毎年5月~6月になると株主総会のニュースをよく見聞きしますが、株主総会がどんな会議で、何を決めているのかを知っている人は少ないもの。
しかも、これから株式会社の設立を考えている人や、新しく株式会社を設立した人が答えられないのはとても危険なことです。
そこで、本記事では株主総会について知っておくべき内容を解説しています。
一体、何が危険なのか?株主総会の準備や開催はどのようにすればいいのか?といったことが分かる内容となっていますので、早速読み進めていきましょう。
このページの目次
株主総会は会社にとって重要な意思決定を行う会議のことです。
「株式会社における意思決定の最高機関」と位置づけられており、株主が参加して経営戦略や人事などの経営における重要な決定事項を決めています。
まず、株主総会について知って行く上で事前に知っておかなければならないのが、株主の権利です。
株主には株主総会へ参加をする権利である「共益権」と、会社から経済的な利益を享受する「自益権」があります。
以下で、それぞれの権利がどのように株主総会に関係しているのか説明していきます。
権利名 | 内容 | 具体例 |
共益権 | 株式会社の意思決定の場への参加、経営の監督と是正をできる権利 | 株主総会での議決権など一単元株でも保有していれば認められる単独株主権と、株主総会招集権や解散請求権など一定数の株式の保有が必要な少数株主権など |
共益権を一言でいうと、「会社に口出しできる権利」です。
かなり強力な権利で、経営者を変更するなどの強力な力をもっています。
また、共益権の一部である「議決権」は、株主総会を行う上で最も重要な権利。
後述の「株主総会の決議方法は?」にて詳しく説明していますが、議決権の数で株主総会は決まります。
権利名 | 内容 | 具体例 |
自益権 | 株を所持している会社から経済的な利益を受ける権利 | 配当金を受け取ることのできる「利益配当請求権」や企業が解散する際の「残余財産分配請求権」など |
自益権は上記の表の内容の通りで、「会社から経済的な利益を受ける権利」です。
そして、自益権に含まれる各権利は「会社における重要な決定事項」に含まれる内容となっています。
したがって、株主が自益権を行使する場合、株主総会を行わなければなりません。
株主総会を正しく行う理由は「正しく開催しないことによる義務違反リスクの回避」です。
株主総会を正しく開催しないと、株主総会での取り決めが全て無効となってしまいます。
なぜなら、株主総会は法律を守って開催しなければ、後から株主側が「その株主総会は無効だ!」といった意見が認められてしまうから。
そのような株主側の訴えを「決議取り消し」や「決議無効」「不存在確認請求」言い、以下のような違反をすると株主総会が無効となります。
決議取り消し |
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決議無効 |
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不存在確認請求 |
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株主総会を開催して決めたことが全て無効となると、すでに支払った役員報酬の返還や、契約がなかったことになります。
また、取締役など株主総会で任命されていても、総会が無効となって元の地位に戻ることも。
当然、株主総会から無効となる期間までに支払われた報酬は返還しなければなりません。
株主総会は、正しい方法で行うことがなによりも重要となります。
株主総会の種類「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2つ。それぞれについて以下の表にまとめています。
種類 | 内容 | 法律 |
定時株主総会 | 定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に召集しなければならない | 会296条1項 |
臨時株主総会 | 臨時株主総会とは、定時株主総会以外に必要がある場合、いつでも臨時に開催する株主総会 | 会296条2項 |
定時株主総会とは、毎事業年度終了後の一定の時期に必ず1回は行わなければならない株主総会のことです。
一般的には毎事業年度終了後の3か月以内に株主総会が開催されることがほとんどですが、事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することが求めてられているわけではありません。
共益権の一部である議決権を行使のための「基準日」というものがあり、この「基準日から3か月以内が株主が権利を行使できる期間」となります(会社法第124条第2項)。
このことから、多くの企業では毎事業年度終了後の3か月以内に株主総会を行っています。
臨時株主総会とは、緊急を要する定款変更や取締役の選任や新株予約権の発行など、必要に応じて行う株主総会です。
定時株主総会との違いは招集の時期と議案の内容のみで、招集の手続きや決議方法などについては違いがありません。
株主総会では主に、「会社法に規定されている事項」と「会社の経営の根幹に関わること」が決議されます。
これらの内容は大きく「経営に大きく関わること」「役員の人事に関わること」「株主の利害に関わること」3つに分けることができますので、それぞれ解説していきます。
以下のような事由が、会社の経営に大きく関わることの事例です。
定款は会社の根本規則とも呼ばれる基礎となるルールとなります。
定款の変更は会社の経営に大きく関わることですから、株主総会での決議が必要に。
また、事業譲渡や合併、解散などは、会社の組織形態を大きく変える事項です。
これらも株主総会での決議が必となります。
会社の役員は、取締役や監査役のことを指します。
なぜ、株主総会で会社の役員についての決議がなされるのでしょうか?
それは、株式会社は「所有」と「経営」が制度的に分離しているからです。
会社自体は株主が「所有」しているものですが、「経営」は役員が所有者の株主から任されている関係です。
所有者からすると、経営を任せる人を吟味しなければ、大きなリスクを背負うことになります。
また、役員の経営次第で会社は大きくも小さくもなるため、役員の選任は会社にとって非常に重要な事項です。
したがって、株主総会での決議内容に含まれます。
株主には自益権があります。
上記のような事項は株主の経済的な利益に直結するため、株主総会での決議内容に含まれます。
株主総会での決議の仕方は多数決です。
ただし、株主の人数での多数決ではなく「持ち株の有する議決権の数」での多数決となります。
また、代表的な決議方法は「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3つ。
それぞれ、株主総会が開催できるかどうかの定足数や、決議内容の賛否を決める表決数が異なります。以下の表でまとめていますので、確認してみましょう。
種類 | 定足数 | 表決数 |
普通決議 | 定款に定めがなければ、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主の出席 | 出席している株主の議決権の過半数 |
特別決議 |
議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主の出席。 |
出席している株主の議決権の3分の2以上 |
特殊決議 | なし | 株主総会で議決権を行使できる株主の半数以上、および議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上。ただしそれぞれに定款でそれ以上の割合が定められているならその割合 |
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
引用:会社法
「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」は、株主全体で見たときの有効な議決権数の過半数のこと。
つまり、株主総会は「出席した株主の持つ議決権数が、出席していない株主も含めた全議決権数の過半数以上」でなければ株主総会そのものが成立しません。
加えて、出席した株主の持つ議決権数の過半数以上の賛成がなければ決議内容も無効という仕組みとなっています。
決議内容は「剰余金の配当」「取締役や監査役の報酬」「全て株主が対象となっている自己株式の取得」などの、会社にとって重要度の低い議題です。
第三百九条
2 当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
引用:会社法
特別決議は普通決議よりも重要度の高い決議内容が主な議題となります。
そのため、普通決議よりも可決条件は厳しく、「出席した当該株主の議決権の3分の2以上」の賛成を得なければなりません。
決議内容は「定款の変更」「解散」「株式の合併」などの重要度の高いものが議題です。
第三百九条
3 当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
引用:会社法
特殊決議は特別決議よりもさらに重要度の高い決議内容が主な議題となります。
定足数はありませんが、表決数は決議権全体の3分の2以上です。
したがって、普通決議や特別決議よりも決議権の母数は多く、賛成も多数でなければなりません。
決議内容は「発行する株式全てに譲渡制限を付加するための定款の変更」や「一定の合併を行う場合、その契約などの承認」などの最重要課題となります。
特別決議・普通決議については下記記事で更に詳しく解説していますので、参考にしてください。
一般的な株主総会である定時株主総会を開催するまでの流れを、以下にまとめています。
(1) 事業年度末日
↓
(2) 計算書類などの作成、監査役に提出(4週間以内)
↓
(3) 監査役が監査報告書を取締役に提出する
↓
(4) 取締役会での計算書類等の承認および株主総会の招集決議と本店への備え置き(株主総会の14日前まで)
↓
(5) 株主総会招集通知(2週間以上前まで)
↓
(6) 株主総会開催日
多くの会社では「基準日」が事業年度末日です。
基準日とは、議決権などの株主としての権利を行使すべきものを定めるための一定の日のことを指します。
計算書類や事業報告、附属明細書などを作成し、4週間以内に監査役に提出します(会社法施行規則132条)。
計算書類などの提出完了後、監査役が「監査報告書」を取締役に提出します。
取締役会で計算書類等の承認決議を行い、あわせて株主総会の招集決議も行います。
また、株主総会の日時や場所、当日の議案などについても取締役会で決定します。
ですが、1点注意すべきことが。
それは、「取締役会で承認された計算書類などを14日前から本店へ備え置かなければならない」ことです。
備え置きは、株主総会の14日前から5年間しなければならない(会社法442条)と定められています。
したがって、取締役会は株主総会の14日よりも前に行わなければなりません。
通常、株主総会の招集通知発送は株主総会の2週間以上前(非公開会社の場合は1週間以上前)までに行わなければなりません(会社法299条)。
事前に取り決めた日に、定時株主総会を行います。
株主総会の流れを詳しく知りたい方は下記記事を参考にしてみてください。
これまでに見ていただいたように株主総会開催には様々な手順が必要になります。
これまでアナログでの対応が主だった様々な処理をクラウド上でできるようにしたのが、株主総会クラウドというサービスです。
クラウドサービスであるため、従来は大きな手間になっていた書類作成や郵送といった紙周りの処理が大幅に効率化するだけでなく、株主情報の管理や開催履歴の管理までも一括で省力化できるのが特徴です。
料金は、スモールプランは株主1人あたりにつき980円(株主15名まで)、スタンダードプランでは980円/株主に加え別途、基本料金14,800円が必要になります。
月額料金が不要で、株主総会1回ごとの課金方式であるため、通常のサブスクリプションサービスとは違ってリーズナブルに運用することができます。
株主総会は会社の方針を決める、もっとも重要な会議です。また、法律でも開催方法や条件、記録の保管について定められているため、慎重に準備を行っていく必要があります。
不備があった場合、会社や役員の損失は決して小さなものではありません。
会社を守るためにも計画をしっかりと立て、スケジュール通り株主総会を開催できるようにしていきましょう。
画像出典元:Unsplash、Pixaday
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