これから起業や会社設立を考えている方は、その会社、起業を成功させるために多くの準備を行う必要があります。その準備の一つとして「取締役会」が存在します。
必ずしも設置しなくてはならないものではありませんが、迅速な意思決定が可能になるというメリットがあります。
今回は取締役会の基礎知識と設置・開催の手順について解説していきます。
このページの目次
取締役会は、業務執行における意思決定機関とされているもので、任命を受けた取締役が3名以上集まり行われる集会です。
その中で1名が、会社のトップである代表取締役となります。その他には代表取締役から任命を受け、業務執行取締役と称したポジションもあり、役員らの中で業務執行を取り仕切る役割があります。
取締役会は株主総会の代わりともなる機関です。株主の代わりに業務執行の意思を決定でき、株主の権限を抑えることができるほか、重要な決定事項があるたびに多くの株主への招集案内を行う手間が省けます。
上場会社など特別な場合を除いて、取締役会の設置義務はありません。
取締役会を行う(このことを「取締役会を設置する」といいます)ことで、多大な労力を要する株主総会を省けるというメリットがありますが、多くの未上場会社では取締役会を設置していないのが実態です。
このことについては、あとで詳しく解説していきます。
取締役会は、会社の業務執行上の重要事項について決定する権限を持ちます。
具体的には、会社法362条「取締役会の権限等」の定める以下の事項は取締役会において決定する必要があります。
加えて、362条以外でも以下の条項には取締役会の決定が必要です。
株や社債など会社の財産の取扱いに関する事項や、株主総会の招集などが主な決定事項です。
取締役会は上述の通り、会社の業務執行に関する意思決定機関とされています。これを設置することは、業務を迅速に進めるにあたり大きなメリットとなります。
本来であれば、株主総会を開催して決議すべき事項を、取締役会で代わりに決議することができます。そのため、一般的に手間がかかる株主総会の開催を省くことができるのです。
取締役会が設置されている会社は、外部から見ても信頼度が格段に上がります。今後、会社の拡大化を図っているのであれば、設置した方が今後に向けてスムーズになることでしょう。
取締役が3名以上、監査役もしくは会計参与も必要です。そのため、会社から支払われる役員報酬も考えなくてはなりません。
役員報酬をつけることにより負担が増える可能性も発生します。また、株主視点では、共益権が制限されますし、手続きを行う上での負担も出てきます。
取締役会は定期的に行わなくてはなりません。最低でも3か月に1回程度行うことが義務付けられています。
人員の確保も必要です。3名以上の取締役が必須事項ですので、欠員が出た際に適宜対応することも視野に入れておきましょう。
ほかにも議事録を保管しなくてはならないなど、手間がかかるのが実際です。
未上場会社であれば、取締役会を設置するかどうかを選ぶことができます。では、取締役会は設置すべきなのでしょうか?
結論からのべると、取締役会は基本的に設置する必要はありません。実際、取締役会を設置していない中小企業は多くあります。
中小企業であれば、株主もそこまで多くないため、株主総会の開催もそれほど負担になりません。取締役会の設置・開催の手間を考えると、設置によるメリットはうすいというのが、取締役会を設置しない理由です。
上場を目指す会社であれば、遅かれ早かれ取締役会を設置することになります。
「設置することになる」というのは、途中で取締役会設置の必要性がでてくるということです。
そもそも上場をする際の条件として、取締役会設置会社であることが求められます。そのため、遅くとも上場準備段階で取締役会を設置することになります。
またほとんどの上場を目指す会社では、VCなど外部からの資金調達を行うので、株主が増えていくことになります。そのため株主総会の負担が重くなり、取締役会設置が必要になってくるでしょう。
さらに、中には取締役会の設置を求めるVCもあります。これは、会社として上場を目指す体制ができているかを問うのが主な狙いです。
このように上場を目指す会社では取締役会設置の必要性がありますが、裏を返せば上場を目指す会社においても、取締役会の設置は必要になってからで良いです。
取締役会を設置する際に具体的に必要となる手続きを1つ1つ解説していきます。流れとしては以下の図のようになります。
取締役が3人以上、監査役または会計参与が1人以上必要になります。まずは誰が担当するのかを決めましょう。
株主総会が決定していた事項を取締役会が決めることになる旨を定款に記載する必要があります。株主総会に向けて変更案を作成しましょう。なお、起業時であれば定款作成の際に明記しておきましょう。
株主総会を開催し、そこで定款の変更や追加の承認を行います。
定款変更が行われてから約2週間以内に、法務局へ変更登記の申請を行なってください。
必要な書類は会社によって多少異なりますが、一例として以下が挙げられます。
これらを準備し、申請を行います。
なお、取締役会の設置手順・設置の際の注意点についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
取締役会は重要な意思決定機関と称していますが、だからと言って決議する内容がないから開催をしなくても良いというわけにはいきません。取締役会のメンバーは、業務執行の監督を行う必要があり、その経過を報告する義務も発生します。
そのため最低でも3ヶ月に一度は取締役会を開催し、報告を行います。
開催においては、その招集連絡を各メンバーへ通知します。開催の1週間前までに行い、準備をします。書面や口頭などどちらでも構いません。
また、定款で定例会のように規定しておけば、この招集連絡を省略可能となっています。急遽開催になった場合であれば書面などで通知すると良いでしょう。
会議の方法は比較的自由です。遠方に取締役がいる場合はスカイプ会議などで行うケースもあります。
また、定款で決めておけば「書面決議」といって、メールで議題を周知し、反対意見がなければ議決する、といった形を取ることも可能です。
決議には取締役会の過半数の出席が必要とされています。ただし、利害関係のある取締役は議決に加わることができないので注意しましょう。
取締役の数が6人以上でうち社外取締役が1人以上の場合、あらかじめ選定した3人以上の特別取締役によって「重要な財産の処分及び譲受け」「多額の借財についての決議」を議決可能です。
なお、取締役会での決議方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
今回は、取締役会設置について解説していきました。
取締役会設置は必要になってからでよいということを覚えておいてください。
また、どのような場合であれ、何らかのイレギュラーは発生します。その時にどう切り抜けるか、事態が発生した時にどのようにしたらいいのかを想定して進めておくと、ハプニングが起こった際に慌てず対処できます。
画像出典元:Burst
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