事業を展開していくなかで、経費として計上するものはたくさんありますが、なかでも経費精算というのは日常的に発生する業務です。
しかし、経費申請は申請から処理されるまでの業務フローが複雑かつ面倒で、従業員に対する業務負担になることも少なくありません。
そこで今回は、経費精算とは何か、どういう流れで処理されるのか、業務を効率化するにはどうすれば良いか。また、経費精算書の種類は?など、経費精算について詳しく解説していきます。
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会社というのは事業を遂行していくなかで様々な経費がかかります。なかでも、従業員が外出する機会が多い企業の場合、営業活動のために使われる経費も非常に多くなることでしょう。
経費精算とは、業務を遂行するための活動に必要な経費を従業員が一時立て替え、立て替えた分を会社が従業員に払い戻す、といった一連の経理業務のことを言います。
なお、経費を立て替えた従業員が経費精算を行う際には、原則としてお金を使用したことが分かる領収書やレシートが必要です。
ちなみに、上記のように従業員が一時的にお金(経費)を立て替え、その後立て替えた現金を精算することを「立替経費精算」と呼ばれています。
また、立替経費のほかに「仮払金」というものもあります。
この仮払金とは、現時点で経費がいくらかかるのか金額が正確に判明していない費用について、おおよその概算で支払っておく現金のことです。
このように、立替金も仮払金も「一時的に支払う」といった意味としては共通していますが、両者の違いとしては「最終的に誰が費用を負担するのか」というところにあります。
立替金と仮払金、ともに仕訳時には混同しやすく非常に間違えやすい勘定科目であるため、処理する経理担当者は注意が必要です。
さて、一口に『経費精算』と言っても精算方法には様々な種類があります。
なかでも「小口精算」「交通費精算」「旅費精算」この3つは一般的によく使われる経理精算ですので、それぞれの意味をよく知っておくようにしましょう。
日常業務のなかで急に現金が必要になる時があります。
たとえば、従業員が外出する時の交通費やボールペンなどの文房具を購入する時など、比較的小さな支払いが必要になった場合に備えて会社は常に現金を手元で管理します。
このことを小口現金と言い、小さな支払いなどを小口現金から精算することを小口精算と言います。
なお、小口精算は現金の動きを小口現金出納帳に逐一記入し、残高に問題がないかを常に確認しておく必要があるため非常に面倒で、計算間違いなどミスが発生しやすくなります。
交通費精算は、主に営業活動で取引先へ訪問するなどの場合に発生する電車やバス、タクシーなどの運賃を精算する時に用いります。
交通費精算は、訪問先への経路や運賃が適切なのかを細かくチェックしなくてはなりません。そのため、申請者・経理担当者ともに手間と時間がかかり、精算業務に対して煩雑になりがちです。
旅費精算は、宿泊を伴う遠隔地へ出張した際に行う精算業務で、一般的には新幹線や飛行機などの交通費やホテルなどの宿泊費、日当などの精算が対象となります。
ただし、目的によっては旅費として計上することができない場合もあるなど、旅費精算に関しては注意すべき点もあります。
たとえば、親交を深めるため取引先の人と旅行に行った場合、それは交際費として処理しなければなりませんし、従業員の慰安旅行であれば福利厚生費となります。
いずれにせよ、旅費精算に限らず経費精算は適正な勘定科目で処理しなければなりません。
前述のとおり、経費精算を行う際は決められた勘定科目に沿って適切に処理しなければなりません。
続いて、一般的に経費として使われる勘定科目をご紹介しますので、しっかりと把握しておくようにしましょう。
オフィスなど事業所で使用される水道・電気・ガスなどの料金がこれに該当します。なお、灯油ストーブを使用するための灯油代も水道光熱費として計上することができます。
電車・バス・タクシー・飛行機など、事業活動における移動のために使われる費用。また、出張時の際に発生する宿泊費もこれに該当します。
固定電話や携帯電話、インターネット料金のほか、切手代や送料といった郵便料金なども含まれます。
なお、郵便局から送る祝電やお悔やみの電報については通信費ではなく、「交際費」となるため注意が必要です。
消耗品費として該当するのは、取得価格が10万円未満かつ使用可能な年数(法定耐用年数)が1年未満の消耗品を購入した場合です。
たとえば文房具やプリンターのインクカートリッジなどです。ちなみに、ソフトのライセンス料も10万円未満の場合に限り消耗品費として計上することができます。
租税とは国や地方公共団体に納めなければならない税金のことで、公課は国や地方公共団体に対する交付金、組合費、会費などの公的な課金・負担金のことです。
つまり租税公課は、印紙税や収入印紙、登録免許税、自動車税、固定資産税など法人税や住民税以外の税金、またそれにかかる費用を必要経費として計上することができるといったものです。
その名のとおり、事業のサービスや商品の販売を行うため、広告や宣伝に使用するための費用です。
主に雑誌や新聞などメディアでの掲載や、ウェブサイト、アフィリエイト広告なども広告宣伝費として計上できます。
取引先や得意先との打ち合わせなど、事業関係者と事業に繋げる目的で使用した飲食代に関して経費として計上することができます。
また、取引先や得意先への贈答品や謝礼、お中元、お歳暮、事業用としてのお茶菓子代など、接待交際費として様々なものに対して計上することができます。
しかし、接待交際費は非常に線引きが難しく税務署からのチェックも厳しい傾向にあります。
したがって、接待交際費として計上する場合は、事業の売上に関係するか否かを意識するようにしましょう。
事業を展開していくうえで有益な情報を得るため、新聞や雑誌、書籍などを購入するための費用を新聞図書費として計上することができます。
そのほか、情報サイトの有料会員などの利用料金も含まれます。
主に建物や機械、車など比較的金額が高く、長期的に使用するために購入したものを経費として計上するもので、購入代金を一度に経費とするのではなく、耐用年数に応じて少しずつ分割にして計上します。
このことを減価償却費と言います。
ちなみに耐用年数は、普通車は6年、軽自動車は4年、パソコンは4年など、といったように固定資産ごとに定められています。
たとえば300万円の普通車を購入したとしましょう。
この時、300万円を全額経費とするのではなく、普通車の耐用年数は6年ですので、300万円を6分割して50万円。つまり毎年50万円ずつ経費として計上するわけです。
機材や機器、建物などの固定資産をメンテナンスや修復する際に発生する費用です。
ただし、修繕費として計上できるのはあくまで固定資産の原状回復・維持のための修理でなければなりません。
もし修理した際に対象物の価値を高めるために新たに機能等を追加した場合は、修繕費ではなく資本的支出に該当するので注意が必要です。
従業員の福利厚生を目的として利用される費用のことで、具体的には社宅の賃料、通勤費・社員旅行・食事代の補助・慶弔見舞金・忘年会・新年会などの費用です。
なお、福利厚生費として計上できるのは、「全従業員が利用できること」「常識の範囲内の支給額であること」この2点がポイントとなります。
そのため、一部の従業員を対象とした高額な旅行やレクリエーションなどは給与とみなされ、課税の対象となる場合があります。
外注費は、外部の会社や個人事業主などと業務請負契約を結び、業務の一部を委託した場合にかかった費用のことです。
外注費が使用されるのは、会社のロゴ制作やウェブサイトの構築依頼、社名入り封筒や名刺、社内清掃、人材派遣料などが多いです。
勘定科目は非常に多くの種類があり、経費精算処理を行う経理や会計の担当者にとって重要なものとなります。
そのため、適切な勘定科目で精算処理できるよう、しっかりと勘定科目の内容を把握するようにしましょう。
経費精算を行う際は、「仮払経費申請書」「仮払経費精算書」「出張旅費精算書」といった書類を作成する必要があります。
続いて、上記3つの書類はどのような時に使用するものなのかなど、書類の用途についてそれぞれ解説していきます。
冒頭でも少し触れましたが、経費がかかるということは判明しているものの、具体的な金額が定まっていない状態のまま事前に支払いを行うことを仮払金といいます。
仮払金は主に出張する際の費用として使われることが多く、出張する従業員への金銭的負担を軽減させるためのものです。
なお、仮払金を申請する際は、仮払経費申請書に出張先までのルートや交通手段、宿泊予定先、合計金額など出張内容をできるだけ具体的かつ詳細に記入し、その内容を上長などに承認してもらう必要があります。
仮払金が受給された際、出張などの目的が終了した時点で速やかに精算する必要があります。
仮払金の精算には仮払経費精算書に何にいくら現金が使われたかなどについて詳細に記入しなければなりません。
出張旅費精算書は、出張時にかかったすべての費用を精算するための書類となります。
記入する事項としては、一般的に「氏名・所属部署」「申請日」「出張期間」「出張先」「宿泊地」「日当」「交通手段・交通費」「合計金額」などです。
なお、仮払金があった場合は仮払経費精算書と出張旅費精算書をセットで提出し、余剰金や不足金があった場合、返金もしくは追加支払いなどの処理が行われます。
では、実際に経費精算の業務というのはどういった流れで進められていくものなのか。続いて一般的な経費精算の業務フローについて見ていきます。
なお経理精算業務というのは従業員が費用を立て替えた場合や、法人用クレジットカードで支払った場合などに発生する業務です。
まず、経費を立て替えた従業員が経費精算書を作成します。
なお、経費精算書に関しては公的に定められているものではないため会社によって書き方は異なりますが、一般的に経費精算のために必要な事項は概ね下記のとおりです。
次に作成した経費精算書を上長へ提出し、上長からの承認印をもらいます。
なお、経費の精算を行う際は、経費精算書に加え、支払いが発生した事実が証明できるもの「領収書・レシート」も一緒に提出する必要があります。
そのため、領収書やレシートは必ず発行してもらい紛失しないようにしましょう。
ただし電車やバスの公共交通機関や慶弔見舞金など、場合によっては領収書が発行されないケースがあります。
このように領収書が発行されなかった場合は出金伝票を作成して提出すると良いでしょう。
なお、出金伝票も会社によって内容は様々ですが、一般的には「日付・支払先・勘定科目・内容・交通費・金額」などを記入します。
経費精算書、領収書・レシートが経理部に提出され、不備や内容に間違いが無いかの確認作業が行われます。
内容確認後、問題等がなければ従業員が立て替えていた費用分が払い戻されます。なお、支払い方法などは会社によって様々ですが、銀行振込で支払われるのが一般的です。
経費精算というのは、とりわけ難しい業務ではありません。しかし、経費精算は処理する際の手間や時間のかかる非効率な業務でもあるため、申請者・経理担当者ともに注意すべき点があります。
では続いて、経費精算を行ううえで注意したい点をご紹介します。
経費精算をする必要がある場合、申請者はこまめに、そして早めに申請するという事が重要です。
前述のとおり、経費精算を行う際は決められた手順に従って進めていかなければならず、数件の処理でも手間や時間、労力がかかります。
そのため、処理する件数が増えれば増えるほどミスが発生しやすく余計に手間や時間もかかってしまします。
申請者のミス、経理担当者の負担を軽減するためにも、申請は「早め・こまめ」を心がけましょう。
領収書やレシートは支払いが行われたことを証明する大事な書類で、経費精算を行ううえで重要で必要不可欠です。紛失しないよう大切に保管してください。
また、万が一税務調査が入った際、領収書やレシートは必ずチェックされるものですので、「仕事で発生した費用の領収書やレシートはしっかり保管しておく」これを徹底して心がけましょう。
なお、こうした納品書や領収書、レシートなどは証憑書類とされ、7年間の保存が法律によって義務付けられている、ということも知っておく必要があります。
交通費をはじめ経費申請は毎月膨大な件数が提出されてくることが多いです。
経理担当者は大量に提出されてくる精算書に対して1件1件入念にチェックを行いながら精算処理を進めていくわけですが、確認作業の膨大さゆえに数字(金額)を間違えるミスが発生しやすい傾向にあります。
金額をミスしてしまうと修正作業に余計な手間や時間が多くかかってしまうため、うっかり計算ミスは絶対に避けなければなりません。
経費精算は手間や時間かかる業務であり課題も多いとされています。なかでも経費精算書の確認作業はすべて経理担当者の手作業によるもの。
毎月数件程度の精算書ならともかく、数十件、時に数百件もの精算書が提出されることも多々あります。
処理件数が増えれば増えるほど入力ミスや計算ミスのリスクが高まりますし、そうしたリスク未然に防ぐため確認作業は複数人で行うダブルチェックが欠かせません。
また、確認作業といっても記入された内容を確認するだけでなく「経路金額が適切か」「定期区間は控除されているか」など、ルートや運賃を調べて記入内容と照らし合わせなくてはなりません。
パッと思い浮かぶだけでもこれだけの課題が経費精算業務にはあるのです。もちろん、申請側も書類を作成して上長の承認を得なくてはならない、といった手間もあります。
いずれにせよ、経費精算における業務への課題は「申請者・経理担当者」ともにあるわけです。
前述のとおり、経費精算業務に多くの手間や時間がかかります。また、必要事項の記入漏れや金額の計算ミスなど、何かと問題が発生しやすいといった課題もあります。
申請から精算まで数ある工程をほとんど手作業で行われる経費精算業務は、あまりに非効率であり率直に言って「とにかく面倒くさい業務」であると言わざるを得ません。
日々行う業務が面倒であると従業員の負担も増え、労働生産性の低下を招く原因にもなります。
会社としては、面倒かつ非効率な経理精算業務を改善させ、従業員の負担を減らし、いかにして生産性の向上へと繋げるか。こうした業務の効率化を常に考えなければなりません。
そこで欠かせなくなってくるのがシステムの導入です。
経費精算システムを導入することで、これまで申請から精算まで複数の工程を紙やエクセルを使って手作業で処理してきたものがすべて一本化されるため、すべての工程において効率化されます。
また、領収書やレシートの内容を自動で読み取ってデータ化する機能もあるので、転記する手間や入力ミスなども無くせます。
経費精算システムは、申請者・承認者・経理担当者など、精算処理に関わる人すべての負担を軽減し、就業時間を有効活用できため、生産性の向上に期待が持てます。
このように、経費精算システムを導入すると多くのメリットが得られますが、もちろんデメリットもあります。
デメリットとしては、これまで長きにわたって慣れ親しんできたやり方が一新されることで、操作の仕方などで戸惑う従業員が出てくる可能性が高いということ。
システムを導入する際は、分かりやすくマニュアルを作成すると良いでしょう。
それともう一点。経費精算システムにはインターネットを利用して管理するクラウド型のものがあります。
特にクラウド型サービスを利用する際は情報漏洩などセキュリティに関しても気を付ける必要があります。
そのため、サービスを選ぶ際はセキュリティ対策がしっかりなされている会社を選ぶようにしましょう。
下記記事では、人気の経費精算システムをピックアップし、比較・紹介しています!口コミもあるので、ぜひ、選定に役立ててください。
会社には様々な経費が存在します。
なかでも経費精算は、出張費や接待飲食費など事業の売上を目的とした活動に対して従業員がお金を立て替え、精算した後に立て替えた分に対して払い戻しを受けるというものです。
しかし、経費精算を行う際は下記のように複雑な手順をいくつも行う必要があり、申請から精算に至るまで非常に多くの手間や時間がかかります。
1. 従業員が費用を立て替える
2. 領収書をもらって保管する
3. 経費精算書を作成し領収書を添付して上長へ提出
4. 上長が承認印を押印し経理部に提出
5. 経理担当者が提出された経費精算書を確認し、承認する
6. 会社が定めた日に従業員へ払い戻しが行われる
7. 提出された領収書は経理部にて最低7年間保管する
このように、経費精算業務のフローは非効率でありながらも、出張や営業活動の機会が増えるたびに申請や処理する量も増えます。
その結果、何らかのミスが発生しやすくなり、業務効率も低下してしまいます。
多くの従業員が抱える経費精算業務に対する課題を改善させ、業務効率化を図ることは会社にとって非常に大切な取り組みです。
また、近年では働き方改革に伴い多くの企業でペーパーレス化も進んできています。
ぜひ、経費精算システムを導入し、これまで複雑で手間や時間がかかっていた業務フローを効率化させ、スムーズに経費精算が行える環境を整えていきましょう。
画像出典元:O-DAN/PhotoAC
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