年末調整の収入金額と所得金額は違う!計算方法やよく見る用語も解説

年末調整の収入金額と所得金額は違う!計算方法やよく見る用語も解説

記事更新日: 2022/09/15

執筆: 桜木恵理子

年末調整のときに必要になる「収入金額」。

とはいえ「所得や手取りと何が違うの?」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、年末調整の基本から年末調整における収入金額の概要まで詳しく解説します。

年末調整における収入金額とは?

収入金額とは、事業(農業や漁業、自営業など)の場合は、いわゆる「売上金額」がそのまま収入金額になります。

ビジネスパーソンの場合は「手取り額」ではなく、源泉徴収税額や社会保険料などが差し引かれる前の「総支給額」のことです。

公的年金を受給されている方も振り込まれた額ではなく、税金などが天引きされる前の額のことを指します。

収入金額は総支給額と同額

総支給額は、収入金額と同じ意味になります。

ビジネスパーソンの場合は、社会保険料や源泉徴収税額、特別徴収税額(住民税額)などが差し引かれる前の金額のことです。

給料以外でも収入金額に含まれる場合もある

ただし給料を受け取る以外にも収入金額に含まれる場合もあります

たとえば、以下のとおりです。

  • 会社から無利息・低金利で借金する
  • 会社から商品を安価・無料でもらう
  • 会社が保有する土地や建物を無利息・低金利で借りる など

 これらは「現物支給」にあたり、課税対象となることを知っておきましょう。

※換金性に欠けるもの等、例外となるものもあります。

収入金額ー必要経費=所得金額になる

事業(農業や漁業、自営業など)の場合は、収入金額から必要経費を差し引いた金額が所得金額になります。

▶︎事業所得の算出式

 収入金額ー必要経費=(事業)所得金額

 ビジネスパーソンの場合は、実際の必要経費ではなく、給与収入金額に応じて「給与所得控除額」が定められており、それを差し引いた金額が「給与所得金額」になります

▶︎給与所得の算出式

 収入金額ー給与所得控除額=(給与)所得金額

【収入金額600万円の場合の計算例】
①給与所得控除額:6,000,000円×20%+440,000円=1,640,000円
②給与所得額:6,000,000円(収入金額)ー1,640,000円(控除額)=4,360,000円(所得金額)

以上より、収入金額600万円の場合は436万円が所得金額となります。

 公的年金を受給されている場合も、支給額に応じた「公的年金等控除額」が定められており、それを差し引いた金額が「年金所得金額」になります。

▶︎年金所得の算出式

 その年に受け取った年金額ー公的年金等控除額=(年金)所得金額

 

年末調整で収入金額が必要な場面とは?

ここからは年末調整で収入金額が必要になる場面を解説します。

給与所得者の基礎控除申告書

まず「給与所得者の基礎控除申告書」で、収入金額が必要になります。

基礎控除申告書は、令和2年分から「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」といって、3種の申告書が一体化した様式になっています。

画像出典元:国税庁の公式HP

この申告書では、名前のとおり、以下3つの申告を同時に行えるようになっています。

  • 給与所得者の基礎控除申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 所得金額調整控除申告書

これら3種の申告書に必要事項を記入するには、所得金額が必要になります。

その所得金額を算出するためには、収入金額がわかっていないといけません。

年末調整で基礎控除を受けるためには、この基礎控除申告書の提出が必要です。

「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」項目

基礎控除申告書の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」欄には、本年中の「給与所得の所得合計」と「給与所得以外の所得の合計額」を合算して記入します

「給与所得」部分には、収入金額と所得金額を記入します。

▶︎収入金額=当年1年間(1月〜12月)の総支給額
      ※年末調整時の未払い給与は概算でOK

▶︎所得金額=上章で解説した計算方法により算出した所得金額
      ※申告書の裏面にも計算式が記載されているため参考にしましょう

 「給与所得以外の所得の合計額」部分には、その名のとおり、雑所得や配当所得など給与所得以外の所得がある場合に記入しましょう。

年末調整でよく見る7つの言葉を簡単おさらい

次に年末調整でよく見る次の7つの言葉を確認しておきましょう。

  1.  総支給額
  2.  所得金額
  3.  給与所得控除
  4.  所得控除
  5.  基礎控除
  6.  源泉徴収
  7.  特別支出控除

 

1. 総支給額

総支給額は、ビジネスパーソンの場合は、社会保険料や源泉徴収税額、特別徴収税額(住民税額)などが差し引かれる前の金額のことです。

収入金額と同じ意味になります。

2. 所得金額

事業(農業や漁業、自営業など)の場合は、収入金額から必要経費を差し引いた金額が所得金額になります。

ビジネスパーソンの場合は、実際の必要経費ではなく、給与収入金額に応じた「給与所得控除額」を差し引いた金額が「給与所得金額」になります

収入金額ー必要経費または給与所得控除額=所得金額

 また、実際に受け取る金額を「手取り」と一般的に呼びますが、これは所得金額から所得税や住民税、社会保険料などを差し引いた金額のことです。

3. 給与所得控除

給与所得控除とは、1年間の給与などの収入額に応じて差し引かれる控除のことで、所得税計算の元となる給与所得額を決定するためのものです。

給与所得控除は給与収入を得ている人が対象で、事業所得者の必要経費にあたります。

収入金額による計算式は以下のとおりです。

給与等の収入金額 給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円~1,800,000円まで 収入金額×40%ー100,000円
1,800,001円~3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円~6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円~8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円

参照元:国税庁「No.1410 給与所得控除

4. 所得控除

所得控除とは、所得税額を算出する際、所得金額から差し引くことができる金額のこと。

所得金額から一定の金額を控除することで税の負担が小さくなるよう調整するためのものです。

所得控除は15種類あり、納税者であるビジネスパーソンごと、個人的な事情に応じて適用されます

誰にでも適用されるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。

【所得控除の例】

  • 配偶者控除
  • 医療費控除
  • 生命保険料控除
  • 寄附金控除(ふるさと納税)

など

 

5. 基礎控除

基礎控除とは、上記で解説した15種類ある所得控除のうちの1つになります。

基礎控除は給与所得者のみならず、すべての納税者が対象となります。

令和2年(2020年)より基礎控除額は10万円引き上げられ、一律48万円(所得金額が2,400万円以下の場合)になりました。

また、所得金額が2,400万円を超えると段階的に控除額が減額されていきます。

納税者本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

参照元:国税庁「No.1199 基礎控除

※令和元年分以前の基礎控除の金額は、納税者本人の合計所得金額に関わらず、一律38万円でした。

6. 源泉徴収

源泉徴収とは、給与などの支払者が支払時に一定率の金額を天引きして預かり、それを納税者本人に代わって納付する仕組みのことです。

源泉徴収された所得税は税務署へ、住民税は市町村に納付されます。

この源泉徴収はあくまで仮の金額であるため、年末調整にて税額を再算出する必要があります

7. 特別支出控除

特別支出控除とは、収入から経費を控除できるようにした制度のことです。

この制度のおかげによって、ビジネスパーソンは仕事のために買ったスーツや書籍、資格取得の費用などを経費にできます。

ただし特別支出控除は、給与所得控除額の半分以上を占める支出があった場合に適用されます。

そのため、まずは給与所得控除額を知る必要があります。

収入金額がわからない時はどうする?

次に収入金額がわからないときの対処法を解説します。

1. 11月や12月の収入は推測でOK

年末調整では、提出期限の関係で、11月や12月の収入(給与・賞与)は見積額で計算する必要があります

1月~10月までは実額を記入し、11月と12月は見積額で算出しましょう。

実際の所得とかけ離れた場合には、来年の年末調整で修正する仕組みになっています。

2. 給与明細や直近の源泉徴収票を参考にする

11月や12月の収入の概算を計算する際には、給与明細や直近の源泉徴収票を参考にすることをおすすめします。

これによってなるべく実際の金額とのズレを軽減できるでしょう。

年末調整の基本

続いて年末調整の基本を解説します。

年末調整は正しい税額を確定させるために行う

年末調整は、正しい税額を確定させるために必要な手続きです。

年末調整によって、企業が従業員に対して支払った給料から徴収される所得税の過不足金を調整します。

本来の所得税の総額を、その年の年収から再計算して実際に徴収している源泉徴収と比較することが、年末調整の主な手続きです。

対象者は給与所得者

年末調整が必要なのは、給与所得者です。

以下の条件に当てはまらない人は、基本的に年末調整の手続きが必要となります。

  • 継続して同一の雇用主に雇用されない日雇い労働者
  • フリーランスや経営者など給与所得者ではない人
  • その年の主たる給与所得額が2,000万円以上の人
  • 非居住者
  • 災害減免法の適用対象者で控除を受けている人
  • 2か所以上から給与の支払を受けている人(他の会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人や、年末調整までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人)

 

毎年スケジュールは同じ

年末調整のスケジュールは、毎年同じです。

年末調整の書類提出期限は翌年1月31日、源泉所得税の納付期限は翌年1月10日までとなっています。

企業によって年末調整の動き出しは異なりますが、一般的に12月に実施される傾向があります。

 

年末調整をしなかったらどうなる?

最後に年末調整をしなかった場合について解説します。

1. 確定申告が必要になる

年末調整をしないと、自分自身で確定申告をしなければなりません

確定申告の場合、税金の計算を自分で行わなければならず、慣れていないと非常に手間と時間がかかります。

会社に勤めているビジネスパーソンは、年末調整時に必要な書類を必ず提出するようにしましょう。

2. 税金の過払いになる

年末調整は払いすぎた税金を還付してくれる制度です。

そのため年末調整をしないと、本来所得から控除されるはずの金額がそのまま処理されます。

つまり払いすぎた分がそのまま払いすぎることになり、税金は返ってきません

3. 故意の場合は雇用主が罰を受ける

年末調整は、原則として企業(雇用主)の義務となっています。

それゆえ故意に怠った場合には、企業は脱税行為として10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科される可能性があります

4. 各種控除の申告ができない

年末調整を怠った場合、各種控除の申告が受けられなくなってしまいます

控除を受けられないと、自身の総所得額が多くなるため、その分支払う税金も増えます。

できるだけ税金を抑えたい方は、忘れずに年末調整時に各種控除の申請を行いましょう。

まとめ

今回は年末調整における収入金額について解説しました。

会社に勤めるビジネスパーソンにとって年末調整は欠かせない作業となっています。

年末調整を怠ってしまうと、損を被ることになりますのでご注意ください。

事業者にとって収入金額は、いわゆる「売上金」を指し、会社勤めのビジネスパーソンにとっては「天引きされる前の金額」のことです。

年末調整に頻出する言葉の意味をよく理解し、12月の年末調整に備えましょう

画像出典元:O-DAN, unsplash

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