「負ののれん」とは?発生する理由と会計上の処理を解説

「負ののれん」とは?発生する理由と会計上の処理を解説

記事更新日: 2023/08/27

執筆: 宮嵜涼志

M&Aで生じる「のれん」について知っている方は多いと思いますが「負ののれん」について知っている方は少ないのではないでしょうか?

「負ののれん」とは何か、そして「負ののれん」が発生する理由と会計上の処理について解説していきます。

また最近話題になった、RIZAPの事例も紹介します。

「負ののれん」とは

「負ののれん」とはその名の通り、のれんがマイナスになったものです。しかしこれでは分かりづらいので、これからもう少し丁寧に説明します。

なお、のれんを初めて聞いたという方はこちらの記事をまず読むことをおすすめします。


通常ののれんは、「被買収企業の公正純資産額と買収価格の差額」です。

ほとんどのM&Aでは、対象企業が持つ人材やノウハウ・既存事業とのシナジー効果などに期待して、対象企業の純資産にプレミアムを乗せて買収します。このプレミアム分が「のれん」であるわけです。「負ののれん」と区別するためにあえて言うならば、これは「正ののれん」です。

しかし一部のM&Aでは、対象企業の公正純資産額より買収価格が低い場合があります。このときの差額が「負ののれん」となります。



「負ののれん」が発生する理由

「負ののれん」がつくことは稀ですが、一体なぜこのようなことが生じるのでしょうか?

一概には言えませんが、基本的には対象企業に何らかのマイナス要素がある場合に発生します。

例えば、損害賠償請求が今後行われるリスクがある場合、あるいは非常に大きな簿外債務が存在している場合などが考えられます。

 

「負ののれん」の会計処理

通常ののれん(正ののれん)は無形固定資産に計上され、日本会計基準の場合だと、その後20年以内の一定期間で償却されます。

しかし「負ののれん」の処理は異なります。「負ののれん」は生じた事業年度の利益として計上されます。

原則として、特別利益として計上されることになっています。

「負ののれん」の事例

三十三FG、初年度の純利益592億円 負ののれん発生

三重銀行と第三銀行が経営統合して4月に発足した三十三フィナンシャルグループは15日、統合後初年度となる2019年3月期の連結純利益が592億円になる見通しだと発表した。経営統合に伴う負ののれん発生益520億円を計上、利益を大幅に押し上げる。18年3月期の両行単純合算の連結純利益は80億円だった。

出典元:2018/5/15 日本経済新聞 電子版

日本空港ビルデング、特別利益膨らむ

【特別利益膨らむ】訪日外国人の増加が続くほか、企業の出張も高水準で推移。羽田空港などで旅客数が増える見通し。国際線の免税店売り上げなどが増えて増収。持ち分法適用会社だった東京国際空港ターミナルを連結子会社化。償還益や負ののれん計上益など特別利益が膨らみ、純利益は大幅増。2円減の年42円配。

出典元:2018/5/22 日本経済新聞 電子版

 

RIZAP(ライザップ)の事例

2018年11月、RIZAP社の2019年第2四半期の決算発表が行われ、その内容が大きな話題になりました。

2019年第2四半期累積業績の88億円の営業利益赤字を発表し、それを踏まえ2019年3月期の業績予想を大幅に下方修正するというもの。

当初予想から実に263億円もの下方修正です。

「RIZAPグループ」決算説明資料

負ののれんによる利益が3分の1を占めていた

なぜこのようなことが起きたのか。その原因がM&A戦略の失敗です。

RIZAPは株価が純資産よりも低い企業を買収し再建することで、業績を伸ばしてきました。

その結果、多額の負ののれん代が利益に計上され、業績がかさ上げされていました。実際、2018年3月期の営業利益150億のうち、負ののれん代による利益は50億円と33%近くに上ります

買収した企業の再建失敗が業績低下の主要因

RIZAPのM&A戦略は、割安企業の再建に成功する前提の上で成り立っています。

しかし、その前提があやしくなってきたというのが今回の決算発表です。

2019年第2四半期で営業利益が減益となった理由は、グループ入り1年未満の子会社の赤字幅の増加にあります。

以下が、損失を計上した企業です。

  • ジャパンゲートウェイ:△20.3億円
  • タツミプランニング:△5.0億円
  • サンケイリビング:△5.2億円
  • ワンダーコーポレーション :△32.3億円
  • ぱど:△5.9億円
  • MRKホールディングス:△5.8億円

このように割安だからという理由で買い漁った企業の再建が順調ではない現状が、RIZAPの業績低下の要因なのです。

なおRIZAPは今後の方針として、85社に上るグループ企業のうち、収益改善が難しい事業・グループシナジーが見込めない企業を積極的に売却し、新規M&Aを原則行わないことを発表しています。

RIZAPのこれまでの決算発表については以下の記事でより詳細に解説しています。興味がある方はこちらの記事を参考にしてください。

 

負ののれんの利益計上には注意が必要

今回のRIZAPの事例から分かるのは、負ののれんの利益計上には注意が必要ということです。

資産ベースでは利益計上して間違いないのですが、負ののれんは実際に事業で得た利益ではありません。

当然ですが、負ののれんがつく企業は純資産以下で買い叩かれているわけで、現状の業績が芳しくない企業です。

買収後に業績が低迷し、手に入れた負ののれんより、大きな代償を払うことになる可能性を把握しておくことが必要です。

まとめ

結局のところ、「負ののれん」はマイナスののれんということです。

ただし会計処理の違いには注意が必要です。


なお、今回の説明にM&Aという言葉が登場しましたが、実際のM&Aの流れを知っている人は少ないはずです。以下の記事でM&Aの流れについて解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。

 

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画像出典元:Pexels

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