この記事は、2020年(令和2年)の年末調整で提出する書類を説明しています。
年末調整書類の提出先と提出期限を解説していきます。
年末調整の書類準備・回収・集計・提出は、従業員も会社側も大きな負担となる業務です。
年末調整の書類作成・提出・管理に活用できるシステムも紹介します。
このページの目次
正社員・バイト・パート・派遣など雇用形態問わず、従業員本人が記入して会社に提出する書類です。
従業員が扶養家族について報告し「配偶者控除」「扶養控除」など家族の状況に合わせた控除を申請できます。
年末調整を行わない人も「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は提出が必要です。
2020年(令和2年)より扶養控除等の申告の欄に「ひとり親」が追加、「特別の寡婦、寡夫」が削除され記入様式の変更箇所があります。
給与所得者の基礎控除申告書 兼給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書
(出典:国税庁HP)
2019年(平成30年)までは、配偶者控除と配偶者特別控除を申告する「給与所得者の配偶者控除等申告書」という書類でした。
2020年(令和2年)からは「基礎控除」「配偶者控除(配偶者特別控除)」「所得金額調整控除」の3つの申告を1つの書類で行うようになった新設書類です。
給与から天引きされている「社会保険料」と従業員個人が加入し支払っている「一般の保険料」を申告し、控除を申請する書類です。
保険料控除申告書は保険会社等から届いた証明書原本の添付が必須です。
社会保険料の証明書類は年金機構から送られてくる「控除証明書」です。
住宅ローン控除を申請する従業員が提出する書類です。
住宅ローンの支払い2年目から申請できます。
従業員が住宅借入金等特別控除申告書を提出するには下記2点の証明書の添付が必須です。
従業員から回収した1~4の申告書は税務署などへ提出は不要ですが、税務調査などに備えて会社で7年間保管が必要です。
従業員へ配布・記入・回収する1~4の控除申告書は、税務署から配布された原本、原本のコピー、国税庁ホームページからプリントアウトしたもの、どれでも利用できます。
5~8は、会社が従業員から回収した書類を元に集計して作成する報告書類です。
源泉徴収票は、支払調書の一つで、会社が従業員に支払った1年間の給与・賞与、源泉徴収額を詳細を集計した書類です。
従業員にとっては重要な会社からの納税証明書です。
年末調整では、会社は源泉徴収票を4枚作成します。
1枚:従業員へ交付
1枚:税務署へ提出
2枚:「9、給与支払報告書」として市区町村へ提出
名前が似ているため混同されますが、まったく違う書類です。
源泉徴収簿とは「源泉徴収票を作成するための帳簿」でいわゆる集計表です。国税庁から配布されるフォーマットがありますが、源泉徴収簿は法令で定められた帳簿ではないためエクセルやスプレッドシートなど管理しやすい方法でOKです。社内のみで使われ従業員や税務署などの外部へ提出は不要です。
支払調書は、支払調書は法定調書の一部で、基本はフリーランスや個人事業主への報酬・支払いの詳細を記載して税務署に提出する書類です。
支払調書を提出する目的は、支払った側と支払を受けた側が適切に申告しているかなど金銭の動きを税務署が照合するためです。
支払調書の提出が義務となる範囲と金額には条件があるので確認が必要です。
60種類近くある支払調書ですが、主に会社が提出するのは下記の4種類です。
6種類の法定調書を集計し報告する書類です。
1. 給与所得の源泉徴収票(現在働いている従業員の分)
2. 退職所得の源泉徴収票(既に退職した従業員の分)
3. 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
4. 不動産の使用料等の支払調書
5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書
6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
所得税徴収高計算書は、従業員の給与・賞与から源泉所得税を徴収した場合、徴収した所得税を申告・納付するときに提出する書類です。
所得税徴収高計算書は、年末調整の時だけの書類ではなく、毎月もしくは半年に1回提出書類です。
所得税徴収高計算書は源泉徴収額が0円でも提出義務があり、その場合はすべての金額を0円と記入して税務署に提出します。
「5、源泉徴収票」と同じ書類ですが、提出先が変わるため名称が変わります。
市区町村が住民の給与と労働を把握し、住民税の算出等に使われる書類です。
【源泉徴収票の提出先】税務署・従業員本人
【給与支払報告書の提出先】市区町村の役所
従業員が住んでいる各区市町村の役所へ給与支払報告書(個人別明細書)を提出するときに、その区市町村に住む従業員の源泉徴収票の集計を記載した「給与支払報告書(総括表)」を表紙として添付が必要です。
給与支払報告書(総括表)は各区市町村のホームページからダウンロードしたものを使用します。
1、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2、給与所得者の基礎控除申告書 兼給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書
3、給与所得者の保険料控除申告書
4、給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
8、給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)
納税は、通常月と同様、翌年1月10日までに納税が必要です。
5、源泉徴収票
6、支払調書
7、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
9、給与支払報告書
10、給与支払報告書(総括表)
年末調整とは「会社による従業員の確定申告の代行」です。
給与から天引きされている税金は「おおよその額」です。
会社は従業員へ支払った給与を年末調整で再度計算し、正式な納税額を算出して国へ報告する義務があります。
従業員は、本来は自分で確定申告する作業を会社に代行してもらうために「年末調整書類」を提出するのです。
「年末調整分が戻ってくる」というのは、国が従業員の扶養家族や保険、ローンなどの控除が分からずに多く徴収していた税金分を返金したことによるものです。
年末調整は必ず毎年改正と変更点が発生しています。
特に2020年(令和2年)は、改正点や電子化の本格的スタートなど変更が多い年です。
基本的な流れは変わらなくても「去年とまったく同じ」はないと考えましょう。
新設控除、書類の名前、記入方法、算出方法、提出方法(電子化)などは国税庁ホームページから最新情報の確認が必須です。
年末調整の準備・配布・回収・集計・保管は、怠れば罰則がある会社の義務ですが、売上にならない時間損失の業務です。
出来る限り控除の申告書作成は従業員自身にしてもらい、担当者は書類のチェックと管理業務の効率化を図るため、国が提供している下記ソフトの活用を検討しましょう。
国は年末調整の電子化対応のためにシステムの活用を推奨しています。
年調ソフトは、従業員が提出する下記の控除申請書を作成が出来る国が提供している年末調整の電子化ソフトの事です。
1、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2、給与所得者の基礎控除申告書 兼給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書
3、給与所得者の保険料控除申告書
4、給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
各書類に記入する氏名や住所などの必要事項が1回入力すれば各書類に自動反映されるため記入作業が楽になります。
また、従業者自身が受けられる可能性のある控除の案内や記入方法などの年末調整書類のガイドがあるため、担当者が問合せに時間を取られることが少なくなります。
作成した書類はデータ提出、紙に出力、どちらも選べるので会社の指示に従いましょう。
参考:国税庁 年調ソフト
参考:年調ソフト リーフレット
マイナンバーカードを利用して「3、給与所得者の保険料控除申告書」「4、給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」に必要な証明書類をデータ取得が出来るようになるシステムです。
取得した証明書類のデータを元に控除申告書の所定の項目に自動入力が出来るため、従業員は書類のへの転記と添付作業が不要になります。
会社側も確認作業の簡素化と書類の保管が不要になるメリットがあります。
年末調整だけではなく、確定申告や法人設立関連手続にも利用できるシステムなので、公官庁への書類提出業務が楽になります。
税務署への「8、給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)」の提出と納税を行えるシステムです。
e-Taxは事前準備(電子証明書の取得、開始届出書の申請など)が必要ですが、年末調整以外の納税にも利用でき、支払業務の効率化が図れます。
参考:国税電子申告・納税システム(e-Tax)公式ホームページ
eLTAXは、区市町村の役所へ「9、給与支払報告書」「10、給与支払報告書(総括表)」を提出できるシステムです。
eLTAXは全国の区市町村に対応しているので、従業員が住む各区市町村へ書類を発送する業務がなくなります。
年末調整は従業員一人ずつ行う必要があり、申告書を作成するためには時間と労力がかかります。
年末調整システムを導入すれば、事務作業の効率化につながり、人件費の削減も可能となります。
ここでは、厳選した年末調整システムを詳しく紹介します。導入する際に参考にしてみてください。
画像出典元:「オフィスステーション年末調整」公式HP
「オフィスステーション 年末調整」は、従業員全員の年末調整の状況を自動で数値化してくれる年末調整ツールです。
従業員は「変更あり・なし」で回答するだけで済み、変更がなければ余計な入力を行う必要がないため、簡単に申請ができます。
もし変更があった場合には差分データが自動表示されるため、人事担当者も効率的にチェックできるのも、嬉しいポイントです。
・申告の手続きが簡単
・催促メール一括送信
・変更の差分データの自動表示機能
・セキュリティ専門部隊が24時間365日監視
・専門家によるサポート
初期費用が110,000円(税込)、製品利用料が5,000名まで従業員1人あたり550円(税込)です。
従業員が5,000人を超える場合は、「さらにお得になる割引をご用意」と公式ホームページに記載*されていますので、お問い合わせをおすすめします。
(*2022年3月時点)
なお、 従業員数が20名以下の場合、年額利用料一律11,000円(税込)です。
画像出典元:「マネーフォワード クラウド年末調整」公式HP
マネーフォワード クラウド年末調整は、web上での書類配布、入力・回収・進捗確認・差戻、提出(e-Tax、eLTAX 連携による電子手続)に対応しており、従業員も労務担当者も煩雑になりがちで面倒な年末調整業務が、Web上でかんたんに行うことが可能です。
また既存の給与計算ソフトはそのままに、年末調整部分だけクラウド化(電子化)することもでき、大変便利なサービスです。
<年末調整機能の詳細>
・従業員情報登録
・年末調整計算の対象者を一元管理
・従業員情報の更新状況を一元管理
・年末調整計算の進捗状況を一元管理
・年末調整の精算月を選択可能
・給与等総額の自動集計
・各種控除額の自動計算
・年末調整の自動計算
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書出力
・給与所得者の保険料控除申告書出力
・源泉徴収簿出力
【スモールビジネス(小規模法人向け)】
年額プラン:2,980円/月
月額プラン:3,980円/月
【ビジネス(中規模法人向け)】
年額プラン:4,980円/月
月額プラン:5,980円/月
詳細は以下の資料をダウンロードしてご確認ください。
サービス
31人〜50人
勤怠データを取り込んで自動計算してくれる
勤怠データを取り込んで自動計算してくれるところが便利です。以前使っていた給与計算ツールでは手入力のうえに、取り込む時間もかかっていて、精密な自動計算もなく、チェックが大変でしたが、導入後はそのような手間がいらないので助かっています。
その他
31人〜50人
システムが重く価格も高いので要検討を
システムが重い。システムで出来ることは多いが、勤怠システムとのAPI連携やHRシステムとの従業員データ連携等が前提となっている部分もあり、少しハードルが高い。
画像出典元:「ジョブカン労務HR」公式HP
労務担当者300人の声を活かして作られた、ジョブカン労務HR。
年末調整はクリックするだけで必要な書類を自動作成でき、クラウド上でまとめて処理できます。
無料お試し期間中からサポートが充実しており、システム導入時の有料初期設定サポートもあります。
・手続きの自動化・効率化
・従業員情報一元管理
・セキュリティ
・初期費用:0円
・月額費用:400円/1名
500名を超える大規模企業で利用の場合や、詳細については以下の資料をダウンロードしてご確認ください。
サービス/外食/レジャー
51人〜100人
打刻漏れを防げる仕様になっている
勤務管理や経費管理をしてくれるので、「誰が何日出勤して何時間働いた」などが、とても見やすくわかりやすい。打刻方法が色々あったので、打刻漏れを防げる点が一番良かった。打刻漏れを教えてくれる機能も付いていた。経費精算もしてくれるので助かっていた。
派遣会社
51人〜100人
外国人従業員の手続きがスムーズではない
社会保険の加入などの手続きをオンラインで申請できますが、外国人の対応ができませんでした。自分で書類を持って年金事務所に加入手続きを申請しないといけなかったので、それはすごく不便だと思いました。
2020年の年末調整の書類を説明しました。
年末調整は毎年変更があるので、必ず国税庁のホームページで確認しながら作業を進めましょう。
年末調整で提出書類は記入箇所や確認事項、集計業務など会社側の負担が多い作業です。
マイナポータルや年調システムを積極的に活用し、従業員・担当者への負担軽減と作業の効率化へ繋げましょう。
画像出典元:O-DAN
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