書に閲覧可能な人物を設定し、ダウンロードできる人を制限することも可能です。
それにより情報漏えいのリスクも軽減できます。
このように偽造防止や情報漏えい対策ができているので、企業のコンプライアンス強化につながります。
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電子契約の導入にはメリットが多いというのは理解していても、多くの企業で導入に前向きになれないのは障害となっているいくつかのデメリットが存在しているからです。
以下の4つが電子契約の導入を阻むデメリットとなっています。
それぞれのデメリットをさらに詳しく説明し、そのデメリットを克服する方法も紹介します。
紙の契約から電子的な契約に代わることで業務オペレーションが変更になります。
従来の方法に慣れた従業員は、新しい方法に慣れるまで時間がかかるので、電子契約の導入に消極的な場合があります。
もし電子契約を導入するのであれば、事前に従業員にその意図や業務オペレーションの変更について説明・教育する必要があるでしょう。
取引先へも電子契約導入の説明が必要です。
印紙代などのコスト削減や保管スペースが不要など、双方のメリットを説明し電子契約導入を理解してもらいましょう。
現状では法律により電子化できない契約書類も存在します。
たとえば以下の書類がそれらに該当します。
不動産に関係する契約や、訪問販売や連鎖販売取引などの契約書は今のところ電子化できません。
こうした契約書類の電子化は、行政の法改正を待つ必要があります。
電子文書を保管しているサーバーに対してサイバー攻撃が行われた場合、データ流出、電子契約サービスの機能停止などの問題が生じるかもしれません。
そうしたリスクを軽減するためにデータ保管やセキュリティ対策に力を入れている電子契約サービスを選ぶことが重要です。
契約書電子化のメリットと注意点について、さらに知りたい方はこちら
電子契約を導入することが決まったら、以下の5つのステップで進めていくと、失敗せずに自社のニーズに合った電子契約を導入することができます。
1ステップごと、計画的に進めていくことが重要です。
まず、現在どのような契約がどれくらいあるのか、契約にはどのくらい手間やコストがかかっているのかを把握し、電子契約を導入することで得たい効果やメリットを明らかにします。
業務プロセスの改善やコスト削減、情報管理の強化などといった具体的な目標を立てて、戦略的に動き始めましょう。
次に、契約書管理の体制と契約フローを明らかにし、現状の契約業務の全体の流れを把握しましょう。
契約書と併せて、発注書や見積書、稟議書などの書類も確認しておけば、電子契約システムの導入が業務全体にどのような影響を与えるかを確認することができます。
また、実務を行う法務担当者に現状の契約業務で非効率になっている点などをヒアリングして、サービス選定に生かしましょう。
電子契約を導入するには既存の契約フローや契約書の文言を見直したりする必要があるため、実務を行う法務担当者が使いやすいサービスを選ぶことができれば、業務の効率化にもつながります。
1と2のステップを踏むことで電子契約の導入目的や自社の課題がはっきりし、サービスを選ぶときの判断材料になります。
一度導入したサービスを後から変更するのは時間と労力がかかりますので、無料のお試しプランを使っていくつかのサービスを比較検討し、自社に合ったサービスを選ぶことが大切です。
名の通った電子契約サービスを安易に選ぶことは避けるべきですが、倒産の心配がないサービス提供会社を選ぶことも重要です。
電子契約サービスを検討するときの選定ポイントは次の章で詳しく紹介します。
電子契約を導入すると押印が不要になったり、文書の保管方法が変わるため、社内の体制が大きく変わります。
たとえば、書面での契約書作成手続きに欠かせない印章の運用ルールを文書化した「印章管理規程」の修正、押印に代わる電子署名の運用ルールを文書化した「電子署名管理規程」を策定する必要があります。
また、文書管理規程規に電子契約で追加されるルールを盛り込む必要もあるため、整備すべきことを事前に整理しておくと安心です。
電子契約の導入が決まったらシステム操作が苦手な人にもわかりやすいマニュアルを作成し、社内と取引先に向けて説明会を開きましょう。
書面での契約に慣れていて電子契約の導入をストレスに感じる従業員に、電子契約を導入することによって得られるメリットをしっかりと理解してもらうことが大切です。
電子契約の利用は増えていますが、まだ電子契約を導入していない取引先のためにも、十分な理解を得られるように丁寧な説明を心がけましょう。
下請業者の場合は了承があったときのみ電子契約が可能なことも頭に入れておきましょう。
さらに、電子契約を導入した直後は混乱が生じて問合せが殺到する可能性もあるため、取引先からの質問に対応できる問い合わせ窓口を設けると安心です。
社内・取引先への周知のポイントを詳しく知りたい方はこちら
電子契約のメリットをきちんと得るためにも、電子契約サービスを選ぶときは自社のニーズにマッチしているかを重視しましょう。
また、電子契約サービスごとに、使いやすさやプラン、ターゲットにしている企業も異なるので、いくつかの電子契約サービスで比較・検討することをおすすめします。
そして、以下の5つのポイントをチェックすれば、最適な電子契約サービスを選ぶことができます。
電子契約はパソコンやスマートフォンで簡単に契約を締結することができてしまうため、高セキュリティ基準を満たした電子契約サービスを選ぶ必要があります。
電子契約の導入を検討するときには、具体的に以下のセキュリティ対策機能が備わっているかを確認しましょう。
ツールを使用するときにログイン時の多要素認証が行われることで、なりすましを防止できます。
階層型のアクセス権限を設定できるシステムを選びましょう。契約書の重要度に応じて、情報の開示を制限することができます。
契約書の承認が行われた日時を証明するタイムスタンプ機能があれば、文書の改ざんを防止できます。
電子印鑑や電子署名で本人が契約を承認したエビデンスを残すことで、なりすましを防止できます。
契約書に正しく電子署名とタイムスタンプを付与することができれば、電子契約も書面の契約と同じように法的に有効です。
電子署名の方法には、契約を行う当事者が電子署名を付与する「当事者型」と、電子契約サービスを提供する事業者が電子署名を付与する「立会人型」の2つがあり、どちらの方式でも法的に有効ですが、当事者型の方が本人性の担保力が強い契約締結ができます。
しかし、当事者型は立会人型の電子契約と比べると、導入の手間とコストがかかるため、双方のメリット・デメリットを把握し、どちらの電子署名を用いる電子契約サービスを選ぶべきか検討しましょう。
2022年に施行された電子帳簿保存法の改正によって、2024年1月から改正電子帳簿保存法への対応の義務化がスタートしています。
電子帳簿保存法とは、法人税や所得税といった国税関係の帳簿や書類について、電子データで保存するときの取り扱い方などを定めた法律です。
違反した場合、青色申告の取り消しや100万円以下の罰金などのペナルティを受けるおそれがあるため、導入予定の電子契約サービスが電子帳簿保存法に対応しているかどうかも確認しておきましょう。
電子契約では、書面契約のときにかかる印紙税や印刷の費用などのコストを減らすことができます。
しかし、電子契約サービスの利用料金や送信費用などの新たなコストが発生するため、導入前よりも結果的にコストが上がってしまう可能性があります。
電子契約サービスの月額費用や1送信あたりの料金を確認して、電子契約サービスを導入した場合に発生する費用をシミュレーションし、これまで書面契約にかかっていた費用と比較しましょう。
ただし、サービスや機能の充実度は金額に比例しますので、自社のニーズに合った電子契約サービスを見極めることが大切です。
電子契約の費用について詳しく知りたい方はこちら
慣れない新しいサービスを導入した直後は混乱やトラブルが発生しがちですが、電子契約サービスに導入後のトレーニングや取引先へのサポートなどといった導入後のサポート体制が整っていれば、電子契約をスムーズに導入することができるでしょう。
また、チャットだけでなく電話でのサポートやコンサルティングサービスが利用できるかどうかも確認しておくと安心です。
紙から電子契約への変更に伴う業務オペレーションの変更は、事前に関係者に導入の目的やメリットを説明し、その利用法を教育することで導入へのハードルを下げることができます。
また取引先の対応も、電子契約によるコストダウンや業務効率化などを説明することで同意してもらうことができます。
電子契約導入にはたくさんのメリットがあります。
さらに電子契約のクラウドサービスの種類も増えており、導入コストも比較的安くなっています。
この機会に契約業務の効率化に役立つ電子契約を導入するのはいかがでしょうか。
画像出典元:Pixabay
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