令和2年(2020年)の年末調整では様々な変更点があります。
中でも手続き面で大きな影響を受けるのが「年末調整の電子化」です。
この記事では、そもそも年末調整の電子化とは何かわからず悩んでいる方や、具体的にどのようなメリットや準備が必要なのかを知りたい担当者の方向けに、年末調整の電子化について解説していきたいと思います。
年末調整の電子化導入は、事前準備が重要です。
2021年以降の導入を検討されている方も参考にしてみてください。
このページの目次
まず最初に、年末調整電子化の概要について確認しておきます。
令和2年から新たに導入されたこの方法は、従来の年末調整手続きと比較すると理解しやすいかと思います。
従来の年末調整は、従業員が保険会社等から「書面(紙)の控除証明書」を受領し、関連申告書に必要事項を記入した上で、控除証明書とあわせて「勤務先に書面(紙)で提出する」という流れとなっていました。
従業員が保険会社等から「書面(紙)の控除証明書」を受領
↓
関連申告書に必要事項を記入
↓
控除証明書とあわせて「勤務先に書面(紙)で提出する」
これに対して、年末調整の電子化では、従業員が保険会社等から「電子データの控除証明書」を受領し、会社が指定するソフトウェア(年末調整ソフト等)のインストールや申告書フォーマットへの入力を通じて、控除証明書とあわせて「勤務先に電子データで提出する」という流れに変わりました。
従業員が保険会社等から「電子データの控除証明書」を受領
↓
会社が指定するソフトウェア(年末調整ソフト等)から申告書フォーマットへの入力
↓
控除証明書とあわせて「勤務先に電子データで提出する」
つまり、年末調整の電子化では「1、控除証明書の電子化」と「2、電子データによる送付」という2点が大きな特徴と言えます。
詳細はまた後ほどお伝えしますが、従業員側は以下対応が求められます。
1:電子化された控除証明書を受領するために、マイナンバーカードの取得が必要
2:電子データとして関連資料を送付するため、年調ソフト等のインストールが必要
年末調整電子化の主な変更点にフォーカスし、「従業員側」と「会社側」の必要手続きを変更前後でまとめたものが以下の図です。
詳細は、この後の「年末調整の電子化の準備」で細かく見ていくこととします。
ここではまず、大まかな概要と変更点を理解してみてください。
年末調整の電子化を導入することで得られるメリットは、従業員側と会社側それぞれにあります。
デメリットは事前の準備や従業員とのコミュニケーションを通じて解消することが可能です。
一方的に会社側から従業員に「これから年末調整は電子化するので、各自期限までに対応するように」と押し付けるのではなく、定期的な説明会などを通じて、電子化する趣旨や各従業員がすべきことを丁寧に時間をかけて説明する事でデメリットは解消できます。
会社側と従業員側がすべき準備事項については、この後それぞれ紹介していきます。
次に、年末調整の電子化に向けた「企業側」の準備事項について紹介していきます。
先ほどの変更点をまとめた表を再掲したものが以下です。
企業側の事前準備という意味では、厳密には#1から#3あたりまでが該当することになりますが、その後の流れについても上記表内では記載しています。
事前準備に該当する#1から#3について、一つずつ内容を確認していきます。
まず最初に、従業員にマイナンバーを取得するように依頼していきましょう。
これは、従業員側がマイナポータル経由で控除証明書データを取得する際に必要となるためです。
マイナポータルとは政府が提供するオンラインシステムのことで、マイナンバーカードを登録することで行政手続き等が可能になります。
なお、控除証明書を発行する金融機関等によっては、ホームページからダウンロードする等の方法によって取得することも可能です。
続いては、年末調整電子化対応のために給与システムの改修について検討する必要があります。
給与システムの改修とは、従業員から提供された電子データを給与システムにインポートし、年末調整の計算を出来るように対応しなければならないためです。
すべての企業が給与システムの改修が必要というわけではなく、例えば古いシステムを使用しており、データの取込が出来ないなどの場合に対応が必要となります。
自社が使用しているシステムと使用予定のソフトウェア(年調ソフト等)との間で連携は問題ないか、確認するようにしてみてください。
年末調整電子化の事前準備として最後に必要となるのが、税務署への届出申請です。
会社側は、従業員から提供された電子データをもとに年末調整関連の計算手続きを進めることとなりますが、そのためには事前に税務署に対して申請書を提出し、承認を受けなければらなりません。
具体的には、給与支払事務所等の所在地の税務署に対して「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出することとなります。
参考:国税庁[手続名]源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請
事前準備が完了したら、あとは実際に年末調整手続きを進めていきます。
年末調整の電子化を導入した初年度においては、従来以上に従業員への通知をしっかりと丁寧に進めるようにしましょう。
従業員から様々な質問が寄せられることも想定されるので、事前にQ&A集などのマニュアルを用意して配布するのも良いかと思います。
実際に年末調整の電子化をする際には、従業員に対して会社内で決定したソフトウェアを通知する必要があります。
国税庁が提供する年調ソフト(年末調整控除申告書等作成用ソフトウェア)を使うのか、民間のソフトウェアを使うのかもあわせて決めておくようにしましょう。
あとは、従来同様、期限までに各従業員からデータが提供されているのか、年末調整の計算手続きが始められるかを都度確認してみてください。
続いて、年末調整電子化に向けた「従業員側」の準備事項について紹介していきます。
先ほどの変更点をまとめた表を再掲したものが以下です。
従業員側の事前準備という意味では、厳密には#1から#2あたりまでが該当します。
事前準備に該当する#1と#2について、一つずつ内容を確認していきます。
従来の年末調整は、保険会社等から郵送されてきた書面の控除証明書を取得する流れになっていましたが、今後はデータ形式で取得することが可能となります。
電子データとして取得可能な控除証明書の種類としては、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等が該当します。
従業員側が当該データを取得するためには、主にマイナポータル経由で取得する方法と保険会社等のホームページからダウンロードする方法があります。
そして、マイナポータル経由でデータを取得するためには、利用の前提としてマイナンバーカードを取得していなければなりません。
マイナンバーカードを未取得の方は、会社の指示に従って取得手続きを進めていきましょう。
データ形式の控除証明書を取得出来た後は、会社が指定したソフトウェアを通じてデータ入力していく必要があります。
そのために、事前に会社が指定するソフトウェアを従業員側がインストールしておかなければなりません。
先ほども紹介したように、国税庁が提供する年調ソフト(年末調整控除申告書等作成用ソフトウェア)を使う場合と、民間のソフトウェアを使う場合があるので、この点は会社側の指示に従うようにしてください。
年末調整の電子化に対応するための事前準備が整ったら、あとはソフトウェアを通じてデータを入力し、年末調整用の申告書を会社側に提出します。
基本的には、取得した電子データを該当ソフトウェアの項目に入力していくだけで、自動的に控除額の計算などがされるため、さほど難しくはないかと思います。
それでも疑問点がある場合には、会社側の担当者に問い合わせるようにしてみてください。
最後に、年末調整電子化における提出手順を従業員目線で確認しておきます。
基本的には社内のアナウンスやルールに従っていけば問題ありませんが、従業員側の必要な手順は「1、データの取得」と「2、申告データの作成・送付」となります。
年末調整に必要な控除証明書を電子データで取得するために、マイナンバーを取得した上でマイナポータルと連携する設定が必要となるのか、またはマイナポータル経由でなく保険会社等のホームページから直接ダウンロードするのか、事前の確認が重要になります。
また、会社指定のソフトウェア(年調ソフト等)をインストールした上で、必要な申告書が作成出来ているか、作成後は会社担当者に適切に提出されているかを確認するようにしましょう。
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今回は、年末調整の電子化について概要や必要な準備について解説してきました。
会社側としては、年末調整の電子化導入初年度に様々な対応が必要となる上、従業員側の協力がより一層重要となってくるため、しっかりと社内で準備を進めるようにしてみてください。
従業員側としても、年末調整は従業員のために行われている手続きであることを再認識した上で、会社担当者の負担が少しでも減るように積極的な協力を心掛けましょう。
年末調整の電子化に不明点や不安な点がある場合には、担当者と積極的にコミュニケーションを取ることが重要となります。
年末調整の電子化を検討している方の参考になれば幸いです。
画像出典元:Shutterstock
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TAK