取締役会で何を決める?決議事項と決議方法、注意点を詳しく解説

取締役会で何を決める?決議事項と決議方法、注意点を詳しく解説

記事更新日: 2023/09/10

執筆: 浜田みか

業務執行において広い権限を持つ取締役。権限に伴い、業務を執り行う責任も負うことになります。その取締役が集まり、会社業務に関するさまざまな取り決めを行う会議が「取締役会」です。

取締役会では、どのようなことを決めるのか。その範囲は、会社法という法律で定められています。

今回は、取締役会の決議事項と決議方法、注意点を詳しく解説します。

取締役会の決議事項とは

取締役会では、会社業務を円滑かつ健全に執行していくには、どうすべきかについて話し合いがなされます。その具体的な事柄は、会社法362条4項で定められており、そのほかにもどのような事柄を決議するべきかが決まっています。

主に、業務執行に関わる重要なポジションへの人選や、会社の財産などについて決議がされます。

なお、そもそも取締役会とはどのようなものかを知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

取締役会で決議される主な事柄7つ

取締役会において決議される事柄は、主に7つあります。(会社法362条4項)

  • 主な決議事項7つ

  • 1. 重要な財産の処分及び譲り受け

    2. 多額の借財
    3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
    4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
    5. 募集社債の金額、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項
    6. 内部統制システムの構築に関する決定
    7. 定款の定めに基づく取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人の会社に対する責任の免除

その他の決議事項

このほかでは、次の事柄を取締役会で決議することが定められています。

その他の決議事項

  • 自己株式の取得株数、価格等の決定
  • 株式分割
  • 株式無償割当てに関する事項の決定
  • 公開会社における新株発行の募集事項の決定
  • 公開会社における新株予約権の募集事項の決定
  • 株主総会の招集の決定
  • 取締役による競業取引および利益相反取引の承認
  • 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書の承認
  • 代表取締役の選任及び解任 

これらのことを決議するためには、取締役会で議題に挙げ、取締役が揃って話し合わなければなりません。

なお定款の変更や取締役の選任・解任などの重要な事項は株主総会での決議が必要になります。

取締役会と株主総会の違いについては以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

 

取締役会の決議に関する注意事項

取締役会を行う場合に注意すべきポイントを解説します。

1. 取締役は過半数を超える出席が必須(例外あり)

決議には、取締役の過半数が出席する必要がありますさらに、決定が有効となるには、出席した取締役の過半数から賛成を得なければなりません。

ただし、出席する取締役の人数や決議が有効となる賛成数は、定款によって定めることができ、その値はいずれも過半数を上回る割合であることが定められています。

2. 出席できないときTV電話による参加が認められる

取締役会は、開催日よりも以前に書面もしくは口頭で通達されます。

しかし、スケジュールの都合などで取締役会の場に出席できないこともあります。この場合は、Skypeなどのテレビ電話を使用することによって出席と同一視できるとされます。

ただし、これには以下の条件があり、満たされていない場合には出席とは認められません。

  • 音声がリアルタイムに他の出席者に伝わる状態であること
  • 適切なタイミングで、その場に合った的確な意見表明がお互いにできる状態であること

ちなみに、テレビ電話をする場合はSkypeより「appear.in」がおすすめです。

3. 定款の定めがあれば書面での同意で決議内容を可決できる

あらかじめ定款で定められている場合においてのみ、書面もしくは電子データによる同意の意思表示によって、提案された議題に対して取締役会を開催することなく可決することができます

定款で定められていない場合は、議決に加わることができる取締役が出席する取締役会の開催が必須となります。

4. 代理人による決議は認められない

スケジュールの都合などの理由で取締役会に出席ができない場合でも、代理人を立てて決議に参加することはできません

この場合、定款の定めに加えて、取締役全員の同意と監査役員全員からの異議がないことを条件に、書面や電子データで同意の意思を伝えることになります。

5. 決議事項に利害関係がある取締役は定足数から除く

取締役会で決議される内容は、常に会社の利潤を追求するものであるべきで、個人の利害関係で左右されてはならないものです。

そのため、決議事項に個人的な利害関係が絡む取締役が議決に加わることは認められていません。該当する取締役は関係する決議事項について、決議の定足数から除かれるということです。

もしも、議決に加わったときは、その事項に関する決議の効力がなくなり、再度議決することになります。

特別利害関係を有する取締役とは

決議される事柄に利害関係がある取締役のことを、「特別利害関係を有する取締役」といいます。

この取締役が参加できない決議とは、どのようなものか。また、どういった事柄であれば該当しないのかを解説しています。

特別利害関係を有する取締役の例

特別利害関係を有する取締役に該当するのは、以下の取締役です。

取締役会での決定事項の内容にかかわる取締役は、決議に加われないと捉えればよいです。具体的に見ていきましょう。

1、競業取引の承認を受ける取締役

ある取締役が競業取引をしようとしている場合、その取締役は取締役会で取引の承認を受ける必要があります。その承認の決議には、承認を受ける取締役が参加できません。

競業取引は、競合行為ともいわれ、自社の事業と競合する業務を行うことをいいます。

取締役は、自社の事業に関する部類の業務について、ノウハウを持っているとみなされるため、取締役自身や第三者のために同じ部類の取引を行うことは、自社に損害を与えることにもなりかねません。そのため、取引をするには、取締役会の承認が必要となります。

例えば、Webメディアの運営を行う会社の取締役が、自分でWebメディアを運営する、あるいはWeb運営の仕事を受託することは競業取引にあたる可能性があります。

2、利益相反取引の承認を受ける取締役

ある取締役が利益相反取引をしようとしている場合も、その取締役は取締役会で取引の承認を受ける必要があります。この承認の決議にも、承認を受ける取締役が参加できません。

利益相反取引とは、取締役自身あるいは第三者の利益を図ることで、会社の利益が損なわれるような取引のことをいいます。

例えば、会社の利益を度外視して、自分と仲の良い会社に仕事に発注することなどもこの利益相反取引にあたる場合があります。

3、株主代表訴訟の会社側の代表選任において、被告となった取締役

株主代表訴訟とは、会社(株主)側が取締役の責任を追及する訴訟です。すなわち会社 vs 取締役の訴訟です。

この株主代表訴訟での会社側の代表を選ぶときに、被告となった取締役は代表選出の決議に加われないということです。理解をしてしまえば、当たり前のことだといえます。

なお監査役設置会社の場合は、会社側の代表は自動的に監査役が務めることになります。

4、代表取締役の解任決議において解任対象にあたる代表取締役

代表取締役の解任を決める決議には、解任対象者となっている当該代表取締役は参加できません。

特別利害関係を有しない取締役の例

  • 代表取締役の選任決議において候補者にあたる取締役
  • 報酬の配分決議において報酬の受取対象となる取締役

これらの場合においては、特別利害関係を有しないとして、通常通り決議に参加することができます。

まとめ

取締役会を設置している会社では、定期的に取締役会を開くことになります。その際、決議する事項がある場合は、注意点に考慮しながら議決するようにしましょう。

取締役会で議決した事柄によっては、株主総会での報告や決議を要するため、スムーズな議決が望まれます。

取締役会での決議方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

画像出典元:PEXELS

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