2020年の年末調整は変更点が多い!変更箇所を図表で解説!

2020年の年末調整は変更点が多い!変更箇所を図表で解説!

記事更新日: 2024/01/10

執筆: TAK

毎年恒例の年末調整ですが、2020年の年末調整は変更点が例年に比べて多くなっています

変更点の多さに頭を抱えている担当者の方も多いと思います。

今回は2020年の年末調整の主な変更点や手順を図や表を使ってわかりやすく解説していきます。

さらに、2020年からは年末調整の電子化も始まります。

年末調整の電子化対応を検討している企業担当者向けに、導入メリットも紹介していますのでは参考にしてみてください。

2020年の年末調整は変更点が多い

 

変更点の全体像

冒頭でもお伝えした通り、2020年の年末調整は変更点が多くなっています

そのため、一つずつ見ていく前にまずは全体的な変更点を確認しておきましょう。

国税庁が公表している昨年との変更点をもとに作成した表が以下となります。

細かい文言を覚える必要はまったくないので、赤字部分主な変更点を中心に見ていくことにします。

2020年の年末調整:変更点まとめ表

2020年の年末調整の変更点は大きくわけて「5つ」あります。

まずは上記表内の「変更前」と「変更後」の内容を簡単に見てもらった上で、以下詳細論点について確認するようにしてみてください。

変更点1:給与所得控除額の変更|#1-1

1つ目の変更点は、給与所得を算出する際に必要となる「給与所得控除額」が変更されたこと(#1-1)です。

給与所得というのは、「給与収入」から「給与所得控除額」を差し引いて算出されます。

そして、この給与所得控除額を求めるためには、控除表というものを使う必要があるのですが、この控除表自体が変更されたというのが主な変更点です。

給与所得控除額の変更前後の控除表をまとめたものが以下表となります。

 

具体的な変更内容は「10万円」だけ控除額が減ったという点です。

給与所得の算定式「給与収入 - 給与所得控除額」を見てもらえればわかりますが、控除額が減ることによって給与所得は上がるため、実質的な増税とも言えます。

また、従来の頭打ちラインは1,000万円超だったのに対して、2020年からは850万円超が頭打ちラインになっていることも読み取れます。

変更点2:基礎控除額の変更|#2-1、#2-2、#2-3

2つ目の大きな変更点としては、基礎控除額に変更があったという点(#2-1)です。

基礎控除額の変更(#2-1)

従来の基礎控除額は、所得の金額にかかわらず一律で「38万円」の基礎控除が認められていました。

しかし、2020年の年末調整より所得の金額に応じて基礎控除額が決まるように変更されました。

基礎控除額の新旧比較をまとめた表が以下(#2-1)となります。

 

(#2-1)表からわかるように、改正前は「所得の金額」にかかわらず一律38万円の控除が認められていました。

2020年の年末調整からは「所得の金額(合計所得金額※)」に応じて控除額が変化することとなっています。

言い換えれば、基礎控除について所得制限を受けるように改正されたと言えます。

あわせて言えることは、合計所得金額(※)が2,400万円以下の方であれば、先ほどの給与所得控除10万円分の減少分を、基礎控除額の10万円上昇分で相殺できるという事で、つまり税負担は変わらないということです。

合計所得金額について

※ 少し細かい話ですが、判定基準となっている合計所得金額を簡単に言えば、「所得控除を適用する前の所得の合計金額」となります。より正確に知りたい方は、国税庁のタックスアンサーの記述を確認してみてください。


そうは言っても、先ほど見た給与所得控除(#1-1)では、頭打ちのラインが「850万円超」に引き下げられたため、この点をもって増税負担を感じる方もいるはずです。

そこで2020年の年末調整から新たに設けられたのが「所得金額調整控除」(#2-2)です。

所得金額調整控除(#2-2)

所得金額調整控除は、ある一定の条件に該当する人であれば、追加で給与所得から控除を受けることが出来るといったものです。

具体的な条件と控除金額は以下(#2-2)の通りです。

 

ここまでの話を踏まえて、新たに手続き面でも大きな変更が生じることになりました。

それが、「給与所得者の基礎控除申告書および所得金額調整控除申告書」の新設(#2-3)です。

「給与所得者の基礎控除申告書および所得金額調整控除申告書」の新設(#2-3)

「給与所得者の基礎控除申告書および所得金額調整控除申告書」とは、基礎控除の変更(#2-1)や所得金額調整控除(#2-2)によって、申告書の様式が変更されたものです。

具体的には、以下赤枠部分が追加されています。

 

実際の申告書様式は、国税庁のページから確認することが出来ます。

変更点3:扶養親族等の合計所得金額要件の変更|#3-1

3つ目の変更点は、扶養親族等の合計所得金額に関する条件が変更された点(#3-1)です。

これは、給与所得控除や基礎控除が変更されたことに伴い、配偶者控除や扶養控除を適用するための金額基準が変更されたということです。

変更前後の金額基準をまとめた表が以下となります。

 

状況に応じて適用できる所得控除は変わってくるかと思いますが、金額の変更があった点は知っておいてください。

変更点4:ひとり親控除の新設|#4-1、 #4-2

4つ目の変更点としては、「ひとり親控除」に関する制度が新設された点(#4-1)です。

ひとり親控除の新設(#4-1)

「2020年年末調整:変更点まとめ表」の寡婦(寡夫)控除の見直し(#4-2)にも関連する内容になりますが、従来は未婚のひとり親に対しては「寡婦(寡夫)控除の適用対象外」とされていました。

婚姻の有無をもって適用可否をわけていた従来制度は、公平な税負担という観点からは望ましくないため、今回の改正で婚姻事実に関係なく、一定の要件を満たした場合に適用出来るひとり親控除が創設されたのです。

ひとり親控除の適用対象となった場合には、35万円の控除を受けることが可能となります。

具体的な適用要件は以下(#4-1)の通りです。

 

ひとり親控除の制度が新設されたことに伴い、寡婦(寡夫)控除も見直しされています。

具体的には、寡夫控除はひとり親控除に吸収されることとなりました。

なお、寡婦控除の控除額は従来通り、27万円で金額の変更はありません

変更点5:年末調整の電子化導入|#5-1

主な変更点の最後5つ目は、年末調整の電子化が導入されたこと(#5-1)です。

従来、給与所得者である従業員が、会社に対して提出する控除申告書類は「紙」ベースでしたが、2020年10月以降の年末調整からは「電子データ」で提出することが可能になりました。

この点は、後ほど詳しく紹介していきます。

2020年の年末調整の手順

 

年末調整のスケジュール

年末調整の変更点がわかったところで、年末調整に関するスケジュールや手順を確認していきましょう。

年末調整を進める際の手順は、基本的に社内フローにそって遅れないように進めていくことがポイントとなりますが、ここでは一般的な年末調整の流れを紹介します。

年末調整の一般的な流れは以下のようになります。

年末調整の業務3ステップ

 

流れとしては、3ステップになります。

1. 従業員への案内・配布

2. 従業員からの必要資料回収

3. 年末調整の計算・還付等の対応

会社によってスケジュールは異なるかと思いますが、12月末までに給与調整を通じて還付または徴収を行うことが一般的なので、1ヶ月前までには必要資料を従業員から回収しておくことがベターかと思います。

そのため、一般的なスケジュールは以下のようになります。

年末調整「一般的なスケジュール」

  • 11月上旬:従業員への年末調整に関するアナウンスを実施
  • 11月下旬:従業員から必要資料の回収
  • 12月中 :年末調整の計算を実施。給与調整を通じて、従業員ごとに還付または徴収


早めの対応を心掛けて、年末調整の手続きを進めるようにしてみてください。

2020年スタートした年末調整の電子化とは

 

年末調整の電子化とは

最後に、2020年からスタートする「年末調整の電子化」の概要について紹介していきます。

年末調整の電子化は主に「従業員への通知」「従業員からの必要資料回収」の段階で必要です。

従来までは、従業員が保険会社等から紙面の控除証明書を受領し、関連申告書に必要事項を記入した上で、控除証明書とあわせて勤務先に提出するという流れとなっていました。

今回の改正では「1、控除証明書の電子化」「2、電子データによる送付」という2点が大きな変更内容となっています。

1、控除証明書の電子化

控除証明書の電子化は、従業員が保険会社等から「控除証明書を電子データで受領」出来るような仕組みに変更されました。

2、電子データによる送付

そして、従業員側は電子データによる送付によって会社が指定するソフトウェアを通じて控除申告書データを作成することになります。

その上で、自動作成された控除申告書データを勤務先にデータで提供し、会社側は各従業員から受領した申告書データをもとに、年末調整の計算や処理をするという流れになります。

年末調整を電子化するメリット

年末調整の電子化によって、従業員側と会社側にどのようなメリットが生まれるのか確認しておきます。

従業員側のメリット

従業員側としては、会社側が指定するソフトウェアをインストールする手間はありますが、受領したデータを入力するだけで自動計算がされるため、手計算や計算間違いを防ぐことが可能となります。

また、控除証明書を電子データで受領出来るようになったため、紛失時の再交付という面倒な手続きも不要になりました。

会社側のメリット

会社側としては、従業員側がソフトウェアを通じて自動計算された申告書を提出してくれるため、従来から負担となっていた検算事務や確認作業を軽減することが可能となります。

年末調整の関連資料を電子データとして原本保存することも可能となるので、書類での保管と比べて保管コストを削減出来るというメリットも享受することが出来ます。

また、会社側が税務署や市区町村への書類提出や納税にe-TaxやeLTAXを活用すれば郵送や出向く手間がなくなります。

年末調整の電子化は事前準備が必要!

年末調整の電子システム導入を検討している企業は何よりも事前準備が必要となります。

年末調整の電子化の概要を見てわかるように、従来以上に従業員の理解と協力が必要不可欠になるためです。

従業員側でソフトの操作も必要となるため、インストールや受領した電子データのアップロードなどPC環境の準備が必要です。

ソフトウェアの操作に不慣れな従業員がいる場合には、年末調整に入るだいぶ前の時期からセミナーや説明会等で理解を深めてもらう必要もあります。

2020年12月を過ぎてから年末調整の電子化を導入するのは、スケジュール的にもかなり難しいので、そのような場合は翌年から導入出来るように準備を進めるようにしましょう。

おすすめの年末調整システム3選

年末調整は従業員一人ずつ行う必要があり、申告書を作成するためには時間と労力がかかります。

年末調整システムを導入すれば、事務作業の効率化につながり、人件費の削減も可能となります。

ここでは、厳選した年末調整システムを詳しく紹介します。導入する際に参考にしてみてください。

操作が簡単で顧客満足度が高い!『オフィスステーション年末調整』


画像出典元:「オフィスステーション年末調整」公式HP

特徴

「オフィスステーション 年末調整」は、従業員全員の年末調整の状況を自動で数値化してくれる年末調整ツールです。

従業員は「変更あり・なし」で回答するだけで済み、変更がなければ余計な入力を行う必要がないため、簡単に申請ができます。

もし変更があった場合には差分データが自動表示されるため、人事担当者も効率的にチェックできるのも、嬉しいポイントです。

機能

・申告の手続きが簡単
・催促メール一括送信
・変更の差分データの自動表示機能
・セキュリティ専門部隊が24時間365日監視
・専門家によるサポート

料金プラン

初期費用が110,000円(税込)、製品利用料が5,000名まで従業員1人あたり550円(税込)です。

従業員が5,000人を超える場合は、「さらにお得になる割引をご用意」と公式ホームページに記載*されていますので、お問い合わせをおすすめします。
(*2022年3月時点)

なお、 従業員数が20名以下の場合、年額利用料一律11,000円(税込)です。

オフィスステーション 年末調整の資料を無料DL

 

 

クラウドで紙のいらない年末調整!『マネーフォワード クラウド年末調整』


画像出典元:「マネーフォワード クラウド年末調整」公式HP

特徴

マネーフォワード クラウド年末調整は、web上での書類配布、入力・回収・進捗確認・差戻、提出(e-Tax、eLTAX 連携による電子手続)に対応しており、従業員も労務担当者も煩雑になりがちで面倒な年末調整業務が、Web上でかんたんに行うことが可能です。

また既存の給与計算ソフトはそのままに、年末調整部分だけクラウド化(電子化)することもでき、大変便利なサービスです。

機能

<年末調整機能の詳細>

・従業員情報登録
・年末調整計算の対象者を一元管理
・従業員情報の更新状況を一元管理
・年末調整計算の進捗状況を一元管理
・年末調整の精算月を選択可能
・給与等総額の自動集計
・各種控除額の自動計算
・年末調整の自動計算
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書出力
・給与所得者の保険料控除申告書出力
・源泉徴収簿出力

料金プラン

【スモールビジネス(小規模法人向け)】

年額プラン:2,980円/月
月額プラン:3,980円/月

【ビジネス(中規模法人向け)】

年額プラン:4,980円/月
月額プラン:5,980円/月

詳細は以下の資料をダウンロードしてご確認ください。

実際に利用したユーザーの口コミ

サービス

31人〜50人

 

勤怠データを取り込んで自動計算してくれる

勤怠データを取り込んで自動計算してくれるところが便利です。以前使っていた給与計算ツールでは手入力のうえに、取り込む時間もかかっていて、精密な自動計算もなく、チェックが大変でしたが、導入後はそのような手間がいらないので助かっています。

その他

31人〜50人

 

システムが重く価格も高いので要検討を

システムが重い。システムで出来ることは多いが、勤怠システムとのAPI連携やHRシステムとの従業員データ連携等が前提となっている部分もあり、少しハードルが高い。

 
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月額400円~利用できる!『ジョブカン労務HR』


画像出典元:「ジョブカン労務HR」公式HP

特徴

労務担当者300人の声を活かして作られた、ジョブカン労務HR。

年末調整はクリックするだけで必要な書類を自動作成でき、クラウド上でまとめて処理できます。

無料お試し期間中からサポートが充実しており、システム導入時の有料初期設定サポートもあります。

機能

・手続きの自動化・効率化
・従業員情報一元管理
・セキュリティ

料金プラン

・初期費用:0円
・月額費用:400円/1名

500名を超える大規模企業で利用の場合や、詳細については以下の資料をダウンロードしてご確認ください。

実際に利用したユーザーの口コミ

サービス/外食/レジャー

51人〜100人

 

打刻漏れを防げる仕様になっている

勤務管理や経費管理をしてくれるので、「誰が何日出勤して何時間働いた」などが、とても見やすくわかりやすい。打刻方法が色々あったので、打刻漏れを防げる点が一番良かった。打刻漏れを教えてくれる機能も付いていた。経費精算もしてくれるので助かっていた。

派遣会社

51人〜100人

 

外国人従業員の手続きがスムーズではない

社会保険の加入などの手続きをオンラインで申請できますが、外国人の対応ができませんでした。自分で書類を持って年金事務所に加入手続きを申請しないといけなかったので、それはすごく不便だと思いました。

 
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まとめ

今回は、2020年の年末調整の変更点やポイントを中心に解説してきました。

従来に比べて改正された論点が多いですが、全体像をおさえた上で個別の論点についてどの程度影響があるか確認するようにしてみてください。

中でも「年末調整の電子化」は、今後メジャーな方法になるはずなので、今から準備を始めると良いかと思います。

画像出典元:Shuterstock

この記事を書いた人

TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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