日本は「押印文化」といわれるほどに、書面と押印による契約方式が深く根付いています。
しかし、そんな日本であってもようやく、インターネット上で完結する「電子契約」が浸透し始めています。
今回は、電子契約システム導入を検討する場合に知っておきたい、電子契約の概要やメリット、注意点について解説するとともに、システム導入の手順を説明していきます。
このページの目次
電子契約とは、企業等の組織間での契約締結をインターネット上で行う契約のやり方です。
これまで契約は、「契約書」と呼ばれる書面を作成し、そこに契約の当事者となる企業が代表者印などを押印するというやり方で行われていました。
契約書は基本的には当事者の数だけ作成され、各企業が自分で管理します。当事者の押印がなされた契約書の存在が、契約に基づく様々なやりとりを行う根拠となると同時に、トラブルなどが発生した際に事実関係を確認する証拠のひとつとなります。
ところが、書面を作成しておこなう契約のやり方には、後述するとおり様々な問題点がありました。
そんな中、インターネットの発達により、契約締結をインターネット上で行うシステム、すなわち電子契約システムが登場。
さらに「電子署名法」や「電子帳簿保存法」などといった電子契約が適正に運用されるための法整備も行われ、各企業などへ導入されるようになっていきました。
現在ではおよそ4割の企業が電子契約システムを導入しているとされています。
従来の書面を作成しておこなう契約のやり方には、以下のような問題点があります。
電子契約を導入することの最大のメリットは、これらの書面での契約における諸問題を一挙に解決できることにあります。
電子契約を用いればインターネット上でほぼ全ての手続きが完結するために、時間とお金をあまりかけずに済みます。
実物の印鑑を使用しないために、印鑑紛失というリスクも避けることができ、さらに書面の契約書を保存する必要もありません。
契約書はデータの形で保存されますから、後から検索するのも非常にスムーズに行えます。
書面と押印による契約の問題点を解決するだけではなく、電子契約システムそのものが持つ強みも魅力的です。
最も重要なのは、セキュリティを強化できるという点でしょう。
例えば、電子契約では「電子署名」というデータ上の署名処理を行います。
これは書面の契約における「押印」の役割を果たすものですが、実は「押印」には印鑑の偽造に対応できないなどのセキュリティ問題が存在します。
その点、「電子署名」は印鑑のような偽造はできないために、悪意ある第三者がなりすましで契約を結ぶ、ということができなくなるのです。
◾️電子契約についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
それでは、電子契約システムを導入するための具体的な手順を解説していきましょう。
まずは、現在の社内での契約書管理体制について精査します。
これは、この後の「導入する電子契約システムの決定」の際に、自社に適切なシステムを選択したり、あるいは必要に応じてシステムをカスタマイズしてもらうために必要なものですから、以下のような事柄を把握することが重要です。
電子契約システムの導入は、ただ単に契約をインターネットでやれるようにする、というものではありません。
契約の締結方法だけではなく、契約書の管理体制そのものを抜本的に見直して再整備する作業です。
ですから、「とりあえず導入する」のではなく、「今の管理体制はどうなっていて、どのような問題があって、それらを解決するために導入する」という考えを持つようにしましょう。
現在の契約書管理体制を精査したら、いよいよ導入する電子契約システムを検討し決定します。
なお、電子契約システムはイチから自分たちで作るよりも、業者が提供している電子契約システムを導入して使用するのが現在は一般的です。
この際、ひとつの業者に絞って話を進めるのではなく、ある程度複数の業者に相談を持ちかけて比較検討を行い、より自分たちのニーズを満たせるシステムを提供してくれる業者を選ぶことが大事です。
こういったことからも、事前に自社の契約書管理体制について精査して導入する電子契約システムに対する細かなニーズを整理しておくことは重要だといえます。
また、導入する電子契約システムの検討や業者との打ち合わせの際には、必ず「今後社内で電子契約システムを管理運用する部署の人間」や「これまで契約書管理を主に担ってきた部署の人間」を同席させることを忘れずに。
細かなニーズや問題点を把握している人間が同席することで、その企業の実態に即した使い勝手がよいシステムの導入が図れます。
のちほど、おすすめの電子契約システムを紹介するので、参考にしてください。
電子契約システムの導入に際しては、導入が決定したタイミングやシステムを運用開始する前のタイミングなどで、社内外に周知徹底することを忘れないようにしましょう。
特に社内への周知の際には、電子契約システムを導入することのみを知らせるのではなく、それらをいつの時点の契約から適用するのかや、システムの使用方法まで細かに知らせることで、システム導入に伴う混乱を最小限に抑えることが重要です。
◾️おすすめ電子契約サービス21選をこちらの記事でご紹介しています。
書面と押印での契約が唯一、電子契約システムに勝るともいえるのが、契約書類の実物そのもののセキュリティ対策です。
なぜなら、基本的には契約書は契約の当事者である企業しか持ち得ないものであり、それらはカギのかかる金庫にしまってしまえば誰もアクセスできなくなるからです。
電子契約の場合、契約書はデータとして保管されます。契約書データの保管場所はクラウドサーバや場合によっては一般企業が所有するサーバですが、いずれにしろこれらはネットワークでつながっているために、悪意ある不正アクセスにさらされるリスクが生じます。
ですから、電子契約システム導入にあたってはセキュリティ対策を疎かにしてはいけません。システム導入における最優先事項と位置づけて万全の対策を行いましょう。
現在、電子契約を活用できるのはB to Bビジネスでのやりとりがメインです。しかし、先述のとおり電子契約の普及率はおよそ4割。まだまだ契約は書面のやりとりで行う企業が多いのが現状です。
加えて、電子契約を活用したい場合、契約を行う当事者すべてが電子契約を行える環境を整えてあることが条件となります。
ですから、電子契約システムを導入している企業であっても、すべての契約を電子契約で済ませられる、というわけではないことは注意しておくべきでしょう。
現実的には、書面での契約と電子契約と2つの方法を並行運用していくことになる企業が多いといえます。
契約の中には、法令により書面での契約や保存が義務づけられているものが存在します。
ここではいくつかの具体例を挙げますが、各種契約を電子化できるか否かは、あらかじめ法的な観点から確認しておくようにしましょう。
◾️電子契約サービス導入に関する準備や注意点について、詳しくはこちら!
ここからは編集部が厳選したおすすめの電子契約サービス5選を紹介していきます。
その他サービスの詳しいランキングを知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
弁護士ドットコム株式会社が運営していることで人気が高い「クラウドサイン」。CMも活用し、知名度・利便性で他社を一歩リードしているサービスです。実際に大手企業の導入実績も多数あります。
クラウドサインはメール認証での契約締結になるため、比較的締結が簡単です。
そのため個人事業主やアルバイトなど対個人の契約や海外企業との契約でも気軽に利用できます。従業員を対象とした雇用契約書や秘密保持契約書や、取引先企業との発注書や受注書のやり取りなどでも活用しやすいです。
ただし契約書の送信はPDF形式のみ・1回ごとの送信料が200円と他社と比較しても少し高めの設定になっている点がネックです。
プラン | 月額費用 | 送信件数ごとの費用 | 特徴 |
Standard | 10,000円 | 200円 | 全ての基本機能搭載 |
Standard plus | 20,000円 | 200円 | Standard+インポート機能 |
Business | 100,000円 | 200円 | 高度なリスク管理機能 |
画像出典元:「ContractS CLM」公式HP
ContractS CLMは、電子契約締結だけでなく、契約の作成・相談・承認・締結・更新管理をワンプラットフォームで行える上に、Word編集機能やナレッジマネジメント機能なども備えており、契約プロセス全体の効率化を実現できるシステムです。
電子契約サービスを利用したい場合だけでなく、「紙と電子の契約書両方の管理を行いたい」、「システム導入によって契約関連業務すべてを効率化したい」などといった本格的な導入を考えている企業に向いているサービスです。
プラン | 費用 | アカウント数 | 特徴 |
Standard | 初期費用+基本料金 | 無制限 | テンプレート、電子締結、契約管理など |
Professional | 初期費用+基本料金 | 無制限 | Standard+シングルサインオン、API対応 |
Enterprise | 要相談 | ー | 課題にあわせて個別見積もり |
上の表のとおり、プランは3種類あります。キャンペーン期間中であれば、初期費用と基本料金以外は原則費用は発生せず、電子締結料は0円/件です。
契約期間は1年単位。料金の詳細はお問い合わせをする必要があります。
ContractS CLM 含む電子契約サービスの資料を一括DL
「freeeサイン」(旧:NINJA SIGN by freee)は、Googleドキュメントを使用することで、テンプレートやドラフトの編集をシステム上でできる機能がとにかく画期的です。
自社で修正した箇所は履歴として自動保管されるなど、ワードファイルでは実現不可能な効率化を実現してくれます。
他社サービスと比較検討してfreeeサインの導入を決めるユーザーが90%を占めており、人事部のみが契約書を確認できるようにする、といった”フォルダ権限設定”ができることが、ユーザーに高く評価されているポイントです。
ただし無料プランで送信できるのは月に1通まで、Lightプランでは送信数無制限・送信料0円で4,980円(税込5,478円)/月という料金ですが、これは1アカウントの利用料金なのでこの2点は注意が必要です。
現在、対応言語は英語とベトナム語があります。
プラン | 初期費用 | 月額固定費用 | 機能 |
無料 | 0円 | 0円 | 基本機能のみ |
スターター (個人事業主向け) |
0円 | 980円 (税込1,078円) |
Freeプランの機能 +公式テンプレート/タイムスタンプ |
Light | 0円 | 4,980円 (税込5,478円) |
API連携オプション 選択可能 |
Light Plus | 0円 | 19,800円 (税込21,780円) |
Wordテンプレート 登録等追加 |
Pro | お問合わせ | 50,000円~ (税込55,000円〜) |
ワークフロー機能追加 |
Pro Plus | お問合わせ | 120,000円~ (税込132,000円〜) |
全機能、全オプションが利用可能 |
画像出典元:「DocuSign」公式HP
DocuSignは、国外でも広く使われている契約締結システムです。米国をはじめ世界各国における文書の法的有効性を保証できます。
ネットが繋がっているデバイスであればいつどこでも署名ができ、「DocuSign」のクラウド上で保存されます。契約締結に必要な工程の大部分を行ってくれるため、ペーパーレスだけでなく時短や業務改善の期待ができます。
また、契約書の締結工程で通知設定なども行えるので返送された契約書の処理や締結先の連絡を忘れず、管理面も優れています。
文書への署名のみが必要な場合は、無料のドキュサインプランが利用できます。署名できる文書の数に制限はなく、署名した文書はドキュサインの安全なクラウドストレージに保管され、いつでも簡単にアクセスできます。
プラン | 月額費用 | ユーザー数 | 特徴 |
無料版 | $0 | ‐ | 機能は文書への署名のみ |
Personal(個人向け) | $10 | シングルユーザーのみ | 基本的機能搭載 |
Standard (企業向け) |
$25/1ユーザー | 5名以上で利用したい場合はお問い合わせ | 通知メールや署名用画面のカスタマイズ機能等が追加 |
Business Pro (企業向け) |
$40/1ユーザー | 5名以上で利用したい場合はお問い合わせ | 一括送信機能・支払い機能など高度な機能が追加 |
高度なソリューション | お問い合わせ | お問い合わせ | Business Proの全機能に+α |
画像出典元:「電子印鑑GMOサイン」公式HP
「電子印鑑GMOサイン」は、16万社以上の企業のITインフラを支えるGMOが運営している電子契約システムです。20年以上日本のインターネット基盤を支えている企業ならではの充実機能には定評があります。
導入企業数は2022年4月で140万社を超え、国内電子契約サービスにおける導入企業数No.1*。弁護士監修の点も安心です。
また電子印鑑GMOサインはトップレベルのセキュリティを誇る電子契約システムです。一つひとつの契約データごとに暗号化して保管していたり、契約データのバックアップも毎日行っているので、重要な書類を安全に取り扱うことができます。
お試しフリープランは無料で利用できるので、まずは試験的に使ってみて、その後導入を検討してみるのが良いでしょう。
*2022年5月GMO社調べ(国内主要電子契約サービスの公表数値を比較)
「電子印鑑GMOサイン」(OEM商材含む)を利用した事業者数(企業または個人)
1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウント/契約社は60万社(複数アカウントの場合、重複排除)
「契約印&実印プラン」は月額利用料9,680円(税込)で利用できます。
詳しいサービス内容・料金を知りたい方は、資料チェックできます。
電子契約システムは、導入時こそ色々とやることが多く、イメージよりも大がかりな作業になることが多いですが、一度導入して運用をスムーズに開始できれば、それ以降は契約作業がスマートになり更にコストカットも果たせるなど電子化のメリットを享受できます。
しかし、電子契約システムの導入率は現状でおよそ4割。
これは、電子契約システムの導入には時間とコストがかかること、さらに日本は「押印文化」といわれるくらい、企業や官庁が書面と印鑑での契約にかなりこだわりをもっていることが、電子契約の普及を妨げる要因となっているといえます。
それでも最近はインターネットを含めたIT技術の発達が著しく、行政での手続きや契約等でもIT技術を利用できる場面が増えてきました。
今後は電子契約の普及がより一層浸透していくと予想できることから、今のうちに電子契約システム導入を検討するのが得策だといえるでしょう。
画像出典元:Pexels、Unsplash、Pixavay
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