企業にとって、契約書の管理は欠かせない業務です。
契約書を適切に保管する必要がありますが、「正しく管理できているか不安」「リスクが心配」など、悩みを抱えている方は多いでしょう。
本記事では、適切な契約書管理の方法について解説します。
間違った管理で起こりうるリスクや具体的な管理方法、代表的な契約書管理システムとあわせて紹介します。
このページの目次
まずは適切な契約書管理の基準を解説します。
適切に保管するための基礎知識として、チェックしておきましょう。
法律で定められた契約書の法定保管期間は、以下の通りです。
会社法 | 10年 |
法人税法 | 7年 |
電子帳簿保存法 | 7年(法人の場合) |
労働基準法 | 5年 |
会社法関連の契約書は10年、経理関連の契約書は7年保管が法律で定められています。
人事・総務関連の契約書は2~5年と種類によって法定保存期間が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
また、原則として紙で交わした契約書は紙で保管する必要があります。
スキャンして電子化しても民事訴訟上は原本として認められません。
ただし、インターネット上で締結した電子契約書なら原本としてデータでの保存が可能です。
では間違った契約書管理には、どのようなリスクがあるのでしょうか。
具体的なリスクを把握しておくことが、トラブルの防止につながります。
法令上で保管義務のある契約書の保存期間を守らなかった場合、法令違反に該当します。
過料や罰則が課される可能性があるため注意が必要です。
また、適切に契約書を管理していないと、契約の更新や解約期限が把握しにくく、意図せず法的義務を果たせなくなるリスクがあります。
紛争時や事故によって訴訟が発生した際に、重要な証拠を提出できなくなることも考えられます。
間違った契約書管理は、想定外の第三者の閲覧や紛失を引き起こす可能性があります。
契約書に含まれる情報が漏洩するリスクがあるため、注意が必要です。
機密情報や個人情報が漏洩すれば、個人や企業に深刻な影響を及ぼしかねません。
秘密保持契約違反や個人情報保護法違反など、法的リスクにもつながります。
契約書の管理が適切に行われていないと、必要な契約書を確認するのに時間がかかります。
取引先や顧客から問い合わせがあった際に対応が遅れてしまうと、企業の信頼低下につながりかねません。
とくに、契約内容の確認ミスや遅延が続けば、最悪の場合、契約解除につながるリスクもあります。
間違った契約書管理によって、契約条件の見落としや更新漏れが発生すると、損害賠償請求につながる恐れがあります。
さらに契約更新や解除のタイミングを逃して余計な支出が生じたり、契約更新時に適切な交渉や審査を行えず、自社に有利な契約を結ぶ機会を逃してしまったりするリスクもあります。
契約書が適切に管理されていないと、必要な情報をすぐに参照できません。
手間と時間がかかることで、業務の進行や取引先とのコミュニケーションに悪影響が生じる可能性があります。
また、ヒューマンエラーが起こりやすくなり、ミスによる作業のやりなおしが発生することも考えられます。
結果として、業務効率が低下し、生産性の低下やコストの増大につながります。
間違った契約書管理によるリスクを減らすために、正しく管理できているか確認しましょう。
チェックポイントをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
必要な契約書がすぐに確認できる状態なら、正しく管理ができているといえます。
締結日や満了日、取引内容などの情報で検索できることが理想です。
たとえば紙の契約書は、企業名やサービス名ごとに五十音順でファイリングします。
デジタルデータで保存する場合は、企業名でフォルダを作成して分類する方法が一般的です。
企業名や契約日をファイル名に入れれば、検索しやすくなります。
紛失や情報漏洩のリスクがある場所での保管は、適切な管理とはいえません。
第三者による閲覧や持ち出しが発生しないよう厳重に保管しましょう。
紙の場合は保管場所に鍵をかける、データの場合はアクセス制限を設定するなどの方法があります。
閲覧や持ち出し、変更など契約書へのアクセスを記録することで、情報漏洩などのリスクを軽減できます。
いつ誰が契約書を閲覧したか記録を残せば、契約内容の信頼性を担保できるでしょう。
情報漏洩や改ざんなどのトラブルが発生した場合、原因の特定にも役立ちます。
多くの人が契約書にアクセスできる状態だと、情報漏洩のリスクが高まります。
とくに重要な契約書の情報は厳重に管理が必要なので、閲覧できる社員は必要最低限に留めるべきです。
契約書ごとにアクセス権を細かく設定すれば、より適切な契約書管理を実現できます。
契約書には、種類ごとに法令や社内ルールで定められた保管期間があります。
間違って処分しないように、種類や締結日などで整理しておきましょう。
また、契約更新や解除を適切なタイミングで行うために、契約書の有効期限もあわせて管理することが重要です。
では正しい契約書管理を行うためには、どうすればよいのでしょうか。
契約書管理のルール、運用体制、保管場所について詳しく解説します。
契約書管理のルールが定まっていないと、リスクやトラブルが発生しやすくなります。
たとえば以下のようなルールを見直してください。
契約書に関するルールを明確にして、関係者で共有することがリスクの回避につながります。
ルールを明確にしたあとは、誰がどのように契約書を管理・運用するのかを決めます。
具体的な方法は以下の通りです。
契約書管理台帳は紙もしくはデータベースで作成します。
必要な情報をすぐ参照できるように、契約書に関する情報を一元管理することが重要です。
紙なら鍵付きのキャビネット、データならフォルダなど、適切な保管場所を選択します。
必要なときすぐに情報を確認できるように、わかりやすく整理することがポイントです。
また、電子取引のデータを保存する場合、以下のような電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
真実性の確保 (①~④いずれかの措置を行う) |
①タイムスタンプを付されたあとに当該取引情報を授受 ②当該取引情報を授受後に遅滞なくタイムスタンプを付す ③訂正・削除の確認もしくは訂正・削除ができないシステムによる取引情報の授受および保存 ④訂正や削除を防止するための事務的規定を定めたうえでの運用 |
可視性の確保 | ①電子契約の内容を画面・書面で明瞭に出力できるようにする ②電子計算機処理システムのマニュアルを備え付ける ③取引月日・取引金額・取引先で検索できる ④日付や金額を範囲指定して検索できる ⑤任意の記録項目を2つ以上組み合わせた条件で検索できる |
電子帳簿保存法に対応した契約書管理システムを選択すれば、上記の要件は満たせます。
契約書の管理には「エクセル」「契約書管理システム」「文書管理システム」がよく用いられます。
それぞれのメリットとデメリットをチェックして、自社に適した方法を選択しましょう。
エクセルのスプレッドシートで契約書管理台帳を作成して、管理する方法です。
メリット |
|
デメリット |
|
コストをかけず契約書管理台帳を作成できますが、入力や管理には課題があります。
管理する契約書の件数が多いと作業が複雑になっていくので、大企業にはあまり適しません。
契約書管理システムのメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット |
|
デメリット |
|
契約書管理に特化しているので、より適切に契約書を管理できます。
システムによって搭載している機能が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
文書管理システムとは、文書の作成・保管・活用・破棄までを一元管理できるシステムです。
これを契約書の管理にも活用できます。
メリット |
|
デメリット |
|
契約書や社内規定、営業報告書など、さまざまな文書を一元管理できます。
ただし、契約書管理システムと違って契約書管理に特化しているわけではないため、機能面で不足を感じる可能性もあります。
契約書を適切に管理できる契約書管理システムですが、選び方を間違えると十分な効果が得られません。
契約書管理システムに関する基礎知識と、失敗しないためのポイントをチェックしておきましょう。
契約書管理システムとは、契約書を電子化して一元管理できるシステムのことです。
作成・承認・保管・更新など一連の業務をシステム上で行えます。
適切な契約書管理をサポートするさまざまな機能が備わっており、より効率的な契約管理を実現できます。
契約書管理システムの失敗しない選び方を紹介します。
まずは、自社に必要な機能をピックアップすることが大切です。
作成や締結、管理など、対応する業務範囲は契約書管理システムによって異なります。
現状の課題やシステム上で行いたい業務範囲を明確にしたうえで、必要な機能を絞り込んでください。
拡張性が高い契約書管理システムなら、長期的な運用やビジネスの成長にも柔軟に対応できます。
契約書管理システムを選択する際には、長く使い続けられる設計になっているかを確認してください。
操作性が高い契約書管理システムであれば、IT知識の乏しい社員でもスムーズに使いこなせます。
画面表示やレイアウトが見やすいか、直感的な操作で使用できるかなどのポイントをチェックしましょう。
無料トライアルを活用して、実際に操作してみるのがおすすめです。
機密情報が含まれる契約書の管理では、セキュリティ対策が非常に重要です。
情報漏洩や改ざんのリスクを防ぐために、以下のような機能を搭載しているかチェックしましょう。
セキュリティが強固で、安全性が高い契約書管理システムを選択してください。
代表的な契約書管理システムの特徴と料金をまとめました。
契約書管理システム選びで迷ったときは、ぜひ参考にしてください。
画像出典元:「LegalForceキャビネ」公式HP
LegalForceキャビネでは、AIが契約書情報を抽出して自動で管理台帳を作成します。
原契約書と変更覚書は紐づけて管理できるため、契約内容を正しく把握できるでしょう。
ほかにも全文検索や⾃動リマインドなど、契約書管理に必要な機能が揃っています。
詳細についてはお問い合わせが必要です。
画像出典元:「OPTiM Contract」公式HP
契約開始日や解約通知期限、更新期間などの項目を、AIが自動で管理台帳に記入します。
OCRによるスキャンに対応しているため、紙の契約書を取り込んでシステム上で管理することが可能です。
連携機能を利用すれば、他サービスで締結した契約書ファイルも含めて一元管理できます。
スターター | ビジネス | コーポレート | エンタープライズ | |
初期費用 | 無料 | 要問合せ | ||
月額費用 | 9,980円 | 49,800円 | 69,800円 |
(税抜)
画像出典元:「freeeサイン」公式HP
契約書の作成から締結、管理までをシステム上で行える契約書管理システムです。
AIレビューによって契約書上のリスクを検知して、修正案の作成をサポートします。
取引先や年度ごとなど柔軟に契約書を保管できるフォルダ管理機能や、紙やPDFの文書まで一元管理できる文書保管機能も便利です。
Starter | Standard | Advance/Enterprise | |
月額費用 | 7,180円 | 35,760円 | 要問合せ |
年一括払い | 5,980円 / 月 (71,760円 / 年) |
29,800円 / 月 (357,600円 / 年) |
(税抜)
契約書を適切に管理しないと、情報漏洩や業務効率低下などさまざまなリスクが発生します。
正しく契約書管理ができているか、あらためて確認することが重要です。
契約書管理のルールを見直す、契約書の管理・運用体制を整えるなど、正しく管理する方法をぜひ参考にしてください。
契約書管理システムの選び方や代表的なシステムも紹介したので、導入を検討している方はチェックしておきましょう。
画像出典元:O-DAN