デューデリジェンス(DD)を受ける側のよくある誤解とやるべきこと

デューデリジェンス(DD)を受ける側のよくある誤解とやるべきこと

記事更新日: 2018/10/08

執筆: 宮嵜涼志

主にM&Aなど、会社への投資をする前に行われるデューデリジェンス(DD)。投資側は慣れていても、受ける側は初めてであることがほとんど。

M&Aの流れの中でも、最終契約直前のフェーズであることもあり、ひとつの誤解が大きな失敗につながってしまう恐れがあります。

この記事では、デューデリジェンスを受ける側がきちんと対応するための基礎知識・注意点をまとめました。

デューデリジェンスとは?

デューデリジェンスの意味

デューデリジェンスとは、M&Aなど会社への投資を行うにあたって、投資対象となる会社のリスクや価値などを調査することです。DDやデューデリと略されることもあります。

様々な観点から多角的に評価するために、デューデリジェンスと一口にいってもいくつかの種類があります。

詳しくは後ほど解説しますが、財務情報などからリスクを把握する財務デューデリジェンス、締結している契約や取引内容から法的リスクをチェックする法務デューデリジェンスなどが代表的です。

投資側(買い手)の実施の目的

デューデリジェンスは適切な投資を行うために必要なものです。投資対象となる企業のことをきちんと知らずに投資をすることは、ギャンブルのようなものです。価値とリスクを正しく把握した上で投資判断を下すためにデューデリジェンスは必須なのです。

そのため、デューデリジェンスを受け入れることは投資を受ける側(売り手)の責務ともいえます。

投資側(買い手)の具体的な目的としては、主に以下のようなものがあります。

  • 既に提出された情報に間違いがないか
  • 未開示・未認識のリスクはないか
  • バリエーション決定のための詳細情報入手

特にリスクの把握が最大の目的であることは覚えておきましょう。

M&Aの場合、デューデリジェンス実施前から、買収企業の企業価値と今後の業績予想の勘定というのを買い手側はしています。最終決定に至る前に、その勘定に間違いがないか、誤算が生じそうなリスクはないかをチェックするのがデューデリジェンスなのです。

デューデリジェンスの種類

先ほども紹介したように、デューデリジェンスにはいくつかの種類があります。

その中でも主要な6つのデューデリジェンスについて、ひとつずつ紹介していきます。

1. 財務デューデリジェンス

ファイナンシャルデューデリジェンスとも呼ばれます。単にデューデリジェンスと言った場合には、この財務デューデリジェンスのことを指していると考えてよいです。

財務デューデリジェンスは、財務情報から企業価値を正しく評価するために行います。具体的には以下にあげることが主にチェックされます。

  • どのような負債があるか(簿外債務があるか)
  • 予想計画は妥当か
  • 経理処理に不正はないか
  • 資金繰りに問題はないか

簿外債務については未払い残業代などが該当し、未払い残業代の分、買収金額が減らされるケースが多いです。

 

2. 法務デューデリジェンス

リーガルデューデリジェンスとも呼ばれます。法律の面からリスクがないかを評価します。主なチェック内容は以下の通りです。

  • 雇用契約の内容に基づいて適切に給与支払いが行われているか
  • 所有権や技術特許などが訴訟対象となっていないか
  • 許認可、登記関係は適切か

例えば訴訟が起きてしまうと、多くの時間とコストが必要となり、当然その分業績は悪化します。それは投資側に大きなリスクであるため、可能な限り把握しておく必要があります。

またリスクの被害の規模を推定するのも法務デューデリジェンスの重要な点です。

例えば、マネックスグループがコインチェックを買収した際にはNEMの不正流出をめぐった訴訟が既に発生していました。賠償金額がどのくらいの規模になりそうかなど、どのくらいの負の事象が生じそうかいう勘定はマネックス側でもかなり時間を割いて行ったことでしょう。

3. ビジネスデューデリジェンス

事業デューデリジェンスとも呼ばれます。会社が行っている事業の評価を行うのが、このビジネスデューデリジェンスです。

継続的に利益を生み出せるビジネスモデルか、競合に対して優位なポジションを築けているかなどを分析します。

具体的には、PEST分析や5フォース分析といったフレームワークを用いて評価が行われます。

4. 人事デューデリジェンス

M&Aが失敗する大きな理由として、人の問題があげられます。M&A後に有能な人材が流出したことが原因で失敗したM&Aは数知れません。人材は、それだけ会社にとって重要なファクターなのです。

人事デューデリジェンスは、このような人事に関するリスクを評価するために行われます。

具体的には、重要な人材がやめてしまう確率はどのくらいか、採用を継続して行えているかなどを確認します。

5. ITデューデリジェンス

企業合併において重要なデューデリジェンスで、顧客管理システムや財務会計システムなどをどう統合するのかを調査します。

例えば、顧客情報の共有が目的の企業合併において、顧客管理システムの統合に大きなシステム改修が必要となれば、それは大きな懸念材料となります。

このようなリスクを事前に把握するために行われるのが、ITデューデリジェンスです。

6. 税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスの目的は、過去の税務リスクを調査することです。法人税の未払いはないか、将来的に莫大な税金が生じないかなどを確認します。

特に株式譲渡や株式交換といったスキームを利用したM&Aにおいては、買い手企業が税務リスクを引き継ぐことになるので、税務デューデリジェンスについては特に神経質になります。

加えてM&Aの場合、買収時・買収後にどれほどの税金を払うことになるかもチェックポイントになります。M&Aによって買い手企業が節税できる場合があるからです。

M&AでDDが実施されるタイミング

デューデリジェンス(DD)は買い手と売り手との間で基本合意契約を結んだ後に行われます。この時点で、買い手候補は一つに絞られた状態です。デューデリジェンスは費用がかかるため、ある程度M&A成立の可能性が高まった状態で行うのです。

入札形式で複数の買い手候補と交渉している場合は、買い手を一つに絞り込む前に、最低限の情報を売り手から買い手へ開示し、そこで簡易的なデューデリジェンスを一度行う場合もあります。

なお、M&A全体の流れや基本合意契約がよく分からない方は、以下の記事を参考にしてください。

 

デューデリジェンスで売却価格は上がらない

これはあとで紹介する注意点「買い手企業を欺こうとしない」という話にもつながるのですが、よくある誤解として、「デューデリジェンスの内容次第で売却価格が上がる」という勘違いがあります。

買い手にとってのデューデリジェンスの主目的は「リスクの把握」です。基本合意契約の段階で売却価格はほぼ決定しています。デューデリジェンスの内容を踏まえて、評価額が上がるということはほとんどないです。

デューデリジェンスにおいて、会社をできるだけ良く見せようと取り繕おうとする方がいますが、それはやめましょう。たとえ良く見せても、得するということはないからです。

リスクを隠しても、それはそのうちばれて後々のトラブルのもとになりますし、デューデリジェンスは専門的な内容が多いため、良くみえるように嘘をつくことは容易ではありません。嘘をついた結果、逆に評価を下げるという最悪の結果も起こりかねません。

実際のデューデリジェンスでやること

M&Aにおけるデューデリジェンスであることを前提に、売り手側がやることの流れを説明します。

実際の主な流れ

基本合意契約締結の後、売り手側には大量の要求が送られてきます。主に会社の経営状況や契約内容に関する質問表です。Excelの表をイメージしていただければ大丈夫です。

売り手の経営者はこれに回答して、返送します。するとまた回答内容を踏まえた質問が返ってくるので、またそれに答えます。このやりとりを5,6回は繰り返します

それが終わると、いよいよ専門家によるインタビューです。今までの調査を受けて、より踏み込んだ内容について、実際に会って質問されます。

M&Aでは財務デューデリジェンスと法務デューデリジェンスそれぞれのインタビューが必ず行われますが、このインタビューで各2~3時間はかかります。2つを同じ日に行ったすると丸一日かかるということです。

財務デューデリジェンスの質問内容の例

公認会計士や税理士によって行われる財務デューデリジェンスの場合、以下のような内容について質問をされます。もちろんこれは会社の事業内容によって異なってきます。

  • 借り入れはどういう経緯で行ったか
  • 債務の入金遅れなどは過去になかったか
  • 経費の算定をどのように行っているか。
  • 売上・利益の見込みはどのような根拠で計算したか

法務デューデリジェンスの質問内容の例

弁護士によって行われる法務デューデリジェンスの場合、主に契約まわりについて細かく質問をされます。

特にベンチャーの場合、雇用契約まわりは厳密にやっていない会社は多いはずです。そういった部分も詳しく聞かれます。

  • 取引契約はどういう経緯で結んだか
  • 取引契約は実際に機能しているか
  • 雇用契約か業務委託なのか、源泉徴収税を払っているか
  • 今までに雇用関係でもめた事例はあるか
  • 著作権の帰属先は契約上どこか

 

専門家選びで悩むことはない

適正なデューデリジェンスを行うには、専門的な知識と経験が必要です。専門家は積極的に活用すべきです。

ただし、M&Aにおいてデューデリジェンスを実施するのは買い手側の企業です。自社のことを正しく認識してもらうために、売り手側の企業も協力しますが、デューデリジェンスの費用を払ったり、専門家を探したりということはしません。

売り手側の企業がデューデリジェンスの実施において、専門家選びで頭を悩ませることはないです。

デューデリジェンスを受ける際の注意点

デューデリジェンスは、基本的に買い手側が進める流れに従うだけで大丈夫です。ただし、やっていけないことや注意すべき点がいくつかあります。

買い手企業を欺こうとしない

よく売り手側の経営者にある誤解が「デューデリジェンスは敵対的なものだ」というものです。

冒頭でも述べたように、デューデリジェンスは会社の価値とリスクを正しく判断してもらうためのものです。けっして、会社に難癖をつけて買収価格を下げようとするものではありません。

特にやってはいけないのは、買い手企業を欺こうとすること。不都合な事実を隠そうとする経営者がいますが、これは結果的にデメリットしかありません。

売却した企業はこれから買い手企業のものになるのです。不都合な事実を隠したところで、それは必ず明るみにでます。そうなったときの買い手の怒りは凄まじいものです。嘘の情報で偽物をつかまされたわけですから当然です。

M&Aの契約には、表明保証条項が通常盛り込まれています。これは開示した情報にあやまりがあった場合に、損害賠償を請求できるというものです。事実を隠してM&Aを成功させても、結局は損害賠償をすることになり、失敗に終わってしまうのです。

お金も会社も失う、なんてことにならないよう、デューデリジェンスには誠実に対応しましょう。

想像以上に経営者の工数がかかる

デューデリジェンスでは売り手側の経営者に負担がかかることを覚えておきましょう。会社の細かい経営状況や取引先との契約内容など、様々な質問項目に対して回答する必要があります。

100以上の質問項目にエクセルで回答を打ち込んでいくこともザラにあります。ある程度の覚悟はしておきましょう。

従業員にばれないための工夫が必要

デューデリジェンスをした段階では、M&Aが成功すると決まったわけではありません。この段階で従業員にM&Aに向けた動きが露呈するのは悲劇です。

自分たちは頑張っているのに、社長だけお金を得ようとしていると思われます。そうして一度失った社員の信頼はもう取り返せません。

このような悲劇を避けるためにも、デューデリジェンスは従業員にさとられないよう実施する必要があります。社外秘の情報の開示において、専門家が訪問が必要になる場合でも、訪問日を土日にするなどの工夫が必要になります。

まとめ

主にM&Aにおいて、買い手側の企業が中心になって実施するデューデリジェンス。売り手側は、指示された流れで協力すれば良いだけですが、数少ない注意点はしっかりと押さえておきましょう。

画像出典元:Burst

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