株主総会を開催する際の決議事項とその種類、決議方法まで徹底解説!

株主総会を開催する際の決議事項とその種類、決議方法まで徹底解説!

記事更新日: 2023/09/10

執筆: 高浪健司

株主が存在する株式会社では、年に1回株主総会というものが開催されます。この株主総会には「定時株主総会」と「臨時株主総会」との2種類ありますが、定時株主総会においては必ず開催しなければなりません。

ところで、この株主総会では一体何を決議するものなのでしょうか?

今回は、株主総会で決議される決議事項やその種類、さらには決議方法などを詳しく解説していきます。

株主総会における決議事項とは

まず株主総会というは、株式会社にのみ設置されている機関で、すべての株主によって構成し開催される会議のことです。つまり会社の最高意思決定機関に位置づけされます。

この株主総会は、株式会社を設立した際、必ず設置しなければならないもので、株式会社における人選や経営戦略など、重要な事項に関してはすべて株主総会にて決議されます。

しかしすべての重要事項が株主総会で決議されるものではなく、株主総会で決議される内容は会社法にて定められている法定決議事項のみ開催されます。

ちなみに、株主総会で決議される事項は、おおむね下記の事項です。

株主総会の主な決議事項

  • 取締役の選任や解任、役員報酬に関する事項
  • 定款の変更および解散、合併、事業譲渡など、会社組織に関する事項
  • 計算書類の承認、余剰金の分配など、利益に関する事項
  • 法律などから逸脱しないようにするための取り決め事項


このように、株主総会では会社の根本に関わる事や役員の人事、株主の利害に影響を与える事項などが決議項目として、主に定められているわけです。

なお、株主総会にて決議された事項に関しては、原則として株主による多数決で可決されます。

また株主総会では、開催される決議事項の重要度に応じて決議の種類が異なり、それと同時に決議が成立する定足数や要件も異なります

株主総会の決議事項の種類とは

株主総会の決議には種類が複数存在しており、その種類として普通決議・特別決議・特殊決議・特別特殊決議の4種類に分けられます

株主総会の決議4種類

  • 普通決議
  • 特別決議
  • 特殊決議
  • 特別特殊決議


基本的な決議事項は普通決議によっておこなわれますが、決議事項が重要な場合はより決議要件が厳しい特別決議、もしくは特殊決議・特別特殊決議でおこなう必要があります。

それでは、4種類の決議の方法とその決議事項をそれぞれ見ていきましょう。

1. 普通決議の決議要件と主な決議事項

株主総会にて決議が行われる際、もっとも多く使われるのがこの普通決議です。

普通決議の決議要件

普通議決で決議を行う際、その定足数※として、議決権を行使することでき、さらに議決権の過半数を持っている株主が出席する必要があります。

なお定款においてルールを定めている会社では、そのルールに従います。

決議要件は、出席した株主の議決権の過半数をもって可決されます。

※定足数:株主総会に出席しなければならない最低数のこと。

 

普通決議の主な決議事項の例

株主総会における普通決議では、主に下記の内容が決議されます。

  • 取締役・監査役の選任
  • 取締役の解任
  • 役員報酬など
  • 剰余金の配当
  • 剰余金の額の減少
  • 剰余金についての処分
  • 自己株式取得(株主との合意による取得は特別決議が必要)
  • 資本金額の増加
  • 資本金額の減少(分配可能額より少なくなっている場合)
  • 準備金額の増加・減少
  • 競業・利益相反取引などの承認

 

2. 特別決議の決議要件と主な決議事項

重要度の高い決議事項、具体的には定款の変更や解散、合併、事業譲渡など、会社組織に関する事項を決議する際は、特別決議が必要となります。

特別決議の決議要件

特別決議にて決議を行う際の定足数としては、議決権を行使することができ、さらに議決権の過半数(定款で定めている場合はそれ以上)を有する株主の出席が必要です。

また決議要件は、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成によって可決されます。

なお、あらかじめ定款で割合を定めている場合は、その割合以上の賛成が必要となります。

特別決議の主な決議事項の例

株主総会における特別決議では、主に下記の内容が決議されます。

  • 譲渡制限株式の買取り
  • 特定株主からの自己株式取得
  • 譲渡制限株式の相続人などへの株式売渡請求
  • 株式の併合
  • 募集株式の募集事項の決定等
  • 監査役及び累積投票で選任された取締役の解任
  • 役員の損害賠償責任の一部免除
  • 資本金の額の減少(減資)
  • 定款の変更
  • 現物配当(剰余金の配当のうち金銭以外の財産による配当のこと)
  • 解散
  • 事業譲渡の承認
  • 組織の変更・合併・会社分割の組織再編等

 

なお、株主総会の特別決議については以下の記事でより詳しく解説しています。

 

3. 特殊決議の決議要件と主な決議事項

普通決議や特別決議よりさらに重大な決議事項となる際に開催されるのが、特殊決議です。

特殊決議の決議要件

この特殊決議では、株主総会において議決権を行使することができる株主が半数以上(定款で定めている場合はその割合以上)の出席が必要となります。

また決議要件は、普通決議や特別議決のように、出席する株主の定足数や議決権の数に規定がなく、株主総会において議決権を行使することのできる株主の半数以上、もしくは3分の2以上の賛成で可決されます

なお、定款にて3分の2以上と定めている場合はそれに従い、それ以上の賛成が必要となります。

特殊決議の主な決議事項の例

株主総会における特殊決議では、主に下記の内容が決議されます。

  • 発行する株式の譲渡制限の規定における定款の変更
  • 一定の吸収合併契約等の承認等


特殊決議が必要とされる決議事項に関しては他と比べて少ないですが、取り扱う内容としては非常に重大性が高いものとなるため、可決には株主全体に対し圧倒的多数の賛成が必要となります。

4. 特別特殊決議の決議要件と主な決議事項

特別特殊決議は、前項で記述した特殊決議よりも、もっと重大な決議事項となり決議要件のハードルも上がります

4-1. 特別特殊決議の決議要件

特殊決議と同様で、特別特殊決議においても株主の定足数は定められておらず、決議要件は総株主のうち半数以上の株主が出席し、そのうち株主の議決権4分の3以上の賛成が必要となります。

なお、定款にて別段のルールを定めている場合はそれに従います。

4-2. 特別特殊決議の主な決議事項の例

株主総会における特別特殊決議が行われるのは、下記の内容の場合のみ決議されます。

  • 株式譲渡制限会社で配当や残余財産を受ける権利などについて、株主ごとに異なる取扱いをする際の定款変更


このように、株主総会にて特別特殊決議が必要となるケースは、上記の場合のみとなりますが、前述のとおり特別特殊決議は株主の利害に直結する重要な決議事項となるため、より一層厳重な決議要件が求められます。

以上のように、株主総会というのは決議する内容によって決議の種類も異なり、さらに株主の定足数や要件など、事案が重大になればなるほどより多くの株主の賛成が必要とされます。

なお、決議に対する定足数や要件などは、全て会社法にて定められているため、万が一それに違反した場合は、事案の重要さは関係なく決議は無効となります。

特に株主を身内で固めている会社などの場合、株主総会のあり方が粗慢になってしまうことがよくあるので、しっかりと会社法に沿った株主総会を開催するようにしましょう。

株主総会は書面決議が可能なケースもある

株主総会を経て重要な事案を決議するということは、会社を運営していくうえで多々あります。なお、この株主総会を開催するためには、取締役会にて株主総会の招集を決定し、株主に株主総会招集通知を発送など、定められた手順を踏まなければなりません。

しかし、忙しくて時間が取れないなど、株主総会を開催するまでの手順を踏むのが難しいというケースもあります。

そういった場合は、株主総会の開催を省略し書面等のやり取りのみで、実際に株主総会にて決議を行ったものとみなすことのできる制度があるのです。

なお株主総会を省略し、書面等のやり取りだけで事案の可決が認められるのは、取締役、もしくは株主が具体的な決議事項を提案し、その提案に対し株主全員が書面もしくは電磁的記録(メールやPDFファイル)にて同意をした場合のみです。

この株主総会書面決議に関しては普通決議はもちろん、重大な事項を決議する際に使われる特別決議の承認決議であっても有効です。

そのため、株主が親族である場合や、株主同士が信頼し合っている仲間内である場合など、株主全員の同意を簡単に得られるなどの場合は、非常に使い勝手のよい制度です。

何より株主総会書面決議は、株主への招集通知や株主総会を開催する手間などが省けるので、よりスピーディな議案遂行が可能となります。

Point:株主総会議事録の作成を忘れずに

すべての株主から同意した旨の書面が届けば、株主総会が開催されたとみなされますので、その場合も通常どおり株主総会議事録を作成する必要があります

また、会社法では作成した株主総会議事録および株主の同意書については、会社本店にて10年間保管するよう定められています。

なお、株主による同意書が書面ではなく電磁的記録(メールやPDFファイル)だった場合も同様で、別途ディスクなどに保存し10年間の保管が必要です。

 

書面決議の株主総会を行う場合はクラウドサービスもアリ

株主総会を省略し書面等のやり取りのみで完結させる、みなし株主総会(書面決議)は株主総会を非常にスピーディに行うことを可能としています。

この株主総会の書面のやりとりをクラウド上でできるようにしたのが株主総会クラウドというサービスです。

クラウドサービスであるため、従来は大きな手間になっていた書類作成や郵送といった紙周りの処理が大幅に効率化。

書面決議にも対応しているため、株主総会をさらに効率的に行うことも可能です・

料金は、スモールプランは株主1人あたりにつき980円(株主15名まで)、スタンダードプランでは980円/株主に加え別途、基本料金14,800円が必要になります。

月額料金が不要で、株主総会1回ごとの課金方式であるため、通常のサブスクリプションサービスとは違ってリーズナブルに運用することができます。

 

株主総会と取締役会の決議事項の違い

重要な事案を決定するといった意味では共通している株主総会と取締役会ですが、果たしてこの株主総会と取締役会とでは、決議事項にどのような違いがあるのでしょうか?

まず株主のみが出席する株主総会に対して、取締役会は取締役のみが出席する会議となりますので、当然その決議事項も異なってきます。

株主総会の役割や決議事項については前述のとおりですが、取締役会というのは、業務執行に関する会社の意思を決定し、取締役の職務執行を監督する機関となり、基本的に会社の業務に関する事項を決定します

つまり、定款の変更や合併など会社経営に関わる事項ではなく、あくまで会社の業務施行に関する事項を決定し、業務効率化を図るのが取締役会の役割となっています。

取締役会の決議事項も数多く存在しますが、なかでも株式譲渡についての決議や経営方針の決定、株主総会を開催するかどうかの決議などで開催されることが多いです。

このように、株主総会と取締役会とでは全くの別ものとなり、株主総会で決議しなければならない決議事項については、原則として取締役会にて決議することはできません。

ただし、取締役会を設置していない会社の決議に関しては、取締役会の決議事項もすべて株主総会にて行なわれることになります。

なお株主総会と取締役会の違い、関係性については以下の記事で詳しく解説しています。

 

まとめ

さて、今回は株主総会の決議事項の種類や、その決議要件について解説してきました。

ここで紹介してきたように、株主総会は決議事項の重要さに応じて、普通決議・特別決議・特殊決議・特別特殊決議といった種類に分けられ、可決要件も事案の重要さに応じて厳しくなっていきます。

また株主総会においては、会社法にて数々の規定が定めらているため、しっかりルールに従った方法で開催しなければなりません。

仮に、会社法にて定められたルールに従わなければ、決議事項の重大さに関係なく、無効になる可能性もあるので注意が必要です。

いずれにせよ、株主総会は会社の重要な事案を決定する、株式会社の最高意思決定機関であり、健全な会社運営を行なうためには無くてはならない、非常に大切な役割であるということを、決して忘れないようにしてください。

▼参考記事:株主総会と取締役会の違い

画像出典元:O-DAN

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