昨今、ニュースやビジネスシーンで「リーガルテック」という言葉をよく耳にします。
リーガルテックは、契約締結など法律に関わる業務にIT技術を活用し、業務効率化を図るもので、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む現代において、需要も高まりつつあるのです。
デジタル化が進むにつれて、今後さらにリーガルテックは身近な存在となるでしょう。
この記事では、「リーガルテックについて知りたい」「市場や有名なサービスも知りたい」という人のために、リーガルテックについて紹介していきます。
このページの目次
リーガルテックとは、「Legal(法律)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、法律に関わる業務にIT技術を活用し、業務効率化を図るためのシステムを指します。
リーガルテックの発祥はアメリカです。
アメリカは裁判件数が非常に多く訴訟資料の量も膨大で、吟味検討することが極めて困難という課題がありました。
リーガルテックはその課題を解決するために開発され発展したものです。
近年では、日本国内でもリーガルテックを導入する動きが高まりつつあります。
リーガルテックの市場はアメリカやヨーロッパを中心に、世界で約1.8兆円規模となっています。
アメリカでは、2010年頃からリーガルテック事業に次々と大手企業が参入しはじめ、市場は一気に広がりを見せました。
一方日本では、少し後れること2014年頃から広がりはじめ、2015年頃からはベンチャー企業を中心に多くの企業が参入し、表面化している市場の成長は300億円規模です。
政府によるDXや働き方改革の推奨などに伴い、今後もリーガルテックの市場規模は拡大していくものと考えられます。
リーガルテックが注目される主な理由として「働き方改革の推奨」が挙げられます。
近年、日本では少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が問題視されており、長時間労働の是正や柔軟な働き方への環境整備などが求められるようになりました。
特に日本企業特有の"ハンコ文化"は無駄が多く、ふだんテレワークを行っていても、契約書など押印やサインが必要な場合は出社する必要があります。
こうしたハンコ出社は、明らかに非効率的です。
限られた人員のなか、業務効率化や生産性向上を図るためには、ITやAIの活用が不可欠で、こうした課題解決のためにリーガルテックへの注目が高まっています。
現在、日本でも多くのリーガルテックサービスが存在しており、以下はリーガルテックの主な種類とその概要です。
電子契約サービス | 契約書の作成から締結まで、契約作業のすべてをクラウド上で完結できるサービスです。 |
契約書のレビュー | 契約書の内容を自動でチェックし、不利な条文や欠落条項、抜け漏れなどを防ぎます。 |
文書管理サービス | 書類をデータ化し、セキュリティ対策が施されたサーバーで一元管理します。 |
申請・出願サービス | 商標や意匠など、企業活動におけるさまざまな申請や出願をサポートします。 |
リサーチ検索 | 過去の判例など、法律に関わるさまざまな資料を検索することが出来るサービスです。 |
弁護士検索 | 相談したいトラブルに対し、その分野の専門弁護士を紹介してもらえるサービスです。 |
法務マネジメント | 契約など、法的に関わる業務を包括的にサポートするサービスです。 |
デューデリフォレンジック | 不正を調査するためのサービスで、膨大なデータの収集や既に消去されたデータなどの復元も可能です。M&A実行時などでよく活用されます。 |
日本でもリーガルテックの需要は高まりつつあり、市場規模も拡大傾向にあります。
以下の図は、国内におけるリーガルテック市場がひと目で分かるカオスマップです。
前述のとおり、リーガルテックは日本でも注目されており、さまざまなサービスが展開されています。
それでは、リーガルテックにおける有名なサービスを8つ紹介します。
画像出典元:「GVA assist」公式HP
「GVA assist」は、契約審査で負担となる「読む、直す、仕上げる」を解消する、AI契約審査クラウドサービスです。
契約業務における3つのリスク「リスク単語・不足単語・不足条文」をAIが検知するので、瞬時に直すべきポイントがわかります。
また、膨大なデータベースから条文を検索することができるので、条文の修正もスムーズ。
表記ゆれや条項番号ずれなど、形式チェックもワンクリックで一括修正が可能です。
契約書も弁護士監修のひな型が数百種類用意されているため、急な作成にもスピーディに対応することができます。
画像出典元:「クラウドサイン」公式HP
「クラウドサイン」は、契約作業の全てをオンライン上で完結できる、クラウド型の電子契約サービスです。
弁護士監修に加え、日本の法律に特化していることから非常に人気が高く、ベンチャーや大企業など30万社以上の導入実績を誇ります。
官公庁、金融機関でも安心して利用できる万全なセキュリティ対策の構築や、外部サービスとの柔軟な連携が可能というところも「クラウドサイン」の人気の要因です。
画像出典元:「BtoBプラットフォーム 契約書」公式HP
「BtoBプラットフォーム 契約書」は、企業間における契約締結から契約書類の保管共有・管理まで、全てクラウド上で行える電子契約サービスです。
PDF化した契約書はWeb上での受け渡しが可能なので、スピーディな契約締結が実現します。
紙代や印刷代、印紙税、郵送費、保管費など、あらゆるコストの削減や、テレワーク時などに発生しやすい不要な出社を減らすことも可能です。
24時間365日の監視など、セキュリティ対策も常に高いレベルが保持できるよう体制が整っており、いつでも安心して利用できます。
現時点で「BtoBプラットフォーム 契約書」を導入している企業は60万社を超えているため、取引先にも受け入れやすく導入もスムーズです。
画像出典元:「GMOサイン」公式HP
「GMOサイン」は、紙を使用した従来の契約書を全て電子文書に置き換え、オンライン上で契約締結が完了する、クラウド型の電子契約サービスです。
電子署名が、利便性の高い「契約印」と信用性が高い「実印」の2タイプ用意されており、ビジネスシーンに応じて使い分けることができます。
ファイルや通信の暗号化をはじめ、署名鍵保管や年1回のセキュリティ診断、データバックアップなど、セキュリティに関しても徹底した対策が施されているので安心です。
「GMOサイン」は、次のような課題をすべて解決してくれます。
画像出典元:「LegalForce」公式HP
「LegalForce」は、契約審査の品質向上と業務効率化を実現する、クラウド型の契約書レビュー支援システムです。
契約書をアップロードするとAIが内容を自動でチェックし、契約書に潜むリスクを洗い出してくれます。
AIの指摘には、詳しい解説や修正文例も付随するので、一定の品質を保ちつつ、修正作業も非常に楽です。
契約書の作成も、弁護士が作成したひな型およそ600点が使い放題で、時間や労力をかけることなく質の高い契約書が作れます。
条文のリサーチから修正、共有、締結、管理など、あらゆる契約業務を効率化し、法務担当の負担軽減につながるでしょう。
LegalForceの導入実績はこれまでに2,500社以上、多くの法律事務所も導入するなど信頼と実績の高いサービスです。
画像出典元:「Toreru」公式HP
「Toreru」は、面倒な商標登録の手続きを、簡単でスピーディに行えるようにする、オンライン商標登録サービスです。
商標登録を行う場合、通常「調査・出願・審査・登録」と進めていく必要があります。
なかでも、先行商標がないかなどの調査は非常に手間や時間がかかるものです。
「Toreru」は、決められたフォームに必要事項を入力するだけでAIが商標調査を行い、瞬時に結果を出してくれます。
出願申し込みも、必要事項をWeb上からフォームに入力するだけで完了するので、スピーディかつ簡単に商標登録を行いたいという場合は特におすすめです。
弁理士による手厚いサポート体制も整っているので、安心して導入できます。
画像出典元:「JINJER サイン」公式HP
「JINJER サイン」は、捺印稟議・契約締結・送付・進捗確認・フォルダ保管・書類検索など、契約に関するあらゆる業務を一気通貫で行える電子契約サービスです。
契約締結に関する業務がWeb上で完結するので、業務効率化はもちろん、郵送費などのコスト削減、製本や印刷などの手間も省けるため、生産性の向上につながります。
操作性に優れたUIに加え、設計から導入、運用まで専任担当者が併走してサポートしてくれるので、初めてでも安心です。
テレワークやペーパーレス化を進めていきたいという企業に適したサービスといえます。
画像出典元:「ContractS CLM」公式HP
「ContractS CLM」は、あらゆる契約業務をワンストップで行える、クラウド型の契約マネジメントサービスです。
契約書の作成からレビュー、承認、締結、更新、管理など、契約プロセス全体をワンプラットフォームで完結できるので、契約業務の効率化が図れます。
弁護士監修の契約書テンプレートが300種類以上用意されているほか、内容も自由に編集することができ、クオリティの高い契約書の作成が容易です。
契約書の作成や編集作業を、使い慣れたWordで行えるのも嬉しいポイント。
「ContractS CLM」には、契約業務の課題を解決してくれる、優れた機能が豊富に搭載されています。
近年、働き方改革の推奨や新型コロナウイルスの影響などにより、これまで根付いていたハンコ文化をなくす"脱ハンコ"に向けた動きが広まりつつあります。
政府もデジタル化に向けた法改正も着々と進めており、企業におけるIoTやAIの活用が、今後さらに増えていくことでしょう。
ビジネスにおけるDX化が進み、紙ではなくデータとして取り扱う機会が増すほど、リーガルテックの存在は不可欠です。
リーガルテックをうまく活用し、法律に関わる複雑な業務を効率的に行いましょう。
画像出典元:pixabay、Photo AC