9月はだんだんと秋の訪れを感じ始める季節です。
そんな9月に手紙やハガキをしたためる場合は、秋の気配を感じる一言を入れ、文書に彩りを加えてはいかがでしょうか。
季節にふさわしい時候の挨拶を入れることで、読む人も心地よく読み進められることでしょう。
本記事では、ビジネスシーン・カジュアルシーンで使える9月の時候の挨拶を上・中・下旬ごとにまとめました。
時候の挨拶のマナーやPTA・ショップのDMに使える挨拶も紹介するので、併せてチェックしてくださいね。
このページの目次
9月は、旧暦では「長月」。語源は諸説ありますが、「夜長月」が転じて「長月」になったとする説が有力です。
秋分を過ぎると、昼よりも夜が長くなります。手紙やハガキでは秋らしい言葉を入れて、9月のニュアンスを伝えましょう。
9月の時候・季節の挨拶の例を上・中・下旬ごとにまとめて紹介します。
時候の挨拶とは、挨拶状の冒頭に記載する季節を表す言葉を用いた文章です。
古来四季の変化を敏感に感じ取ってきた、日本人らしい挨拶習慣といえるでしょう。
時候の挨拶を選ぶ際に、意識したいのが「二十四節気」です。
二十四節気とは、古代中国で農業の指標として使われた暦のようなもの。
四季がそれぞれ6つの節気に分類されており、「立春」「立秋」などの名称がついています。
9月に意識したい二十四節気は「白露(はくろ)」「秋分(しゅうぶん)」の2つ。
挨拶状を送るときは、送付日がどの節気に該当するかをチェックし、気候にあった挨拶を選んでみましょう。
なお、文章の書き方そのものに不安がある人は、以下で具体的な書き方を確認してみてくださいね。
漢語調とは、日常的には使わない固い文章スタイルです。
フォーマルで丁寧な印象が強く、礼節が重視されるビジネスレターにはぴったりといえるでしょう。
9月に使える漢語調の書き出しには以下のようなものがあります。
時期 | 使える時候の挨拶 | ワンポイント |
全般 | 秋晴の候 | 晴れやかな秋晴れを表わす。好天の続く時に使うとよい |
爽秋の候 | 秋の爽やかさを表わす。暑い時は避ける | |
上旬 | 初秋(しょしゅう)の候 | 秋の気配が感じられることを表わす。上旬まで |
孟秋(もうしゅう)の候 | 秋の初めを表わす | |
重陽(ちょうよう)の侯 | 「重陽」は菊の節(9/9)を表わす | |
中旬 | 秋晴(しゅうせい)の侯 | 清々しく晴れ渡る秋空のイメージ。秋雨の時期は避ける |
白露(はくろ)の候 | 草木に朝露がつき始めることを表わす。白露(9月8日頃)から、秋分(9月23日頃)の前まで | |
名月(めいげつ)の侯 | 秋の月の美しさを表わす。十五夜の前後に使える | |
清涼(せいりょう)の侯 | 涼しく心地よい秋の様子を表わす | |
下旬 | 秋分(しゅうぶん)の候 | 深まる秋を表わす。秋分から寒露(かんろ:10月8日頃)の前まで |
秋冷(しゅうれい)の候 | 秋の冷気を感じることをあらわす。肌寒さを感じる頃に使う | |
秋色(しゅうしょく)の侯 | 秋が深まってきた様子を表わす |
9月の時候の挨拶で意識したいのは、二十四節気の「白露(9月8日頃)」「秋分(9月23日頃)」です。
季語選びに迷ったときは、白露・秋分にそのまま「~の侯」を使えば失礼のない挨拶となります。
時期 | 使える時候の挨拶 |
上旬 | 二百十日(にひゃくとおか)を過ぎ、秋の気配も濃くなってまいりました |
菊の節句も過ぎ、秋の訪れをひしひしと感じる今日この頃… | |
中旬 | サンマのおいしい季節がやってきました |
厳しい暑さも和らぎ、ようやく秋を身近に感じられるようになりました | |
下旬 | 虫の声が響き渡る夜、秋の深まりをひしひしと感じております |
朝夕の空気に、秋らしい冷気を感じる今日この頃… |
パーソナルな挨拶状は、送る相手に合わせたカジュアルな文体で構いません。
親しい相手に堅苦しい時候の挨拶を送ると、かえって相手を不安にさせます。
親愛の心がこもった優しい文体で、9月の挨拶を伝えましょう。
カジュアルな時候の挨拶のポイントは、季節のイベント・節目を入れること。
「二百十日」は「立春(2月4日頃)から数えて210日目」という意味で、9月1日が該当します。
また「菊の節句」は、秋らしさ満載の年中行事。9月9日に開催されるので、9月の季語にぴったりです。
ビジネスシーンでの挨拶状は、「時候の挨拶」「相手の発展を喜ぶ言葉」をワンセットで使うのが一般的です。
取引先や仕事でつながる人に好印象を与えられる、9月にふさわしい書き出しを紹介します。
秋晴の候、貴社におかれましてはなお一層ご発展のこととお慶び申し上げます
爽秋の候、○○様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます
「秋晴」「爽秋」は、9月全般で使えます。爽やかな秋のイメージを伝えたいときにぴったりでしょう。
重陽の候、◎◎様におかれましてはますますご活躍のこととお慶び申し上げます
孟秋(もうしゅう)の候、貴社におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申し上げます
重陽とは、9月9日の菊の節句を示す言葉。一方孟秋の「孟」は「初め」を示し、「秋の初め」を意味します。
どちらも9月上旬の季語に最適といえるでしょう。
名月の候、貴店におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申し上げます
清涼の候、皆様におかれましてはますますご隆昌のこととお慶び申し上げます
空気の澄み渡る9月は、月が美しくはっきりと見える時期。満月が近づく頃に挨拶状を送るなら、月にちなんだ季語がおすすめです。
また秋の涼しさを感じられるようになれば、「涼」の言葉で秋らしさを示してもよいでしょう。
秋冷の候、△△様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
秋色の候、貴社におかれましてはいよいよご繁盛のこととお慶び申し上げます
「肌寒い」と感じるようになる9月下旬は「冷」の言葉がぴったり。
また木々の葉が色付き始めれば、「秋色」という鮮やかな言葉を入れるとセンスのよい挨拶文となります。
個人的に親しくしている人には、カジュアルな言葉で親しみを表わします。
9月の挨拶にマッチする、やわらかく使いやすい書き出しを紹介します。
朝夕の涼しさに、秋の訪れを感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか
○○のおいしい季節になりましたね。■■さんにはお変わりございませんか
9月は上旬と下旬では、ガラッと気候が変わります。
基本的に、9月初めも9月終わりも同じ挨拶…、というのはあまり好ましくありません。
季語選びに迷ったら、「気候」「食べ物」をヒントにするのがおすすめです。
初旬なら「まだ暑い」こと、下旬なら「肌寒さを感じる」ことなどを挨拶に混ぜてみてください。
また旬の食べ物は、挨拶文に彩りを加えるすてきな季語となります。
秋の味覚は、栗・サンマ・芋・ぶどう・柿などとさまざま。手紙やハガキを書くとき、店頭に並んでいる食べ物を思い浮かべてみましょう。
台風も過ぎ、晴れやかな空が戻ってまいりました。空を見るだけで気持ちが冴える今日この頃、皆様お変わりはございませんか
まだまだ夏のような暑さが続いております。皆様夏のお疲れは出ておられませんか
近年の台風は夏も秋も発生しますが、季語として使えるのは9月上旬まで。台風一過の後は、台風という言葉を文頭に入れましょう。
また9月上旬といえば、残暑も厳しい時期です。夏の疲れが出やすいため、体調を気遣う言葉を入れると気が利いています。
秋の気配が色濃く薫る好季節となってまいりました。○○さんはいかがお過ごしですか
新米のおいしい季節となりました。体重計が気になる今日この頃、皆様お変わりございませんか
9月中旬は、秋らしさが漂い始める頃。秋の気配を感じた瞬間などを挨拶文に入れてみてはいかがでしょうか。
また9月も中旬となれば、新米が並ぶ地域も多いのでは。食欲の秋をアピールすると、クスッと笑える楽しい挨拶文となります。
コスモスが風にゆれる姿に、秋の到来を感じております。皆様いかがお過ごしでしょうか
秋分を過ぎ、夏の気配も遠く過ぎ去ってしまいました。○○さんはお変わりございませんか
9月下旬は、秋らしさを肌で感じられる頃。秋の花の名前を文頭に出せば、季節感たっぷりな挨拶文が完成します。
また「秋分」は、秋らしさを出したい時に最適なキーワードです。9月23日頃を過ぎたら、挨拶文に入れてみてください。
結びの挨拶は、書き出しと同じくらい重要です。
注意点は、冒頭の挨拶文と同じ文言を使わないこと。
挨拶文を書いた後は、フレーズや表現がかぶっていないかどうか必ず確認してください。
ビジネスシーンにぴったりな、9月の結びの挨拶を紹介します。
残暑厳しき折、皆様のご健勝を心よりお祈りいたします
秋風吹きすさぶ折、○○様におかれましてはくれぐれもご自愛くださいませ
結びについても、気候や天候を考慮するのがベターです。
暑さが厳しいときは「残暑」、涼しくなってきたら「秋風」…と、臨機応変に使い分けてください。
新涼の折、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます
新秋の折、末筆ながら○○様の一層のご活躍を心よりお祈り申し上げます
9月上旬は「初秋」を感じさせる季語で結びましょう。
相手の発展・活躍を祈る言葉は決まり文句のようなものなので、そのまま使ってください。
実り多き秋、◎◎様の日頃よりのご尽力が結実されることを心よりお祈り申し上げます
秋雨の時期、社員の皆様におかれましてはくれぐれもご自愛ください
秋も深まる中旬なら、「実りの秋」で挨拶を結ぶのが好印象です。
また秋雨が降った後などは、急に冷え込むことがあるため、相手の健康を祈る言葉を入れると好感が持てます。
秋冷の折、貴社のますますのご繁栄を心よりお祈り申し上げます
寒暖差の激しい時節柄、体調には十分ご留意くださいませ
9月下旬は、秋を感じる瞬間も増えてきます。
「暑」はひとまず使わず、「涼」を感じさせる言葉を入れ、9月下旬ならではの「寒暖差」に触れるのもおすすめです。
親しい人に送る挨拶文も、基本的にはビジネスの挨拶文と同じです。
季節を感じさせる言葉と、相手の幸せや健康を祈る言葉を入れましょう。
近況報告や次の約束などをさらっと入れると、相手がもらってうれしい挨拶文となります。
夏の疲れが出やすい時期といわれます。くれぐれもお体を大切に
「実りの秋」といわれるとおり、○○さんにとっても実りの多い季節となりますように
日本の9月はまだまだ暑く、「夏の疲れ」は比較的長く使える言葉です。
また「実りの秋」は、相手の多幸を祈る印象のよい言葉。
結びの言葉として入れれば、相手もうれしい気分となるでしょう。
厳しい残暑が続いております。どうぞご無理をせず、お元気にお過ごしください
十五夜も近づいてまいりました。心穏やかに、秋のお月見を楽しんでくださいね
9月上旬なら、まだまだ暑さは引きません。相手をいたわる言葉は、上旬の結びとしてぴったりです。
また十五夜は、9月10日前後の満月のこと。
この時期の満月は1年で最も美しく、古来「中秋の名月」として愛されており、9月上旬の結びに入れると季節感が出ます。
シルバーウィークのご予定はもうお決まりでしょうか。ご家族で楽しい時間をお過ごしください
食欲の秋、お互い食べすぎには気を付けましょう
シルバーウィークは、秋分前後の連休を指します。
年によっては大型連休になることもあり、9月を楽しみにしている人も少なくありません。
結びで一言触れれば、9月中旬にふさわしい言葉となります。
また秋が深まると、食べ物もおいしく感じるものです。「食べすぎ注意」で文を締めくくるのもよいでしょう。
◎◎公園のコスモスも、見頃をむかえております。ぜひ近いうちにご一緒いたしましょう
寒さ暑さも彼岸までといわれます。もう少し涼しくなったら、一緒にハイキングに出掛けましょう
地域にもよりますが、9月下旬ならコスモスも見頃です。
また、「彼岸」は秋分の前後3日間を指し、どちらも9月下旬にふさわしい結びの言葉として使えます。
時候の挨拶は、基本的な文章のマナーに従いましょう。
マナー違反の文章では、どんなにすてきな時候の挨拶を使ってもマイナスなイメージが残ります。
9月の時候の挨拶で、気を付けたいマナーを見ていきましょう。
「前略」は「前置きを省略させていただきます」という意味です。丁寧な文章で使うのはマナー違反とされており、時候の挨拶では使いません。
時候の挨拶では「拝啓」「啓上」「拝呈」などの「頭語」を記し、次に時候の挨拶を始めるのが基本です。
頭語を使ったら「敬具」「敬白」「拝具」といった「結語」を入れ、文章の体裁を整えましょう。
9月は気候の変化が顕著な時期。
例文を適当に参照すると、文章と現実がアンマッチになる恐れがあります。
例えば、肌寒い日が続いているのに「残暑厳しき折…」といった決まり文句を丸写しすると、相手に違和感を与えてしまいます。
雨が続いているのに「爽やかな秋晴れが…」などと記すのも、不自然でしょう。
季語を入れる場合は、手紙やハガキを書いている時点の天候・温度に合う言葉を選んでください。
PTA役員の人は、学校で配布するお知らせで時候の挨拶が必要となることがあります。
また個々の顧客にDMを送っている担当者も、季節にマッチした挨拶文を記載しなければなりません。
ここからはPTAのお知らせやDMで活用できる時候・季節の挨拶を紹介します。
拝啓
朝夕の空気に秋の訪れが感じられる季節となりました。保護者の皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
日頃はPTA活動にご理解、ご協力を賜り厚くお礼申し上げます。
さて……
(お知らせ本文)
お忙しいとは存じますが、保護者の皆様のご協力を賜りますようどうぞよろしくお願いいたします。
敬具
PTAの「お知らせ」「お願い」等のカジュアルな文書では、親しみやすく分かりやすい時候の挨拶を入れましょう。
ただし学校によってはビジネス文書と同様に「初秋の侯」「秋分の侯」などの漢語調を使うケースもあります。
またPTA文書では、結びの言葉も注意したいポイント。
一般的な季語を含んだ結びではなく「保護者の皆様のご協力を賜りますようどうぞよろしくお願いいたします。」等の文言を入れるケースが多いようです。
前任者の文書等をチェックして、文書のスタイルを合わせましょう。
拝啓
いよいよ「スポーツの秋」「食欲の秋」到来です。
○○様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は◎◎(自社)への格別のご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、~(本文)
秋も深まり、寒暖の差がより一層激しくなってまいります。どうぞお体にお気を付けください。
敬具
書き出しのバリエーションとしては、以下もおすすめです。
個人宛てのDMは、販促活動における「コミュニケーションツール」です。顧客との距離が縮まるよう、柔らかく親しみやすい言葉を選びましょう。
最後に相手の体調をいたわる文書を入れておくと、暖かみのあるDMとなります。
日本の9月はまだまだ暑さが厳しい時期ですが、暦の上では「秋」です。手紙やハガキには秋らしい言葉を入れ、季節にふさわしい文章に仕上げましょう。
また、「ビジネスレター」と「親しい人に送る手紙やハガキ」とでは、文書スタイルを変えるのがマナーです。
仕事上で付き合う人には固く丁寧な文体で失礼のないように注意してください。
一方親しい友人・家族等への挨拶はカジュアルでやわらかい文体がおすすめです。
9月らしい時刻の挨拶で、お世話になった人や大切な人とのつながりを深めましょう。
画像出典元:Unsplash、Pixabay
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