契約書は、法令遵守やリスク管理に不可欠です。
近年ますます複雑化するビジネス環境の中で、膨大な量の契約書を適切に管理することは容易ではありません。
そこで重要なのが、「契約書管理」です。
この記事では、契約書管理に課題を抱えている企業にむけて、契約書管理の具体的な方法、電子化によるメリット、システム導入のポイントまで、詳しく解説します。
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このページの目次
契約書管理は、契約書の情報を一元的に管理し、検索、閲覧、期限管理、廃棄などの業務を効率的に行うことを指します。
契約書を適切に管理できれば、情報漏えいや契約違反などのリスクを減らし、取引の円滑化、業務の効率化につながります。
契約書はどの企業でも重要書類として保存しています。
契約期間中はもちろん、契約が終了した後も一定期間捨てずに保管しなければならないのはなぜでしょうか?
その理由は、主に以下の3つです。
法人税法、会社法、電子帳簿保存法等の法令により、契約書は一定の法定保存期間、保管しなければならないと定められています。
名称 | 保存期間 | 条文 |
法人税法 | 7年 | 法人税法施行規則第59条第1項第3号「契約書」 |
電子帳簿保存法 | 7年 | 電子帳簿保存法第4条3項後段、同法施行規則第2条第12項、 電子陵墓保存法第7条、同法施行規則第4条第1項柱書 |
会社法 | 10年 | 会社法第432条第2項「事業に関する重要な資料」 |
労働基準法 | 5年 | 労働基準法第109条、同法施行規則第56条「雇入又は退職に関する書類」、「賃金その他労働関係に関する重要な書類」 |
ビジネス取引は頻繁で、その内容も複雑であるため、すべての関係者が同じ理解を持つことは困難です。
このため、契約書は、取引が合意した内容に基づいて行われるためのガイドラインとしての役割を果たしています。
万一、取引相手方との紛争が生じた場合、契約書は交渉、和解、裁判などの場で非常に重要な証拠となります。
法令により保管期間が異なるものの、社内規程で「契約書は15年間保管しなければならない」などと一律に長期間の保存義務を定めている企業は、このような証拠保全の観点も重視していると言えるでしょう。
不十分な契約書管理で起こる4つのリスクを、取るべき対策とともに解説します。
契約書には、企業の機密情報や顧客情報などが記載されている場合があります。
契約書管理のセキュリティ対策が不十分な状態だと、情報が漏えいするリスクがあります。
情報漏えいは、損害賠償責任を負うだけでなく、顧客からの信頼を失い、企業に大きな打撃を与える可能性があります。
情報漏えいのリスクを回避するには、契約書情報に閲覧権限を設定し、情報漏えいのリスクを低減する必要があります。
契約書が適切に管理されていないと、必要な契約書を見つけるのに時間がかかったり、契約内容を把握できず、業務効率が大きく低下する可能性があります。
また、契約書の期限管理が徹底されていないと、契約切れに気づかなかったり、更新手続きが遅れてしまうなどの問題も発生する可能性があります。
業務効率の低下を回避するには、契約書情報をデータベース化し、検索・閲覧を容易にする必要があります。
契約書の内容を遵守できない場合や、契約書に関する問い合わせに迅速に対応できない場合は、契約機会を逃してしまうだけでなく、誠実さや信頼性が疑われ、取引関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
定期的に契約書内容をレビューし、必要に応じて更新することで、常に最新の情報を確認しましょう。
また、従業員に対して、契約書管理に関する研修を実施し、契約書に関する理解を深め、リスクを意識した行動を促す必要があります。
法令で保管義務のある契約書を法定期間保管しなければ、法令違反となります。
また、契約書を適切に管理していないと、厳守すべき契約内容に必要な配慮ができず、知らないうちに契約違反をしてしまうおそれがあります。
その場合、故意ではなかったとしても、損害賠償責任を負うリスクが発生します。
さらに、契約書に関する紛争が発生したときに、証拠となる契約書が保存されていないと、不利な状況に立たされる可能性があります。
契約書管理に関する専門知識やノウハウを持つ外部専門家を活用すれば、より効果的な契約書管理ができます。
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契約書管理のおもな目的は、以下の2つです。
契約書管理は、法的義務を果たすだけでなく、必要な人が必要なタイミングで契約書情報にアクセスできる環境を構築することが重要です。
では、具体的に契約書をどのように管理すればよいのでしょうか。
5つのポイントを紹介します。
バラバラに管理された契約書を、業務のたびに探すのは非効率です。
契約書管理の基本は、すべての契約書を一元管理することです。
契約書を一元管理すれば、以下のようなメリットが得られます。
契約書には、有効期限が定められているため、期限を管理しないと、更新対応の漏れや自動更新の放置などの問題が発生する可能性があります。
また、契約書には法令で定められた保存期限があります。
必要な契約書の記録を残し、不要な契約書は削除して、管理コストを削減する必要があります。
以下のような方法で、期限を管理しましょう。
契約書は、必要な書類が必要なときにすぐ検索・閲覧できるようにすることが重要です。
そうすることで、個々の契約に関する情報を一覧で把握できるほか、自社が締結している契約の分析などにも役に立ちます。
管理すべき項目は、事業内容や契約の種類によって異なりますが、一般的には以下のような項目で分類します。
時には、自社の通常のオペレーションとは異なる運用で契約を締結することもあるでしょう。
自社の基準から外れる特別な内容の契約は、個別に把握・管理します。
これを契約の「内容管理」といい、具体的には以下の事項を把握・管理します。
契約管理担当部門と取引を行う部門の間で、情報を共有し、契約違反の有無について、定期的な監査を行いましょう。
契約に関する情報は、企業にとっての大切な財産であり、他社に知られてはならない秘密情報です。
契約書の情報漏えいを防ぐためには、契約書へのアクセス権限を適切に管理する必要があります。
具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
契約書管理は、以下の手順で進めましょう。
まず、情報管理の観点から、契約書管理を誰が担当するのか、部門と責任者を明確にしましょう。
担当部門としては、法務部、総務部などが考えられます。
責任者は、各部門の代表者や、契約書に関する知識や経験がある担当者を選び、契約書管理の重要性や自社が目指すゴールを共有することが大切です。
次に、契約書の管理台帳を作成します。
管理台帳には、以下のような項目を記載する必要があります。
契約書の種類やニーズに合わせてカスタマイズし、項目に不足がないように作成しましょう。
既存の契約書をすべて棚卸して、台帳に入力します。
契約書の量が多いと時間がかかるので、契約書の量に応じて、優先的に入力する項目をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
また、契約書の仕分けや廃棄を定期的に行って、管理の手間をできる限り減らしたり、管理コストがかかりすぎないようにする必要があります。
契約書の「発生→伝達→保管→保存→廃棄」といったライフサイクルに沿ったルールを作成しましょう。
ルールには、以下のような内容を盛り込む必要があります。
契約書には、法令による義務づけがあるため、丁寧な管理・運用を心がけましょう。
SaaS(Software as a Service、クラウドサーバを運営する事業者のソフトウェアを、インターネット経由で利用するサービス)を使用して契約書管理を行う方法があります。
契約書管理のSaaSの利点は、契約書管理に特化した様々なサービスを利用できることです。
契約更新日の自動通知や契約書検索などの機能を、クラウド上で利用することができます。
また、電子契約に対応していれば、オンラインで契約締結も可能となります。
しかし、契約書以外の書類や文書の管理が難しくなる可能性があります。
さらに、他の機能を追加したい場合でも、事業者が対応できないかもしれませんし、機能追加自体が不可能な場合もあります。
契約書以外の書類の処理が多い企業の場合、契約書専用のサービスを導入することが本当に効率的なのか、しっかりと検討する必要があります。
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エクセル台帳による契約書管理は、他のソフトウェアが不要で、どの企業でも簡単に導入できるという利点があります。
低コストで開始でき、エクセル機能の範囲内であれば管理項目や関数を自由に設計できます。
契約書の数が少ない場合やエクセルのスキルがある場合には特におすすめです。
しかし、エクセル台帳での管理は、デザイン性や操作性などのUIの部分で問題が残ります。
エクセルに関する知識やスキルがないと、項目の検索性や視認性が低下する可能性があります。
さらに、大量の契約書管理が容量の問題で困難になることや、エクセルを開かなければ更新通知に気づけないという点もデメリットとなります。
システムには、契約書を含むさまざまな書類に対応可能な汎用的な文書管理システムも存在します。
この汎用的な文書管理システムの利点は、契約書以外の書類や文書も対応可能であるということです。
請求書や受領書などの証憑書類から、社内規定、稟議書などの契約関連文書まで一元的に管理できます。
別のシステムを導入する必要がありません。
しかし、契約書以外の書類まで管理すると、システムの納品や運用開始が遅延する、管理項目が多すぎて混乱を招くなどのデメリットも存在します。
これらのデメリットを軽減するためには、導入前に文書管理システムの事業者や従業員と連携し、自社の課題を解決できるシステムに仕上げることが必要です。
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契約書管理システムを導入すれば、以下のようなメリットが得られます。
契約書管理システムは、契約書の一元管理、検索、閲覧、期限管理などの機能を備えています。
これらの機能を活用することで、契約書に関する業務を効率化できます。
具体的な効果は、以下のとおりです。
契約管理に関する自社の課題を分析したうえで、ニーズに合った契約管理システムを導入しましょう。
契約書管理システムを導入すると、以下のようなコスト削減を実現できます。
これらのコスト削減効果により、企業の収益改善につながるでしょう。
一般的に、契約書管理システムは、アクセス権限の管理や情報漏えい対策などの機能を備えています。
自社で対策するよりも、契約管理システムの機能を活用すれば、より効果的に情報セキュリティを強化できるでしょう。
具体的には、以下のような対策が可能です。
少しでも契約管理システムに興味がある方は、無料の資料で比較検討してみてください。
契約書管理システムは、それぞれ機能や性能が異なるため、自社に合ったシステムを選ぶことが重要です。
システム選びのポイントを6つに整理し、それぞれの具体的な比較方法を紹介します。
まず、自社がどのような機能を必要としているのかを明確にする必要があります。
自社が欲しい機能が備わっているかどうか、業務を効率よく進めるために必要な機能があるか確認しましょう。
さらに、以下のような機能も合わせて検討することをおすすめします。
電子契約管理システムの導入費用、ランニングコスト、保守費用など、トータルコストを比較しましょう。
また、契約書管理システムの導入によって削減できるコストや、費用対効果を加味したうえで自社に合うシステムを選ぶ必要があります。
契約書管理システムは、従業員が日常的に使用するため、使いやすい操作性を備えたシステムを選びましょう。
具体的な確認ポイントは、以下のとおりです。
デモ版を試してみたり、ユーザーレビューを確認してみるとよいでしょう。
契約書の機密情報を保護するため、契約書管理システムには、高いセキュリティ機能が求められます。
具体的には、以下のポイントを確認してください。
契約書管理システムの導入後も安心して利用できるように、サポート体制が整っているシステムを選びましょう。
具体的な確認ポイントは、以下のとおりです。
契約書管理システムは、ほかの社内システムと連携すると、さらに業務効率の向上が期待できます。
たとえば、電子契約システムと連携して契約プロセスをデジタル化すれば、契約締結にかかる時間と労力を削減することも可能です。
契約書管理システムに豊富なAPIがそろっているか、簡単に連携できるか確認しましょう。
契約書の管理について、解説してきました。
契約書の管理は会社の信用に関わる重要な業務です。
正しい契約書の管理方法を理解し、トラブルなく長期間保管できるようにしましょう。
画像出典元:Pixabay、Unsplash